問題児と悪魔の妹が異世界から来るそうですよ? 作:亡き不死鳥
作者も高校三年なので更新遅くなります!
というか当分しないかも。
というわけでひと段落つけました
『ギフトゲーム名 ”FAIRYTALE in PERSEUS“
プレイヤー一覧
逆巻 十六夜
久遠 飛鳥
春日部 耀
フランドール・スカーレット
"ノーネーム"ゲームマスター ジン=ラッセル
“ペルセウス”ゲームマスター ルイオス=ペルセウス
クリア条件 ホスト側のメンバー全員の打倒
敗北条件 プレイヤー側の降伏、及び戦闘不能
・舞台詳細、ルール
ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。
ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。
プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に姿を見られてはいけない。
姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦権を失う。
失格となったプレイヤーは挑戦権を失うだけでゲームを続行する事はできる。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します
“ペルセウス”印』
ペルセウスとの交渉から一週間。耀の治療も終わり、万全の状態でゲームに挑むノーネーム。ゲームの舞台は白亜の宮殿。その宮殿の中では現在進行形で数百の悲鳴が上がっていた
「こちらA班、名無しの一人だ!吸血鬼が来た!増援を!」
『こ、こちらE班。こっちにも吸血鬼……ガァ!?」
「おい!どうした!?」
『ここ、こちらG班!きゅ、吸血鬼が!吸血鬼がここにも……うわぁぁぁぁぁ!!」
「どうした!何があった!吸血鬼はここに……」
「私がどうかした?」
「なっ!?」
「………アハッ♪」
「ぎぃぁぁぁぁあああああ!!!」
そんな悲鳴が木霊する中、十六夜、飛鳥、耀、ジン、そしてフランは敵から奪い取ったハデスの兜のレプリカを被り、
「何度見ても凄いわね。フランの分身は」
「うん。なんて言ったっけ?分身のスペルカード」
「禁忌『フォーオブアカインド』だよ」
「しかも弾幕や動きを見る限り力が四分割された訳でもないんだろ?それに本体は後ろで高みの見物ときた。色々反則だなこりゃ」
「本人は見られないので失格の心配はなし。最奥に着いた時分身を消せばルールにも抵触しない。効果は覿面ですね。それに同じ人が違う場所に同時に現れた、なんて信じられないでしょうから相手も錯乱するでしょうね。箱庭でも変化の術はあっても分身の術はそうないですからね」
まるで本拠に居るかのような気軽さで談笑しながら歩き続ける。しかしその間にも分身であるフランは弾幕を放ち、爪で斬り裂き、敵を吹き飛ばして行く。なにもかも順調に見えたゲームだが、廊下の奥に一際デカイ扉が見えた時状況が動いた。
「きゃっ!」
前を歩いていたフランの分身が突然吹き飛ばされたのだ
「何!?」
「春日部、フラン。目の前に敵は居るか?」
「ううん。匂いは感じない」
「フランも」
「……ってことは本物のハデスの兜か!全員頭抑えとけ。外れれば即失格だぞ!」
十六夜の言葉にすぐさま頭を抑え、兜が外れないようにする。そうしている間にも見えない恐怖はすぐそこまで迫っている。
「ねえ十六夜!あれって姿を消してるだけで実際には居るんだよね!?」
「あぁ。存在までは消えてないはずだ。それがどうし…グッ!」
声を辿ったのか十六夜が吹き飛ばされた音が響き、さらに小さく壁がヒビ割れた
「あぶねえなオイ!兜とれるところだったぞクソッタレ!つーかほんとに感知できねえ。フラン、これなんとかできるのか?」
「うん、大丈夫!……いけ!」
フランの声と同時にフランの分身に異常が起きる。体が少しづつ消えて行くのだ。そしてその消えて行く傷口からは無数の蝙蝠が飛び出して行く。その数は目測千羽を越えているだろう。その蝙蝠達がノーネームのメンバーの周りを覆うように飛び回った
「見つけた!」
蝙蝠の波に感じる
「………見事だ。真正面からのギフトの突破。お前達にはルイオス様に挑むだけのしかくがある」
膝をつき倒れる騎士。それを尻目にノーネームは先に進む。誰も居なくなった廊下でバキンと壊れる鎧の音だけが響いた
☆☆☆
「ふん、ホントに使えない奴らだ。まさか一人も失格に出来ないとはな。今回の一件でまとめて粛清しないとな」
辿り着いた最上階の最奥で待ち構えていたのは精神的にも物理的にもこちらを見下ろしているルイオスの姿があった。膝まで覆うロングブーツから光り輝く翼を出しながら空中に立っている
バサッと翼を羽ばたかせ、風を越える速度で十六夜達の前に降り立った
「なにはともあれ、ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。ゲームマスターとして相手をしましょう。……あれ、この台詞言うのって初めてかも」
ペルセウスは箱庭第五桁のコミュニティ。当然それ相応の力量と経験が備わっている。ただ今回は相手が悪かった。今宵の敵は夜の王、恐ろしい波動を身に纏う悪魔の妹。そんじょそこらの相手では対等な敵にすらなれない相手だったのだ
「さて、名無し狩りの時間だ。少しは楽しませてくれよ?」
「こっちのセリフだぜペルセウス。英雄狩りは初めてなんでね、精々期待外れにならないよう頑張ってくれ」
「減らず口を。空すら飛べない人間が」
再びルイオスの翼が羽ばたく。空へ浮き“ゴーゴンの首”の紋が入ったギフトカードを取り出し、燃え盛る炎の弓を取り出した
「へっ!こっちにも空を飛べる奴はいるんだよ。フラン、あいつはお前がやれ」
「任せて!」
フランと翼を羽ばたかせルイオスと同じ高さまで飛び上がりルイオスを睨みつける。
「絶対にレティシアを返してもらうよ!」
「吸血鬼か。お前が相手っていうのも少し荷が重いかな?まぁいい。どうせメインで戦うのは僕じゃない。僕はゲームマスターだからね。僕の敗北でペルセウスの敗北が決定するんだ。そこまでのリスクは負わないよ。お前達の相手はこいつにしてもらうからな」
ルイオスは手に持ったギフトを天に掲げる。するとそのギフトがまるで星の光のようにも見える程輝き始める。その光の波は強弱をつけながら一つ一つの封印を解いていく。フランは咄嗟にレーヴァテインを手元に召喚し構えた。十六夜、飛鳥、耀も同じように臨戦体制に入る。
光が一層強くなりルイオスは獰猛な表情で叫んだ
「目覚めろーーーアルゴールの魔王!!」
【ra……Ra、GEEEEYAAAaaaa!!!】
光は褐色に染まり全員の視界を埋めていく。そして光が去った後、そこに居たのは体中に拘束具と捕縛用のベルトを巻いた女だった。女は両腕のベルトを引きちぎりながら更なる絶叫を上げた
【ra、GYAAAAaaaaa!!】
「な、なんて絶叫を」
「避けろ黒ウサギ!お前達も……なっ!?」
雲が落ちてくる。いち早く異常に気づいた十六夜は全員に警告をするために振り返った。しかし十六夜の後ろには返事ができる者は一人しかいなかった
「十六夜さん!二人が…」
ジンが顔を蒼白にしながら訴えかける。ジンの横には先程まで動いていた飛鳥と耀が石化していた
「くっ、この、野郎が!!」
落ちてくる雲を吹き飛ばし、二人に被害がいかないようにする。その様を見てルイオスは高らかに嘲った
「いやあ、飛べない人間って不便だよねぇ。落下してくる雲も避けられないんだから。しかも足手まといが
「三人……だと……!?」
十六夜は先程までフランが飛んでいた場所を見る。
(…いない)
フランの姿がない。先程の光で石化されてしまったのだろう。しかし、だとするとまずい!あの高さから落ちたら石なんて軽々壊れてしまう
「僕が倒したいのはお前だけだ。他の奴なんかどうだっていいよ。死のうがどうなろうが、ね。後はアルゴールがお前を殺すのを待つだけだ。僕に攻撃を届かせられる奴はもうこのフィールドにはいないからね」
「チッ!………いや、そうでもないみたいだぜ?」
「あん?」
十六夜の視線を追いそちらを向く。そこには
「ハァ……ハァ……」
パタパタと翼を羽ばたかせフラフラと空を飛んでいるフランの姿があった。しかしその身にも異常が起きている。持っていたレーヴァテインを始め、右腕、右足、そして右の顔半分が石化していた。
「ふん、死に損ないが。そんな満身創痍でこの僕を倒せるとでも?」
「さあどうだか。おいフラン、いけるか?無理ならおチビ達と下がっててもいいぜ?」
「……ううん、大丈夫。十六夜はそっちのでっかいのと遊んでて」
「あいよ。そんじゃ……」
バキッ十六夜が居た地面が割れ、十六夜の姿が消えた
「元・魔王様よ、ちょいとばかし相手してもらう……ぜっ!」
アルゴールの脇まで移動した十六夜が第三宇宙速度でアルゴールを蹴り飛ばした
「GYAAAAaaaa!!!」
これのおかげで十六夜・アルゴールとフラン・ルイオスとの間に距離ができた
「結局僕はお前の子守か。まぁ、今のお前に負ける気なんざさらさらないけど、な!」
言葉と共にルイオスは炎の弓を引く。蛇のように蛇行する軌跡の炎の矢がフランに迫る。それをフラフラと不安定な飛び方をしながらもフランは矢を掴み取り握り潰す
「ふん、腐っても吸血鬼というわけか。だが、いつまでもつかな?」
再びルイオスは弓を構えフランへ向け、その身に照準を合わせる。左右の重量の非対称。石化による体重の増加。考えれば考える程負ける要素は見つからない。このまま続ければ勝てる。そして弓を放…
「……ねぇ」
とうとした時フランが話しかけてきた。別に時間で石化が解ける訳でもないし、このままやるのも退屈なので少し会話に乗ることにした
「なんだ?」
「あなたは…なんでレティシアや黒ウサギに酷い事するの?」
「はぁ?別に理由なんてないけど?あの吸血鬼は商品。どう扱おうと持ち主の勝手だろ?僕は正当な扱いをしてるのに横から盗ろうとするお前等の方がよっぽど不当だよ」
「…………」
「それにさ、お前等は月のウサギの価値を全然理解してない。コミュニティに月のウサギがいる事でどれだけの箔が付くのかもね。いやホント、黒ウサギが不便だよ。たとえ第一層ですら重宝される存在が、第七層の使いっ走り。自己犠牲の塊って話は伊達じゃないね」
「………」
「使い潰され、使い倒され。しかもノーネームでは腹一杯の飯すら稀なんだろ?そんな扱いされれば僕なら耐えきれないけどなぁ。むしろ黒ウサギのことを思うなら僕達みたいに上の階層送り出すのが仲間ってもんでしょ」
「……」
「旗も名も無いノーネーム。崖っぷちのお前等に黒ウサギが火に飛び込んで肉を差し出す姿を想像すると泣けてくるね。それに、下の女二人も結局何もせずにお荷物になる始末。使えない奴が居るとそれだけで嫌になるよねぇ」
「…」
「そうそう、お前等がくる前に黒ウサギと交渉したんだよ。このゲームでノーネームが負けたら黒ウサギをウチのコミュニティに引き抜くってね。いやぁ『この問題の責任を白夜叉に押し付ける』方法を言ったらあっさり…」
「もういい」
俯いたフランが唐突にルイオスの言葉を遮った
「もういいよ。お前は分かってない。分かるはずないもんね。黒ウサギがあのコミュニティを何のために支えているのか。あのコミュニティの為にどれだけ悩んでるのか。仲間が売られるって分かった後どれだけ悲しんでたかなんて!」
フランは一度世界の果てで黒ウサギの嘘偽りのない言葉を聞いていた。そしてこの一週間、黒ウサギが部屋で小さな声で泣いていたのをフランは聞いていたのだ。黒ウサギだけじゃない。飛鳥も耀も、当然十六夜もこのゲームの為にどれだけ気合を入れていたかをフランは全部知っているのだ
「……ふん。それでお前は何ができるんだよ。意気込んだって現場は変わらない」
ルイオスは弓を引きしぼり、先程より強く矢を放った
「邪魔」
ギュッとフランが手を握るだけで矢が霧散した
「な、何をした!?」
「これはゲーム。だからホントはやる気はなかったけど、お前は友達を、仲間を傷つけ過ぎたよ」
左の、無事な方の手のひらをルイオスに向けた。そして…
「キュッとしてどかーん!!」
握りしめた
グチュ
「ぁ………ガアアアァァァァ!?!?!?」
潰れた。潰された。右目が潰された!視界が半分消えた。目に激痛が走る。触るとドロリとした感触が指を伝い己の目の惨状を告げた。それと同時に体中に衝撃が走る。空から地に落ちた様だ。
「き、貴様ァァァァァ!!僕の、僕の目がァァァァァ!!」
「……それはレティシアの今まで受けた分。そして」
再び手を握る
グチャ
右腕が壊れた
「それは黒ウサギの分」
握る
グチャ
右足が壊れた
「それは飛鳥の分」
握る
グチュ
左足が壊れた
「それは耀の分」
淡々と、普段の無邪気に笑うフランが嘘のように淡々とルイオスを破壊していく。ゴミを見るような目で、ゴミを潰す様に
「それでもう動けないでしょ。私の分もやりたいけど……もう萎えたし、いいや」
もう見たくないとばかりに僅かに滞空しながら後ろを向き、石化された二人の元へ行こうとする。しかしその後ろ、倒れたルイオスが震える手でギフトカードを出した。そこから現れたのは掌サイズの人の首。ゴーゴンの首のレプリカだった
(喰らえ、クソガキがぁぁぁぁ!!)
ゴーゴンの目をフランに向けてゴーゴンの威光を
「四肢を潰すなら全部潰さないとダメだろ?」
バギャァ!!
「ァッーーーーー」
放とうとしたルイオスの左手を空から落ちてきた十六夜が踏み潰した。その痛みでルイオスは完全に意識を手放した
「十六夜…」
「おう、お疲れ。派手にやったな」
「………十六夜もね」
十六夜の後ろにはまるで潰れたカエルの様になったアルゴールが横たわっていた。十六夜を見ても特に怪我はなさそうなのでほぼ無傷で倒したのだろう
「…よかった。十六夜が無事で」
「当然だ。俺を誰だと思ってやがる。十六夜様だぜ?」
「……うん。そう、だね」
「おいおい、大丈夫か?」
「……ちょっと、ダメっぽい。ねむ、い」
フラッと足から力が抜けて倒れそうになる。それを前から十六夜が受け止めた
「ありがと」
「どーいたしまして。眠いならそのまま寝ちまっていいんだぜ?」
「………うん、ありが、とう。
十六夜…おにい…ちゃ…」
そのまま十六夜の腕の中でフランは眠始めた。最後の方は小さな声になってしまったが耳のいい十六夜にはちゃんと聞こえていた
(お兄ちゃん、ね)
『イザ兄』
《イザ兄》
(へっ、悪くねぇか)
フランを抱え、黒ウサギの元まで歩く
「おい黒ウサギ、勝利宣言はまだか?」
「……はっ!はいな!勝者『ノーネーム』!!」
黒ウサギの宣言で長かったゲームは終焉を迎えた
やっとできたぜお兄ちゃん!
レミリア姉様いつ来るの!?
やばい勉強に手がつかない…