Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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年内最後の更新です!

それでは、どうぞ!


第十八話

―――執務室―――

 

 

 

 

「それで、結果の方はどうだ?」

 

「上々よ。いいえ、寧ろ怖いぐらいの出来だわ」

 

 

 昨日の模擬戦により、俺と武の大乱闘でボロボロになった撃震改と仮称『不知火改』。

 今回の模擬戦は本来、撃震改の性能をテストする為だったのだが、不都合が起きた時の為にもう一機だけ撃震改を予備として改造しておいたのが功を成したようだ。

 いやぁ、まさか実験初日で二機をスクラップにしてしまうとは思わなかった。

 

 

「まりもも絶賛していたわよ。アタシと話す時に周りの目が有る場合は敬語を使う筈なのに素で話すほどね」

 

「そうかいそうかい、それは造った甲斐ががあったってもんだ」

 

 

 武から撃震使い(マイスター)と言われているまりもちゃんが絶賛か。

 これは間違いなく改良成功だな。

 まりもちゃんのプロフィールにはオールラウンダーではあるが近接寄りと書かれており、あの撃震改は丁度近接型装備と近接型OSだからまりもちゃんにはドンピシャだった。

 加えて今まで出来なかった動きが出来てかつ、操縦している時に感じる機体のディレイ(・・・・)が無くなって動きやすいとのご評判を受けた。

 なら後は実戦配備だが、早速帝国に売るか…って、武がクーデターを起こすのは帝国軍だって言ってたから無理か…

 実際に目にしていないから納得というか、理解できないけど聞く限りこの世界の日本はやたら島国根性が強いらしく、お手上げだと武は言っていた…大丈夫かこの世界?

 なら今は、シミュレーターに撃震改のデータを反映させて、極一部の部隊に配備させるしかないか。

 さて、あとは狙撃型と中距離型なんだが…ん~、中距離は伊隅、狙撃を…柏木にテストさせるか?

 …いまいちパッとしないな。

 俺と武がやってもいいが、やっぱり戦術機を扱う人間の視点でやらないと色々と問題が生じるし、何より他の奴が機体に更に振り回されるようになるかもしれない。

 俺は当然として、武も既にゲッターの操縦が身に染みちゃってるし、博士に選定してもらうかなぁ。

 

 

「残り二つの装備と各武器はどうなの?」

 

「流石に今のここでは無理だ。ツギハギの武器は絶対に使い物にならんし、装備ならテストを繰り返さないといけないが、ここにはそんな場所はない」

 

 

 耐熱、耐衝撃等、明らかにここに導入されてる機材じゃ造れないし、弄くろうにも資材が少な過ぎる…ふ~、どうしたもんかなぁ。

 この世界の米国のやり方は気に食わんから、スパイだらけであろう国連技術廠はあまり使用したくない…かと言って俺は国連軍所属になってるから帝国技術廠に行けば確実に門前払い…

 

 

「はぁ…」

 

「な~によ急に溜息なんかついてくれちゃって?」

 

「なに、いきなり国連軍技術廠に行って武器を造れば間違いなく米国が介入して来るし、かと言って帝國技術廠で造らせてくれって言っても、両国のいさかいで国連の俺は門前払いがオチだと思ってな…厄介な事だ」

 

「当たり前でしょ? 日本にBETAが上陸した際、米国が一方的に条約破棄して帝國軍と斯衛軍に大打撃。更に明星作戦の際には参戦した各国に無伝達でG弾二発の投下して大東亜連合と共に帝國はG弾に巻き込まれて更に大打撃。横浜は不毛の地と化し、国連軍はそれ以降、米国の隠れ藁と成り下がって米国の犬と言われるぐらいだからね~。もっとも、ここ横浜にはアタシ、オルタネイティブ4主導のアタシがいるから、アンタの技術を見て強引に引き抜くなんてバカはしてこないだろうけど、何かしらの邪魔はしてくるわね」

 

「アンタ、オルタネイティブ4の主導者なんだろ? 帝国と何とかならねえのか?」

 

「愚問ね、アタシの通り名は既に知ってるでしょ?」

 

 

 横浜の魔女…女狐とも言われてるって武から聞いたな。

 かなり強引な手口で帝国から不知火と吹雪を奪ったみたいだし、同じ日本人でも帝国とは考えが合わないから国連に……うん、何この人。

 何処に行ってもいい印象は無いわ。

 

 

「第一に、根回しするアタシが面倒臭いじゃない」

 

「アンタの本音はそっちだろうがッ! 回りくどい言い方しよってからに!」

 

 

 ちくしょう、このままだったら何も進展…するっちゃするが進展が遅くなる。

 しかも博士は俺の顔を見て嫌~なニヤニヤ顔をしてるし…俺で遊んでるなこの人…

 

 

「どうすっかなぁ…」

 

「―――博士」

 

「ん?」

 

「ん? 霞ちゃん?」

 

 

 副指令の後ろからひょっこりと霞ちゃんが現れた。

 トレードマークのうさ耳アンテナは普通に横に垂れているが、表情は少し悲しそうだ。

 

 

「賢治さんを、虐めないで下さい」

 

「何よ社、アタシが何時こいつを虐めたってゆーのよ?」

 

 

 明らかに俺を虐めていたよね?

 これ、俺間違ってないよね?

 

 

「………」

 

「………~~~、わかった、わかったわよ、やればいいんでしょやれば!」

 

 

 おおッ!? 霞ちゃんのウルウル攻撃が博士に効いた!?

 なんて事だ、横浜の魔女と言われている博士をウサギの如く可憐な一人の少女が負かした!?

 霞ちゃんはさっきとは一変して無表情になってウサ耳がピョコピョコとワイパーの様に動いているから、喜んでるのかな?

 

 

「はぁ、もういいわ。アタシが根回ししといて上げるから、アンタは戻って設計図を決めときなさい」

 

「了解、コンタクトを取ったらどれぐらいで行けそうだ?」

 

「さぁ? でも、向こうも開発に行き詰まってXFJ計画に乗り出すぐらいだから、アタシからコンタクトを取ったら早い段階で連絡が来るんじゃないの?」

 

「おお、感謝感激雨(あられ)

 

「喧嘩売ってるのかしら、アンタ?」

 

 

 おおう、早い事設計図の整理をする為に退散しよう…っと、その前に。

 

 

「ありがとね、霞ちゃん」

 

 

<ナデナデ>

 

 

「………♪」

 

 

『―――――ッ!!』

 

 

「ッ!?」

 

 

 ん? 霞ちゃん、気持ち良さそうにしていたのにいきなり目を見開いちゃったんだけど…?

 

 

「―――さっさと行けぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 ―――ドドドドドドドドドドドッ!

 

 

「のののののののののののッ!!?」

 

 

 霞ちゃんの頭を撫でていたら博士が両手を白衣の中の後ろ腰に突っ込み、どこに違和感無く収納していたのか、片手で扱えるマシンガン『G3 sas HC』を二丁、俺に遠慮なくぶっ放してきた。

 俺は全て避けて文句を言おうとしたがそれ以上に博士の顔が怖かったので即効で退散した。

 直ぐ横に霞ちゃんがいるのになんてモンぶっ放してんだよ…ッてぬぉ!? 貫通!? ドア閉まっても撃つのかあの人はぁぁぁぁぁ!!?

 

 

「まったくッ、やっと行ったわねあいつは……あら、何固まってるのよ社?」

 

「(また、私が見えたビジョン…)」

 

 

『――――こっちだ!!』

 

 

「(黒崎さん…)」

 

 

『――――ここなら、もういいだろ、―――!?』

 

 

「(いったい…どれだけ苦しい思いをしてきたのですか…?)」

 

 

『――――冴子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 

「(もう…)」

 

 

『――――ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 

「(背負い込まないで下さい……)」

 

「社……?」

 

 

 

 

武side

 

 

 

 

「よし、今日はここまでとする! 各自、明日の講義までにレポートを纏めて提出すること! 解散!」

 

『『ありがとうございました!』』

 

 

 

 ―――ザッ!

 

 

 

 今日一日、冥夜達207分隊の訓練を賢治から任された俺。

 たま達の訓練は俺じゃ役不足だと賢治に言ったけど、射撃訓練と基礎体力付けだけと言われたから渋々と受けた。

 チラッと見れば走ったり

 

 

「中佐ッ」

 

「ん? 珠瀬にい…榊か」

 

 

 たまと委員長が基地内に戻らず、俺の所にやって来た。

 

 

「(い?)あの、私達は次の段階にまで後、どれぐらい掛かるんでしょうか?」

 

「えッ?」

 

「私と珠瀬は、初日からずっと射撃訓練と基礎体力付けばかりでして。黒崎中佐は、初日の時以来こちらにいらしておられませんし…」

 

 

 たまと委員長が眉を落としながら俺に言ってきた。

 賢治め…委員長とたまに悲しそうな顔をさせやがって…ッ許さん!

 

 

「(ち、ちずるさぁ~んッやっぱり聞いちゃ駄目だったのかなぁ? 中佐が怖いよ~~)」

 

「(そ、そうだったみたいね。まだ三日だけしか経っていないのにこんな疑問を聞いたのに怒ったのかしらッ?)」

 

「―――あ~、危うく蜂の巣になるところだったぜ。ようお前ら…何殺気立ってんだ武?」

 

「賢ンンン治ィィィィィィ!! お前自分の担当訓練生ほっぽっといて何してんだクルァァァァァ!!」

 

「おい、お前ドンドンキャラ崩壊してねぇか?」

 

 

 メタ発言してんじゃねぇ! たまに加えて委員長にまで悲しい顔させやがってこの野郎がぁぁぁ!!

 

 

「あ~成る程、そういえばお前達に新しいステップまで教えてなかったなぁ、すまんすまん。ん~…クールダウンはしたか?」

 

「は、はいッ、初日に教えられた通りの方法でッ」

 

「そうか。よし、なら今から射撃場に行くか」

 

「え、今からですか?」

 

「お前達、これからシャワー浴びて飯だろ? 何、身体がほぐれている今が一番実力が出せる時なんだ。お前達の射撃の技術がどれだけ上がったか、見せてもらうぞ」

 

 

 さあいくぞ~、と賢治は先を歩いて行った。

 たまと委員長は顔を見合わせてから賢治の後ろを付いていき、彩峰と冥夜も興味を持ったようでその後ろに付いていった。

 はぁ、忙しいのは分かるが、もうちっと真面目に教授しろよ賢治。

 いや、賢治のことだ…何か考えがあるのか?

 無かったら【継牙・双針乱舞】だ。

 

 

 

 

―――射撃場―――

 

 

 

 

 さて、賢治の後について行って射撃場にやって来た俺達。

 たまと委員長はゴーグルとヘッドフォンを装着して賢治の前にいる。

 

 

「さて、お前達の腕がどれだけ上達したのか見せてもらう。方法は簡単だ」

 

 

 賢治は弾の入ってるケースから弾を二つ取って二人の前にかざす。

 

 

「弾は一発。この一発をど真ん中狙って撃つ。それだけだ。その結果を見て、俺は次のステップに行けるか判断する」

 

「「え!?」」

 

 

 賢治がいきなりこんな難題を振りかけるか…成る程、賢治はこの為に3日間も二人を放置していたのか。

 

 

「中佐、それは無「待て、御剣」――中佐ッ?」

 

「賢治は自分が教えた教え子に実力以上のことは絶対に求めない。黙って見ていろ」

 

「……ッ……」

 

 

 賢治が色々と仕事をしている時は基本、俺は賢治に何か言われない限りフリーだから、冥夜達になるべく接触している。

 模擬戦をする日の朝、教室で委員長と彩峰が前の世界同様、チームワークのことで喧嘩をしていた。

 何故チームワークを乱すのかと委員長が、どうせ言っても分からないと彩峰は、冥夜は我関せぬで無視、たまは自分の言い分は通らないと諦め状態だった。

 二回とも俺が介入する前はあんな状態だったから思わず笑っちまった。

 そこで俺がハッパをかけて、お互いの壁を無くす…までは行かなかったけど薄くはなった。

 流石に無くすということは、自分が誰の子であるかというのまで把握することになるから、危険区域までのプライバシー以外は広げるぐらいにはなった。

 ここまで早く打ち解け様にになったのは、心のどこかでは分かり合いたいという思いがあったからだろう。

 でなければ今まで興味を持たなかったのを持つようになったり、今の賢治の試練に意見を言おうとしないさ。

 

 

「な~に、お前達はいつも通りにやればいい。俺は離れて見ているから、始めるのは自分のタイミングでいいぞ?」

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

 三日、たった三日だけの訓練では成長幅は高が知れている。

 だが、こいつらは過去に武と共に戦った仲間であり、実際センスもいい。

 もしかしたらこの三日間で何かを会得しているのかもしれない。

 それは、こいつらの成果を見てから判断しよう。

 二人は戸惑いながらも俺から弾を一つずつ取り、射的の位置に向かう。

 テーブルの上に置かれている自分の銃のマガジンに弾をセットしてノックし、右腰のホルスターに銃収納して二人は眼を閉じ、神経を落ち着か、研ぎ澄ませる。

 

 

「「…――――行きます」」

 

 

 二人の雰囲気が変わったのを俺は感じた。

 さあ見せてもらおうか、お前達の三日間の訓練成果を。

 

 

 

<プップップッ・プァーーーン!>

 

 

 開始の合図―――

 

 

<フィーーン―――ガチャ!>

 

 

 ターゲットが上がり―――

 

 

<チャキキッ――ドドンッ!>

 

 

 

「ほう……」

 

「……あ」

 

 

 二人はほぼ同時に目の前の台の上にあるスイッチを利き腕じゃない方で押し、カウントダウンをスタートさせた。

 ターゲットが現れた瞬間、二人はまたほぼ同時に腰のホルスターから銃を抜いて構え、発砲。

 二人が撃った弾丸は、各的の真ん中の一個分横に命中していた。

 

 

「あ…ああ……」

 

「……」

 

「あの……中佐……ッ」

 

 

 二人が震えながら何かを言うが、俺は無言で珠瀬に近付いた。

 珠瀬は俺が近付くに連れて震えが大きくなり、俺が目の前に着くと目を強く瞑った。

 ど真ん中に当てれなかった事に殴られるのを思ったのだろう。

 だが―――

 

 

「―――すごいな、まさかここまで上達してるとは、全くの予想外だ」

 

「「えッ?」」

 

 

 だが、俺は珠瀬の頭を撫でながら褒めた。

 いやだって、すごいだろ?

 二人ともたったの3日間でホルスターから即座に構えて撃って、ど真ん中の一個分横にヒットだぜ?

 

 

「まだ三日しか経ってないから良くてもせいぜい的を当てるぐらいだろうと思っていた。西部劇みたいな早撃ちで狙った所を撃ち抜くのは、生半可な技術じゃ会得出来ないからな」

 

「え、えへへ、毎日朝と夜、中佐の訓練表通りに鏡に向かって練習してますから♪」

 

「それに、腹筋背筋腕立ても毎日、指示通りのやり方で休まず続けてます」

 

「そうか、ちゃんとサボらずやってたか」

 

 

 珠瀬の頭を撫でながら俺が二人を褒めると、珠瀬は気持ちよさそうに目を細めながら話し、榊も俺のところまで来て嬉しそうに話す。

 少し離れた所に居た彩峰と御剣が安堵の表情をし、武と一緒に俺の元に来た。

 珠瀬と榊はデータ上、射撃ラインが抜きん出ていたから俺が担当した。

 武は時間も関係して近接戦闘だけを重視させたので、射撃等は今までより腕が上がったってぐらいだけで抜きん出てはいない。

 

 

「よし、お前達の次のステップは次の講義の時に言おう。今はシャワーを浴びて、飯を食って来い」

 

『『はいッ!』』

 

 

 

 ―――タッタッタッタッ!

 

 

 

「お前も意地が悪いな」

 

「ああ?」

 

 

 207分隊が駆け足で去って行くのを見ていると、武が近付きながら話しかけてきた。

 

 

「指示だけ出しただけで教官が来なくなれば、愛想着かされたとしか思わないさ。お前も意地が悪い」

 

「はは…ああいう地道な基礎訓練は、教官と言う教える立場の者が傍にいたら、逆に身体が緊張して身に付かないんだ。だから俺は傍にはいなかったんだが…言ったら言ったでまた訓練に身が入らなくなるからな」

 

 

 かつて…まだ俺が学生で居た時、部活で壁当てをしている時に顧問の先生が見ていた時、逆にいつもの調子が出なかった。

 これは自分だけなのかと他の奴等や先輩に聞いたら、皆自分と同じだと答えてくれた。

 だから俺は敢えて傍にいなかった。

 特に俺が出した課題では自分の世界に入る必要がある。

 そこに俺と言う上の立場の、それも中佐の位を持つ人間がいると意識するだけで身体が無駄に緊張して訓練に身が入らない。

 

 

「今はまだ訓練…それもこの講義を始めたばかりだ。いきなり難易度の高い技術を要求するのは理不尽以外の何もない。だが、まさかあの面々がここまで成長スピードが速いのは、本当に予想外だ」

 

「…この世界はBETAの出現で娯楽が少ない上に、ここは軍隊の中だ。一般人達とは心構えが違うし、あいつらの実力なら俺が保証する」

 

 

 おお、言い切るねぇ武。

 だからといって三日だけでここまで出来ると納得は出来ないが…まいいや。

 さて、俺も飯食ってシャワー浴びて、設計図の整理をするか。

 ああ、後は帝国に何か土産(・・)になる改良案も選定しとかねぇとな。

 できれば基地全員が喜ぶのがいいか…よし、アレ(・・)にしよう。

 

 

 




いかがでしたでしょうか?

突っ込むところは多いかと思いますが、指摘は優しくお願いいたします(汗

感想、アドバイス等をお待ちしております!

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