子連れ番長も異世界から来るそうですよ?   作:レール

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ルイオスとの会話はちょっと駆け足気味です。

それではどうぞ‼︎


暗躍する影

“サウザンドアイズ”の座敷に訪れたメンバーは白夜叉と“ペルセウス”のリーダーであるルイオスに向かい合う形で座り、黒ウサギ達がここに来た経緯を説明する。

 

「ーーー以上が“ペルセウス”が私達に対する無礼を振るった内容です」

 

「う、うむ。逃げ出した“ペルセウス”の所有物・ヴァンパイアとそれらを捕獲する際の無断侵入、及び数々の暴挙と暴言。確かに受け取った。謝罪を望むなら後日」

 

「結構です。我々の怒りはそれだけでは済みません。両コミュニティの決闘で決着をつけるべきです。“サウザンドアイズ”には、もし“ペルセウス”が拒むようならば“主催者権限”の名の下に」

 

「嫌だ」

 

唐突にルイオスはそう言って言葉を続ける。

 

「決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れ回ったって証拠があるの?」

 

ルイオスはレティシアが暴れ回ったなんていう証拠もない情報を露程も信じていない。

もし仮に“レティシアの石化を解いて聞いてみる”と提案されれば元・仲間という関係を盾にして白を切るつもりでいたし、証拠がないのならば口八丁に有耶無耶にすることも可能だろう。

そんなルイオスの余裕たっぷりで最もな発言に十六夜が切り返した。

 

「確かに吸血鬼が暴れ回った証拠はない。だが、“ペルセウス”の同士が暴れ回った証拠ならあるぜ?」

 

「・・・何だと?」

 

「“ノーネーム”へと無断侵入した“ペルセウス”の同士が三十人程、本拠の近くで暴れ回り、仕方なく本拠防衛のために石化した吸血鬼と共に捕らえている」

 

「なっ⁉︎」

 

思いもよらない情報にルイオスは余裕のある表情から驚いた顔になる。

 

「奴らが暴れ回ったのはここにいるヒルデガルダと戦闘してなんだが、彼女は箱庭に来たばかりで詳しいことは何も知らないらしい。そんな時に吸血鬼と“ノーネーム”に来る前に知り合ったため、捕獲されそうになった吸血鬼を箱庭唯一の知人として助けようとした。・・・どう考えてもそちら側の監督不行き届きだよな?」

 

“ペルセウス”から逃げてきた吸血鬼が勝手に知り合った女性と一緒に“ノーネーム”に無断侵入し、追いかけてきた“ペルセウス”の同士が女性と暴れ回って本拠を滅茶苦茶にした挙句、非礼も詫びずにいるのはそもそも吸血鬼に逃げられたお前らが悪い。だから詫びなんて要らないから決闘を受けろ。

 

これが“ノーネーム”の言い分として作った嘘の混じった真実である。

 

「ふ、ふざけるな‼︎ その吸血鬼はそもそもそこにいる白夜叉が逃がしてーーー」

 

「じゃあ何か?あんたら“サウザンドアイズ”の問題を“ノーネーム”に持ち込んだってことか?その吸血鬼は俺達の元・仲間なんだから関係無いとは言わないが、巻き込まれた身としては許せないんだが?それとも女一人にも勝てない“ペルセウス”は“名無し”如きとの決闘もビビっちまったのか?」

 

十六夜の挑発にルイオスは顔を引き攣らせている。

“名無し”に侮辱されたことがよっぽど頭にきたのだろう。

 

「・・・いいだろう。そこまで言うのならその安い挑発を安く買ってやるよ。二度と舐めた口を利けないよう“ペルセウス”の最高難度のゲームで徹底的に潰してやる。こちらにも準備があるから一週間後にゲーム申請しに来い」

 

もう少し冷静になればいくらでも断る理由を挙げることができたのに、ここまで言われて逃げるなどプライドが許さなかったのだろう。

ギフトゲームを受けるための試練を設けなかったのは自分の手で確実に潰すためか。

何はともあれ、レティシアを手に入れるためのギフトゲームは一週間後となった。

 

 

 

 

 

 

二六七四五外門・“ペルセウス”本拠。“サウザンドアイズ”から帰ってきたルイオスは私室で寛いでいた。

 

「嫌な形でギフトゲームをすることになったが、まぁいい。負けるはずが無いんだからな。勝ったら黒ウサギを戴こうかな」

 

 

 

「果たしてそんなにうまくいきますかね?」

 

 

 

「っ、誰だ⁉︎」

 

ルイオスは慌てて声の聞こえたベランダへと向き直る。

そこにはスーツ姿に髪を後頭部で結んだ、中性的な顔の男が立っていた。

 

「こんな所から失礼。なに、ちょっとした用事ですからすぐに済みますよ」

 

対峙し会話しても相手から敵意は感じ取れない。

ルイオスは警戒しながらも話を聴く姿勢を取った。

 

「・・・用事というのはなんだ?」

 

「今あなた達と問題を起こしている“ノーネーム”のことです。彼らにはこちらの世界で言う神格級のギフト保持者がいます。それも、その首に掛かっている弱体化した魔王ならねじ伏せる程のね」

 

男から与えられた情報にルイオスは二重の意味で驚く。

この男が何者かは知らないが、“ペルセウス”の切り札を今の状態まで含めて知っていることと、弱体化しているとはいえ魔王を圧倒できると言う人間が“ノーネーム”にいることに。

 

「・・・お前はいったい何者だ?」

 

「そんな大袈裟な者でもないです。ちょっと悪魔に関して詳しいだけの情報通ですよ」

 

「・・・それで、僕にそれを伝えてどうしろと?」

 

「取り引きをしましょう。僕はあなたに“_____”を貸し出します。一週間と短いですがそれなりに使いこなしてギフトゲームに挑んで下さい」

 

「“_____”だと?それで、そちら側になんのメリットがある?」

 

「こちらの計画上、彼らを追い込む必要があるんですよ。それで彼らが倒されてもそこまでだったということです。悪い話ではないでしょう?他にもわかっている限りの情報を与えますが」

 

ルイオスは損得勘定で考える。

“_____”は箱庭でも珍しい。“ノーネーム”は元々潰す予定だったのだから戦力が増えるのは大歓迎だ。“ペルセウス”の伝承と関係のない力はいい伏兵にもなるだろう。

 

「いいだろう。その話、乗ってやるよ」

 

そして“ノーネーム”と“ペルセウス”はギフトゲームの日を迎える。

 

 

 

 

 

 

“ペルセウス”の本拠である白亜の宮殿には今、黒ウサギがゲームの申請を伝えるために訪れている。

他のメンバーは宮殿の門の所で待機している。

 

黒ウサギが門の所に戻ってきてすぐ、“契約書類”が降りてきたのでルールの確認に移る。

 

 

【ギフトゲーム名 “FAIRYTALE in PERSEUS”

・プレイヤー一覧:逆廻十六夜、久遠飛鳥、春日部耀、男鹿辰巳、カイゼル・デ・エンペラーナ・ベルゼバブ四世

 

・“ノーネーム”ゲームマスター:ジン=ラッセル

 

・“ペルセウス”ゲームマスター:ルイオス=ペルセウス

 

・クリア条件:ホスト側のゲームマスターを打倒

 

・敗北条件:プレイヤー側のゲームマスターによる降伏。プレイヤー側のゲームマスターの失格。プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

・舞台詳細・ルール:ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に姿を見られてはいけない。姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う。失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行する事はできる。瞬間移動などの転移系ギフトの使用を禁止する。

 

宣誓:上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

“ペルセウス”印】

 

 

“契約書類”に承諾した直後に光に呑まれ、気付けば周りは切り離された空間のような場所へと変貌していた。

 

「・・・黒ウサギ。オマエ、ベル坊の名前って知ってたか?」

 

「・・・いいえ、知りません」

 

「じゃあ、転移系ギフトって“契約書類”に書かないといけない程によくあるのか?」

 

「瞬間移動などの転移系ギフトなんて滅多にありません。ルールに書いたのはゲーム性を考えてじゃないかとも思われますが・・・」

 

“契約書類”を見た十六夜が黒ウサギに唐突な質問をする。

黒ウサギも質問の意味を理解して答えると、十六夜は不機嫌そうな顔になる。

 

「チッ、またか。どうして俺らのゲームには黒幕がいつもいるんだ?」

 

「十六夜君、どういうこと?」

 

十六夜の発言に飛鳥と耀は分からないという表情だ。

 

「いいか?瞬間移動の禁止、これはアランドロンが参加していた場合の対抗策だ」

 

そう、十六夜の言うように今回はアランドロンはおろかヒルダ、古市も参加していない。

彼らの今の立場はルイオスに説明した時のまま、箱庭に来たばかりという証拠として“ノーネーム”には所属していない状態だ。

今は白夜叉の屋敷に参考人という形で招かれている。

 

「どうしてそう言い切れるの?」

 

「この文だけなら特に気にしなかったが・・・問題はベル坊の名前だ。どうして奴らは俺達も聞いていないベル坊の本名を知っているんだ?」

 

あっ、とここでようやくおかしいことに気付いたのだろう。

飛鳥と耀も考え込むような顔になる。

 

「それは誰かに入れ知恵されたからだ。男鹿も何か気付いてるんじゃないのか?」

 

十六夜は今まで黙っていた男鹿に話を振る。

 

「あぁ・・・宮殿の方から魔力の気配を感じる」

 

「ルイオスのギフトは隷属させた元・魔王だからそれじゃないのか?」

 

サラッととんでもないことを言った十六夜に黒ウサギが驚愕する。

 

「ど、どうして十六夜さんがそのことを・・・?」

 

「簡単なことだ。ペルセウスの神話通りなら、奴らは戦神に献上されたはずのゴーゴンの生首で石化のギフトを使っていることになる。だが、星座として招かれたのが箱庭のペルセウスだと考えればゴーゴンの生首があることも納得できる。奴のギフトはさしずめアルゴルの悪魔ってところだろう」

 

アルゴルとは悪魔の頭という意味をもち、ペルセウス座の食変光星のことを指していてメドゥサの生首とされている。

十六夜はそのことに気付いて簡単に調べていたのだろう。

先程のルールの解釈といい知識量といいかなりのものだ。

 

「いや、悪魔って言っても箱庭のだろ?こっちだと魔力じゃなくて霊格になるんじゃねぇのか?」

 

「どうだろうな。やっぱり男鹿の世界の悪魔ってことになるのか?」

 

だとしたらどうしてルイオスがそんなものを手に入れられたのか、誰がルイオスに情報を渡したのか、疑問が次々と湧いてくる中でギフトゲームは幕を開ける。




次からは本格的にギフトゲームが始まります‼︎
やっぱり戦闘描写は難しいですが、期待に添えるように頑張ります‼︎

それと、この小説内では霊格と魔力は違うものとなっています。

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