朝田詩乃
日本に帰って来た私達はそれぞれやる事をやっていく。和人と私は仕事や学校で、直葉はBoBが始まるまで新規で作ったキャラでGGOにログインしてレベル上げをしている。すでにダンジョンに潜り込んで大暴れしているみたい。ちなみに和人から装備を貰って即最難関ダンジョンに挑んでいる。それで狩れている事が驚きなんだけど。今ある大迷宮は最下層が五十層で現在、直葉が狩っている場所が四十二層らしい。どう考えても始めて三日で到達できる場所じゃない。
「起立、例」
そんな事を考えていると授業が終わり、放課後となった。今日は和人は仕事で私は一人。私も一緒に行きたかったけれど、帰ってからマスコミに対応したりと色々と忙しく学校での手続きを後回しにしていた。アメリカに行くために休学届けを出していたから、その事について教務課から呼ばれたのだ。
「今回の休学は語学留学といいう形で単位を出す事になりました」
教務課に行ったらそう言われ、対応してくれた事務員の女性が書類を渡してくれる。私は和人の分と直葉の分も書いて渡した。それぞれの印鑑なども預かってきているので問題なく終わった。
「朝田さん、ちょっといいかな?」
学校からの帰り道、公園の傍を通ると新川君が声をかけてきた。
「どうしたの新川君? 今日、学校に居なかったみたいだけど」
「うん、話があるんだ。学校は休んだんだ」
「?」
どうしたんだろう? とりあえず、時間を見て和人の仕事が終わるまで時間がある事を確認する。
「わかった。それで話って何?」
「こっちに」
新川君に誘われるように公園の中に入る。彼がブランコに座った。私はそのまま立っている。
「それで話って何?」
「う、うん……」
新川君は立ち上がって私に近づいてくる。
「僕は朝田さんがす、好きです! 付き合ってください!」
「ごめんなさい」
迫ってくる新川君に私は下がる。
「なっ、なんでっ、やっぱりあいつが……」
「うん。私は和人のものだから、新川君とは付き合えない」
私の身も心も全ては和人のもの。
「あいつは朝田さんの本当の事を知らない! 朝田さんに相応しくないんだ! それに朝田さんは……」
「新川君は私の事を知っているの?」
「好きな子の事を調べるのは当たり前だよ!」
それは気持ち悪いけれど、人殺しの私を好きって言ってくれるのは少し嬉しい。和人に救われる前ならまた違ったかも知れないけれど、今の私は和人だけのものだから。
「でも、ごめんなさい」
「あいつは朝田さんの事がバレたら捨てるに決まっているんだよ! 芸能人が人を殺した事のある人と付き合うなんてできっこない!」
「私は和人に捨てられてもいい。それでも彼に尽くすだけ」
「そんなのっ」
「私はそれでいいの、ごめんなさい。それじゃあね」
時間がおしていた私は新川君に別れを告げて和人を迎えに行く事にするのだった。