Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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お待たせいたしました。
今回もにじファンで掲載していた内容に若干の修正をしたものです。
それでは、どうぞ!


第十四話

賢治side

 

 

 

 

 会議から翌日、俺は武に文字通り(・・・・)叩き起こされて一緒にPXに向かった。

 食券で鯖味噌定食を買い、適当な席について食べたが、何か違和感を感じた…ぶっちゃけ、たいして美味しくない。

 合成食は武が言うには、本来ならとても食えるものではないらしく、ここ横浜基地の食堂のおばちゃんが作るから美味しい…て訳ではないけども、合成食では美味しく食べられるようである。

 うん、博士に合成食の資料を見せてもらったけど…とてもじゃないけど消化と栄養のみを考えただけで味覚までは手を出してなかったし、実際食べてみてそれは実感した。

 それを知って、逆にこの合成食でここまで味をつけられるのかと思ったぐらいだ。

 すごいぜ、食堂のおばちゃん。

 確か生産国はアメリカ…こっちでは米国か。

 まあ、金と時間が掛かるし、自分達は天然を食べるから余所は関係ないと考えてやってないんだろう。

 ズボラなのは俺がかつて地球に居た時のアメリカと一緒だな…シュヴァルツ、今どうしてるんだろ?

 

 

「どうした?」

 

「いや、ちょっと合成食にも手を出さないといけないなぁと思ってな。エンペラー艦でやっていたのをこっちで再現できるかな…」

 

「お前、いくらエンペラー艦に居たからってそこまで知識得られるもんか?」

 

「伊達にタダ長年生きてるだけじゃねぇさ。それにすることはエンペラー艦でしてることをそのままするだけだ。お、あれまりもちゃんじゃね?」

 

「お、マジだ」

 

 

 合成食の案も軽く触れるぐらいだがPXで直ぐさま纏め、それを含めた書類を片手にPXを出て武と一緒に博士の所に向かう途中、まりもちゃんを見つけた。

 まりもちゃんも俺達に気付き、俺達の方に向かってその場で立ち止まり敬礼をした。

 

 

「おはようございます! 白銀中佐、黒崎中佐!」

 

「おはようございます、って、俺達に敬礼はしなくていいですって」

 

「いえ、そういう訳にはいきません。我々は軍人である以上、軍律を守らねばならぬのです」

 

「さいですか…」

 

 

 何ともまた、軍人の見本だなぁ…あ、まりもちゃんは教官か。

 

 

「昨日は恐れ入りました。あの二人は207分隊の中で特に抜きん出ている者なのですが、あそこまで手も足も出ないとは思いませんでした」

 

「ははは、あの二人は確かに強かったですよ? だが、あの二人は力を持っているだけ(・・・・・・・)であって使い方を理解していないだけです。自分より強い者と戦った事があまりないんでしょう、傍から見てもあの二人からは僅かに驕りを感じましたから」

 

「そ、そうですか…」

 

「まぁ、その驕りは昨日で叩き壊したから、後は本人達が力をどう使っていくのかを見つけるだけさ」

 

 

 傍から見てる武もそう感じたみたいだ。

 実際、彼女達から驕りを感じたけどそれ以上に何かを強く思っているのも感じた。

 俺の時は、驕りなんて出来る程時間に余裕がなかったから……ちょっと羨ましかったかな。

 

 

「……中佐、恐れながら中佐は一体どのような任務に就いておられたのですか?」

 

「ん?」

 

「中佐の容姿はあいつら、207分隊と大して変わらないのにあのプレッシャーを放つ事ができる…どのような任務に就けばあれほどの力を持てるのですか?」

 

「カッカッカ、残念ながらそれは言えないねぇ」

 

「ッ! そう、ですか…」

 

 

 まりもちゃんが落胆したような表情をする。

 確かに普通なら、見た目二十歳前後の奴が組み手の中で驕りだの力の使い方だの分かるわけ無いもんな。

 それを俺が、見た目二十歳前後の俺がそれを言ったから疑問に思うのもおかしくはない。

 『生意気な』『そんな事分かるわけがない』『戯言』といった言葉が飛んでくるだろうけど、まりもちゃんは実際、あの二人と組み手をし感じとったから聞いてきたんだろう。

 

 

「だが――――――――」

 

 

 そこで俺達は立ち止まり、後ろで止まっているまりもちゃんに向かって振り返りながら言った。

 

 

「俺達の過去がどうであれ、俺達が表に出たからには…今までより戦闘は楽になると思いますよ?」

 

 

 なんてカッコつけたセリフを残して俺と武はいそいそとハンガーに向かった。

 

 

 

 

――――予備ハンガー内――――

 

 

 

 

 さて、整備班は今日の内に着くって言ってたけど、何処にも見当たらない…夕方過ぎに来るのか?

 といっても、いくら整備班が優秀だからといって部品を一から作るのに何故に整備班なんだ?

 あれだけ加工するのには流石にそれ専用の機材と設備、そして何より、技術屋(・・・)が必要なのに整備班じゃ無理だろ?

 その辺はどうなのよと聞けば、『先ずはあたし直属の部隊vsあんたの案を取り入れた機体よ。それで結果を出せたら、あんたの案を反映させる為に技術屋を連れてくるわ。図面でではなく、実物で技術屋と頭の固いバカ達を認めさせてやりなさい』何て言ってたけど…

 ん~、横浜基地にも技術者は居るはずなんだが、突拍子過ぎたり、たかが5%しか上がらないから相手をしなかったのか?

 一気にポテンシャルを10%上げる方法なんかこの世界にはないっての。

 そこで、俺の案を反映させる為に実際に戦わせてから見せ付けてるってことか…だからって、一から造るのに俺と武だけでやらすなよ…

 

 

「ん~…」

 

「何唸ってんだお前?」

 

 

 確かに、今ここにある設備と機材でアレらを加工するには普通なら無理だ。

 今製作されてる機材は俺の案以外にも使えるから造ったとして、となると…

 

 

「やっぱり手作業でやるしかないか…」

 

「は?」

 

「電子回線とかはあるから、関節部分の加工とかを手作業でやるしかないって言ったんだよ」

 

「は!? 明らかに無理だろそれッ!?」

 

「やらなきゃこの欠点だらけの機体に乗って戦う事になるぞ? いいからやるぞ、俺が指示だすからその通りにやってくれ」

 

 

 無理だろ明らかに、と武は後ろでブツブツ言っているが、量産が出来ないだけで数機ぐらいなら時間が掛かるが出来る。

 でもまあ、今日から俺の宣言通りに講義があるから、それまでの間に出来ることをやろう。

 

 

 

 

珠瀬side

 

 

 

 

 午後の最後の講義が終わり、今日から中佐が言っていた講義が始まります。

 神宮寺軍曹からは着替えてグラウンドに集合って言われたけど、どんな内容なんだろう?

 

 

「どんな講義なのかしらね」

 

「うむ、主に組み手を重視すると昨日申しておられた。私と彩峰の二人掛かりでも指一つ触れることが出来ない程のお方だ。内容の辛さは今までの対人訓練の比でないのは確かであろう」

 

「…楽しみ」

 

 

 御剣さんもですけど、珍しく彩峰さんと榊さんがワクワクしています。

 今までまともに相手が出来たのは御剣さんと神宮寺軍曹だけだったけど、今度からは黒崎中佐と白銀中佐が着いて下さるし、私達にはより、実戦的な訓練をして下さるっておっしゃっていたからね~。

 鎧井さんも退院したら驚くだろうな~。

 

 

「ふ~、何とか形にはなったな」

 

「まさかこんなに早く形になるとは思わなかったぜ…」

 

「まあ、それが普通だろうな。それに試験型にしちゃ上出来だったから後は舗装だけだ。今日はそれをしたら終わろう」

 

 

 中佐達が何か話し合いながらこっちに来ました。

 何の話をしているんでしょうか?

 

 

「敬礼!」

 

 

 

《ザッ!》

 

 

 

「あぁ、だからしなくて良いのに……軍って面倒臭ぇなぁ」

 

「お前、問題発言多過ぎだって…」

 

 

 中佐達に気付いた私達は、班長の榊さんの号令で中佐達に敬礼をしました。

 黒崎中佐は、敬礼を見て言葉通り面倒臭そうにしています…黒崎中佐は、何処か香月副司令に似ています。

 一言で言うなら、軍人に見えないところ…でしょうか。

 

 

「まあいい、さて、昨日言った通り今日から午後の最後には俺と武がお前達の講義を持つことになった。改めてよろしく頼む」

 

「昨日チラッと賢治が言った通り、御剣と彩峰は俺、珠瀬と榊、そして今入院している鎧井は賢治が担当する。ではさっそく、別れようか」

 

 

 黒崎中佐の挨拶と共に私達はまた敬礼をしました。

 それに対して白銀中佐が答礼をし、指示で二手に分かれました。

 これからどんなことをするのでしょうか……でも、私は人と争う事が嫌いだから、上手く成長しないと思いますけど…

 

 

「さて、お前達のポジションを資料で改めて確認したが、中・遠距離を担当していることから射撃と指示出しがメインで近接戦闘は敵に近付かれる、または弾切れにならない限りはないだろう…だが、だからといって近接戦闘を怠る事は出来ないが、いちいち補給に帰るのは時間のロスであり、大きな隙でもある」

 

 

 二手に分かれて、私と榊さんは黒崎中佐の元に集まりました。

 中佐は私達に何を教えてくれるのでしょうか?

 

 

「そこで、お前達には銃剣の使い方をマスターしてもらう」

 

「「銃剣?」」

 

「そう、例えるならハンドガンの先に刃を取り付けたシンプルな物だが、扱いに長ければ近・中距離を我が物に出来る優れものだ。その為にもお前達には全てを一からやってもらう。まず、銃を構えるのに絶対に必要なのは手の安定、足腰の固定だ。これは手が震えていれば狙いを定めれないのは当たり前だが、だからといって構えるのに時間を掛ければそれだけ隙を見せる事になる。そして、上半身が強くても、下半身が劣っていれば、いくら狙いを定めても撃った反動で銃身がズレて狙いが外れてしまう。加えて銃剣は、斬りながら撃つのを視野に入れているため、狙いを定めるのを早くしないといけない」

 

 

 中佐の言っている事は座学で神宮司軍曹に習った事を言っていますが、その他にも今改めて知った事があります。

 でも、銃剣は初めて聞いたので私達はどうすればいいのでしょうか?

 

 

「よって、先ずはこれだ」

 

 

 と言って私達に一枚ずつ紙を渡してきました。

 その内容は、此れからの訓練に絶対に必要な肉体の作り方のメニューでした。

 

 

「そこに書いてある様に、先ずは土台作りで今までの準備運動、腕立てと腹筋、背筋を起床時に各100回、就寝前は鏡に向かってシャドーシューティング30回を3セットし、ストレッチで身体をほぐしてから寝る事。これらを今日から毎日してもらう」

 

 

 あ、朝起きて直ぐに腹筋背筋腕立て……キツイです。

 あれ、今日の講義って…これだけですか?

 

 

「土台作りだから地味に見えるが、これが一番大切だ。これをしていけば神宮寺軍曹との訓練の時に今までと違いが出てくる。別にこれが今日の講義って訳じゃない。お前達二人にはこれから射撃場でハンドガンを撃ってもらうから心配するな」

 

 

 射撃かぁ……私の一番成績がいい分野です。

 みんなの足を、もう引っ張らないように頑張ります!!

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

 俺達が講義を持つって言って、何か特別な事をすると期待していたみたいだがやる事が地味なトレーニングだと言われてテンション下がってたな~。

 まぁ、あれはタダのトレーニングだって言ったら持ち直したけど。

 

 

「お前のところはどうだった? あの後直ぐに俺達は射撃場に移ったから見てないんだ」

 

「こっちもお前と一緒だ。あの後、俺は二人に組み手を組んで欠点箇所をしてレポートを明日の講義に提出ってことで終わった」

 

 

 レポートか…その手があったか。

 自分の反省点と改善点を文章にするのは難しいことだけど、今のうちにしておけばいざ任官した時に絶対に役に立つしな。

 さて、途中報告を夕呼博士に出してからまたハンガーに篭らないといけないな。

 そんなことを話しながら廊下を歩いてPXを通り過ぎる時に、武が立ち止まったのに気付いた。

 PXに何か用事があるのかと、武を見ると驚愕したように目を見開いてPXの入り口に掛けられてるカレンダーを見ていた。

 

 

「賢治、俺はとんでもない勘違いをしていたみたいだ…」

 

「? 何だよ?」

 

「あれ、見ろよ」

 

 

 指を指した方を見ると、やっぱりカレンダーだった。

 見た感じ、何の変哲もないカレンダーだが…?

 

 

「あのカレンダーがどうかしたか?」

 

「…よく見ろよ」

 

 

 よく見ろと催促されて見ても、特に変わった所は見当たらな……なん…だと…!?

 

 

 

 

 

 

「今日、6月10日だぜ…」

 

 

 

 NA・ZE・NI!?

 

 




訓練内容ですが、これはユニコーンが勝手に思っていたことです。
ですので、色々と不備があると思いますが、指摘は優しくお願いいたします(汗

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