Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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大変遅くなり申し訳ありません!

リアルの仕事がとても忙しく、執筆ができませんでした。

それ故内容はにじファンの時と変わりはありませんが、若干修正しております!

それでは、どうぞ!


第十三話

武side

 

 

 

 

「あんたには恐れ入るわ。まさかあの二人をあんな簡単にあしらうなんてね」

 

「言っただろ? 人間相手に遅れを取りはしないってな」

 

 

 賢治が彩峰と冥夜との組み手(?)を終えて先生達の下に行くと、仕事を上げると言われてそのまま昨日案内されたハンガーに行くことになった。

 

 

「白銀中佐も黒崎中佐と同等の強さをお持ちなのですか?」

 

「ああ、武もあれぐらいなら出来るぞ?」

 

「いやいや、俺も結構強い部類に入ると思うけど、賢治程じゃねぇよ。どうやったらマシンガンの弾を素手で掴めるってんだよ…」

 

「良く言うわ、一対一ならほぼ互角じゃねえか」

 

「相性があるだろ」

 

「(え、素手でマシンガンの弾を掴んだ…?)」

 

 

 途中、ピアティフ中尉が俺にマシンガンについて聞いてきたが、俺より長く戦っている賢治に俺が勝てるはずがない…

 賢治はああ言ってるけど、俺と賢治の戦い方が違うからだけの事。

 賢治の本来の戦い方では、良くて相打ちぐらいだ。

 

 

「さ、着いたわよ」

 

 

 霞がドアの電子ロックを解除してドアを開け、中に入って行った。

 先生の指示で俺達もドアを潜ると、昨日と少しだけ風景が違った。

 

 

「……なあ、何か増えてね?」

 

 

 賢治の呟き通り、昨日見た戦術機『撃震』『吹雪』『不知火』に加えて、ストライクイーグルの『陽炎』が増えていた。

 更にはハンガーの隅っこの方に、残骸となった戦術機や戦車が山積みに置かれ、今朝提出した強化案に必要な道具と機械がいくつか設備されていた。

 残骸は隅っこと言ったけど、ハンガーの1/6は占め、二階まで到達しているのでその量はかなりだ。

 あと、武装等も若干だが補充されている。

 

 

「あんたが提出した強化案に必要な物は、特別な機械以外は全部揃えたわ。機械は今急ピッチで作らせているから、あんたには今あるので取り掛かれることを早速して貰うわよ」

 

「おいおい、あの案を出したの今朝だぞ? もうここまで準備ができるもんか?」

 

「あたしは使えるモノは徹底的に使うがモットーよ? これぐらいのことなんてお茶の子さいさいよ。それに、あんたの案を取り組んだ戦術機の記録を帝国に売り込めばコネも出来て色々と造れるし、あたしには資金と人材を確保できると言う大きなメリットを得られる。逃す手はないじゃない? それに、あんた達の機体も造りたいんでしょ?」

 

「……まあ、俺達の機体を造るのに色々と一から造らないといけないから、否定できないな」

 

 

 せ、先生がここまで早急に動くなんて……俺が提案したXM3の時よりも迅速だ…

 そこまで評価する案ってどんなのだ?

 

 

「賢治、ちとその強化案を見てもいいか?」

 

「ん? 別に構わんが?」

 

 

 気になった俺はピアティフ中尉が持っている賢治の戦術機強化案を見せてもらった。

 ……ああ、なるほどね。

 

 

「ん~? なんかやけに納得した~な顔してるが、どうした?」

 

「ここに書いてある案のコストだよ。新しく造る機械以外は殆ど廃材と従来の物を使ってるから廃材処理費も浮くし、先生に悪い方に影響はないだろ? じゃなきゃいくら案がいいからってここまで直ぐに先生が行動に移す筈がないさ」

 

「…(流石は香月副司令の直属の部下です。ここまで副司令の事を理解しているのは白銀中佐だけでしょうか?)」

 

「(本当にあたしの事を知っているのね…)それとこの中の『OSとCPUのプログラム作成に必要な物』なんだけど…」

 

 

 夕呼先生が案の所までめくってから言ったので、俺もその案の所までめくる。

 ピアティフ中尉のを俺が持ってるので必然的にピアティフ中尉は俺のを覗く事になるので、ピアティフ中尉が見れるようにする。

 

 

「『九つのデスクトップと三つのキーボードを使用するコンピューターが必要』って書いてるけど、マルチディスプレイってどういう意味?」

 

「あ~、ちょっと俺の造るのは特殊でね。それも配置とかそこに書いてある通りに準備してくれたら俺が一からセットアップするからよろしくね~」

 

「簡単に言ってくれるわね。まあいいわ。あたしはこれから用があるから戻るけど、何かあったらそこの通信機を使いなさい。あたしの執務室に直接繋がるから」

 

「ほいほい了解。んじゃま武、俺が指示出すからサポート頼むぜ?」

 

「わかった。なら『撃震』から始めようぜ」

 

 

 さて、やりますか!

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

 整備班は今日手配したばかりだから早くても明日から来るらしい。

 まぁ、俺と武だけでパーツを一から造る場合だと、1日では一機分のジョイント強化だけで限界だな。

 各関節に使うモーターとかも造らないといけないから、どっかの開発部に依頼するしかないんだが…信用性のある所を博士に聞いとこう。

 今のハンガーじゃせいぜい修理や調整ぐらいしかできないし、そこの残骸の山から発掘して何か造るにもあの機械が必要だから造れない。

 ん~、なら今日は解体と設計、そして博士と武、霞ちゃんを交えた協議にしますか。

 その後は部屋に篭って端末と設計図と睨めっこだな。

 

 

「よし、武、まずはお前が言ってた『撃震』から世代順に解体していこうぜ」

 

「おう、わかった」

 

 

 こうして俺達は各機体を装甲と外骨格という風に解体して床に並べて行った。

 そこに俺が案に出した各関節部分とジョイント部分を見ていき、すぐさま拡大コピーをした各機体の図面を広げて赤ペンで戦術機用の設計に下書き用に書き殴っていく。

 その間、武は次の戦術機の解体を直ぐに行えるように準備をし、俺が纏め終えたところで解体するというのを繰り返していった。

 全ての機体をバラして各関節部分の下書き用に纏めるのに掛かった時間は、約5時間。

 他にも纏めようと思えば纏めれたんだけど、これ以上すれば武に悪いし、待たせてる夕呼博士にも悪いと思い、今日はココまでにした。

 これが速いか遅いかどうか俺にはわからないが、通信機で博士に『設計が終わったから会議室を一つ予約してね~』と言ったら固まっていた。

 …そんなに速いのか?

 

 

 

 

夕呼side

 

 

 

 

 黒崎から連絡を受けて直ぐに3番の会議室を取り、ピアティフに黒崎達を迎えに行かせて、あたしは社を連れて会議室に向かった。

 あたしは珍しくウキウキしていた。

 異世界の者が発案した強化案、そして、それを可能にする技術を目の当たりに出来ることに興味を持たないほうが可笑しい。

 会議室に着くと既にピアティフが白銀と黒崎を連れて着いていた。

 

 

「さて、早速見せてもらおうかしら? あんたが設計した戦術機の設計図を」

 

「了解~」

 

 

 会議室に入ったあたし達は部屋の照明を弱くし、プロジェクターを起動させて設計図を乗せ、黒板に写した。

 

 

「先ずは俺が提出した強化案の中で直ぐにでも行えそうな事をさせてもらった。まあ、色々とやろうと思えばやれたんだけど、博士を待たせるのは不味いと思ったから行ったのは戦術機の各関節部分の強化の設計図だけだ」

 

「こ、これは……ッ」

 

 

 ピアティフが息を飲むのも可笑しくはない。

 何故なら、黒崎の案にあった各関節部分の図面がより具体的に写されているからだ。

 今写されている図面は、本来のモーターが組み込まれている設計図ではないが、それでも機体の性能は2%向上する程だった。

 設計とはいえ、たった5時間でここまで出来ると誰が想像できたのかしら?

 次々と黒崎は図面を変えながら説明していき、あたしが時々口を挟むけど直ぐに返答をされた。

 主にあたしが口にしたのは三つだけ。

 『複雑にして整備が直ぐにできるのか』

 『組み込む事によって起こるメリットとデメリット』

 『直ぐに組み込むにはどれぐらい時間が掛かるか』の三つ。

 

 黒崎は―――

 『多少複雑にはなるが、部品を予め用意しておけば直ぐに取り替えれる』

 『メリットは当然機体の強度と耐久性、デメリットは重量が増えるのとモーターを組み込んでいない時は、機動性が現在の戦術機と変わらないか、それよりも劣る』

 『俺達がやれば一機2時間ずつ掛かるが、一般人がするにはその人間の腕次第』

 と返答した。

 

 ……最後のは何気に職人のプライドを逆撫でする様に感じたけど、黒崎ほどの腕を持つ者から言われると、反感よりも闘争心が芽生えると思う……あたしとしたことが、柄にもないこと思うなんて、らしくないわね。

 

 

 

 

ピアティフside

 

 

 

 

 黒崎中佐が副司令に提出した案は、どれも柔軟なものでした。

 これまでにも電力や燃料を縮小する為の試行錯誤をしておりましたが、どれもうまくいかず、増やしてと機体を肥大化させざるおえない様な事ばかりでしたが、中佐が設計した案にはコンパクト化にするための工夫が我々が思い付かないようなところでなされてました。

 基盤の縮小化、回路の大幅な変更、電力の行く先の洗い出し等、やる事は言葉にすれば簡単ですが、これが非常に困難な上に時間がないため、誰も手を着けませんでした。

 もっとも、時間を掛ければどこかの国で発明されていたかもしれませんが、今はBETAとの戦いにそちらに考えつく余裕がなく、直ぐに製作できて整備も比較的楽な肥大化にいたりました。

 よって、今回黒崎中佐が発案したコンパクト化したバッテリーは我々にとって革命的なものです。

 それも、今のサイズのままで制作するなら、1.25倍のバッテリー量を増やすことができるという、とても凄い技術です。

 …アラスカで現在も行われているXFJ計画でやっとロールアウトされた不知火・弐型の難題であるバッテリーを中佐は意図も簡単にこなしてしまいました。

 

 

「このバッテリーの完成の目処は?」

 

「例の機械が出来上がれば、一機分なら三日…枠の固定化と溶接と中の回路と基盤の作成、その他諸々で二つが一機分だから、やっぱり四日ぐらいだな」

 

「掛かるわね。もっと早く出来ないの? あんた人外なんだからできるでしょ?」

 

「無茶言うなッ!? 溶接から何から一から俺一人でやるんだぞ!? それこそ工場で豊富な人員で造るなら話は別だが…って誰が人外だコラッ」

 

「賢治さんです」

 

「霞ぢゃん!?」

 

 

 彼等は楽しそうに会話をしていますが、私は今後のスケジュールを立てて会議室を後にしました。

 明日から、私の仕事がまた増えます……ですが、やりがいのある仕事なので、苦になりません。

 それに、ここまで副司令が楽しそうに話すのを見るのは久しぶりです。

 副司令がお二人を認めている証でしょう。

 社少尉も、お二人が来られてから積極的に人前に姿を現すようになりました。

 あの病人の様に白かった肌も、ほんの少しだけ血が通った健康な肌になった様に見えます。

 あのお二人が来てから、私の周りにあった捨てていった日常(・・)が、戻ってきているように感じます…

 私は、言葉にせずとも、感謝しています。

 横浜基地に、日常を取り戻してくれて、ありがとう―――

 

 

 

 




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