問題児たちと正義の味方が異世界から来るそうですよ?   作:ベアッガイ

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何だかだいぶ前回から時間が空いてしまいました。
それと今回かなり短めです。


本拠の館に到着ですよ?

水樹の苗を植え、屋敷に着いた頃には既に夜中だった。

月明かりのシルエットに浮かび上がる本拠は、まるで巨大なホテルのようにも見える。

春日部耀が本拠を見上げながら呟く。

 

「遠目からでもかなり大きいけど……近づくと一層大きいね。何処に泊まればいい?」

「コミュニティの伝統では、ギフトゲームに参加できる者には序列を与え、上位から最上階に住む事になっております…………ですが、今はお好きな所を使っていただいて構いませんよ。移動するのも面倒でしょうから」

「そう。そこにある別館は使っても構わないの?」

 

飛鳥の指差す先には、屋敷の脇の建物がある。

 

「あちらは子供達の館ですよ。本来は別の用途があるのですが、警備上の問題でみんな此処に住んでいます。ああ、あちらを使っていただいても構いませんが、飛鳥さんが一ニ十人の子供達と一緒で良ければですが」

「ぜひ、遠慮するわ」

 

即答する飛鳥。

例え、苦手でなくとも一ニ十人の子供とは、なるべく一緒に生活したくないだろう。

 

そして、何はともあれ風呂に入りたいという要望の元、黒ウサギが大浴場の用意をしに行ったのだが…

 

「一刻ほどお待ちください!すぐに綺麗にいたしますから!」

 

どうやら使わないでいた期間が長く、そうとうに汚れているらしかった。

 

黒ウサギが大慌てで浴場を掃除している間、私達はそれぞれに宛がわれた部屋でくつろぎ、また部屋を物色していた。

 

私に宛がわれた部屋の中には、何故だかイヤにヒラヒラした服がしまわれていた。

ーーまるで、キャスターの部屋みたいね……。

幻の四日間にて偶然覗き見たキャスターの自室は、フリルの大量に付いた服など、コスプレと呼ぶべきような代物が多くあった。

かつてのこの部屋の主も、同じような趣味を持っていたのだろう。

 

とりあえず、私でも着られそうかつ、装飾の少なめな服を見つけ、ベットの脇に置いておく。

部屋から出ると、他の三人が貴賓室に集まり話をしていた。

 

「何の話をしているの?」

「春日部に友達が居なかったという話だ」

「居なかったわけじゃない。人間じゃないってだけだって、さっき言ったよね?」

「………ああ。そういう事。他種と会話の出来るギフトのせいで、逆に同種たる人間からは忌避されてきたって事ね。まぁ、人間なんてそういう物よ。理解出来ないモノを恐れ、拒絶し、弾圧する。そうでなければ、ひたすらに利用する。………生涯幽閉だとか、脳と神経だけでホルマリン漬けとかサーカスの見世物とかにされずに済んでいたのだから、良しとしなさいな」

「……サーカスの見世物はともかく、前の二つは物騒過ぎないかしら?」

「そう?私はそういう目的で何度も命を狙われたけれど……ああ、ちなみに私は友人と呼べるような人間は片手の指で足りるぐらいしか居なかったわね」

「しかも何で今その情報を言ったの?」

「……?今の流れは友人の少なさを競う流れじゃなかったの?」

「違うわよ!?いつからそんな流れだと思っていたの!?というか、その言い方だとまるで私達全員が友達が居ないみたいじゃないの!」

「事実居ないでしょう、貴方達も」

 

無言で視線を逸らす十六夜と飛鳥。

やっぱり……。

 

「まぁ、いいわ。折角だから私と友達になってくれないかしら?二人とも」

「二人って……私と、春日部さん?」

「えぇ。貴女達二人」

「十六夜は良いの?」

「十六夜は良いのよ。あんなロリコンは」

「オイちょっと待てや。誰がロリコンだ。俺にそんな趣味は無いと何回言えばいい。むしろ俺は黒ウサギみたいなエロいのが趣味だ」

「最低ね。身体目当てだなんて」

「そうね。どちらにせよ十六夜君は女性の敵ね」

「うん。敵だね」

「………やれやれ。男ってのは立場が弱いなまったく」

 

その気持ちはよく分かる。

だが、いずれ慣れるさ。

私は慣れた。

 

「それで、結局返事はどうなのかしら?」

「私は異論などないわ。コミュニティの仲間として、友人としてこれから仲良くしてちょうだい」

「ありがとう。これからよろしくお願いするわ、飛鳥」

「……私は」

「無理に、とは言わないわ。ただ、友人の少ない私のためにも、友人となってくれると嬉しいわ」

「………うん。飛鳥もエミヤも変わってるから仲良くなれそう」

「…うん、まぁ、きっかけはともかく。これからよろしくね、耀」

「よろしく、エミヤ」

 

問題児達とも、見事に友人関係を結ぶことが出来た。

……あれ、私ってばやっぱり同性の友人がほとんどいない?

イヤ、でも、今は女の子なんだから同性の友人はいっぱい?

 

「ゆ、湯殿の準備が出来ました!女性様方からどうぞ!」

「ありがとい。先に入らせてもらうわよ。十六夜君」

「俺は二番風呂が好きな男だから特に問題はねえよ」

「私も一人で入りたいからパス」

「あら。友達のお誘いを断るかしらエミヤさん?」

「それを言われると辛いのだけれど…」

「エミヤも一緒に入ろうよ」

「それとも一緒に入れない理由でもあるかしら?」

 

あります。

例え、身体が女性になり魂に修正を加えられている今でも、いわゆる恋愛の対象は女性だ。

それなのに、女性と一緒にお風呂に入るのは憚られる。

 

「……聞いて後悔しない?」

「とりあえず言ってみて」

「分かったわ。…………実は私はね、女性が好きなの」

「「「「………え?」」」」

「だから貴女達と一緒に入るのは、男性と一緒に入るようなものよ?それでもいいなら…」

「あー……ごめんなさい」

「ごめん…また今度」

「く、黒ウサギは気にしませんので……」

「私の方が気にするのよ。だから、悪いけれど、三人で入ってきてちょうだい」

 

結局、女性が好きだ、ということを理由にしておいた。

女性が好き、という事自体は別に嘘ではないし、問題ないだろう。

しかし、今はそれよりもーーー

 

「さてとーーー今のうちに」

「外の奴らと話をつけておくか」

 


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