ニャル子と和装の少女が衝突し、共に転げ落ちた後、その場で唯一といっていい常識人である黒ウサギが和装の少女を止め、逆にセクハラにあうという軽いトラブルがありつつも、店員よりも立場が上らしい少女に連れられ畳の部屋へ通された5人と猫1匹。
ちなみに黒ウサギが奮闘している間に十六夜が店員相手にセクハラに近い要求をしていたりしたが、完全な余談である。
その5人…黒ウサギ、十六夜、飛鳥、耀、ニャル子…を一通り眺めると和装の少女は手に持つ扇子を今までの痴態からは想像が出来ないほどに優雅な動作で開き口を開く。
「さて、先はドタバタしていてろくに挨拶できなかったからの、改めて…私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている"サウザンドアイズ"幹部の白夜叉だ。ここの黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやってる器の大きい美少女と認識しといてくれ」
その尊大な物言いに対して黒ウサギが「はいはい、お世話になってますよ」等と投げやりだが特に反論等をしないあたり、少女…白夜叉が黒ウサギ達に対して手を貸しているのは事実なのだろう。
と、そこでニャル子が疑問の声を上げる。
「すいませーん、コミュニティが崩壊ってなんですか?」
そこで黒ウサギがしまった、といった表情をする。
実は黒ウサギが所属するコミュニティ”ノーネーム”はその名と旗印を魔王と呼ばれる存在に奪われ、かつてのメンバーもバラバラにされた状態であり、組織としての機能はほぼ果たしていない状態であった。
そして、飛鳥と耀は今は別行動中のジンより説明を受けていて、十六夜は自身でその事実に気付いていたため、一人行方不明だったニャル子はその存在を知らなかったのである。
「あぁ、説明を忘れていました。実は…」
そこで改めて黒ウサギがニャル子に説明を始める。
曰く、”主催者権限”と呼ばれる特権を悪用し、他者から様々なものを奪い、自由気ままに行動する”魔王”と呼ばれる存在が居る。
曰く、その”魔王”により黒ウサギの所属するコミュニティは、コミュニティの命ともいえる旗と名を奪われ、仲間も各地にバラバラになってしまった事。
曰く、そのため、現在はノーネームと呼ばれ、少年ともいえる年齢のジンがリーダーを務め、コミュニティの再建を図っていること。
曰く、そのために異世界より皆を召喚したため、出来れば協力してほしい事。
「ど、どうでしょう?」
伝える事を伝えると、黒ウサギはニャル子を懇願するように見つめる。
それに対してニャル子は…
「魔王だなんて、そんな酷い方が居るなんて…任せてくださいい!!一緒にがんばりましょう!!」
こぶしをグっ、と握り、黒ウサギにサムズアップする。
「に、ニャル子さん!!」
それに対して感激したのか目じりに涙を浮かべる黒ウサギ。
この場に某虎紳士が生きていたのならこう言うだろう…
…おまえがいうな…
…と。
ちなみに、この邪神、自分が大量の旗を燃やした事も、それにより現在多くのコミュニティがとばっちりで
更に、更に、ニャル子と黒ウサギがこの三文芝居をしている間に白夜叉と十六夜達は外門の構造等の話を終えて、なおかつ十六夜達が盛大に白夜叉に対して喧嘩を売っていたりする。
前後の会話は要約してしまえば「お前を倒せばここらで最強つーことだろ?おい、
「おんしらが望むのは"挑戦"か………
………もしくは、"決闘"か?」
その言葉が終わると共に白夜叉を中心に世界が形造られていく。
白い雪原に凍る湖畔、そして水平に回る太陽。
それら全てが白夜叉を表し、その身を象徴するフィールドでありゲーム盤。
十六夜達にかけられた、その言葉。ようやく十六夜達の会話に参加したニャル子は話と状況についていけず、相手の立場が分かる黒ウサギはおおよその話の流れに予想がついたために慌てる。
「今一度名乗り、問おう。私は"白き夜の魔王"……太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への"挑戦"か?それとも対等な"決闘"か?」
その言葉…そして圧倒的と言える程に感じる存在感。それらに対して十六夜達(邪神除く)は唾をのみこみ、冷や汗を流す。
「水平に廻る太陽……そうか白夜と夜叉。あの水平に廻る太陽やこの土地は、オマエを表現してるってことか」
「如何にも。この白夜の湖畔と雪原、永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ私がもつゲーム盤の一つだ」
その言葉に対し、十六夜達に旋律が走る。
「これだけ莫大な土地が、ただの…ゲーム盤……!!?」
「して、おんしらの返答は?"挑戦"であるならば、手慰み程度に遊んでやる。だが"決闘"を望むならば、"魔王"として命と誇りの限り戦おうではないか」
その言葉を受け、十六夜はしばし瞳を閉じ、そして開く。
「参った、やられたぜ。さすがにこれだけのゲーム盤を用意されたら…な。今回は黙って試されてやるよ」
そのまったくもって素直でない言葉に苦笑を返して、白夜叉は他の二人にも問いかける。
「ククッ……して、他の童達も同じか?」
「……ええ。私も試されてあげていいわ」
「……右に同じ…」
その言葉を聞き、安堵する黒ウサギ。
飛鳥と耀の言葉を聞いた白夜叉は次いで、ニャル子に視線を向ける。
「して…おんしはどうする?」
その言葉を受け、ニャル子は顎に人差し指を当て「うーーん」と軽く悩む様子を見せ……
「…決闘で」
……至って軽い様子で答える。
それに対し、黒ウサギが言葉を発しようとする……
「に、にゃるこさッ……!!?」
……しかし、突如として場に満ちた威圧感にその口を閉じる。
その威圧感の元はニャル子ではなく……
「…し、しろやしゃ…さま…?」
……獰猛な笑みを浮かべた白夜叉であった。