十番目になれなかった男、ゼロへ   作:deke

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はじまりまじまり






'18/2/11  ちょっと書き足しました。内容にスピリッツの盛大なネタバレを含みますのでご注意ください。


プロローグ

 竜を操り、宇宙を渡り歩く3つの生命があった。

 

 1つは黄金の神。

 2つは白銀の従者。

 

 3柱は旅の果てに、大地と海に分かれたばかりの惑星へと降り立った。

 水辺から陸へと魚が這い上がり、巨大なトカゲの一族が地上を闊歩し滅んでいく様を彼らは悠然と眺めていた。

 そして3柱はほんの戯れに、森に潜み怯え隠れるだけの脆弱な生き物に知恵を与えた。

 選ばれたのは、サル。

 愛によってではなく、それは次なる旅への備え。竜に喰わせる糧として、その繁殖を促したにすぎない。結果的に、3柱は人類の祖となった。

 

 数十万年の時を経て、白銀の従者の片割れが反乱を起こした。

 時空を自在に切り結ぶ能力を持つ従者は、奇策によりもう一人の従者を粉砕すると、己の肉体の崩壊と引き換えに、黄金の神を無限の虚空「牢獄」へ封印した。

 

 「牢獄」とは現宇宙から切り離された絶界の空間のこと。それは神の力をもってしても破られることはなかった。

 

 また時が経った。

 人類は科学によって十分にその数を増やした。人種、言語、富、イデオロギーを口実に、他者を押しのけずにはいられないほどに。

 皮肉なことに、科学の発展は人間同士の争いが苛烈になるほど早まる。

 ヨーロッパ・アメリカ大陸を中心とした列強による「世界」の切り分けが進む中、奇しくも3柱が最初に降臨した極東の地には、大国を打ち破るほどの強大な海軍力を有する帝国が突如として歴史の表舞台に躍り出た。

 

 力と力の力場は真っ向から激突し、世界が戦火に覆われるまでにさほどの時間はかからなかった。

 

 だが、全ては黄金の神の掌の上のこと。

 肉体は牢獄に囚われようとも、現世への復活を願うその声は、耳を傾ける人間がいる限り聞き届けられる。そんな人間たちが寄り集まり、神を大首領に据えた組織を作った。

 

 組織の名は「SHOCKER」。狙うは世界征服。

 

 ヨーロッパにおいて、当初神の願いを実現しようとした組織は、連合国の圧倒的な軍事力を前に1度はその野望を打ち砕かれたかにみえた。しかし連合国が打ち破った集団は、ただそそのかされただけの哀れな道化に過ぎない。大戦終結後、組織は以前と変わらぬ秘密活動を続けていた。

 

 ショッカーが主力とする兵器は、人間と動植物を科学によって融合する「改造人間」。世界征服という目標を実現するにはあまりに非効率的な兵器であった。

 

 それでもなお、「改造人間」は組織の教義と矛盾しないのだ。

 

 死神と呼ばれた天才科学者が立案し、実行した「偉大なる計画」。

 「偉大なる計画」の終着点は、神の宿る器を現世に用意することにあった。目論んだのは、牢獄内部にある神の肉体と、同物質たる現世の肉体を共鳴させての人格交換である。神の肉体と、その精密さから歪みまでを再現するために、「改造人間」の製造は単に技術とノウハウの蓄積に重きを置いていた。

 

 時は西暦1971年。

 「偉大なる計画」の最初の実験の成功例が、ショッカー日本支部より伝えられた。

 その後、被験者の男は脳改造の寸前に改造手術責任者の手引きにより脱走し、かつて神に反逆した白銀の従者のように、協力者とともにショッカーの作戦及びテロ活動の妨害を開始した。

 

 男の名は「仮面ライダー」。

 

 男は迎撃に徹し、抗い続けた。

 それでも着実に犠牲者の数は増えてゆく。救えずに、その手から零れ落ちた多くの生命があった。

 やがて仲間を得、ショッカーを壊滅に追い込むまでに至るも、また別の組織が台頭する。その組織をやっと倒した途端に、再び別の組織が台頭する。まるで鼬ごっこだった。終わりの見えない、不毛な戦いに思われた。

 だが、地獄の道連れと理解してなお、また「仮面ライダー」を名乗らなくとも、新たな戦いが始まるそのたびに、男に賛同する者たちが現れては自分の意思で戦いに身を投じていったのも事実である。

 

 物語の主人公は、神に捧げられた数百数千万の生命のうちの1つ。身体を、そして名前を奪われ実験の被験者とされた男が、魔法文明の発達した異世界に飛ばされて、「仮面ライダー」と同じように組織に抵抗を始めたら? というそんなお話。

 

※この文章以下当初「プロローグ」の内容となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

補正計画立案書より抜粋

・以降この件に関する事案を最重要機密とする。

 

 補足事項

 ・機密保持Cに移行。

 

 

第1次中間報告より抜粋

・901支部にて「システム」の建造を開始。

・同支部にてプランNO.7「HOPPER」を実行。

 

 

第5次中間追加報告より抜粋

・先に完成したプランNo.01、プランNo.02、プランNo.04、プランNo.05、プランNo.06, までのシリーズの調整を終了。

・901支部へ移送の後、訓練室に配備。

 

 

第8次中間追加報告より抜粋

・767支部は本日付で「シュミレータ」試作機の開発に着手。世界中の優秀な科学者たちの脳を並列させたこの演算機には従来のスーパーコンピュータを超える演算能力が期待される。

 

 

第17次中間追加報告より抜粋

・「シュミレータ」試作機の欠陥を発見。実験の結果、全体の七割の壊死を確認。これでは使い物にならない。

・計画の補正案を提出。

 

 

第22次中間報告より抜粋

・新型機体、ネーム「HOPPER」の設計を完了。

 

 

第29次中間追加報告より抜粋

・「システム」の実験機が完成。試験を開始する。

 

 補足事項

 ・機密保持Dに移行。

 

 

第38次中間報告より抜粋

・新型機体「HOPPER」の製造を開始。データ採取を目的とする一試作機体の製造に着手。

 

 

第40次中間報告より抜粋

・製造完了。術後に拒絶反応は認められない。

・経過観察の後リハビリテーションを行う。

・プランNO.7の進行度に8%の遅延が発生。Dr.ローズの報告を待つ。

 

 

第42次中間報告より抜粋

・先に行った模擬戦闘で新型機体「HOPPER」は、戦闘員三体を五分以内に殲滅。

・さらに調整を加え、新開発装備の追加を提案する。

 

 補足事項

 ・対戦機体は「SKELETON」。製造番号はS-SHC-201からS-SCH-203。廃棄済。

 

 

 

第47次中間報告より抜粋

・「HOPPER」に不穏な思想傾向発生。再度脳手術を行う。

 

 補足事項

 ・記憶の消去に不備があったためと推測。手術責任者を粛清。

 

 

第48次中間報告より抜粋

・手術無事成功。新型機体「HOPPER」を訓練室に本格配備。

・訓練期間終了後、プランの完成となる。

 

 補足事項

 ・組織に栄光あれ。

 

 

第50次中間追加報告より抜粋

・「システム」の試験運用を行っていた901支部からの通信が途絶えた。定時連絡に応答なし。何らかの事故が疑われる。

・本部に調査を依頼。

 

 

事故調査報告より抜粋

・先日発生した901支部における爆発事故について。

・周囲の被害状況とエネルギー残留値の測定データより、事故原因は「システム」試作機の暴走と断定。

・新型機体とデータの回収を最優先事項に設定。本日調査開始。

 

 

事故調査最終報告より抜粋

・研究員、戦闘員、非戦闘員含めた全員の死亡を確認。

・捜索目標の新型機体「HOPPER」及び同支部に配備されていたプランNo.01~No.06ら計7機体は、事故の際に消滅したと思われる。

 

 補足事項

 プランNo.01~No.07の遺体は発見されていない。

 

 

最終報告より抜粋

・本部はプランに関わる全ての計画の凍結を決定。関連するデータ、文書についても同様に処分する。

・「システム」、「シュミレータ」に関する研究は責任者が事故死により不在のため、幹部会の決定により本部へと委任。開発に携わった研究員に本部召集の旨を通達。

・プラン「最後の者」の実行を提案。

・一切の報告を終了する。

 

 




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