まっちんぐっ!   作:やと!

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なかなか最強になりませんが、私としては地に足の着いた最強ものにしたいので地道に彼女を強くしていきます。


第6話

 

 

 

 

 

 

 

 

お互いに泣いて、しばらく彼女を抱きしめた後、彼女から体を離す。そうして涙でにじんだ視界で彼女を見てみると、泣いたせいで目が真っ赤になっていた。

 

「シズク、あんた目が真っ赤になってるよ」

 

「ふふ、マチさんだって真っ赤です」

 

どうやら私もだったらしい。

 

「「……っぷ、あははは!」」

 

なんだかおかしくなって、二人そろって笑い出してしまった。でも、シズクがこうやって思いっきり笑うところを初めて見た気がする。原作でだって彼女はこんなに感情をあらわにしたことなかっただろう。

 

ひとしきり笑いあった後、私は彼女に一つの提案をする。

 

「……ねえ、シズク」

 

「……なんですか?」

 

「もしあなたがよかったらなんだけど、あたしと一緒に来ない?」

 

「……えっ、でもそれはいくらなんでもマチさんに迷惑を」

 

「迷惑なんかじゃないわ。あたしは大歓迎よ。

 

でも落ち着いた生活はできないと思うし、危ないかもしれないけど」

 

 

 

 

 

 

そういうと彼女はまたうつむいてしまった。もしかして嫌だっただろうか。……って、よくよく考えたら、いまのあたしはただの浮浪児じゃないか!?そんな奴に一緒に来ない?なんていわれても困るだけだろう。ましてあたしは大の大人を簡単に殺してしまうほどの力を持っているんだから、なおさら断りづらいはず。

 

 

 

 

 

 

「っごめん、ごめん!

 

こんな浮浪児に、いきなりそんなこと言われても迷惑だったよね。さっきのは」

 

 

 

「そんなことありません!」

 

 

あたしがあわてて訂正すると、シズクが勢いよく顔を上げた。その目には先ほど泣き止んだはずなのに、再び涙がにじんでいた。

 

「違うんです。今までこんな風に私のことを考えてくれる人なんていなかったから。嬉しくて。

 

でも私なんかが付いて行ったって、マチさんの迷惑になるだけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは違うわ」

 

今度はあたしが声を出す番だった。でもそれだけは先に否定しておかないといけない。もしシズクがあたしについてきてくれるんだとしても、そのことであたしに負い目を感じてほしくない。

 

「あたしが一緒にいたいから、誘ってるの。迷惑とかそんなこと絶対ないわ」

 

「でも……」

 

「決めた。シズクはあたしと一緒に来ること。

 

あなたはあたしに言われて、仕方なくついてくる。いいわね」

 

このままだとシズクはきっと納得しないだろう。それなら強引にでも連れて行く。かなり横暴だけど、きっとこのままあたしと別れても、すぐにマフィアにつかまってしまうだろう。それならまだ念がつかえるあたしといた方がましだ。

 

しばらくシズクは考え込んでいたが、何かを決心したかのようにこちらを向いた。

 

「わかりました。マチさんについていきます。

 

でも一つだけ」

 

 

 

 

 

 

 

「何?」

 

 

 

 

 

 

「私は……あなたに言われたから付いて行くんじゃありません。

 

私もあなたと一緒にいたいから付いて行くんです」

 

そういうと彼女は先ほどの笑いとは違う、とてもきれいで柔らかな笑みを浮かべた。それを見たあたしもなんだかとてもうれしくなって自然と笑みがこぼれ出た。

 

「……そう。分かったわ。

 

これからよろしくね、シズク」

 

「はい、よろしくお願いします。マチさん!」

 

 

 

 

 

 

あたしはこの随分と生き難い世界で、この日かけがえのない家族を手に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、それじゃあこれからのことを考えなきゃね」

 

「はい」

 

そう、これから一緒にいるとは言っても、まず目下の障害を排除しないといけない。少なくともこの町から出てマフィアンファミリーの影響から逃げられる場所に移動しなければ、シズクが危ない。

 

さっきのシズクの話に出てきた二人の男とジジイどもはおそらくだが、「陰獣」と「十老頭」だろう。それを考えればシズクの昨日までの状況はとてつもなく危なかった。十老頭に捕まれば逃げられなかっただろう。

 

だとしても未だシズクが危険な立場にいることは間違いない。ガラディアとかいう男は今頃死に物狂いでこの町を探し回っているはず。そのうちこの廃ビル群にも奴らの手が伸びることは確実だ。

 

さすがにマフィアの最高戦力である陰獣を、シズクの捜索のために当てることはないかもしれないが、仮に陰獣が出てきたら今の私では対抗できないことは明らかだ。

 

絶対にマフィアに見つからず、かつこの町から速やかに脱出する。

その上金もあまりないから、時間はかけられない。

 

はたして本当にそんなことが可能なんだろうか。だがどれほど困難であろうとやらなければならない。でないとシズクの未来は悲惨なものになってしまう。

 

 

 

 

「そうね……まずは今日中にヨークシンから出ましょう」

 

「えっ!今日ですか?」

 

「ええ、ヨークシンに長居するのはよくないわ。この町はマフィアの中心地みたいなものだし、シズクはもう顔が割れてしまってるから。仮に奴らが未だ捜索を続けているとすれば、ここにも時期に手が伸びるでしょう。

 

そうなる前に鉄道か、飛行船を使って別の場所に行くわ。幸い路銀もまだぎりぎり残っていることだし」

 

「……わかりました。ここを出たらどこに行くんですか?」

 

「んー、とりあえず最終目的地は天空闘技場かしらね」

 

「天空闘技場?」

 

「ええ。天空闘技場っていうのはね、その名の通り闘技場で勝ち進むと結構なお金がもらえちゃうから、今のあたしたちにとっては好都合なのよ。それに大陸が違えば、さすがにマフィアも追ってこれないだろうからね」

 

「へ~、そんなところがあるんですね。でも危なくないんですか?」

 

「大丈夫、大丈夫。あそこにいるやつらなんて昨日のマフィアと大差ないわ」

 

「……わかりました。でもあんまり危ないことは止めてくださいね」

 

「もちろん、わかってるわ。だからひとまずそこを目指しましょう」

 

 

 

シズクと相談を終えて、早速荷物を片付け始める。行先はひとまず空港か、鉄道駅だ。急ごう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真昼間のヨークシンシティをゆっくりと目立たぬように歩く。纏や絶は使うと念能力者にばれる可能性があるので、一般人と同じく弱い垂れ流しにしている。大通りの真ん中を歩いているため、人ごみに紛れて、早々目立たないはずだ。

 

大通りに出るときにやはり至る所にマフィアの下っ端が立っているのを見かけたため、かなりの数のマフィアがシズクの捜索に駆り出されているのであろう。シズクはひとまずあたしが露店で買った帽子と服を着させている。顔が割れているし、服装もシズクが来ていたのは彼女が家で着ていたと同じだというから、彼女には悪いが処分させてもらった。できるかぎりマフィアに気づかれる可能性は減らしたかった。

 

そんなわけで今のシズクは男の子用の服を着て、肩にかかるほどの髪は全部キャップの中に押し込めているため、見た目はほとんど男の子だ。さすがに顔を覗き込まれれば、ばれてしまうだろうが遠目からなら見られても問題はないだろう。

 

 

 

シズクの手を引きながら、落ち着いてゆっくりと人ごみの中を抜ける。下手に急いで目だったり、誰かにぶつかってトラブルになったら面倒だからだ。

 

今向かっているのはあたしがここに来たときに使った高速鉄道の駅だ。飛行場はヨークシンシティの町の外にあるらしい。よく考えればクラピカと旅団が戦ったときも、飛行場までは車で移動していた。

 

そのせいで早速天空闘技場に行くという計画はとん挫してしまった。あたしたちでは町の外に出ることはできない。徒歩で飛行場まで行くのも厳しいし、町の外に向かえば向かうほど、人は減りマフィアの見張りは増える。だから今は鉄道で別の町に移動する。天空闘技場はヨルビアン大陸にはない。少なくともどこからか飛行船を使って、海を渡らなければならない。

 

 

 

「シズク、大丈夫?」

 

繋いでいる手が震えているのがわかる。やはり怖いのだろう、仮につかまってしまえば彼女は十老頭の貢物にされてしまう未来があるだけだ。

 

「……全然大丈夫ですよ」

 

そういってシズクはぎこちなく微笑む。それに対してできるかぎりシズクが安心するように微笑み返す。

 

 

 

 

 

 

大通りを歩くこと数十分。ようやく駅が見えてきた。この道はヨークシンのメインストリートの一つだから、駅もこの通りにある。駅の入り口にもマフィアの見張りがさりげなくたっている。けれど駅の入り口は大量の人が押し合いへし合いしているため、駅構内に入るのはさほど難しくないだろう。

 

 

「シズク、絶対に手を離さないでね」

 

「うん」

 

 

もう一度手をしっかり握りなおして、人の波に入っていく。

 

 

 

人ごみを抜け、構内に入って、まっすぐに自動券売機に向かう。構内には黒いスーツ姿の人間など山のようにいるため、もうすぐにマフィアと見分けをつけにくくなってしまった。

 

券売機でほどほどの遠さの、かつ飛行船が出ている都市に向かう鉄道の券を購入した。そこからジャポンに向かうことにする。天空闘技場へは遠回りするせいで路銀が足りなくなってしまうだろう。ファイトマネーを手に入れる前に、天空闘技場に向かうための金を稼がなくてはならなくなってしまった。

 

 

 

 

 

出発時間と、今の時間を確認し列車が来るまでの間二人でトイレに籠ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ時間だね、行くよ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

トイレから出て、ホームに向かう。なるべくマフィアの視界にとどまりたくなかったため、時間までトイレで人目をしのぎ、時間ぎりぎりに駆け込み乗車することにしたのだ。なんだか滑稽な気がするが、待合室やカフェショップのような人目につくような場所にいるよりはるかにましだったはずだ。

 

 

 

だが心のどこかで急ぐ気持ちが出てしまったのだろう。

 

「きゃっ!」

 

シズクが人とぶつかってしまったのだ。

 

そして最悪なことにその拍子にシズクの帽子が脱げてしまった。

 

「っシズク!」

 

 

 

 

 

 

「っいたぞ!!あのガキだ!」

 

 

 

 

 

 

 

クソッたれ!最悪なことに今の一瞬でマフィアに見つかってしまったらしい。

 

 

「シズク走って!あたしが足止めするから、先に列車に乗ってな」

 

「で、でも!」

 

「あたしならマフィアが何人こようと対処できる。

 

でもあんたを守り切れる保証はない」

 

「……わかりました。でも絶対来てくださいね!」

 

「わかってるわ。約束する」

 

 

 

あ、今ひどい死亡フラグを立てた気がする。

 

……まあ気にしないようにしよう。そう思ってあたしはマフィアに備えて全力で練をした。未だ練の継続時間は3分と持たないが、全身のオーラを練り上げて一気に放出し、且つとどめる。あたしのもつすべてのオーラを外へ。念を使っての攻撃は簡単に敵を殺してしまうが、あたしの素の戦闘能力ではマフィアの相手はできない。

 

さあ、かかってこい。そう思った時だった。前方から強力な念能力者が急接近してくるのを感じたのは。

 

 

 

 

 

 

っこいつ、街中で見かけたようなレベルの低い奴じゃない!あたしよりもはるかに膨大なオーラ、素人目に見ても滑らかな身のこなしは今のあたしにどうにかできるような敵ではない。

 

 

でも・・・・・・・ここで引けばシズクが危ないんだ。それに今更逃げ場などない。まだ拙い堅を全力で維持する。

 

 

 

そして数秒後。

マフィアの下っ端があたしに殺到する直前に、その男はあたしの前に姿を現した。

 

鋭い三白眼に、面長の顔、不自然に伸びた舌が、奴の異常性を明確に表していた。それはどことなく蛇のようで……

 

 

駆ける勢いそのままに奴が拳を振り上げる。捻りあげた拳に奴のオーラが急速に集まって、まるで光を放っているようだった。おそらくこれはすさまじいレベルの「流」なのだろう。

このまま奴の拳が振り降ろされればあたしは死ぬ。そう思えるほど強力なオーラだった。

 

避けないとっ!そう頭ではわかってる。分かっていてもあたしの足はまるで鉛のように重く、びくりともしなかった。

 

あたしはうぬぼれていたいたんだ。

念を覚えて、かつての世界で強者だった無法者を一方的にひねり殺したことに慢心していた。

 

 

所詮あたしは念を覚えただけのガキだった。本当の念能力者の前では手も足も出ない。

 

 

 

あたしは死ぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那にそんな考えが浮かんだ瞬間。

 

あたしの視界に同じく光り輝く何かが割り込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

「……まったく、女の子に手え上げるなんて、男の風上にも置けないやつね」

 

 

 

 

 

 

目の前に立っていたのは背の高い女性だった。腰まで伸びたポニーテール、タイトパンツとシャツから伸びたしなやかな肢体、そんな華奢な女性から発せられるオーラは、あたしなんかより、そしてあたしを殺そうとしていた男よりもはるかに膨大だった。

 

男の拳を左の手のひらで受け止めた女性は、今度は右腕にオーラを移動させた。体全身に膨大なオーラを残しながらも、右腕にも相当なオーラを集中させている。

 

彼女の右腕に集まった力強いオーラが、今のあたしにはとてもまぶしく見えた。

 

 

 

 

「飛びな」

 

 

 

 

 

右腕が掻き消える。一瞬ぶれたように見えた瞬間、男の腹に彼女の右腕が突き刺さっていた。

 

 

 

男が吹き飛ぶ。

 

 

 

 

 

「チッ、ぎりぎりで防いだわね」

 

 

 

 

 

少しいらだつように彼女はそうつぶやいた。そして周囲から遅れて悲鳴が上がる。

 

あたしの頭は混乱していた。どうしてあたしはまだ生きているのか。なぜこの女性はあたしを助けてくれたのか。シズクは列車に乗れたのか。ここからどうやって抜け出そう。

 

 

頭の中でぐるぐると思考が右往左往していると、突然あたしの身体が宙に浮いた。

 

 

 

 

「ほら、ボーっとしてなさんな。行くよ」

 

 

 

 

気づくとあたしはあの女性に抱きかかえられていた。

 

 

 

「あんたの乗る列車はどれだい」

 

「さ、三番ホームです」

 

 

 

 

追いつかない思考で、何とか彼女に返答する。

 

「三番ホームね、ちょっと揺れるけど我慢して」

 

そういうと彼女は風のように駆けだした。うろたえるマフィアどもと、ざわつく野次馬が遠ざかっていく。

荷物のように脇に抱えられていたが、特に抵抗することもなく、あたしはその光景を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




出てきた陰獣はゲンスルーくらいの強さにしようかな

感想返しできてなくてすいません。余裕ができ次第早めに返答します

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