Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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連続投稿です!


第二話

夕呼side

 

 

 

 

 ついさっき、門番から私に会いたいと言う青年が二人いると連絡があった。

 私は年上以外は守備範囲外だからそんな知り合いなどいないから追い返せと言おうとしたけど、門番が私に伝えてきた言葉を聴いて世界が止まった気がした。

 

 

『半導体150億個を手のひらサイズにする方法を見つけてきた』

 

 

 私が独自に研究している理論は誰にも言っていない。

 知っているのは社だけ…にも関わらず、知らない奴等が知っているなんて…

 只でさえ米国のことで頭が痛いのにこれ以上余計な厄介ごとを持ってこないで欲しいわ…

 通信を切って頭を抱えている私のところに、ロングスカートの国連服を着用し、長い銀髪を後ろに二つ結った少女『社』が無言で近付いてきて私の服を掴んだ。

 

 

「社? どうしたのあんた?」

 

「…迎えに、行きましょう」

 

 

 珍しい…普段から『自分』を出さない社が自分から誘うなんて。

 それに、迎えに行く?

 どういうことかしら?

 

 

「迎えにってあんた…今、門にいるわけの分からない奴等を?」

 

 

 私の問いに社は服を掴んだままコクっと頷く。

 

 

「…鑑さんが、ずっと言ってる『タケルチャン』と、お友達が来ています」 

 

 

 …私の計画の要となる00ユニットとして脳髄だけとなったアレ(・・)のことね。

 横浜基地を建設する際に地下深くで見つけた脳髄…アレを社がリーディングした時にわかったことは、『タケルチャンに会いたい』だけ…

 調査した結果、BETAによる横浜強襲で死亡した『鑑 純夏』の幼なじみである『白銀 武』と推測されたわ。

 社は無言で私の裾をグイグイと強く引っ張っているし…そうね、息抜きに外に出るのも悪くないし、何より霞がこんなにも意思表示しているんだから、無下には出来ないわ。

 

 

「わかったわよ、行くからそんなに引っ張らないで」

 

 

 執務室から霞を連れて地上へとエレベーターに向かった。

 すると途中でまりもと伊隅に会った。

 二人はどうやら門番からの連絡を受けて上へ向かう途中のようなので、私達も同行することにした。

 危険だと私達を引き止めようとしていたけど、二人が私達の護衛に付けば万事解決と説き伏せて終了。

 私に弁論で勝とうなんて、天地がひっくり返っても出来るわけ無いのに。

 さてと、私の独自の研究を知っておきながらノコノコとやってきた二人組の顔を拝見しようかと門へと到着すると同時に、門番の一人がマシンガンを相手に向けて発砲した。

 それも、全弾。

 その影響で砂煙が大きく立ち上り、門番の撃った先が見えなくなっていた。

 

 

「き、貴様等! 威嚇ではなく発砲するとはどういうことだ!!?」

 

「あ、ああぁ……」

 

 

 まりもと伊隅は一瞬唖然としていたけど直ぐに復帰し、門番に食って掛かって行ったけど、当事者は自分が発砲したことにうろたえている…

 でも、全弾撃ってしまったし、相手も動いてなかったから死んだも同然ね。

 残念ねぇ、霞が会いたがっていたウチの一人がここで死んでしまったなんて―――――

 

 

 

 

 

 ―――――危ねぇな…銃の構え方ぐらいは訓練で身につけてんだろうが?

 

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

 う…嘘でしょ?

 有り得ないことに砂煙が晴れていき、その中からジャラジャラと弾丸を片手で弄る男の姿が悠然と現れた。

 

 

 

 

武side

 

 

 

 

 門番の一人がマシンガンを撃ったまま固まっているところに、まりもちゃんが突然撃った門番に食ってかかっていったけど、砂煙の中から聞こえた声に霞以外が固まった。

 そりゃあねぇ、銃弾の雨を人間に浴びせたと思いきや寧ろ掴んでた(・・・・)んだから、誰でもびっくりするさ。

 あいつに世界の法則っていうのが通じるのかどうか先生に調べて貰おうか…俺も人のこと言えないか。

 まぁ、昔の俺なら目の前で起こったことに恐らく唖然としていただろうけど、賢治相手なら何の心配も要らない。

 え? 何でかって?

 だって俺達は人間相手(・・・・)に遅れを取るようじゃ生き残れない世界で戦い続けてきたんだ。

 正確に言うならBETAよりも厄介なインベーダーと戦って来たからマシンガンの弾はギリギリ避けられるかな。

 銃弾を掴める賢治は規格外なだけだよ…ん?

 あれは…

 

 

「夕呼先生…」

 

 

 少し離れた所で夕呼先生と霞がこっちを見ていた。

 まりもちゃんに伊隅大尉…懐かしい顔だ…でも『前回』の時は護衛なんて付けてなかったのに、何でだ?

 ここに来るのが俺だけじゃなく二人になったから付けて来たのか?

 まぁその辺はどうでもいい…のか?

 さて、そろそろ固まったままの先生達の所に行くかな。

 

 

<ザッ>

 

 

「夕呼先生、お久しぶりですね」

 

「っ!? 何、あたしは教え子なんて持った覚えは無いわよ?」

 

「「…」」

 

 

 はは、さすがに賢治の神業を見てからじゃぁ復帰は遅れるよな。

 まりもちゃんと伊隅大尉は未だに顎が外れるぐらい口をあけて銃弾を弄ってる賢治を凝視見てるし。

 本当…帰ってきたんだな、俺は。

 でも、霞だけはまるで賢治が無事なのを分かっていたかの様にいる…賢治を知っているのか?

 霞が視線を俺の後ろに移したのを追うと、丁度賢治がこっちにやって来た。

 

 

 

「初めまして…だね。俺は白銀 武。こっちが俺の親友の黒崎 賢治だ」

 

「初めまして、黒崎 賢治だ。よろしくな」

 

「…初めまして、社 霞です」

 

 

 っ!? か、霞がこの時期で自分から自己紹介をするなんて…いったい、いったい何があったんだ!?

 

 

「博士、行きましょう」

 

 

 霞が先生を促してる!? いつの間に霞がこんなに成長したんだ!?

 

 

「…ッえ、えぇそうね。付いて来なさい」

 

 

 あ、あれ~…なんか、先生が大人しい…不気味なぐらい大人しいんですけど?

 もしかして、賢治の常識を覆す場面を見たから?

 伊隅大尉とまりもちゃんは賢治を異様に警戒してるし…仕方ないよね、全弾掴み取ったんだし。

 先生達の後ろを大人しく付いて行く俺達…あぁ、これから3時間に及ぶ身体検査か…鬱だ。

 

 

 




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