『ヤマトの世界は死亡率が半端ないから何とか生きよう』   作:零戦

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第九話

 

 

 

 

 練習巡洋艦の川内は火星宙域で士官候補生及び訓練生を乗せて訓練をしていた。

 艦名もカタカナから漢字に表記変更されていた。士気向上のためらしい。

 

「ヤマトを確認しました」

「手空きの乗員は宇宙服を着用して上甲板に集合。調査に行く彼等を見送ろう」

 

 俺の言葉に手空きの乗員は宇宙服を着用して上甲板に集合。そのまま敬礼をして太陽系を離脱するヤマトを見送った。俺も勿論艦橋で敬礼をしている。

 

「ヤマトに発光信号。貴艦の航海の無事を祈る」

「了解です」

「……ヤマトに行かなくて良かったのか新見情報長?」

「……大丈夫です。ヤマトには優秀な乗員が勢揃いしています」

「……そうか」

 

 新見一尉がそう言うなら俺も言わない事にするか。

 

「よし、総員訓練を始めるぞ!! 砲雷撃戦用意!!」

「砲雷撃戦用意!!」

 

 ヤマトを見送ってから川内は戦闘訓練を開始するのであった。

 それから訓練が終わった川内は地球に帰還して横須賀基地のドックにその艦体を休めていた。

 

「……そろそろ退役かもな……」

 

 川内の艦体を見ながら俺はそう思った。科学力なんて物は日進月歩だ。大東亜戦争の時、零戦が大戦前半の太平洋を制覇していたが後半はヘルキャットやコルセアにその座を追われた。

 それが良い例だ。旧式で一番艦の村雨が就役してから約三十年と少し……よく頑張っていると思うよ。

 ちなみに川内はヤマトが地球を出撃してから就役しているがな。設計が既に古いからなぁ……。

 

「さて、やまとに行くか。幽々子が腹空かして待ってそうだな」

 

 俺はドックを後にした。

 

 

 

「もう~お腹空いたよぅ八雲君~」

「先に入って食べてたら良かったじゃないか?」

「それはそれよぅ」

 

 店前で待っていた幽々子はそう言った。店に入るとみすちーが忙しく働いている。

 

「あ、いらっしゃいませお二人さん」

「よぅみすちー。熱燗と鰻の蒲焼きと焼き鳥な」

「私のは三人前ね♪」

「はーい」

 

 みすちーがぱたぱたと奥へ消えていく。俺と幽々子はカウンター席に座って蒲焼きが焼かれているのを見つめた。

 

「……お腹空いたよぅ……」

「五分我慢しろよ……」

「うん……。それとね八雲君」

「どうした?」

「ヤマトが提出した彗星が地球方向に向かっているらしいのよ」

「……何処の情報だ?」

「私は司令部付よ? それに第十一番惑星に駐留していた空間騎兵隊が正体不明の艦隊に攻撃されたわ」

「それで空間騎兵隊は?」

「駐留の約半数がやられたけど付近を航行していたヤマトに助けられたわ。残存の空間騎兵隊はそのままヤマトに乗艦したらしいわ」

「成る程な……」

 

 第十一番惑星……となると斎藤の部隊だな。となるとこの先はヤマト2だな。

 

「恐らく……近いうちに戦争になるんじゃないかしら。芹沢参謀長とかは有り得ないとか言っているらしいわ」

「……あの人は波動砲に拘っているからな」

 

 イスカンダルの航海を芹沢参謀長の取り巻き達は機械力の勝利だと思っている。再建途中の防衛軍がそうだ。

 防衛軍は国連が主体となって全世界の軍備を集結させた軍だ。というか国連宇宙軍から防衛軍に名前を変えただけでもあるがな。その防衛軍は芹沢参謀長が色々と手を回して自分の取り巻きを重要な役職に付けている。

 戦艦や巡洋艦の艦長は大抵が芹沢参謀長の取り巻きだな。全くめんどくさいがな。

 

「幽々子の力で追い払えないのか?」

「無理ね。御父様が生きていたならそうなっていたかもしれないけど、今の西行家にそんな力は残ってないわ」

 

 幽々子の親父は国連宇宙軍の中でも芹沢参謀長と同等の発言力を持っていたが、ガミラス戦役の時、たまたま欧州のドイツにいた時に遊星爆弾で戦死をしている。

 そのため西行家の発言力は極端に低下しているんだな。

 

「……ま、備えておくしかないか」

「そうね……」

「御待たせしましたー」

 

 そこへみすちーが鰻の蒲焼きと焼き鳥を持ってきた。

 

「美味しそう~♪」

「ごゆっくり~」

 

 そこからは飲みや食べよのどんちゃんになった。

 

「……で、また俺が運ぶのかよ……」

「うぅ~ん、まだ食べれるわよ~」

 

 夢の中で何を食べてんだよ……。

 

「みすちーって……小骨が多そうね……」

「食うのみすちーかよ!?」

 

 ほんとに寝言なのか……?

 

「まぁ……当たってるし役得だな」

 

 何が当たっているか? ……考えろよ。ちなみに俺はでかいのが好きだ。

 

「と、着いたな」

 

 そして俺はいつも通りに妖夢を呼び出して寝ている幽々子を妖夢に渡した。

 

「毎回毎回すいません八雲様」

「あぁ、良いよ良いよ(役得な事もあるしな)」

 

 内心はそう思いつつ妖夢と言葉を交わして西行家を後にした。

 そして数ヵ月後……。

 

 

『此方パトロール艦夕凪!! 艦隊司令部に緊急電!! シリウス星系にて敵白色彗星の大艦隊を発見せり!!』

 

 シリウス星系に偵察に赴いたパトロール艦夕凪から白色彗星の艦隊を発見した報告が舞い込んできた。

 この時、シリウス星系に駐留していたのは白色彗星のバルゼー中将率いる第六機動艦隊であった。

 

「土方総司令、シリウス星系に赴いたパトロール艦夕凪から緊急電です。敵白色彗星の大艦隊を発見したそうです」

「何? 大艦隊だと?」

 

 艦隊司令部がある衛星タイタンで土方はそう報告を聞いた。

 

「至急、各惑星の所属艦隊に戦闘待機命令を……」

「無駄だ」

「は?」

「命令、第一、第二、第三外周艦隊は即座にタイタンに集結。各惑星の所属艦隊もタイタンに集結させるのだ」

「そ、総司令。それはあまりにも独断です!!」

 

 参謀がそう反論するが土方はジロリと参謀を睨んだ。

 

「君は私の作戦参謀だろう? 参謀なら私の命令に従うはずじゃないのかね?」

「し、失礼しました。直ぐに実行します」

「旧式艦艇も全て集結させるのだ。各惑星にいる民間人も即座に地球に避難させる。その護衛は旧式艦艇に任せるが、地球に送り次第タイタンに集結させろ」

「判りました!!」

 

 参謀はそう言って土方に敬礼をした。

 

 

 

 




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