問題児と悪魔の妹が異世界から来るそうですよ?   作:亡き不死鳥

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やばいなぁ、手が進まなくなってきた。
今日は始めて地霊殿EXのこいしクリアしたからテンション上がって書き上げられましたわ
ついでにフランと諏訪子もクリアしてきたのでテンションがやばい
テンションがやばいせいで内容は迷走した




吸血鬼と血と友達と

 

ギフトゲームが終わると居住区画を覆っていた木が役目を終えたかのように霧散していった。それを確認した黒ウサギは一目散に耀達の元に駆け出した。それに十六夜も続く

 

「おいおい黒ウサギ。そんなに慌てる必要あるのか?」

 

「黒ウサギの耳が正しければ耀さんは二回もガルドの攻撃を喰らっています!飛鳥さんとジン坊ちゃんの様子からして死にそうではないにしても安否確認を急がなくては!」

 

館までの真っ直ぐの道を跳ねるように進んでいると、館の方から耀に肩を貸している飛鳥とそれに付き添うジンの姿を視界に捉えた

 

「耀さん!!」

 

「黒ウサギ!手を貸して!春日部さんが急に倒れて…」

 

「わかりました!本拠に治療用のギフトがあるのでそこに運びます!」

 

飛鳥から耀を預かると黒ウサギはノーネームの本拠へ戻って行った。それに飛鳥も続く。十六夜とジンは二人の姿が遠くなると並んでゆっくり歩き出した

 

「おチビ、初めてのゲームはどうだった?」

 

「……僕は何もできませんでした」

 

「そうか。…それで?()()()()はどうする?おチビが嫌だっていうなら辞めてもいいんだぜ?」

 

「…いえ、これ以上黒ウサギに迷惑をかけるわけにはいきませんから」

 

俯きながら、卑屈になりながらも決意を決めた目をジンはしていた。それを横目で確認した十六夜は特に何を言うでも無く黙って歩き続けた

 

「………そういやフランの奴は何処行ったんだ?」

 

☆☆☆

 

フォレス・ガロ居住区画を少し離れた大木の上、そこに二人の少女が座っていた。一人はブスッと顔を膨れさせ、もう一人はそれを見て苦笑を浮かべている

 

「そんな顔をしないでくれ。昨日言っただろう?『お前達の力が見たい』、とな。それに結果としては十分だろう?…まぁ、ガルドでは当て馬にもならなかったがな」

 

「……下手したら耀が大怪我してた」

 

「コミュニティの復興を考えれば軽い方さ。しかしあの娘には驚いた。まさか吸血鬼の力を持っているとはな。……とはいっても所詮は人の身。血の量まではどうにもならなかったようだな」

 

あの後、飛鳥とジンが駆けつけて直ぐに耀が倒れてしまった。目立った怪我は右の掌に火傷の跡が残っていたくらいで他にはなかったにもかかわらず、だ。

 

理由は貧血だった。吸血鬼は血を吸う妖怪。血が力にもなる。しかし耀はあくまで人間だ。流れた血を体内に戻すことは出来ないし、血を吸うわけでもない。そして当然血がなくなれば死ぬ。怪我を治せても不死身というわけではないのだ

 

「まあ今回のゲームでまだまだ伸び代があることはわかった。流石箱庭に呼び出されただけのことはある。あとはもう一人の神格を倒したという少年だが……そちらは私は何も見ていないからなんとも言えないな」

 

「十六夜は強いよ?たぶんノーネームの中では二番目に強い。あ、一番は私ね」

 

「ふふ、そういう負けず嫌いな所は嫌いじゃないよ。……今はここまでにしておこう。夜に黒ウサギの元に行く」

 

バサッ!と羽ばたく音を鳴ると、レティシアの姿はそこから消え去っていた

 

「………」

 

それを横目に、フランも身体を蝙蝠に変えて飛び立ち、大木の上には誰も居なくなった

 

 

☆☆☆

 

 

ノーネームに戻ると十六夜と飛鳥とジンが千人以上もの列を作らせ、ジンが並んだ人々に何かを渡していた

 

「十六夜!何してるの?」

 

「おおフランか。今まで何処にいたんだ?」

 

「木の上でゲームを見てたよ。あ、飛鳥!おめでとう!」

 

「ありがとう。と言っても全部春日部さんがやったようなものだけどね。後で春日部さんの所にも行ってあげてね」

 

「うん!あ、それで結局何をしてるの?」

 

未だ数百に及ぶ群衆に目を移す。ある者は狂喜して踊り回り、またある者は旗を掲げて走り回り、さらにある者に至っては誰かの名を呼びながら泣き崩れていた

 

「そうだな、簡単に言えば地盤作りってとこか」

 

「地盤?」

 

「そうだ。見ろよ、コミュニティの名と旗が返って来たら一様にあの反応だ。どうやらこの箱庭って場所では名と旗は相当の影響力を持つ」

 

「それで十六夜君は他のコミュニティに借りを作っておこうってこと?」

 

「それもある。だがそれよりも俺達のメリットになる事がある。『ノーネーム』では限りなく得る事が難しい物がな。なんだか分かるか?」

 

十六夜の問いに飛鳥とフランは首を傾げ考え込む。十六夜の試すような目線を浴びながら二人は頭を悩ませる。そして頭にはてなを浮かべつつもフランが答えた

 

「信頼?」

 

「まあまあな答えだ。いいか?俺達の目標は魔王を倒して名と旗を奪い返すことだ。それに必要なのはまず人材だ。流石に俺並みとは言わないが俺の足元並みは欲しい」

 

「でもそれならそのままあの人達を傘下に入れれば良いのではなくて?」

 

「俺達が名と旗がある普通のコミュニティだったらそれでもよかったんだが……箱庭でのノーネームってのは相当立場が悪い。それの下に入れられると分かればなんて言われるか分からないからな。そんな反対勢力を傘下に加えるくらいならお嬢様が言ったように借りが作れるこっちの方がマシだ」

 

「うーん?それで人材が欲しいのと旗を返すのとどんな関係があるの?」

 

「お前達には話してなかったが、俺は昨日の夜におチビを象徴として『打倒魔王』のコミュニティを作ると広めさせた。名も旗も無いならリーダーの名を売り込むしかないからな」

 

「あ、それで他の魔王を倒したがってる人達が接触してくるかもしれないからその人達を仲間にってことか!」

 

「お、冴えてるな。それに打倒魔王なら本命以外の魔王も引っかかる。そして魔王を倒しゃあ隷属もさせられるって話しだ。魔王を隷属させてさらに強い奴等に挑む。それが今んとこ一番早くコミュニティを大きくする方法だ」

 

そう十六夜は断言した。話を聞いていた二人も納得できるこれからのノーネームの進路だった。しかし今まで十六夜の自由奔放な所ばかり見ていた飛鳥はかなり驚いた様子で呟いた

 

「十六夜君って結構頭脳派?」

 

「おいおい、俺は元から頭脳派だぜ?」

 

「行動もそれっぽくしてくれると嬉しいのだけどね…」

 

そのまま談笑しているとジンが旗を全て返し終わった。それを確認すると十六夜はジンの隣へ立ち、高らかに声を上げた

 

「皆にいくつか頼みがある!お前達の旗を取り戻したのはこのジン=ラッセル率いる“ノーネーム”であることを。そして……ジン=ラッセルが“打倒魔王”を掲げたコミュニティであることも覚えておいてくれ!」

 

まるで群衆の心に訴えかけるような声色で話す十六夜に飛鳥とフランは笑いを堪えていた。だがフランは他の事も考えていた。十六夜が“欲しいのは人材だ”と言っていた。ならば、レティシアは最適なのではないだろうか?自分は敵だと言っていたがフランの考えではレティシアの行動は間違いなく味方の行為だ。それに、戦ってみたがあれで本気というわけでもなさそうだった。元メンバーとも言っていたし十分協力も仰げそうだった

 

(今夜来たら誘ってみよう)

 

レティシアの事情を知らないフランは心の中でそう決意するのだった。そう出来るのならレティシアがしない訳が無いということに考えが及ばないまま…

 

☆☆☆

 

 

ノーネーム本拠、その一室。そこのベッドには先程までフォレス・ガロのリーダーのガルドと闘っていた春日部耀が寝かせられていた

 

 

「……知らない天井だ」

 

 

嘘である。耀が寝かせられていたのは耀自身の部屋なので昨日の晩にも同じ天井を見た事がある。ただなんとなく言いたくなったのだ

 

「耀さん起きましたか!急に倒れたと聞いたので心配しましたよ!」

 

寝たまま横を向くと黒ウサギが顔を覗き込んでいた。胸を撫で下ろし安心した様子をみると心配させた罪悪感が僅かに芽生えてきた。しかし黒ウサギも気になるが耀は自分が何故倒れたのかが気になった。傷は治した。今も特に痛みは感じられない。それなのに何故自分は気を失ったのか…

 

「私…なんで倒れたのかな?」

 

「貧血だったようです。血を流し過ぎたのでしょう」

 

「…そっか」

 

寝ていた体を起こそうとする。しかしクラッと体の力が抜けて再びベッドへ突っ伏してしまった。

 

「……起き上がれない」

 

「増血のギフトを施したので、しばらくは動き辛いと思いますよ?」

 

「先に言って」

 

顔をベッドに埋めてしまいモゴモゴ言っていた耀を寝やすい体制に戻した。

 

「ねぇ黒ウサギ。みんなはどうしてるか分かる?」

 

「はいな。十六夜さんとジン坊ちゃんはなんでもコミュニティのために一芝居打ってくるといってフォレス・ガロの傘下コミュニティの方々の元へ。飛鳥さんも少し前に十六夜さん達を見てくると言って出て行きました。フランちゃんは……」

 

「よーーーうーーー!!!」

 

…わかりません。と黒ウサギがいう前に勢いよく扉が開かれた。パタパタと翼を揺らしながら話題に上がっていたフランが飛び込んできた

 

「あ!耀起きたんだ!大丈夫?痛い所ない?」

 

「大丈夫、問題ない」

 

「そっか!」

 

「あ、ダメですよフランちゃん!耀さんは病人なんですから抱きついたりは禁止です!」

 

「は〜い」

 

黒ウサギのいう事を聞き、今度はゆっくり耀のベッドに近づく。少し顔色が悪いが大事にならなくて安心した。それでも友達がベッドに横たわっているのを見て良い感情は起きない。力を持っていても、どんなに余裕な振る舞いをしていても、やっぱり人間なんだから。無茶はしないで欲しい。

 

「もう、本当に気をつけてね?人間は私達妖怪と違って脆いし弱いんだから。それこそ血が沢山出たってだけでもね。

 

ベッドの端に座り耀の髪をゆっくり撫でる。フランは吸血鬼だ。耀の血の量はなんとなくだが把握出来る。なのでゲーム終盤の耀がいかに危険かが分かった。レティシアが居なかったらゲーム中に飛び込んでたかもしれない。もちろんそんな事すれば誰も喜ばないことは分かってる。でも、それでも…

 

「……フラン」

 

考え込んでいたら耀がジッと私を見つめている。それがなんだか照れくさくて目を逸らした

 

「…えと、今まで友達がいなかったからどうすればいいかよくわからないけど……心配かけてごめんなさい。これからはフランに……友達にもっと頼るようにするよ」

 

言っている耀も途中から目を逸らし照れくさそうにフランに告げた。部屋に漂う何とも言えない空気に耐えきれずに黒ウサギは部屋から出て行った

 

「〜〜〜!うん!絶対だよ!それに耀にはお姉様にも紹介するんだから思い出いっぱいつくるんだから!あ、今度一緒にギフトゲームに出ようよ!それもお姉様に自慢してやるんだ!ね、約束!」

 

「うん。約束」

 

「やたー!」

 

赤くなった顔色を振り払うように元気に語りかける。耀もそれに嬉しそうに応えた。フランは耀に抱きつきそうになるのを堪えて一旦ベッドから降りる。そして掛け布団から出ていた唯一包帯を巻かれている右手に視線がいった

 

「……そっか。銀の剣を触っちゃったんだっけ」

 

そう言うとフランは結んであった包帯をほどき始めた

 

「?何をするの?」

 

「この火傷、痛いでしょ?だから治そうと思って」

 

「これって治せるの?吸血鬼のギフトを使っても全く治らないから治らないものなんだと思ってた」

 

「魔力が強い吸血鬼なら銀もあまり効かないんだけど、耀は魔力が少ないから普通の吸血鬼よりも弱点に弱いんだよ。だから外から魔力を与えることで吸血鬼同士の傷を治せる……ってお姉様が言ってた。あ、吸血鬼化して」

 

「分かった」

 

包帯をほどくと赤くなった火傷が目に入る。手を持ち上げそこに顔を近づけて行く。そして火傷に……舌を這わせた

 

「……ペロッ……ん…」

 

「!?」

 

ビクンッと一瞬身体を震わせるもフランがそのまま続けているので何もせずにジッとしていた。何かしようにも身体がうまく動かないのもあるが…

 

掌を上から下まで余すところなく舐められる。ざらっとした舌触りが猫に似てるな〜なんて現実逃避をしながら耀はフランが舐め終わるのを待った

 

「……よし、終わり!」

 

舐め終わったフランはどこか達成感を感じているらしい。傷が無くなっているのは分かるが、こっちは掌に残る生温かさがなんとも言えない羞恥心を掻き立てている

 

「……フラン、さっきのやり方もお姉様に習ったの?」

 

「え、そうだけど。まだ小さい頃にお姉様がこうやってやるんだって教えてくれたんだよ。『魔力を分け与えるには血か唾液が適しているわ。そして私は血か唾液なら唾液がいいわね』って言って。たまに傷の舐め合いっこしたんだー。懐かしいなぁ〜」

 

(………フランの姉の認識を少し改めた方がいい気がする。最低でもシスコン。変態以上だったら……私がフランを守らないと……)

 

人知れずそんなことを決心していると、バキャァ!と何かが壊されるような音が聞こえた

 

「今の音……なに?」

 

「ちょっと見てくる!」

 

耀は弾かれるように部屋から出るフランの後ろ姿を見送った。その後さっきまでの自分達の行動を再認識すると、赤くなって布団に潜り込んだ

 

 

 

 

 

一方フランは耀の部屋から一直線に玄関まで走っていた。何か胸騒ぎがする。そんな根拠もないことだが、フランは吸血鬼の出せる力を使い走った後に残像が残るくらいのスピードを出していた。なので直ぐに目的地に着き、扉を開け放つ

 

「なっ!?」

 

扉を開けた瞬間フランの視界を褐色の光が包んだ。その光はノーネーム本拠の直ぐ前に落ちた。光が消えた後光の落ちた先には……

 

 

 

 

()()()()レティシアの姿があった

 




一応言っておく。
百合ルートはないよ
というより恋愛はない

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