風雲の如く   作:楠乃

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 いつも(?)『風雲の如く』をご愛読下さいまして、ありがとうございます。
 今更ですが、少しばかり言い訳をさせて頂きます。

 この作品は、にじファンから移転した作品で多少は改訂していますが、殆ど内容・流れは当時と変わりません。
 なので、(今の私から見て)意味不明な行動や言動があります。
 上でも述べた通り言い訳になってしまいますが、この『風雲の如く』全体から見て前半部分に当たる、1〜55話ぐらいまで、ご都合主義や私から見ても『アホか』みたいな内容が多々あったりします。
 そういった物は改訂時に書き直したりしていますが、今現在も私は物語を書き進めている所なので、大幅に書き直したりは出来ません。

 そういう事も含め、色々と申し訳ない内容になっている所が御座います。
 見逃せとは言いませんが、そういった至らない部分があると思われますので、先に謝っておきます。申し訳ございません。



 長くなりましたが、25話。どうぞ。





稽古・姫・月

 

 

 

 彩目に言われた通りにしてみる事にして、とりあえず殴りあってみる事にした。

 ……と言っても、武器なしで俺は避けるか能力でガードするだけで、隙があったら精々衝撃で吹き飛ばす位の模擬戦だ。無論、その衝撃も安全な威力である。

 

 

 

「せやっ!!」

「ほいなっ、っと」

「…師匠、やる気あります?」

「無い。とは言わん」

「……(敬語やめようかな)」

「…まぁ、別に言葉はどうでもいいが、行動は示せよ?」

「……聞こえてましたか…って、良いんですか!?」

「…そうだなぁ、藤原氏の前では止めとけ。アイツは絶対怒るだろうしな。大方『グレた!?』とか叫んで」

「だろうなぁ…」

「…それが、素…か?」

「ん? まぁ」

「……(妹紅、恐ろしい子…!)」

「師匠、今何か呟かなかったか?」

「いんや何も。ま、何か距離的なものが縮まったと考えて、再開だ」

「距離的なものって……おらよっ!!」

「……うーん、口調とかが…凄い似てきたんだが…」

「……私と、師匠の娘か?」

「ん、まだ妹紅の方が男っぽい。と思う」

「……それはそれで凄い傷付くんだが」

「はっはっは」

「笑ってんじゃねぇ!!」

「おう、そういう所は父親譲りか? ホレホレ、当ててみんしゃい」

「どこの方言!? というか、師匠の方が父上に似てるよ!!」

「マジで!?」

「なんでそんなに驚愕してるの!?」

「ノリで」

「くっ…! のらりくらりと……!!」

「あー、今の台詞。今度は友人に似てるな」

「…友人にもそんな事をしてたのか……」

「『くっ! のらりくらりとかわしちゃって…!!』だったかな?」

「誰かは知らないが…師匠、よくそんな高い声を出せるな」

「両声使いなんだよ。色々な意味で」

「……?」

 

 衝撃使えば大抵の音色も変えられる。そんな下らない自慢。

 ま、どうでもいい事である。今は稽古に集中である。

 

「りゃっ!!」

「ほい、どーん!」

「がっ!?」

「ありゃりゃ、強すぎたか? もこー? 大丈夫か?」

「……らっ!!」

「不意討ちお見事、でもやるときは急所を狙いましょ」

 

 不意打ちの拳を何もせずに受け止める。

 衝撃なんて効かないのである。まる。

 

「了解」

 

 その言葉と共に、腹で拳を止められた妹紅がもう片方の手で顔面へと手を伸ばす。

 いわゆるチョキの形……って、あれ?

 

 めきょ

 

「目がァァー!!」

「あ、あれ?」

 

 物の見事に、俺の目に指が突き刺さる。

 これが衝撃?はは、馬鹿言っちゃあかんよ痛てえェェェ!?

 

「…師匠は打撃に自信持ちすぎなんじゃないか?抜き手とかされたら、負けちゃうだろ?」

「お前それ目潰し!! 打撃じゃない!! 痛ってー……何しやがる!!」

「逆ギレ!? 大人気なさすぎだろッ!?」

「知らんわ!! 石つぶて!!」

「足元の石蹴ってるだけだろ!?」

「衝撃が付加された威力に逃げる隙などない!!」

「速すぎるだろッ!? いだアァ!?」

「…おぅ、見事に鼻に命中……」

 

 骨折するほどの威力は入れてない筈だけども……妹紅の顔を抑える手からはだらだらと赤い液体が……。

 ……あっちゃー…やっちゃった……。

 

「……師匠…じゃない。志鳴徒ォ!!」

「呼び捨て!? あれ!? 師弟の関係は!?」

「本気で行く。能力なんてかなぐり捨てて掛かって来いやぁ!!」

「いや!? そんな事したら妹紅死ぬからな!?」

「オラァァァ!!」

「いやすまん!! ほんと! ホントごめ、ギャァァァァ!?」

 

 

 

 最終的に、俺が土下座する事で和解する事になりました。

 いやね? 女性の顔に傷付けるのはダメだというのは分かりますよ。それについてはわたくしも謝りますよ。本当に申し訳ない。

 でも、どうして藤原氏父娘はその時だけ異常な程強くなるんで、あスイマセン……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …あ〜あ……もの凄い自己嫌悪。

 ありゃあやり過ぎた。うん、それは心の底から謝ります。ゴメンナサイ。

 でもね……あの二人同時のあれは…恐喝レベルデスヨ……。

 

「……だから私の所に来るってのは、お門違いじゃない?」

「良いんだよ。相手に愚痴る事が出来るから」

「いや私。誰がどうしたのか、何で貴方が愚痴るのか知らないから分からないわよ?」

「プライバシーは大切だろ」

「…ん? 何かおかしいような気がするのだけど?」

「……どうだろ?」

「何なのよ…」

 

 そういう事で妹紅の鍛練が終わったので、暇潰しに輝夜の邸に来てみた。

 暇潰しである。他意はない。ある筈がない。

 

「やっぱり暇潰しなんじゃない……ていうか、そこまで否定する事?」

「だってやることないし。真実だし」

「……一応私、都で一番の美人っていう人物なんだけど?」

「未来の感性で言うとそうでもないと思うんだ」

「撃つわよ」

「……」

 

 女性って、怖い。

 

 

 

 まぁ、そんなこんなで、

 特に話す事もなく、ただ二人してボーッと夕日が沈むのを見ているだけの時間。

 翁も嫗もいない。平和な時間。

 うむ、これこそが至福の時間と言うべきである。

 

 んー……羽根を伸ばしたい。

 

「ちょいと失礼」

「? 何がよ?」

 

 

 

 変化、詩菜。

 

 

 

「うん。やっぱりこっちの方が気分的に楽だね」

「…ッ貴女は…『詩菜』ッ!?」

「ん、あれ?言ってなかったっけ?」

「…私が聞いたのは妖怪って事だけよ……!!」

 

 あれ? 伝えたような気がしてたけど……。

 まぁ、いっか。気の所為なら気の所為で今伝えればいいだけだし。

 

「貴女いま誰かに見付かりでもしたらどうなるか分かってるの!?」

「それ、逆に自分は言い触らさないって言ってるようなものだよね。いやぁ、安心安心♪」

「っ……」

「膝、お借りしまーす」

「ちょっ、ちょっと…!!」

 

 膝枕。

 十二単でやるには些かキツイが、寝間着に近い部屋着ならば出来る。

 

 もっふー……。

 生前の男性ではやれなかった事。その内一つが叶いました。神様ありがとう。

 だが勝手に転生した事については別だがな!!

 

「あ~……癒される~…」

「……どっちが本性なの?」

「本性って」

 

 苦笑いしちゃうよ? その質問は。

 (苦笑)ですよ(苦笑)

 

「転生する前は男、生まれ変わってから女、百年経ってから男になる事が出来たよ?」

「……どちらも自分…って言いたいのかしら?」

「そうだねぇ…敢えて言うなら、『詩菜は妖怪、志鳴徒は人間』かな?」

「…さっきも言ったけど、妖怪の姿を私に教えちゃっても良いの? 誰かに言うかも知れないわよ?」

「あんな態度しておいてねぇ……ん~、それは困る」

「…困る。って…」

「じゃあ頼もうかな。友人として私の秘密。誰にも言わないで」

「……ふふふ、友人ね」

「どうかな?」

「良いじゃない。分かったわ」

「良かった」

 

 美しきは友情なりけり。かな?

 

 

 

 右手に夕陽が沈み、左手から満月が昇る。

 この庭園を造った人に、限りない賛美を贈ろうかな。

 良い眺めだ。実に景観をよく理解している。そんな私も詳しい訳じゃないけど。

 

「…満月ね」

「そういえば、帰るのはいつだっけ?」

「……来年の八月十五日よ」

「そっか」

 

 此処もお話通りか。

 ま、私は何もしないつもりだけどね。

 

 

 

 …とか、考えていたけど、

 どうもそれも変わってきそうだ。

 

「……私、月に帰りたくないわ」

「……なんで?」

「月は退屈なのよ。何も行う必要がなくて何不自由なく生活ができて…」

「……」

 

 今の民からすれば、それはまさしく天国なんだろうけどねぇ。

 

「それにどうせ『穢れた地上にいた姫』なんて言われて、ろくな扱いを受けないわよ」

「……大変そうだね」

「…もしかしたら、貴女の子孫が月にいるかも知れないわね」

「それはそれで嫌だなぁ……ひいお祖父様、とかって呼ばれたりしてるのかな?」

「ふふ…想像もつかないかしら?」

「まぁね。それで、どうするの?」

「……貴女はどう思うの?」

「…辛辣な言葉を返すようだけど」

 

 一旦言葉を切る。

 自分の運命は自分で決める。

 もし決めれなくて、それが決定付けられていたものだとしても、自分でそれを納得出来るようにする。

 それが、私の人生哲学……の一つ。

 

「知らないよ。自分で決める事だよ、それは」

「…そうね」

「……月は綺麗だねぇ」

「……そうね。ここから見えている『月だけなら』綺麗よ」

 

 中身はどうだか、ってか。

 どうやら月の民とやらはとことん中身が悪いのかね。

 

 

 

 また幾ばくか、沈黙が続いた。

 そろそろ、帰る時分かな? 勘だけど。

 

「よっと」

 

 膝枕も長時間はキツいだろうに、輝夜は何かも言わずにさせてくれた。

 どいつもこいつも、好い人すぎる。

 

「んじゃ、そろそろ帰るよ」

「あら、せっかく来たのに? 夜通し漫画について語り合わないのかしら?」

「…それは物凄く語りたいテーマだけどね……」

 

 大体、するのならさっさと言ってくれれば良かったのに…。

 

「タイミング間違えちゃったようね」

「明日も忙しいんだから…おやすみ」

「そうは見えないけどね。おやすみなさい」

 

 ……ほっとけ。

 

 

 


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