ようやく擊震・改の完成です!
それでは、どうぞ!
賢治side
いや~、昨日は色々と忙しかったなぁ。
分解・設計・講義・整理・立ち上げと、普通なら五日に分けてするものを丸一日でやっちまった。
まぁ、昨晩届いたPCの立ち上げをしている時に霞ちゃんがコードに足を引っかけて机の角に頭をゴチンッとぶつけて『あが~ッ』とゴロゴロ転がりながら叫んでいたのは可愛かったなぁ。
武は『大丈夫か霞ィィィッ!?』と霞ちゃんを大げさに介抱していたり、それに霞ちゃんはご満悦だったり、はぁ…まぁ、いいか。
霞ちゃんにやっと会えた上に記憶を引き継いでいるから、嬉しかったんだろう。
「賢治さん、出来ました」
「お、出来たか? ありがとう」
霞ちゃんは今日の207分隊の講義までの間は俺の手伝いをしてもらっている。
今霞ちゃんにやってもらっているのは、狙撃型・中距離型・近接型の三つのOSだ。
俺は昨日立ち上げた特殊なPCを使って機体の設計を一気に進めている。
今も世界で一番使われているFー4『撃震』を優先して造り、片手間に陽炎から吹雪、不知火を進めていっている。
それぞれペンで書き殴って行ったのをPCで清書し、機体の見取り図をCADで編集して形を造って行っている。
武はというと、あの廃材の山から電子機器だけを取り出すというすんごい地味で面倒な作業をしているが、準備段階の今の内にやらないといざ造る時に部品がなければ意味がないので、本人は渋々ながらやっている。
まあ、この三つのOSを帝国とアジアに売れば金になるし、その金の三割で難民を雇うから、もう少し我慢してくれ。
<ピピピッピピピッピピピッ!>
『中佐、技術開発局から例のモーターが届きました』
「ピアティフ中尉か、了解した。ハンガーに纏めて入れといてくれ」
『はい。後、技術開発局から伝言で、例の機械は三日後に到着するとのことです』
「なかなか早いな。わかった、急がずに丁寧に造ってくれと伝えといてくれ。早く造って欠陥が発生してはたまらんからな」
『はい、そう伝えます』
<ピッ>
そうか、装甲の製作に使う機械があと三日で来るか。
その機械を導入するために夕呼博士から貰ったハンガーを改築して戦術機の建設工場を建てて貰っている。
と言っても、予備と予算削減で使われなくなったハンガー同士を貫通させて強度補正と機材導入を施しているだけなんだけど。
これだけでも普通は1ヶ月は掛かるだろうが、俺と武が壁をぶっ壊して行ったので後は改築するだけだからそんなに時間は掛からない。
まぁ、夕呼博士はもう諦めた様な表情で俺達の壊しっぷりを眺めていたけど…
おっと、話しが反れた。
ともかく、あの機械が導入されれば手作業では成せない箇所を成せれる。
おし、こうしている間にも三つのOSの最終確認と各機体の試作機の設計は概ね完成した。
あとは到着する機材で造るだけた。
ふっ、伊達にエンペラー艦で長生きては居ないぜ。
他にも補給コンテナの効率化や再突入艦、ムリーヤ等も改良の余地有りだからそっちの方もチョコチョコと進めていこう。
あ、あと何でピアティフ中尉に対して敬語を使わなくなったかと言うと、夕呼博士にため口で自分に敬語は…だそうだ。
まぁ、歳が分からなくなった俺に敬語は似合わんからな。
使う事もないだろうし、丁度いいか。
「さて、上に上がって撃震の改造でもしますかな」
今日は講義が休みだから、一日中機体を弄ることになるなぁ。
ああ、後は食材の培養とあいつらのOSの製作…霞ちゃんに手伝ってもらってるとは言え、ちと仕事を増やし過ぎたな。
霞ちゃんはオレンジジュースが好きって言ってたな…優先的にオレンジジュースを作ろう。
賢治が内心で呟きながら階段を上って行った。
途中の壁に掛けられている時計には、午後3時を示していた。
賢治が起床したのは午前6時…途中、食事を取ったり等をしているのに、この製作スピードは異常と言えるだろう。
しかし、それを可能としてしまうのが永久の時を生き続けて来た賢治だからであった…
武side
くそ、賢治の奴め、俺が役に立たないからってよりにもよって廃材の仕分けさせるとかドンだけだ!
他にもあるだろ! OSのバグ取りなりOSのバグ取りなりOSのバグ取りなり!
…あれ? OSのバグ取りだけ?
あとは肉弾戦闘と、力仕事……悲しき事は、己が技術力の無さかorz
「お~っす、お疲れさん! ん、何項垂れてんだお前?」
「ほっとけッ」
畜生、俺もXM3の開発に大きく携わってたのに!
「そうか?、ならいいや。撃震の改造に移るぞ」
「!? 了~解!」
よっしゃ、やっと退屈な作業から抜け出せれる!
「………」
「あれ? 霞もいるのか?」
「……お手伝いです」
そっか、00ユニット……純夏に必要な理論は俺が先生に渡してあるから、霞は暫く時間が出来たのか。
ODLの劣化を防ぐ為に執務室に籠りっ放しなのは変わらないみたいだけど…大きな焦りが無くなったのがよかった。
「ああ、霞ちゃんには改造中に出るプログラムの調整をしてもらうんだ。助かるよ本当に」
「……(ポッ)」
確かに霞は前の世界でもXM3の開発の主任だったな。
ちくしょう、俺も戦術以外に何か手に職を持っておくべきだったぜ。
「まぁ、本来なら外骨格構造ではなく
「あぁ、確か撃震一機で数億以上だったか?」
「世界で一番広く使われてる撃震がそれぐらいするんだから不知火とかはもっと掛かるだろう。まぁ、節約のためにもリサイクルして一から造る為の機材を発注したから、廃材がこれだけあれば改造程度なら50機分はあるさ。まあ、このリサイクルが横浜基地で認められたらあっちこっちから壊れた戦術機とかを回収するようになるだろ」
俺が必死扱いて仕分けをした電子機器と廃材の山を見ながら賢治はそう言った。
元々の世界でも、日本は都市鉱山と言われていたからリサイクルすれば開発費用も一気に収まるだろう。
「まあ、俺達の機体を造るには流石にリサイクルした部品じゃ無理だからな。何しろ造りが戦術機とほぼ違うから零から骨を組んで造らないといけない」
確かに、シミュレーターの時は不知火を使っても何の問題もなかったからおかしいと思ったけど、後で霞が教えてくれたんだが霞が設定を弄ってくれていたそうだ。
機体の軋み等の細かい所は無効にし、長刀の耐久性と跳躍ユニットの推進剤だけを通常と同じ設定にしたみたいだ。
器用なことが出来るなぁ霞は。
「とりあえず、始めようぜ」
「おうッ」
指示と組立を賢治がして、俺は必要なパーツを指示に従って運んで補助、霞は整備士が持っている端末を持って管制ユニット内に入り、中の軽強化外骨格に端子を挿してカタカタと端末を操作しながらエラー箇所などを修復してそれぞれの役割をこなしていく。
昨日設計図を作成する為に機体をバラし、そのまま放置したままなので、後は賢治と俺が手作業で造った各箇所の型に今日届いたモーターを組み込んで機体を組み立てていくだけだ。
「調子はどーかしら~? って、もうここまで出来上がってるのね…」
作業中に夕呼先生がハンガーにやって来た。
今は外枠の装甲を取り付けて補強している段階だから、後少ししたら俺の役目は終わる。
「あんた達は本当に手作業でやってるのね…クレーンも使わずによくやるわ」
<スタッ!>
「よう言うわ。手作業で全部造れって言ったのは夕呼博士だろうに」
作業を中断し、俺達は夕呼先生の所に飛び降りた。
霞も作業を中断して、俺が抱えて一緒に飛び降りた。
「あら、社は飛び降りるの平気みたいね?」
「……(ギュッ)」
「そうでもなかったみたいね」
先生は前回よりも顔色がいい。
前回は因果律理論と量子伝導脳の研究に睡眠時間を費やしていたから顔色は青白かったけど、今は血がちゃんと通っている健康な肌色だ。
あと霞、頭を擦り付けるのはいいけど、そろそろ降りようか?
「それはさておき、これがあんたが言っていた撃震の改良型なの?」
「ああ。見た通り旧型と違って脚が少し細くなって動きの稼動範囲が広くなり、接近戦がマシになるのさ。肩の装甲ははっきり言ってバッテリー以外の大部分は邪魔だから少しだけ削ったから重量は軽くなっただろう。あんなズングリムックリな機体じゃ避けれるモノも避けれんわ」
「その削るということ自体がありえないのよ? わかってる?」
見た目、撃震はあのズングリ体型が定着し、それを元に瑞鶴が出来上がったわけなのだが、賢治は逆に脚自体の無駄なスペースと中身を取り除き、スペアを改良して接続をしたので、脚は本来の2/3の太さにまで細めることになった。
これで重量が軽くなって推進剤も無駄に減らす事がなくなり、近接戦でも戦闘のバリエーションを増やす事が出来る様になった。
耐久性が落ちるのではと思われるかもしれないが、無駄と言っても本当に必要のない部分を賢治は取り除いたので耐久性に支障はなく、寧ろ高くなった方だ。
これだけ変化したというのに5%だけっていうのはどうだろうと俺は思うんだが…あきらかに10%以上はスペック上がってると思うぞ?
体感的に感じるだけか?
「へ~、この状態のF-4を一から生産する際の費用はモーターを含めて現存のF-4と何ら変わらないのね。ならこのF-4を最初から生産した方がいいじゃない」
「この世界の開発者達は頭が固過ぎるんだ。太けりゃ防御が強いという概念が頭に定着し過ぎてるんじゃねぇか?」
「それはわからないけど、この撃震の性能を認めさせてマーケットに出すと、相当の利益を得られるわね」
そりゃあね、普通の撃震と変わらない値段でパワーアップしてれば誰だってこっちを選ぶさ。
それに整備も従来より楽になるみたいだし、良い事尽くしだ。
「ああ、その為にも先ずはこの撃震VS不知火の一対一だな」
「っていきなり不知火か!?」
「当たり前だ。総合スペックは不知火には劣るが、向こうは無改造なんだし、出力はこっちの撃震の方が上なんだ。これで惨敗なんざしたら失望モノだぞ?」
「資料では結果が出ているが、実際に目で見ないと誰も納得出来ないよなぁ。となると肝心なのは衛士の腕…か」
「ですが、今の横浜基地では『ヴァルキリーズ』しかまともな動きはできません」
「マジか?」
「マジです」
確かに、前回のトライアルの時、先生が捕獲したBETAを解放して全てを排除するまで時間を掛け過ぎたし、索敵の低さも横浜基地がいかに温いかが分かった…俺自身、錯乱していたからあまり言えないけど。
しかし、この基地の連中は【コード911】が発令してから戦闘準備完了まで十五分以上掛かってたんだ。
最前線なのに戦闘準備がトロいとか有り得ないだろ。
実際に横浜基地強襲の時には基地がまったく機能しなかったし、戦術機隊も役に立たなかったしな。
「そうか…なら、この撃震は武が乗るとして、問題はヴァルキリーズの誰と戦うかだなぁ…」
「あら、適任者ならいるわよ?」
「「ん?」」
ヴァルキリーズで適任者…なぁんかあの人な気がするんだけど?
「速瀬なら喜んでやるでしょうね。戦うのが大好きな単純バカなんだから」
…やっぱりあの
そうだな。速瀬中尉なら戦いを盛り上げてくれるだろう。
「それと…この撃震には黒崎、アンタが乗りなさい」
「何故に俺?」
「アンタが試乗したほうが直接、衛士の質を理解することが出来るでしょ~? それに機体の細かい調整も確認出来るし、一石二鳥じゃない?」
賢治が操縦したら速瀬中尉が秒殺される気がするんだが…
「…まあいいさ、丁度衛士の力も見たかったし、俺の予行練習にもなるだろう」
「難易度トップのウォールクデータであれだけ暴れてまーだ練習が必要なの?」
先生がジト目で賢治を見る。
ゲッターと戦術機じゃあ操縦はもちろん、網膜投影から跳躍ユニットから全くコンセプトが違うし、咄嗟の動作でゲッターと同じ動きをしようとしてしまう。
実際、シミュレータの時にゲッターの動きを賢治がしていたが、霞が細工をして出来た動きだから、あのジグザグの動きを実機でなら空中分解のスクラップ行きだ。
賢治はそれを回避する為に
「まぁいいわ、三日後にアンタの発注した機材がここに導入されるから、完成はいつになるの?」
「機材が来て俺が点検してから稼動させるから、機材が来てから三日だな。これ以上急がせれば装甲が固まらん」
「わかったわ。ならもう一日時間を置いて一週間後にするわよ」
「わかった。ポジションは俺が決めさせてもらうぞ?」
「構わないわ、じゃ、アタシは戻るから」
そう言って先生はハンガーから出て行った。
「さて、今度は武器も改造しないといけねぇなぁ。まぁ、それなら案はかなりあるし、今ある武器を弄れば出来上がるからいいか」
「お前、マジパネぇよ」
「……続き、しましょう」
「お、そうだな。賢治、続きをやろうぜ」
「ほいほ~い」
霞が俺の服の裾を引っ張って言った。
霞に催促されて作業を再開し、今日の夜10時に撃震一機の大改造は終わった。
明日は陽炎をするつもりだったらしいが、急遽武器を制作することになった。
いかがでしたでしょうか?
次回、賢治無双です!
感想、アドバイス等をお待ちしております!