それでは、どうぞ!
賢治side
おいおい、大人しく後ろを付いていったはいいが、そのまま人間ドック並の身体検査ってどういうことだよ。
あいつらは身体検査だっつってたけど献血やら何やら精密検査並みの量をこなされたんですけど…何で同じ事を二回も受けなきゃならないのよ。別の意味で疲れたぜ。
おまけに指紋まで採られちゃったし…何かトラブルに巻き込まれる予感がするなぁ。
「はぁ…なんかエレェ目にあったぜ」
「はは、お疲れさん」
「流石にいくら鍛えてるからって、この疲れは効くぜ…」
先程門番に食って掛かっていた二人の女兵士…ここでは衛士か。
その二人に前後を挟まれて道案内を受けながら俺達はさっきまで受けていた
通算
<プシューーー>
「やっと来たのね。随分掛かっていたじゃない。検査はどうだったかしら?」
「ええ、鍛えては居ますがさすがに参っちゃいましたよ。まぁ、おかげでゆっくりと考えを纏める事が出来ましたけどね」
炭酸の抜ける音と共に扉が開き、香月博士の執務室に到着した俺達一行。
博士の隣には金髪の外国美人が控えていた。
前に居る衛士二人は敬礼をしてロングヘアの衛士が俺の後ろに、もう一人の肩までのウェーブが掛かってるのが武の後ろに移動した。
てか、部屋散らかり過ぎだって。
書類は床に散らばってるしソファーの上は毛布が畳まれず放置しっぱなしだし、汚いのなんの足の踏み入ればが少ない。
…ありゃ? いつの間にか護衛の二人と外人さんが外に下がらされたぞ?
でも気配は扉の向こうで動いてないから外で指示があるまで待機か。
話し全く聞いてなかったからなんか言われるかと思ったけど、武がやってくれてるし、俺は傍観でいいかな。
「その理論は根本から違うので、永遠に完成しませんよ」
ん? いつの間にか『量子電導脳』についての話に移っているなぁ。
そういえば、エンペラー艦にいた時に武が早乙女博士に聞いてたなぁ。早乙女博士はその場で理論数式をさらさらと書いてたけど…流石ゲッター線を研究している人だよ。
武はそれを見てプッチョの顔になってたから俺を含めて全員爆笑してたな。懐かしいなァ…
「んな、なんですってぇーーーー!!?」
クォォォオオオオッ!? な、何だいきなり!? 耳がぁぁぁぁああ!!?
武side
夕呼先生の執務室に着いて俺はオルタネイティブⅣとⅤの事を遠まわしに投げ掛けると、先生はそれに即座に気付き、三人を外に下がらせた。
その時、一応霞に俺達にリーディングをさせないよう頼んだ。
させると十中八九、霞が倒れる可能性が高い様な世界で戦いを俺達はしていたからな。
「…それなら安心しなさい、社が私に言ったわ。『二人は絶対に嘘をつきません』ってキッパリとね」
なんと…本当に霞なのかと疑うぞこれは…
その疑問は後回しにし、理論が根本的に違うことを指摘すると先生は案の定、大声で叫んだ。
叫ぶのを前回で経験した為、指摘した直後に俺は耳を塞いだからダメージは軽い。
…しまった、賢治に先生が叫ぶって言うのを忘れてたからモロあの大音量を食らってるよ…
あいつ五感が人並みを軽く超えてるからこの大音量はキツそうだなぁ。
耳押さえてシャウトしてるような顔になってるし。
「ふ、副司令どうしましたか!?」
「貴様等、副司令に何を!!」
「「おっと」」
―――ヒョイ
「「な!?」」
その叫び声を聞いて外で待機していた二人が入ってきて俺達を拘束しようと飛び掛かってきたけど、前の世界で身に染みた癖でつい避けてしまった。
賢治も痛みが緩んだのか余裕を持って避けた。
避けられた二人は体勢を立て直そうとするが―――――――
―――ツルッ
「「ふぎゃっ!?」」
「「あ…」」
床に散らばってる書類に着地してしまい、その勢いのままズザーーっと仕事机まで可愛くダイブしてお尻を突き出すような体勢になった。
何て可愛い悲鳴…普段から厳しい自分を創り、プライベートであっても絶対に上げないような悲鳴を上げている姿を見れて…俺、ちょっと得したかも。
「き、貴様等! 副司令に何をした!」
「御無事ですか!?」
いやいや御二人とも、そんな、鼻を押さえながら顔を赤くして威嚇しても今更遅いし全然怖くないですよ?
ほら、後ろの先生なんかさっきまでの怒りは何処に行ったのか、腹抱えて笑ってますよ?
…あれ、そういえば霞はどこに…ああそっか、隣の研究室か。
「ところでよぉ、俺達の武器は何時帰ってくるんだ?」
俺達はこの世界の住人ではないことや、理論のこと粗方説明し終わり、俺達の武器の事になった。
忘れちゃいけない、大人しくついて行く時に俺達の武器は没収されたのだ。
見た目はなんとも無い…ってわけじゃないけど、形状の斧と戦斧の解析をすれば多分何処から来たのかの
といっても、俺達が目を覚ました時には部屋の扉に寄り掛かってたからわからないんだけど。
「ああはいはい、それなら後であんた達に返すから、その間大人しくしてなさい。ピアティフ~、この二人を適当に案内してあげなさい」
「ほいほい。ほんじゃま、案内よろしく~」
「はい、ではこちらへ」
…お前は本当に
下手したら殿下の御前でもこのままな気がする…
クーデターが起きなければその機会はないけど、その時はマジで勘弁してくれよ?
まりもside
不覚…あまりにも不覚だったわ。あの二人は無警戒で立っていたのに軽々と避けられた。
何なのあの二人は…後ろに目が付いている様な動きをしていたわよ!?
「副司令、あの者達は一体何者なんですか?」
「あ~、あいつ等は私の特殊任務に付いていた連中よ。まぁ、いつの間にか外見が逞しくなって帰ってきたから私も気が付かなかったわ」
それだけで説明が付くかしら?
でもこれから先は恐らく【Need to know】の領域に入るだろうから詳しく聞くのは出来ないだろうし…
―――プシューッ
二人の案内に出ていたピアティフ中尉が数枚の書類を持って戻ってきた。
あら? 顔が若干引き攣っているけど…
「…副司令、あの二名の検査結果が出ました」
「あら、もう出たの? どれどれ…」
夕呼はピアティフ少尉の表情に気付かずに書類を受け取って読みはじめた。
読み進めて行くと次第に夕呼は目を徐々に広げていき、ワナワナと肩が震えだした。
ゆ、夕呼、どうしたのかしら?
「…ピアティフ、これは検査ミスでは…ないのね?」
「はい…検査に使用した機械は昨日、丁度点検が終了していて、検査も二回行ったので間違いはないと、医師達は…」
な、何があったのかしら? 二回? 次第に夕呼の顔が赤く怒っていってるんだけど…
「これは一体何の冗談よ!!」
夕呼が机に叩き付けた書類は伊隅大尉の足元にまで滑り落ちた。それを伊隅大尉が拾い上げたので、私も横から失礼して書類に目を落としたのだけど…見なければよかった…
二人の身体能力値は普段から鍛えている衛士達の最低値でも細胞の単位から二倍はあった。
そして、黒崎という男は白銀という男よりも数段値が高いって…そう、それでマシンガンの弾を素手で掴めたのね。
もう…この二人は人間なの?
「こ…これは、一体…?」
「…ゆ、夕呼…あの二人は一体…?」
あまりの内容に思わず素の口調に戻ってしまったまりもと上官がいるにも関わらず姿勢を崩して閉まった伊隅。
しかし、それを指摘する人間は誰も居なかった。
―――――研究室―――――
場所は変わり、執務室の隣の研究室。
入って直ぐ目に入るのは、部屋の中央に立つ大きいシリンダー。
そしてその中には何故か人間の脳髄が入っていた。
そのシリンダーと向かい合うように、社 霞が立っている。
「…鑑さん、タケルさんが…
霞が脳髄…鑑
しかし、それでも霞は語り続ける。
「…タケルさんは、強くなっています。それに、タケルさんの
霞はシリンダーに近付き、そっと両手を添えた。
「もう、貴方達にあんな結末を選ばせはしません」
普段の彼女を知る者が見れば、誰もが驚くだろう。
今この時の瞳と言葉に、強い意志が篭っているのだから。
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