Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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修正が早く終わったので連続投稿です!
それでは、どうぞ!


第十五話

武side

 

 

 

 

 何でだ、家で目が覚めた時はカレンダーには10月22日だったのに今日は6月10日?

 何で、日にちが四ヶ月以上もズレているんだよ…?

 

 

「おいおい武、これはどういうこった?」

 

「わからねえ…一体、何で?」

 

 

 おかしい、純夏は俺に何をさせようとしているんだ…?

 それに、賢治まで巻き込んでしまって…賢治は、この世界とは関係無いんだぞ?

 

 

「まぁ、いいんじゃね?」

 

「賢治?」

 

「実際、あいつらを鍛えたとしてもたかが1ヶ月じゃ大して育ちはしねえし、短期間で俺達の機体ができるわけではない。もしかしたら、今回は二度目の世界では起きなかった事が起こるから、それを防げって意味なのかもしれないしな」

 

 

 ……賢治が言うのも確かだ。

 二度目の時、俺は一度目で起こった事件を未然に防ぐために先生に進言して防いでもらった。

 だが、それからは一度目にはなかった事件ばかりが続いて起こった。

 クーデター、トライアル、佐渡島攻略、横浜基地恐襲…そして、桜花作戦。

 俺は10月22日より前に起こった出来事は明星作戦と光州作戦以外は知らないに等しい…それに時期が終わっているから防ぎようがないし、未来を大きく変えれば世界の修正が起こり、何かを対価として失う…

 だが、それを恐れて何もしなければ…俺が戦って培ってきたモノが意味が無くなる。

 

 

「…やろうぜ賢治、あいつらに絶望の涙を流させない為にもよ」

 

「ああ、どうせなら大々的に救ってやろうぜ? 俺達が来たからな」

 

 

 俺達は互いに不適な笑みを浮かべながら先生の下へと向かった。

 

 

 

 

夕呼side

 

 

 

 

 ありえないわ、こんなにも早く、それも工具も大して揃っていないのに改修案にあるのを八割も創り上げるなんて…

 普通、戦術機規模になれば黒崎が設計したのを造るのに戦力を集中させても最低でも半日以上は掛かるのに、黒崎と白銀は四時間で造り上げた…それだけじゃないわ、造るのと平行して新しい部品も一緒に設計するという効率の良さ。

 技術屋顔負けの仕事っぷりよ。

 これが衛士の三倍のスペックを持つ男だからこそ成せる事なのかしらね…普通の人間なら集中力が途切れるわ。

 

 

「で、感想は?」

 

「ええ、十分よ。流石は人外ね」

 

「人外余計だコラッ」

 

 

 人外じゃなきゃ変態よ。

 工具も使わずにどうやってココまで正確に型を創り上げてるのよ。

 寸分狂わずピッタリはまるなんて熟練の職人が機械を操ってやっとできる域よ?

 

 

「だが、流石にモーターとかは発注しないと無理だったから発注したんだが、どれぐらいで出来そうだ?」

 

「明日には一機分のモーターが届くわ。アンタが設計したモーターは技術屋が求めていた設計だったみたいだからこれだけは直ぐに取り掛かるって言っててね。他の作業そっちのけで造り始めたわ」

 

「ほほほ、そこまで喜ばれるとは、嬉しいもんだねぇ」

 

 

 実際、黒崎の設計したモーターは馬力も従来のより1・3倍は強く、整備も従来より楽な造りだから、もしこれが導入されれば整備班の負担は軽くなるわ。

 その代わり、モーターの数を増やすから時間が掛かるけれど、整備が簡単になるし取り外しも簡単だからそう負担にもならない…整備班達でもモーターを修復できる様な造りなんて、ホント、よくもこんな設計が思いつくわね。

 

 

「それと、この合成食について何だけど…」

 

 

 今提出された合成食改良についての資料を上にしながら質問をする。

 

 

「よくもまあ食事中に書き上げたわね。でも、これを実現するには土地と資金が無いわよ? どうするつもり?」

 

「な~に、これから俺達が普及させていく案のライセンス料が入ればそのぐらいの金はギリギリ入るだろう? 新型OSが多分一番高く売れるはずだから、その8割を合成食の開発に回せば十分足りるさ」

 

「考えたわね。でも人間はどうするわけ? 日本には人材の余裕なんてないわよ?」

 

「…こういう言い方は好かんが、難民の中から選出して優先して入れる。幸い水源はちゃんと確保出来てるみたいだから田畑をハウス、もしくは巨大ハンガー内で作り、エンペラー艦でやっていたのをそのままこっちでやるだけさ。ここの医療技術を応用して栽培したってことにすれば技術面に対して誤魔化せるだろうさ。それに、難民にも仕事と金が入るし、そこそこの技術も身に付けれるから、そこから就職も見つけれるから居たせり付くせりだ」

 

 

 どこまで計算しているのよこいつは…

 確かに、黒崎が言うようにハウス栽培で今の医療技術を応用する事で植物の成長が早くなるという発想はなかったけど、理論上は出来なくはないはず…細胞を活性化させて成長を促進させていくなら植物の細胞は人間の細胞に比べてデリケートではないから改良の余地はある…しかし、問題は人体にどんな影響を与えるかなのよね。

 急激に細胞分裂を繰り返させると、何等かの問題が出てくるはず…でも、黒崎が居たところで行っていて、人体に何の影響が無い事だったみたいだから、別にいいかしら。

 それでもアタシには詳しいデータを見せてもらうわ。

 いい交渉材料にもなるだろうしね。

 

 

「といっても、栽培するのは土の中で出来るヤツだけだがな。流石に樹から生るモノをするには気が遠くなるから無理だ。てなわけで、難民からそっち向けの人間を何人か探してくれ」

 

「わかったわ。そっちの方もアタシがしておくからアンタは言っていたやり方を具体的に纏めて明日までにアタシに提出しなさい。今は戦術機の開発が優先なんだから、ここで手を詰まらせんじゃないわよ?」

 

「まぁ、栽培については俺のHDに入っているのをそのまま出せばいいだけだから直ぐに終わるさ。ところで、例のOS開発用のPCはどうなった?」

 

「それは今夜中に届くわ。あんたの要望通りにするのに技術班が相当骨を折ったみたいよ?」

 

 

 一度こいつのHDの中身を見て見たいわね。

 あらゆるデータがあるのなら、あの機体(・・)の完成が早くなるかもしれないわ。

 

 

「そうか…届いたら静かな場所に設置しておいてくれ。あれで仕事するには神経を使うから誰からも邪魔されたくない」

 

「ホントに注文が多いわねアンタは…」

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

 注文が多いと言われてもねぇ…キーボード三つも使う作業で横から口出されたら集中が途切れて手元が狂っちまうよ。

 それじゃなくてもOS一つ作るのに丸一日掛かるし…お、そうだそうだ肝心な事を忘れてた。

 

 

「ちょいと戦術機の今のOSを見せてくれ」

 

「はぁ?…あぁそうね、見せなければ作り様がないわね。ちょっと待ちなさい…はい、出したわよ」

 

「サンキュー、ソースを展開して……マジかよ」

 

「マジ?」

 

「ああ、『本当・本気』って意味ですよ。俺の所では言いやすいからそう言ってるんです」

 

「あら白銀、いつの間にいたのよ?」

 

「………」

 

 

 戦術機のOSが理解できればと思っていたけど…これはひでぇな。

 動けばいいと言わんばかりに順番めちゃくちゃに詰め込んでいったのが現れている。

 こんないい加減なところまで似るなよ…

 

 

「(見た途端固まったわね…まさか今更わからないなんていうんじゃないでしょうね…?)」

 

「………」

 

「(あれ、何か賢治の表情が能面に……)」

 

 

 ふざけやがって…こんなOSじゃ戦術機が全く生かされねぇじゃねぇか。

 よくもまぁこんなふざけたOSで今まで戦場で生き残って来れたもんだ…

 

 

「夕呼博士……」

 

「な、何よ?」

 

「ちと今すぐパソコンを一台貸してくれ。コイツを一気に整理する……」

 

「え、わ、わかったわ。なら社に付いて行って頂戴。そこならOSの修正が可能よ」

 

「…わかった。霞ちゃん、案内を頼むね」

 

「はい、こちらです」

 

 

 日本帝国の連中にも整理したOSを譲ろうか…違う世界であっても、同じ日本人としてはやっぱり、生きて欲しいしな。

 

 

 

 

武side

 

 

 

 

 な、何か賢治の怒りに触れる事があったのだろうか?

 俺はプログラミングはチンプンカンプンだから見ても何が何だか分からないんだが…何が賢治を怒らせたんだ?

 

 

「お、おい賢治、あのOSで何があったんだ?」

 

「あ? 中身が整理されてなかったし、無理矢理詰め込んでいって、ギリギリ動かせれるぐらいの低能なOSだったからムカついてんだよ…たかがあんなプログラミングで世界一名乗ってんのか米国は…ふざけやがって」

 

 

 まずい、賢治がキレかけてる…それほど酷かったのか。

 

 

「霞ちゃん、今までのログで戦術機がバグを起こしたりしなかった?」

 

「…はい、頻繁ではありませんが、激しい動作をした時には必ず起きます」

 

「な、どういうことだ?」

 

「着いたら教えてやる」

 

 

 賢治の言葉と同時に目的の部屋に着いたのか、霞が扉の電子ロックを解除して中に入って行った。

 続いて俺達も中に入って行くと、中には二台のシミュレーターと大掛かりなパソコンがあった。

 霞はパソコンを立ち上げてカタカタとキーボードを操作すると、作業が終わったのか賢治と代わり、賢治がキーボードを指がブレて見えるぐらいの速さで打ち始めた。

 ……あれ、教えてくれるって言ったのにコイツ、勝手に作業してるし。

 俺は何をすればいいの?

 

 

 

<トコトコ…ピト…ギュ…>

 

 

 

「霞?」

 

「………」

 

 

 

<グリグリグリグリッ>

 

 

 

「か、霞?」

 

「………」

 

 

 霞が俺の所に来て俺に抱き着いて来た。

 加えて、頭を俺の腹にグリグリと擦り付けてきた。

 え、マーキング?

 

 

「か、霞、どうしたんだ?」

 

「………いる」

 

「ん?」

 

 

 霞が震えている?

 

 

「武さんが、ここにいる…」

 

「霞…」

 

 

 聴覚に集中すると、霞の声もまた、震えていた…俺は賢治が呼び掛けてくれるまで霞の頭をただ撫で続けていた。

 

 

 

<カタカタカタカタタタンッ>

 

 

 

「よし、整理終了。武、お前は筐体に入ってスタンバっとけ」

 

「は? 何故に?」

 

 

 霞の頭を心地よく撫でていたら賢治が作業を終えたようだ。

 ふと壁に掛けられてる時計に目をやると、アレから一時間経っていた。

 俺は一時間近くも霞の頭を撫で続けていたのか…

 

 

「プログラミングのプの字も知らんお前に説明しても厳しいからな。直に体験しながら説明するさ」

 

 

 …何か納得いかんが、実際分からないから言い返しようがない…くそぅ、入りゃいいんだろ入りゃよ!

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

 筐体に入ったのを確認した俺は、武の乗る機体を吹雪に設定してシチュエーションを市街にした。

 

 

『おい、何で俺が吹雪なんだよ?』

 

「まあ待て、昨日スペック表を見たらこういう体験には吹雪のスペックが一番適しているのに気付いてな。ついでに俺が整理したのが大丈夫かの確認もする」

 

『はいはい、はぁ…人使いが荒いぜ』

 

「まあそう言うな。さて、OSは俺がさっき博士に見せてもらったのと俺が整理したのと二つがある。先ずは今までのOSでお前お得意の戦法で戦ってくれ」

 

『あ? お、おうわかった』

 

 

 まあ、大まかに説明しよう。

 今回、このOSを説明する中で一番例えやすいのが自分の部屋の整理状況だ。

 米国が作ったこのOS…ただ動くように出来ればいいと、プログラムを一つずつ思いついたものをメモ用紙のように次々と積み重ねていくだけだ。

 いかにメモ用紙に全ての情報を書いてあるからとはいえ、その今必要な情報を探すのには当然時間が掛かる。

 そこで思い描いて欲しい…これは必要な物だ、これはその問題の解答だ、と必要なプリントがある。

 それを何時必要な物か、どの分野で使うのかと分けずに、ただただ乱雑に積み重ねていけば、果たしていざ必要な時に、直ぐに必要な時に探し出せれるだろうか?

 いや、無理だ。

 運が良く見つけれたとしても、バラバラであれば探すのに手間が掛かりすぎる。

 昔の……懐かしき学生時代の俺がそれで無駄な時間を多く使ったからな。

 

 

『なッ!? グォッ!?』

 

 

 今、武は旧OSの吹雪で不知火二機を相手に接近戦で挑んでいる。

 不知火二機が両翼から突撃砲で武を牽制し、残りの一機が武に向かって長刀を構えて迫って行った。

 武は弾幕の中を得意のアクロバットで最低限の動きで避けていき、迫ってくる長刀を同じ長刀で流そうと背中にマウントされている長刀を咄嗟に抜刀しようとした時にトラブルが起こったのだ。

 そう、OSとCPUによるバグで機体が硬直したのだ。

 それにより、武は不知火の長刀であっけなく撃墜された。

 

 

『おいおい、いくらなんでもこの硬直はないだろ! 前の世界じゃこんなのなかったぞ!』

 

「そりゃお前が不知火に乗っていたからだろ? 吹雪は高等練習機(・・・)で、何色にも染まっていないからプログラムの影響をモロ反映するんだ。次は俺が整理したOSで再戦だ」

 

 

 俺はキーボードを操作して武の乗る筐体にOSを換装し、状況を開始した。

 状況はさっきと全く同じ市街戦の不知火三機と吹雪一機。

 先程と同じように二機の不知火が突撃砲で武を牽制し、一機が長刀で迫って行った。

 

 

『ッ?』

 

 

 武もさっきと同じ動きをして長刀を抜刀し、迫ってきた不知火の長刀を長刀で受け流し、その勢いのまま横に振り抜いて不知火の胴を上下真っ二つに斬った。

 

 

『おお、今度はスムーズに行った!』

 

「だろ? 要はその分野ごとにOSのタグを分けていないから咄嗟の入力にOSが着いて行けてないんだ」

 

 

 更に分かりやすく言うと、カバンの中に持っていくものを乱雑に詰め込み、必要なものを取り出す時にとてつもなく時間が掛かる。

 それをこの米国のOSがさせているのだ。

 それに、整理したOSを改めて確認すると、射撃を主としたプログラミングで近接戦闘は短刀以外は視野に入れていない作りだ。

 武が言っていたXM3も重要だけど、整理したOSだけでも人が生きる可能性は微々たるモノでも上がるんじゃねえのか?

 

 

 

<プシューッ>

 

 

 

「ふう、成る程な。プログラムにも整理整頓は必要ってことか」

 

「そういうことだ。俺が整理したこのOSだけでも近接戦闘を視野に入れてる国には有効なはずだ。早速博士に渡そうぜ」

 

 

 筐体から出てきた武と話しをし、俺達はまた夕呼博士の執務室に向かった。

 そこで俺のOSを確認した博士は「近接戦闘用のも作れ」と新しい指令を俺に出してきた。

 こればっかりは衛士の意見を聞かないと作れんから困ったなぁ…

 とりあえず、近接戦闘はそっちを得意とする衛士を見つけてから行う事にした。

 

 

「さて、今夜辺りにPCが来るからセッティングしないとな」

 

「…手伝います」

 

「お、ありがとな霞ちゃん。武も手伝えよ?」

 

「当たり前だろ、霞に手伝わせておいて俺だけ何もしないとかありえんよ」

 

 

 よし、なら到着次第作業開始とするか!

 

 

 

 

 




さて、プログラムについてはユニコーンはC++とJavaScriptを齧った程度なので今回の内容にもまた穴がたくさんあると思います。
ですので、指摘は優しくお願いいたします(汗

感想、アドバイス等をお待ちしております!

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