問題児と悪魔の妹が異世界から来るそうですよ? 作:亡き不死鳥
「じゃあこれからよろしく、メイドさん」
ペルセウスに勝利した十六夜は石化したレティシア、飛鳥、耀、そしてフランを大広間に運び、レティシアの石化を解いた瞬間十六夜は言い放った
「「「「「え?」」」」」
十六夜と寝ているフランを除いた全員が一斉に疑問の声をあげた
「いやさ、今回のゲームって俺とフラン以外何もしてないだろ?」
「うっ、それを言われると痛いわ」
「…フランが暴れただけだった」
「つーか、ペルセウスとのゲームにこじつけたのも俺だろ?だから所有権はゲームメインとマスター撃破を務めたフラン4、俺4、お嬢様1、耀1でどうだ?」
「何を言っちゃってるんですかこの方は!?」
まあ仕方ないと納得している二人に比べて黒ウサギは完全に混乱していた。しかし当事者であるレティシアは意外と冷静だった
「ふ、む。そうだな。今回の一件で私は皆に恩義を感じている。コミュニティに帰れたことにも感動している。だが親しき仲にも礼儀あり。君達が家政婦をしろと言うのなら喜んでやろうじゃないか。……それに」
石化を解かれ静かな寝息を立てるフランに近づき、軽く頭を撫でる
「家政婦としてこの寝顔を守れるなら存外悪くは感じない」
「そりゃよかった。そうそう、メイド服は白夜叉が仕立てておいてくれました」
「何をやってるのですか白夜叉様は!ていうか『仕立てておいた』!?過去形ですか!?」
「なんでも元からその計画があったとかで」
「〜〜〜!はぁ〜」
もう怒る気にもならないと床にへたり込んでしまった。そんな黒ウサギをスルーして十六夜はメイド服をレティシアに渡し、ニカッと笑った
「んじゃ、これからよろしくな」
「ああ、よろしく。……いや、主従なのだから『よろしくお願いします』の方がいいかな?」
「使い勝手がいいのを使えば良いのよ」
「そ、そうか。……いや、そうですか?んん、そうでございますか?」
「……黒ウサギの真似は辞めた方がいいと思う」
「ヤハハ、違いねぇ」
和やかに笑う四人を見て黒ウサギは力なく肩を落とした
☆☆☆
ペルセウスとの決闘から三日後の夜、有明の月を空に掲げる少し暗い夜、子供達を含めたノーネーム一同は水樹の貯水池付近に集まっていた
「えーそれでは!新たな同士を迎えたノーネームの歓迎会を始めます!」
そう、今日はなんだかんだ忙しかった日々にようやく一区切りついたので異世界から呼び出した四人の歓迎会が開かれたのだ
「どうして屋外の歓迎会なのかしら?」
「うん。私も思った」
「黒ウサギなりに精一杯のサプライズってところじゃねぇか?」
呼び出された三人もこの歓迎会を楽しんでいるようで歓談を続けていた。そんな中、フランは本拠の屋根の上で盃を交わしていた。その相手はメイド服を身に纏い、血の様に赤い赤ワインをフランに、そして自分に注ぐレティシアの姿があった
「すまないな。あちらに交じった方が楽しいだろうが少し付き合ってくれ」
「全然大丈夫だよ。それに月見酒は好きだから」
空には満月とは程遠い細い月が昇り周りの数多の星々と共に輝いている。そんな月を眺めながらフランはグラスを傾ける。喉を焼く感触が堪らない
「………」
「………」
会話は少ない。フランが呑み、レティシアが呑み、それを続ける。下では子供達が走り回り黒ウサギが笑いながら注意をしていた
「……黒ウサギ、楽しそうだね」
「そうだな。だが、ノーネームの状況は酷いものだ。恐らく後数日で金蔵が尽きるだろう。百人を超える子供達の世話を三年も続けていた黒ウサギの苦労は想像に硬くないな」
「…レティシア、お酒の席で重い話はダメだよ。お酒は楽しく呑むものだってお姉様も言ってたもん。それに私達が来たんだよ?黒ウサギの分も私達がなんとかしてみせるから」
だから心配しないで?と、優しく微笑みかける。それにレティシアも応える
「……その通りだな。私も三年もの間留守にしてしまったからなをその分きっちり働かないとな」
「そうそう。頑張ろ♪さ、飲みなおそっか」
いつの間に持って来たのかフランの手には真新しいワインのボトルが握られていた。自分のグラスを差し出し注いでもらう。フランも自身のグラスにワインを注いだ
「それじゃあこれからのノーネームの発展を願って、乾杯!」
「…乾杯」
チンッとグラスをぶつけ合わせ同時に呷る。不思議と先程よりもうまく感じた。
それから呑み続けていると、
「それでは本日の大イベントが始まります!みなさん、箱庭の天幕に注目してください!」
フランとレティシアもその言葉に従い箱庭の天幕に注目する。先程と同じように夜空には星々が輝いている。
その空に異変が起きた
一筋の光が空に線を描いた
「流れ星だ!」
しかしそれだけに留まらない。それからさらに星が流れる
「流星群、か。なるほど、これは主殿達の功績を表したものだ」
「主…って十六夜達?」
「フランもその中に入っているがな。それはさておき、この流星群は恐らくペルセウス座だ。恐らくだが、ペルセウスのコミュニティがあそこから旗を下ろすことになったのだろう」
「箱庭って星まで自由にできるの!?」
「あぁ。あの星々全てがこの箱庭の為にあると言っても過言ではないからな」
「ふへぇ〜。凄いんだね。あ、じゃあさ!私達も星に旗を立てられるってことだよね?」
「まぁそうだな。…なんだ、星が欲しくなったのか?」
「うん!私は…月が欲しい!」
「は?」
突然の発言に思わず変な声が出てしまった。夜空の億兆の星とは訳が違う。たった一つの星のために超巨大なゲームが開催される程の価値が月にはあるのだ
「私は吸血鬼だから、月を求めちゃうのかもしれない。それに…黒ウサギは月のウサギなんだよね。だったら月だって恋しい筈だよ。だから……」
月に手を伸ばし決意を固めるかのように拳を握りしめる
「私は黒ウサギの為に、黒ウサギに『月をプレゼントしたい』!これが私の箱庭での目標の一つ」
未だに呆気に取られているレティシアにフランは満面の笑みを浮かべた
「どうかな?」
「………あぁ。とても、とても素晴らしいと思うよ。黒ウサギも絶対に喜ぶ。うん、断言しよう」
レティシアは思った。この真っ直ぐで純粋な少女の願いを見届けたいと。コミュニティも何も関係なく、自分の意思でそう思った。
フランも決意を固め、意思を固めた。下では黒ウサギと十六夜が並んで笑っている。飛鳥と耀も楽しそうだ。隣のレティシアも嬉しそうに微笑んでいる。そして自分も笑っているだろう。まるでこれから先も全てうまくいくと思えるほど皆は笑顔な夜であった
だからこそ、さらに天秤は傾いていく。幸と不幸の天秤は片方にだけ傾くことを許さない。一方に傾けば傾く程、その反動は大きくなっていく
ーーードクンーーーー
この先の不幸を予想させるかの様に、天に手を伸ばすフランの心が波を打った
そんなものとは裏腹に騒がしい歓迎会は続いていく。少しづつ少しづつ、夜が更けていく
そして同じ頃、箱庭の世界の境界で一つの影が伸びた
「………繋がった」
物語は移りゆく。投げられた賽の目は一か八か。天秤は幸と不幸のどちらに傾くか。
その行き先は運命のみが知っている
※あとがきは余計な事しか言ってないので飛ばしてください
第一章・完!
次章遂にあの方々が登場!乞うご期待!
最近新しい小説を書き始めようか迷ってる作者です。
なんというか創作意欲が掻き立てられ過ぎてヤバイ。
しかしリアルもヤバイし、こっちの小説も続けたい、しかし頭の中では構成だけがどんどん出来上がる現状…
色々な事で頭がヤバイ
戯言すみません