タイトル 『後日の終わり』
作品内はもうほぼ春なので、『冬の終わり』という意味でも決着、という意味。
……ん?
さて、妖精達と話し込んでいる内に、いつの間にか夕方近くになっていた。
それを知ってか大慌てで帰っていくチルノ達。何か用事でもあったのかしらん?
まぁ、私に関係している事ではなさそうなので、ここではどうでもいいと言っておこう。
ネリアは昔の妖精ちゃんと何一つ変わらなかった。
いや、前と違って話せるようになったからか私をからかうような仕草は消え去って、どちらかと言うとチルノよりも大ちゃんのような、真面目な性格になった。
……とは言え、彼女はどうなっても彼女だ。本人がそう言う限り、彼女はネリアで妖精ちゃんだ。
大切な友人の一人だ。また逢わないとね。
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……さて、レミリアお嬢様の所に行きますか。
まだ体調は万全の状態とは程遠いけれど、これ以上あの話を先伸ばしにする訳にもいかぬ。筈。
部屋を出て、適当に歩き始める。
道案内をしてくれる咲夜は、今はいない。
恐らく……声を出して呼んだとしても、前回のようにすぐには来てくれないのだろう。
いや、彼女は決して気付かないのだろう。単なる勘だけども、そんな気がする。
何となく、本当に何となくなんだけど……こっちの方向へ行けば辿り着ける。そんな予感のようなものを感じている。
階段を何回も昇り、幾つもの廊下を進む。
吸血鬼の屋敷だからか、窓の数は驚くほど少ない。
けれども、その数少ない窓の一つから見えた外の景色は既に真っ暗になっている。
つい立ち止まってしまったその窓からは、薄っすらと見える星々と地形だけが見える。
……やっぱり、私が寝ていた部屋から見えた地形から考えると、こっちは逆方向だよなぁ。
まぁ……それでもこっちに進むんだけどね。
そして、当然のようにレミリアの部屋に辿り着いた。
ここまでくると、なんかの運命のような気もする。
……『運命』で思い出したけれども、確か文が教えてくれた紅魔館の情報の中に、現当主の能力もあったような気がする。
それが確か、運命を操るような能力だったような……。
……まぁ、このやけに豪勢な扉の向こうで待ち構えている、あの幼き紅い悪魔にでも、機会があれば直接訊いてみるといたしましょう。
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「……ようやく来たわね」
「これは失礼。友人達とこっそり小さな宴会を致しておりましたので」
「……昨日、貴女が起きた時は素の口調だった癖に、今更そんな口調で私に話しかけるのかしら?」
「……ま、まぁ……ね?」
「いや、ね? って言われても……」
あっと言う間にシリアスな雰囲気がグダグダに。
誠に残念。空気詠み人知らず、である。
まぁ、そんな事はどうでもいいのである。閑話休題。
「……で、話を聞きに来たよ。結論、というか、答えをね」
「口調の件はなかった事にするのね。しかも素の状態になってるし……」
「いいから。そんなのはどうでもいい」
こちらはそれなりに真面目なのである。
茶化す必要はない。真摯に話し合いをしなければならない。
「……そうね。茶化すような事柄ではなかったわ」
一息。
大きく深く、一呼吸してから、レミリアが決心したように話しだす。
「あの時の事は、全面的にこちらが悪かった。謝罪するわ。ごめんなさい」
「……」
……正直に言えば、
本音を言えば、私は彼女が謝るとは思ってなかった。
プライドが高いのは吸血鬼っていう種族からしてもそうであろうと思ってたし、実際に話している最中でもそういうのは感じていたから。
事実を認めはしても、全面的に非を受け入れるとは思っていなかった。
「……受け取りました……まぁ、正直謝るとは思わなかったよ」
「……そう……でも『本人』に直接訊いちゃったから」
「そっか……文に、か」
宴会に参加しなかったのはレミリアと逢いたくないから参加しなかった訳だけど、よくよく考えてみれば私じゃなくても文が行って彼女と話してしまえば結局は意味が無い訳であって……。
あ〜、無駄な事した。
いや……無駄ではないけど、何と言うか、盛大な遠回りと言うか……。
私が何とも言い難い感情で顔を歪ませつつ呆れた感じで溜め息を吐くと、これまた優雅に彼女が笑う。
「ふふっ……そう考えてみれば、あの時の貴女は正しく『鬼殺し』だったものね」
「……一応あの時の私は正気じゃなかったんですけどね」
「それも実力の内よ」
「……さいですか」
……まぁ、何やかんやであの話はこれでなかった事になった。
いや、なかった事には出来ないけれど、結論が出た。と言った方が正しいかもしれないかな。
「今度、体調が万全になった時で良いから、私と戦ってくれないかしら?」
「……また殺し合い?」
「まさか。単純な腕試しよ。美鈴に聞いたわよ? あの時は彼女との約束を守る為に、こちらから攻撃しないという約束をしていたなんてね」
……。
美鈴、何勝手に喋ってんのよ!?
「で、彼女に幾ら訊いても約束の内容については口を割らなかったのだけど、どんな約束を彼女としたの?」
「……ま、まぁ、下らない過去の約束ですよ」
「ふぅん……貴女も口を割らない訳ね」
だ、だって……ねぇ?
この幻想郷で不思議ちゃんというキャラを維持する為に『詩菜=志鳴徒』を隠したいんですって!!
……ふむ。
冷静になって考えてみると、これ以上ないっていうぐらいの馬鹿馬鹿しい考えだけど……。
まぁ、そういう事である。理由はない。どうしてどうなったかなんてどうでもいい。楽しそうで充分。ウム。
うむ、すまん。
私はこんな性格だ。申し訳ない。
「……一人で何納得しているかは知らないけど、私との試合はしてくれるのかしら?」
「うん、良いよ。弾幕ごっこじゃなければ」
「……あの妖精に使っていたスペルがあるでしょ」
「あれは、ほんっとうに私が窮地に追い込まれた時に使う、時代遅れの『ラストワード』だからダメ」
「そ、そう……まぁ、いいけど……」
まぁ、これで話は終わっただろう。という感じで席を立つ。
それに丁度合わせるようなタイミングで、部屋に十六夜咲夜が現れる。
……こうもピッタリだと、逆に不信感しか湧いてこない。
「……あら、お嬢様と話されていたのですか」
「ええ、少しばかり今後の事もね」
だけど、彼女の顔に浮かぶ表情は疑問というか、漸く見付ける事が出来たとか、そんな感情しか見受けられない。
……いや、まぁ、そんな私も相手の感情を簡単に推し量れる技術を持っているとは思わないけど……。
でも、咲夜から感じた『衝撃』は少なからず驚愕の匂いが強かったのは確かだ。それは確信出来る事柄だ。
どうやら、何か術を使っていたのは確かなようだね。
まぁ、レミリアが私に逢う為に使っていたようだし、別に暴露する意味もない。無駄無駄。
「さてと、明日になったら私は帰るよ。あんまり長くなっても山の奴等にワーワー言われるだろうし」
「そう。またいらっしゃい。今度は怪我で運ばれないようにね」
「……まぁ、善処するよ」
「(どんだけ自分に自信がないのよコイツは……)」
「何か言った?」
「いいえ。昼型の貴女はそろそろ辛い時分じゃないのかしら?」
「そんな昼にしか生きれない妖怪じゃないよあたしゃ」
そもそも、私は衝撃を扱う能力を持っているというのに、相手に聴こえないように呟くという時点で私には筒抜けだという事が全く持って分からないのだろうかこのお嬢様は。
そんな呑気な事を考えつつ、部屋に戻る事にする。
別に昼型という訳ではないのはさっきも言った通りだけども、確かに私は夜の大半は寝ているのは確かだ。
……まぁ、ベッドに入ってさっさと寝よ。
今日一日は、色んなヒトと出会って疲れた。
「……行きは完璧だったのになぁ……」
また迷った。
しかも結局レミリアに能力を訊き忘れたチキショー!
……ん〜……。
冬、って言っても色んな意味に取れるかも。
他人との関係性の冬からの雪解けとか、単純な季節の移り変わりとか、氷妖怪の雪解けという決着にて氷妖精とか……。
あ、それだったらタイトルに紅魔館を付ける必要はないか……。
……まぁ、いっか。