『ヤマトの世界は死亡率が半端ないから何とか生きよう』   作:零戦

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第八話

 

 

 

 

「おい、あの女だぜ……」

「イスカンダルのヤマト計画より第二の地球探しのイズモ計画を支持した女だろ?」

「乗員が一丸となってイスカンダルに行かないといけないのに……ヤマトの汚点だな」

 

 新見薫がセンダイ情報長として就任してから一週間、センダイの艦内ではそのような噂が囁かれていた。

 イスカンダルの航海の時、イズモ計画を立ち上げた芹沢参謀長が刺客を送る意味で新見薫や保安部長の伊東をヤマトに入れたからな。

 当の本人である芹沢参謀長は未だに参謀長のままだ。これは蜥蜴の尻尾を切るように上手く逃げ回りヤマトでの反乱は自分が誘発したものではないと自己弁護していた。

 新見一尉も切られたんだろうな。保身のためにな……。

 

「艦長、交代の時間です」

「そうか、後は任せたぞ副長」

 

 俺は副長にそう言って食堂に向かった。腹が減っては戦が出来んてな。

 

 

 

―――食堂――――

 

「半チャーハン定食な」

「判りました」

 

 他の宇宙艦艇にも食料供給システム「O・M・C・S」(オムシス)が配備されているから飯の味は格段と上がっている。まぁ実態は俺もよく知らんが、知らない方が良いかもしれんな。

 

「ん……?」

 

 半チャーハン定食を受け取って席に座ろうとしたが、隅の方に新見一尉がいた。

 

「隣……宜しいかな?」

「……どうぞ」

 

 新見一尉はグラタンを食べていたが俺は気にせずラーメンに胡椒とラー油、チャーハンにもラー油を掛けて食べる。

 

「辛そうですね」

「ハハハ、辛いのが好きだからな」

 

 新見の言葉に俺は苦笑した。

 

「……乗員達が噂をしていた。済まないなうちの乗員が迷惑をかけて」

「いえ……彼等にしてみれば当然の事です」

「イズモ計画に関わっていた一尉からにしても当然の事……じゃないかな?」

「それも……そうですね」

 

 新見一尉が苦笑する。

 

「芹沢参謀長のせいで大変だな」

「仕方ない事です」

「そうか……何かあったら相談してくれ」

「それはデートの誘いですか?」

「ハハハ、誘いは承諾してくれるのかな?」

「……考えておきます」

 

 一尉はそう笑って食器を食器返しのところに置いて食堂を後にした。俺も食べるか。

 

『艦長!! 至急艦橋に来て下さい!!』

「……あん?」

 

 

 

「艦長、第三外周艦隊が正体不明の航空機から攻撃を受けたと受信しました」

 

 飯を食べずに艦橋に戻ると川崎副長がそう報告してくれた。やはり……来たか。

 

「確か旗艦はヤマトだったな。反撃はしたのか?」

「残念ながらまだ詳しい事は判りません」

 

 ……いよいよ白色彗星か。

 

「総員戦闘準備をさせろ。これは演習ではない!!」

「総員戦闘準備!!」

 

 戦闘準備をさせながら情報を待ち、続々と情報が舞い込んできた。

 

「第三外周艦隊は十数機の攻撃を受け、輸送艦知床と巡洋艦浅間が中破か……」

「ヤマトの古代艦長代理がコスモゼロで迎撃に出ましたが逃げられたようですな」

「カブトガニの形をした航空機か……ガミラスじゃないな」

「では……」

「……用心に越した事は無いだろ。ま、それは上が判断する事だ」

 

 俺は川崎副長とそう話していた。練習巡洋艦センダイは火星宙域での訓練を終えて地球に帰還途中だった。

 というより土方司令の命令だな。地球は国連主体だったが地球連邦としてなり軍備も新しく新設された防衛軍になっていた。

 それでも世界経済一位のアメリカやイギリス等の国が主体となって軍備を再建していた。その現れかドレッドノート型主力戦艦はイギリスが設計した主力戦艦だ。

 なお、吉野型巡洋艦は日本が設計したものだ。

 今のところ、宇宙艦艇の保有率はアメリカが一位で日本が二位、三位がヨーロッパだ。中国はガミラス戦役前はアメリカに並ぶ宇宙艦艇を保有していたがガミラス戦役で全てが戦没し、遊星爆弾も二十発が中国に着弾していて復興はかなり遅れていた。

 防衛軍の総司令官は土方宙将が就任していて日夜激しい訓練が行われている。

 

「ヤマトがいるから何とか勝てるかもな……」

 

 イスカンダルから帰還したヤマトだけど、ヤマト2199みたいに波動砲は塞がれておらず和親条約とかなかった。

 どうやらスターシアは波動エンジンの兵器転用を容認というか黙認をしているみたいだ。

 恐らく2199のスターシアじゃなくて旧作のスターシアのようだな。

 その証拠に全艦に波動エンジンが搭載され巡洋艦や戦艦等は波動砲が使用出来るからな。

 

「……ま、取りあえずは死なんようにしないとな」

 

 俺はそう呟き、センダイはヤマトが襲撃されてから五日後、地球に帰還した。

 

「艦長、土方総司令より出頭命令が来ています」

「判った」

 

 はて……何かしたかな?

 

 

 

 

「……でかいなアンドロメダ……」

 

 土方総司令は就役したばかりのアンドロメダに旗艦をしていた。

 艦内を歩くが、ほぼアニメ通りであり違いがあるとすれば通路はオートウォークじゃない事だな。

 

「八雲参りました」

「入れ」

 

 司令官室に入ると土方総司令の他に古代や真田さんがいた。

 

「練習巡洋艦センダイ、士官候補生及び訓練生の訓練終了しました」

「うむ、御苦労だった八雲。それと八雲、話がある」

「はい?」

「ヤマトが正体不明の航空機から攻撃を受けた事は知っているな?」

「勿論です」

「実は三日前、真田君が大彗星を捉えて謎のメッセージが届いた」

 

 そう言って土方総司令は俺に白色彗星の映像とメッセージを聞かせる。

 

「今度開かれる防衛会議にこれをどうするか議論するが……八雲、お前ならどうする?」

「自分は一介の三佐ですよ?」

「お前の意見を聞きたい」

「判りました。自分なら……調査のため調査艦を派遣します」

「ほぅ……調査艦か」

「自分としてはヤマトを調査艦に派遣したいと思います」

「その理由は?」

「ヤマトは前人未到のイスカンダルへ航海しています。そしてヤマトが正体不明の航空機から攻撃を受けています」

「……成る程」

「土方総司令」

「八雲、済まなかったな」

「いえ、それでは失礼します」

 

 何か言いかけた古代を制した土方総司令に敬礼をして司令官室を出た。

 そして数日後、第三外周艦隊旗艦のヤマトは旧乗組員を招集して防衛軍から彗星の調査と謎のメッセージの出所を探るべく地球を旅立った。なお艦長代理には古代が着任したらしい。

 

 

 

 




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