問題児たちと正義の味方が異世界から来るそうですよ?   作:ベアッガイ

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今回は独自解釈みたいなのが幾つかあります。


ゲーム開始と霊格の話みたいですよ?

門が閉じたのが開始の合図なのか、生い茂る森が門絡めるように塞いでいく。

ほとんど光を遮るほどの密度の深い森。どう見ても人の住む環境には思えない。

丁寧に舗装されていたであろう道も、幾つもの巨大な根によって無残な状態となっている。

 

ジンと飛鳥、耀の三人はさすがに緊張しているのか、真剣な表情だ。

とはいえ、耀は比較的余裕のある顔だ。

 

『大丈夫。近くには誰も居ない。匂いがしないから』

『匂い…ということは、犬にもお友達が?』

『うん。20匹ぐらい』

 

耀のギフトは他種の恩恵を得るものだったな。

おそらく身体能力ならば、人間よりも遥かに上か。

 

「……耀なら葛木先生ぐらい倒せるかしら?」

「先生……?」

 

葛木先生がセイバーに対して互角以上に戦えたのは、キャスターの強化があったことに加え、まさか人間がサーヴァントの相手をするハズが無い(私は無謀にも突っ込んで行った事があったが)という思考の裏をかいた、ほとんど不意打ちのようなものであった事であろう。

無論、葛木先生自身の技量の高さもあったのだろうが。

 

『耀さん、ガルドの詳しい位置はわかりますか?』

『ごめん分からない。でも風下にいるのに匂いがしないから、多分何処かの建物か何かの中にいると思う』

『ではまず外から探しましょう』

 

「なるほど、まずは外から探すのね……やっぱり、耀のギフトは便利ね」

「……エミヤ。お前さっきから何一人でブツブツ言ってんだ。キモい」

「……言うにことかいてキモいは無いでしょ、キモいは」

「そんなことはどうでもいい。春日部のギフトがどうとか言ってたが、まさかお前、あいつらが見えてるのか?」

「まぁ、一応はね。と言っても、木々がかなり邪魔なのだけれど」

「エミヤさんの視力は一体どうなってるんですか……?ーーーというか。いきなり屋根の上に上がったのは、お三方の事を見るためなのですか?」

 

そう、今私達が立っているのは、フォレス・ガロの居住区画近くのそれなりに高い建物の屋根の上だ。

ここに居るおかげで、なんとか三人の姿を視界に入れることが出来ている。

 

『彼にしてみれば一世一代の大勝負だもの。隠し玉の一つや二つあってもおかしくはないわね』

『そうですね。彼は基本的に戦ってすらいない。強力なギフトを明かさずにいたとしても不思議ではありません。耀さんはガルドを見つけたら、より一層の警戒をお願いします』

 

ジンと飛鳥の二人が周囲を探索し、耀が樹の上から警戒。

中々悪くないチームじゃないか。

 

「最も、樹の上の自分が更に上から見下ろされているとも知らないのだろうけど」

「……あの、つまらない質問なのですが、エミヤさんの視力はおいくつでしょうか?」

「ん?さあ?以前測った時は結局計測不能だったわね」

「アフリカ辺りの原住民かお前は」

「うるさい。目が悪いならまだしも、何で視力が良いからって責められなきゃいけないのよ」

「責めてねーよ、誉めてんだよ」

「貴方はもう少し他人に対して気を使い方法を学んだ方がいいわよ」

「気の使い方?何それ食えんの?」

「なんてやつなのかしら…」

 

『……駄目だわ。それらしいヒントは見当たらないうえ、武器らしい武器も見つからないわ』

『もしかしたらガルド自身がその役目を担ってるのかもしれない』

 

ガルド自身がヒント……それはアリなんだろうか。

 

「ねぇ黒ウサギ。今飛鳥達が話していたのだけれど、ガルド自身が指定武具のヒント、ということはありえるの?」

「えーーえっと、はい。可能性として、有りか無しかで言えば“アリ”です」

「……それって、目的と手段が入れ替わってねえかオイ」

「さぁ……まぁ箱庭の貴族(笑)が言ってるのだし、いいんじゃないの?」

「エミヤさん!?その“(笑)”って何ですか!?」

「え?」

「え?」

「だって、黒ウサギって芸人ウサギだろ?」

「違いますよ!?黒ウサギの何処が芸人なのですか!!」

「「そういうところよ(だろ)」」

「酷いのです……ウサギ差別なのですよ………」

 

黒ウサギが落ち込んだが、どこからどう見たって、黒ウサギと十六夜達のやり取りはお笑い芸人のそれだ。

差別でもなんでも無い。

 

「というか。飛鳥さん達が言っていたとおっしゃいましたが、まさか聞こえているのですか?」

「まさか。聞こえているわけではないわよ。ただ唇の動きを見て読んでいるだけよ」

「読唇術?お前ホントに器用だな…」

「先ほどから思っていましたが、エミヤさんはやはり、人間では無いのですか?」

「……普通の人間では無いのは確かね。私は元の世界で一度死んだ。けれど、幸運にもーーーいえ、この言い方は違うわね。私の大切な姉と仲間達のおかげで新たな身体を手に入れ生まれ変わったとでも言うべきか…」

「ふぅん……」

「そのお話を聞く限り、やはりエミヤさんは人間ではありませんね」

「黒ウサギ…事実ではあるけれど、その言い方をされるのはちょっと……」

「あ!いえ、別に!エミヤさんに対して侮辱するようなつもりは微塵もございませんよ!?このウサ耳に誓ってもかまいません!」

「何だよその基準。どんな基準だよおい」

 

ウサ耳に誓う…普通はこういう場面では神に誓ったりするものでは無いのか。

いや、この箱庭世界だと普通に、誓う対象の神がその辺居たりするからだろうか。

もしかすると黒ウサギ独特の価値観なのかもしれないが。

 

「えぇっとですね……。エミヤさんはたしか魔術と呼ばれるものを扱うとおっしゃっていたように思いますが……」

「えぇ、そうよ。私は魔術師……というよりは魔術を手段として使う魔術使いであるけれど。それが?」

「はい。この箱庭世界には、魔法使いという人類の幻想種が存在します」

 

人類の幻想種?

 

「ちょっと待って。私の世界の幻想種は通常の生命の系統樹から外れた、いわば『伝説上の生き物』の事なのだけれど。この世界では違うの?」

「いえ、この世界でも、通常の系統樹から外れた存在である点は変わりません。ですが、魔法使いや巨人といった存在は、人類でありながらけして存在し得ない『伝説上の生き物』でもあるのです。エミヤさんの居た世界ではそうでなくとも、この世界においてはエミヤさんは魔法使い……エミヤさん風に言うならば魔術使いという種なのです」

「魔術使いという種、ねぇ……」

「そして、幻想種である以上、その霊格もまた通常の人類よりも上なのですよ」

「つまりコイツは人類の上位存在だと?」

「まぁ、そのような感じです」

「なるほど……つまり霊格ーーー魂そのもののランクが上がっているから、使う魔術の負担もまた少なく効果も上がっている、と」

 

まさか人類の上位存在になっているとは。人生何が起こるか分からないものだ(今更だが)。

もっとも、アーチャーの奴は上位存在どころでは無いが。

 

「いえ、それだけではありません」

「ん?まだ何かあんのか?」

「エミヤさんが幻想種であることはほぼ間違い無いのですが、エミヤさんの霊格はそれよりも遥かに上なんです。ーーーそれこそ、神霊や星霊に迫るほどに」

「神霊や星霊って………あの白夜叉みたいな?冗談でしょう?」

「いえ、白夜叉様も言っていたように、エミヤさんからは神格の気配は感じられません。ですので、その時はあまり気に止めていなかったのですが……」

「今になって、私の霊格が普通じゃないって気がついた?」

「…はい」

「ーーーなぁ、黒ウサギ」

「はい、なんですか?」

「霊格を得るだとか上がるような条件だとか理由みたいなもんは分かるか?」

「あ、はい。それならば基本的に二つの方法があります。一つは、その出自に特殊な事情があることです。例えば先祖に神仏の類いが存在するなどです」

「さすがに私の先祖は人間のハズだけど……」

「もう一つの方は?」

「はい。もう一つは、世界に対して何かしらの功績、又は代償を与えることです」

「代償ねぇ……ありきたりだが生け贄とかか?」

「そうですね。大体はそのような感じです」

 

生け贄とは穏やかじゃないな。

というか、そんな場面に出くわしたら確実にぶち壊しにするだろう。

 

「ともかく、エミヤ。お前には霊格を得た心当たりとかは無いのか?」

「………そうね。強いてあげるなら、特殊な出自の方かしら」

「あれ?でもさっきエミヤさんはご自分で否定していましたよね?」

「否定したのは先祖に神仏が居たって事だけよ。ーーーさっきも言った通り、私は一度死んでいるのよ。これはつまり、死んで蘇ったということでしょう?」

「お?」

「なるほどな。古今東西、神話には死を乗り越えるだとかその類いの話が出てくるもんだしな」

「そうなると、まぁ、多少は霊格を得ることも出来たんじゃないか?……って思うのだけど、どう?」

「そうですね……。間違ってはいないと思いますが……」

「それだけじゃないと?」

 

考えてみればだ。

あの汚染され、破壊の形でしか願いを叶えることの出来なかった冬木の聖杯及び大聖杯。そしてその汚染の原因たる『この世全ての悪(アンリ・マユ)』が誕生していたならば、人類全てが滅んでいただろう。

それを未然に防いだわけだが、これも世界に対しての功績に当たるのだろうか。

 

「ねぇ黒ウサギ。人類を滅びから救ったのって、世界への功績になるのかしら?」

「は?」

「え……えぇと、はい。まず間違い無く世界への功績に当たると思いますがーーーえ!?エミヤさんは世界を救ったことがあるのですか!?」

「何だ。ちゃんと正義の味方らしいこともしてたんだなお前」

「勿論、ちゃんとやってるわよ……って、言いたい所だけど、あれに関しては巻き込まれ、結果として救ったようなものだもの。それに。その時の私はほとんど無力な一般人と大差無かったわ。私一人の力では決して誰も救う事なんか出来なかった。仲間達の力があったからこそ、解決出来たことなのよ」

「だとしても、それは間違いなくエミヤさんの世界への功績として認識されていると思いますよ。ーーーそう考えれば、エミヤさんの霊格が異常に高いのも納得がいきます」

 

ふむ。

昔の自分では考えられないほどに資質に恵まれたみたいだな。

まぁ、あって困るものでも無いし、むしろありがたい事ではあるのだが。

やはり、衛宮士郎といえば非才の身であることが当たり前のように感じていたため、若干の戸惑いのようなものもあるが。

嬉しい誤算とでも思っておくことにしよう。




というわけで、エミヤさんのステータスが上昇補正された根拠のようなものをでっち上げました。
そこまでは矛盾とかは無いとは思いますが、割りかし適当なのは目をつむってもらえればありがたいです。

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