問題児たちと正義の味方が異世界から来るそうですよ?   作:ベアッガイ

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ギフトの鑑定に行くみたいですよ?

「それにしても、エミヤさん。さっきまでのを見て思ったのだけれど、ひょっとして見た目よりも実年齢は上だったりするのかしら?」

「え、えぇ。そうよ」

「へぇ、幾つなんだ?」

「淑女に歳を聞くのは感心しないわよ、十六夜」

「お前みたいな淑女がいるかよ」

 

笑って否定する十六夜。

まぁ、淑女って柄じゃないとは思うけどさ。

 

「詳しい年齢はわからないのだけれど…」

「分からないとは、どういう事です?」

「私、小さい頃の記憶がないのよ」

「えっ…あ、その。すみません…」

「別に構わないわ。ただ、記憶が無いから、正確な年齢は分からない、というだけ。一応、自分では二十代後半ぐらいだと思っているけれど…」

「二十代後半!?」

「何だ、思ったより歳食ってんのな」

「……意外」

「まぁ、この身体が特別って事にしておいて」

「………ロリババァか」

「何をおかしな事を呟いてるのよ」

「いやなに、そういう連中からしたら、垂涎モノじゃないかと」

「やめなさい!鳥肌がとまらなくなるから冗談でもやめなさい!」

 

元男として、男からそういう目で見られだなんて冗談じゃない!

……でも、イリヤって見た目は完璧に美少女だったし、基本同じ外見の私もそう見られる可能性は十分だろうなぁ……うわぁ。

 

 

「そろそろ行きましょか。本当は皆さんを歓迎するために素敵なお店を予約して色々とセッティングしてあったのですが……不慮の事故続きで、お流れとなってしまいました。また後日、きちんと歓迎を」

「いいわよ、無理しなくて。私達のコミュニティって崖っぷちなんでしょう?」

「久遠飛鳥、貴女知ってたの?」

「あの悪人が色々と話してたからよ……それより。さっきから私を呼ぶのに久遠飛鳥ってフルネームだなんて他人行儀だわ。一応は同じコミュニティなのだから、飛鳥で構わないわよ」

「そう。なら飛鳥と呼ばせてもらうわ………あぁ、この響きは貴女に良く似合うわね」

「そ、そう?まぁ、ありがとうと言っておくわ。それに私は組織の水準なんて気にしないわ。それで、春日部さんは何かあるかしら?」

「私も怒ってない。そもそもコミュニティがどうの、とかどうでもいい……あ、でも」

「どうぞ、気兼ねなく聞いてください。僕らに出来る事なら最低限の用意をさせてもらいますから」

 

ジンが、コミュニティの状況をわざと黙っていたことへの詫びのつもりか、身を乗り出して尋ねる。

 

「そ、そんな大それた物じゃないよ。ただ私は………毎日三食お風呂付きの寝床があればいいな、と思っただけだから」

 

春日部耀の、確かに些細な要求に、ジンの顔が固まった。

そう言えば、黒ウサギも言っていたけれど、水樹がなければ水も買わなければいけないようだったんだ。

 

「それなら大丈夫です!十六夜さんがこんな大きな水樹の苗を手に入れてくれましたから!これで水を買う必要も無くなりますし、水路を復活させる事も出来るのです♪」

 

一転して、嬉しそうになる。

女の子はそういう事を気にするのだろう。

私は年中血塗れ硝煙塗れだったけれど。

そういえば、この身体はイリヤと同じぐらい髪が長いけれど、髪の洗い方なんて知らない。どうすればいいのだろうか……。

 

「私達の国では水が豊富だったから毎日入れたけれど、場所が変われば文化も違うものね。今日は理不尽に湖に投げ出されたから、お風呂には入りたかったところよ」

「それには同意だぜ。あんな手荒い招待は二度と御免だ」

「あう……それは黒ウサギの責任外ですよ………」

「あ、私は二回ほどずぶ濡れになったわね。誰かさんのせいで」

「だってよ黒ウサギ」

「私じゃありません!十六夜さんでしょう!?」

「おまけに濡れた身体を舐め回すように見られるし」

「ですってよ黒ウサギ」

「だから私じゃないのデスよ!?」

「私泣いちゃいそうだわ…………黒ウサギのせいで」

「ですから私のせいじゃ…私のせいにされてる!?」

 

やっぱり黒ウサギは弄ると楽しいわ。

遠坂やイリヤが私を散々からかってきたのも、今ならその気持ちが良く分かる。

 

「あはは……それじゃぁ今日はこのままコミュニティに帰る?」

「あ、ジン坊っちゃんは先にお帰りください。“フォレス・ガロ”とのギフトゲームが明日なら“サウザンドアイズ”に皆さんのギフトの鑑定をお願いしないと。この水樹のこともありますし」

「“サウザンドアイズ”?」

「サクリファイス?」

「禁止カード?」

「違いますよ!?“サウザンドアイズ”はコミュニティの名前です!“サウザンドアイズ”は特殊な“瞳”のギフトを持つ者達の群体コミュニティです」

「特殊な“瞳”?石化の邪眼とか、直死の魔眼とかかしら?」

「石化の邪眼は聞いたことがありますが……その、直死の魔眼とは何ですか?」

「えっと。確か、『モノの死』という『存在の寿命』という概念を形ある線や点として捉える、というモノだったハズよ」

「ふぅん。そんなヤツもいるのか」

「い、いえ。黒ウサギ的には寡聞に聞いたことが無いのですが……」

「まぁ、私の世界特有のものだったのかもしれないわね」

「…エミヤのいた世界って、どんな所なの?」

「物騒極まりないわよ?良い所なんてほとんどないと思うわ。それより、今はサウザンドアイズの話だったわね。ごめんなさいね、黒ウサギ。話を続けてちょうだい」

 

直死の魔眼。

志貴さんは元気にしているのだろうか。いつものように周囲の少女達に理不尽な目にあわされてそうだが。

 

「えー、説明の続きですが、サウザンドアイズは箱庭の東西南北・上層下層全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くにその支店があります」

「ギフトの鑑定というのは?」

「言葉通り、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定する事デス。自分の力の正しい形を把握しておいた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんもご自分の力の出処は気になるでしょう?」

 

まぁ、確かに。

力の正しい形を把握する、というのは重要だ。

私なら、自らの想いを形にする、といったようなものだ。

とはいえ、私は自分の起源も、チカラの出処も分かり切っているから、別段必要ではないだろう。

そして、特に否定の声も上がらないので、“サウザンドアイズ”に向うことになった。


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