まっちんぐっ!   作:やと!

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書いてる途中にマチの口調や一人称視点の書き方を二転三転させたのでおかしな点があるかもしれません


第3話

 

 

 

 

 

 

 

あれから二カ月ほどの時間がたつ。

 

その間、今まで通り廃品回収の依頼をこなしながら、念の修行を絶えず行っていたため、念能力者の赤ん坊レベルから小学生レベルくらいまでは成長したような気がする。さすがに初期の成長は早い。こういうものは極めれば極めるほど成長率は逓減していくものだから、ある程度のところまでは一気に成長するはず。原作のゴンやキルア、クラピカのことを考えれば「才能」さえあれば早い段階でも十分な強さを得られるはずだ。そこから先、ネテロ会長やビスケクラスの力はまだ必要ないが、原作が始まり物語が急速に動き出すころにはそれに準ずる程度の力はつけておきたい。

 

 

いまだに堅はオーラ総量が足りずできていないが、もとよりこの期間は纏と絶の成長に当てていたためそれも仕方ない。そのおかげで纏は寝ている間でも続けることができるようになったし、絶もほぼ完全な精度で行動することができる。

 

 

当然のことながら発はいまだに作っていない。というより何の気なしに水見式をやってみたら、念が変化形明と特質系の二つの反応を示すという奇怪な事態を起こしたため、当分、発は作らない方がよさそうだ。

 

さてあの職安の受付に今年は何年かというのと、流星街の位置を聞いてみたところ今は1983年で、原作に入るころにはおそらく22、3歳というところだった。まだまだ肉体的には最盛期であるという点ではかなりありがたい。そして意外なことに流星街はヨークシンとさほど遠くないらしい。高速鉄道を使えば数時間といったところか。二か月間ために溜めたジェニーは高速鉄道を使ってもまだまだ余裕がある。なんたって、家賃もインフラ代もいらない食費のみの生活を送っていればそれは金もたまるというものだろう。

 

というわけでそろそろ流星街を離れてヨークシンシティに向かおう。まずはヨークシンに行って、いろいろと情報を集めたい。さすがに念を全部独学で行いたくはないから、早めにハンター試験を受けて念の師匠を手に入れたいものだが、いくら念を覚えたからと言ってそう簡単に試験に合格できるのだろうか?念は覚えたといってもまだまだ戦う経験も手段も乏しいあたしが今のまま試験を受けるのは危険すぎる気がする。

 

 

そう考えてなるべく人が多く集まるヨークシンで念の師を見つけることにした。ヤバい奴はあたしの直感でなんとか回避できるだろうし、逆に良い人物も直感に頼ればいけるはず……だといいんだけどね。というかそろそろここに居続けるとヤバい気がするからそろそろ出発しよう。

 

 

しかし残念なことに最後の最後で失敗したらしい。少し遅かったようだ。ああ、あたしのおバカ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今日いつも仲間とたむろしてる場所からかなり離れた地区に来ている。というのも、妙な噂を聞いたからだ。

 

 

噂といってもウヴォ―が町の奴らから聞いてきたのを又聞きしただけだが、何やら北地区のはずれにかなりの頻度で廃品回収をこなす少女がいるというのだ。聞けばその少女の年齢はまだ十にも届かないような幼い少女で、はじめに聞いたときは誇張されたデマだと思い聞き流したが一週間ほどしても噂が止まないうえに誰もかれもが「少女」という点で一致しておりだんだん否定できなくなってきたからだ。

 

 

注目したのが「幼い少女」が「廃品回収」を「一人」で行っているという点。これが流星街の大人たちであれば当たり前の話だが、噂が真実なら話は変わってくる。俺たちより幼い少女が一体どうやって廃品回収を済ませているのか気になった。廃品回収は実際はその言葉でイメージするほど簡単なものではない。俺たちの中でも一人で依頼をやり遂げられるのはウヴォ―かフランクリンくらいだ。しかもいくらウヴォーたちが子供にしては力があるといっても、所詮は子供、一日かけても稼ぎはいいとは言えない。

 

 

それほどに実際は体を酷使する内容だから、仮に少女が本当に行えているのなら、何らかの秘密があるはずだ。それを狙って今日俺はここに足を運んだ。なんとしても方法を聞き出したい。可能なら俺たちのグループに引き込みたいが、不可能なら力づくでも口を割らせる。正直今の俺やフェイタンは普通の依頼を行おうとしてもせいぜいが、居住区の清掃やらおつかい程度で実入りが悪すぎる。スリや空き巣は実入りがいいだけ、危険度が高い。この流星街では同胞に手を出すのはご法度だから、悪事がばれてここを追い出されると面倒だ。

だからその少女の方法を聞くことができれば相当生活も楽になるはずだ。

 

北地区第三セクターの居住区で聞き込みをしたが、基本的に居住区から離れたはずれのゴミ山で生活しているらしい。それを聞いてまたまた噂がデマなんじゃという疑いが深まる。廃品回収をこなせるくらいなら居住区の一角を借りるくらいできるだろうに。仮にもし噂が本当だとしたら相当な額の金をため込んでいることになる。

 

もし仲間にならなければそれはそれで好都合だ。流星街では確かに同胞殺しが罪に問われるが、所詮流星街の規則である。外のような警察組織があるわけでもなく、目撃者がいなければ基本的に罰せられることはない。そのうえ居住区指定された場所ですらないのなら、殺すのも隠ぺいも簡単だ。どちらにせよ俺には好都合だ。

 

そんなことを考えていると、次第に少女がいると言われた場所付近まで来ることができた。そしてそこには噂通り一人の少女がいた。圧倒的な、そして凶悪なまでの威圧感を放って。

 

 

 

 

 

 

 

「あら、あんた……こんな離れに何のよう?」

 

 

 

確かに噂通りそこには幼い少女がいた。身なりはそれなりに整っており、流星街のものにしては妙に小奇麗なシャツとズボンをはいている。髪は後ろで一つにまとめてあり、おろせばそれなりに長いだろう。これからどこかへ行くところだったのか鞄を背負っていた。

 

その姿は確かに少女そのものだろう。だがその身にまとう奇妙なまでに老成した雰囲気は明らかに幼い子供のものではない。今の問いかけも明らかに子供の口調ではなく、むしろこちらを年下であるかのように軽く問いかけてきた。そして理解が及ばないこの威圧感。今すぐにでもここを逃げ出したくなる。

 

 

 

こいつに手を出してはいけない。そう思わせる何かがこいつから発せられていた。

震える声を必死に抑えて、その問いに返す。

 

「……いや、なにやらすごい少女がいると噂を耳にしてね

 

それは君のことかい?」

 

「さあねえ、あたしは聞いたことないけど」

 

否定したされたところで意味はない。特別自慢に思うわけではない直感がそう告げている、この少女こそが噂の人物だと。

 

「……そうか、それは残念だな。

 

……聞いた話によると、その少女は一見非力な体だというのに大人数人がかりで行うような重労働を難なくこなすというんだよ。

 

 

今の俺にもできるようになるような秘訣でもあるんじゃないかと思って聞きに来たんだけど、君が違うということは無駄足だったってことかな?」

 

冗談ではないがこの少女とやりあいたくはない。こんな小さな体で、武術の心得があるようにも見えないというのに、勝てるビジョンがまるで浮かばない。だが、せめてその種明かしだけでもしてもらいたいのだが。

 

「そうね、あたしは生憎知らないけど、もしあたしがその少女だとしても他人に教えたりはしないんじゃないの。きっとそれはその子の生命線でしょ、ほかの人間に真似られたら困るんじゃないの?」

 

やはり教えるつもりはないということか。何かの対価を出そうにも、今の俺には出せるものなどない。完全な無駄足だったか?いやこの少女は確実に何かを知ってる。できるかぎりの信頼関係を築いておくべきだろう、そう俺が考えたその時だった。

 

「そういえば……あんた人を殺したことはある?」

 

あまりにも突然の、前後の会話と関係のない質問に一瞬思考が停止し、さらに先ほどの口調と違うどこか冷たく重い口調で尋ねられた。別に殺気がこもっているわけでもないのに、この返答に自分の命がかかっているような気がした。

 

「……いや、そんなことあるわけないだろう?そんな奴は議会に殺されてるよ。」

 

震える声を抑えて嘘をつく。実を言えばもう量の手の指では数えきれないほどの人間を殺している。だがそれを言うことは致命的なミスなようにも感じた。今の問いかけは俺自身の倫理観を問うているような、そんな気がしてならなかったのだ。

 

返事をした後も彼女はこちらを、何かを見極めるように冷たく睨み付けていた。正直生きた心地がしない。

 

しばらくこちらを睨みつけた後、彼女はようやく視線を緩めた。

 

「……いや、悪かったわね。最近物騒でしょ?同胞殺しの依頼だっていつまでたっても減りゃしないし。だから身を守るためにも初対面の人間は警戒することにしてるの。」

 

「……確かに俺ももうすこし警戒した方がいいかもね。」

 

 

重苦しい雰囲気が霧散する。どうやら危機は乗り切ったらしい。だが、その安堵から、興味本位から、ふと彼女にこんな質問をしてしまった。

 

 

 

「……ねえ、もし俺が人を殺したことがあるって言ってたらどうしてたの?」

 

つばを飲み込みながら、尋ねる。すると彼女は再びこちらに鋭い目を向け

 

「別になにもしないわよ」

 

そう一言だけ呟いた。

その瞬間だった。本当に一瞬のうちに俺は腰を抜かしていた。先ほどまでとは比べ物にならない凶悪な気配が俺の体を、喉を締め付ける。無意識のうちに呼吸ができなくなっていた。

 

その時の彼女から発せられた身の毛もよだつような殺気を俺は一生忘れないだろう。死んだと思い込むほどに彼女は俺の中に恐怖の楔を差し込んだ。気づくと全身ががくがくと震え、失禁していた。瞳からも涙が零れ落ちる。

 

 

「まああんまり悪いことはしない方がいいよ。こんな物騒な世の中で恨みを買ってたら、命がいくらあっても足らないし。」

 

そういって彼女は座り込む俺の横を通って、居住区の方に向かっていく。

 

「ど、何処へいくんだ?」

 

「野暮用」

 

一言そういって彼女は去ってしまった。

 

これが俺の中に恐怖という名の楔を打ち込んだ少女との、長い長い戦いの始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

まったくもって、世の中うまくいかないものだ。

気づいたら住宅街から子供版クロロが接近していた。大人の時と同じように額に包帯を巻いてるものだからすぐに気づいた。

これでもう流星街とはおさらばって時にまさかクロロ=ルシルフルと接触してしまうとは運がない。言い訳させてもらえばあの野郎、あたしと比べても対して遜色ない絶を、おそらく無意識に使ってここにきやがった。焦ってそっちの方向に念と殺気を放ってしまったのも仕方ないことだろう。

 

どうやら奴はあたしが少女の身でありながら廃品回収を行っているという噂を聞きつけて、ここまでやってきたようだ。あの受付が漏らしたんだろうか、あんちきしょう。なんともご苦労なことで。

 

だがまあ奴との会話でも話したように教える気はなかったけどね。

 

正直生かしておいてもろくなことはないし、現段階ではあたしでも殺せそうだったからここで奴を殺してしまおうかとも思ったが、残念ながら居住区の方からいくらか視線を感じたからやめておいた。さすがに今議会に目をつけられて自爆テロなんかやられたら、余裕で死ぬ。原作のウヴォーだってバズーカでだいぶ痛がっていたじゃないか、念は万能ではないのだ。

 

だから最低限、奴が原作のような外道にならないよう脅しをかけておいたが、果たしてどうなることやら。脅しといっても、「こいつ殺したい」と念じながら、念で奴を包み込んだだけだ。原作でヒソカがゴンやキルアにやっていたのを真似してみたが、思ったよりも効き過ぎた。彼がまだなんの犯罪も犯していない子どもだったなら悪いことをしてしまったかもしれないが、私の勘がそんなことはないと告げていた。ああ、恥ずかしい、馴れない真似はするもんじゃないわ。あれで殺しに対しての無意識の拒否感でも持ってくれないかね、パブロフの犬みたいに。まあ無理だろうけど。

 

あたしにしたって原作ではポンポン人を殺してたが、今のあたしは所詮男子大学生の記憶を持つことで、7歳の少女が多少成長した程度の精神しか持ち合わせていない。要は殺人とは結局無縁の世界でしか生きていないのだ。この世界で生きていく以上早く殺しは経験しておいた方がいいだろうが、今はまだ人を殺したことなんてない。まあ原作のようになりたくないし、善人の幸せを奪うってのも胸糞悪いから、殺しを経験するなら対象は悪人だろう。

 

はあ、最後の最後でなんかケチがついてしまった、さっさとヨークシンに向かうとしよう。

 

 

 

 

 


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