『ヤマトの世界は死亡率が半端ないから何とか生きよう』   作:零戦

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入隊しているのに何してるんだ俺は……。


第一話

 

 

 

 

 

 無限に広がる大宇宙。生きていく星もいれば死んでいく星もある。

 西暦2199年、天の川銀河にある太陽系の第三惑星地球は今まさに死を迎え待つのみであった。

 

 

――冥王星空域――

 

「国連宇宙軍日本艦隊の最後の作戦か……」

 

 金剛型宇宙戦艦一、村雨型宇宙巡洋艦九、磯風型突撃宇宙駆逐艦十三隻。それが地球に残された最後の宇宙艦隊である。

 

「八雲艦長、沖田司令官は何か策があるのですかね?」

「あるから冥王星まで来ているんだ」

 

 航海士の言葉に駆逐艦シグレ艦長の俺こと八雲和樹一尉がそう言った。

 八雲和樹、本来は戦闘機乗りを希望していたが試験に不合格となりたまたま戦術科の試験が合格していたために艦船乗りになった男である。(ナレーション)

 

「(……生きて帰れるかな俺……この冥王星会戦で地球艦隊はキリシマを残して壊滅するからなぁ……)」

 

 そして八雲和樹は転生者でもある。その事は後に語るとしよう。(ナレーション)

 

「敷島艦長、先遣艦の駆逐艦ユキカゼから連絡ッ!! ガミラス艦隊が接近中との事ですッ!!」

「来たか。総員戦闘配置につけッ!! 宇宙服着用急げッ!!」

 

 乗組員達が宇宙服を着用していく。それは俺もである。その間にもガミラス艦隊が後方から接近してきた。

 

「艦種識別は?」

「超弩級宇宙戦艦三、戦艦七、巡洋艦二二、駆逐艦多数ッ!!」

「旗艦キリシマから砲雷撃戦用意及び取舵三十ッ!!」

「取舵三十」

「とぉーりかぁーじッ!!」

 

 シグレが駆逐艦アサギリの後方についた。そしてシグレの上下の十二.七サンチ三連装高圧増幅光線砲二基が旋回して左砲戦の準備をする。

 

「ガミラス艦隊から入電が来ています。『地球艦隊ニ告グ。タダチニ降服セヨ』」

「沖田司令官が返信しているから放っておけ」

 そしてガミラス艦隊からの攻撃が開始された。

「敵ビーム弾がアサギリにッ!!」

「回避しろ高田ッ!!」

 

 俺はアサギリ艦長で同期の高田一尉に叫ぶがアサギリは回避する間も無く、左舷に三発が命中してアサギリが一瞬のうちに爆沈した。

 

「主砲は敵艦の艦橋を狙えッ!!」

 

 主砲が艦橋に照準し直して射撃する。ガミラスのケルカピア級航宙高速巡洋艦が光線を避けようとしたが後続のケルカピア級航宙高速巡洋艦に激突して大爆発を起こした。

 

「敵艦撃沈ッ!!」

「まだ浮かれるなよッ!!」

 

 その時、クリピテラ級航宙駆逐艦が主砲を撃ってきたが慌てて撃ったのか照準は外れていた。

 

「危な……」

 

 俺は思わずそう溢した。駆逐艦は一発でも当たったら即撃沈だ。

 

「巡洋艦クラマ轟沈ッ!!」

「……後方のクラマが……」

「………」

 

 乗組員の言葉に俺は轟沈したクラマに黙祷した。

 

「駆逐艦サミダレ被弾ッ!! 航行不能ッ!!」

「更に駆逐艦フユヅキ被弾ッ!! 戦闘不能ッ!!」

「……このままでは……(負けるな……)」

 

 俺は爆沈していく艦艇を見ながらそう呟いた。早くこいサーシア。

 

「駆逐艦ユキカゼが敵艦隊に突入しますッ!!」

「古代隊長……(相変わらず無茶をする人だ)ユキカゼに続くぞッ!!」

「ッ!? 敵駆逐艦のレーザーが……」

 

 そしてシグレの艦橋下とエンジンにレーザーが着弾した。

 

「ぐぅッ!!」

「ウワアァァァァーーーッ!!」

 

 着弾の影響で艦橋の防弾ガラスが割れて空気が漏れ、乗組員の川崎副長が宇宙に吸い出されていった。更に俺は唐突に左足の激しい痛みを感じた。

 

「艦長!! か、川崎副長が……」

「ぜ、全員宇宙服を着ているから大丈夫だッ!!」

「艦長ッ!?」

 

 通信手が振り返る目には、左の脛から下を吹き飛ばされていた俺が映っているんだろうな。

 爆発の影響で大きめの破片が俺の左足をざっくりと斬っていた。

 ……マジで痛い痛い痛いッ!!

 

「防護壁下ろせッ!!」

 

 痛みを堪える俺はそう叫んで、破損した箇所の防弾ガラスに装甲が貼られて漸く空気の流出は収まった。

 

「艦長、左足が……」

「……心配するな(無茶苦茶いてぇッ!!)」

 

 ありがとう通信手。無茶苦茶痛いです。今の俺の表情は青ざめているだろうね。取りあえず俺は応急の止血を自分で施した。

 

「衛生兵ェッ!!」

 

 通信手がそう叫ぶ。

 

「艦長……これでは無理かもしれません。此処は副長を救助して後方に下がりましょう」

 

 航海士がそう俺に意見具申をした。勿論、俺もしぐれがもう戦えない事を分かっていた。

 

「機関部、エンジンはどうだ?」

『推力は約半分に低下して速度は二十宇宙ノットくらいしか出ません』

「……分かった。キリシマに打電、我、損傷。戦線離脱する」

「了解ッ!!」

 

 程なくキリシマから了解の返電が届き、シグレは回頭してゆっくりと戦場を離脱する。

 

「副長は何処だ?」

「この地点にいるようです」

 

 宇宙服には発信器が付けられているため、直ぐに副長の居場所が特定出来て副長を救助した。

 

「いやぁ、助かりましたよ艦長。もう少しで死ぬところでした」

 

 副長はそう言ってきたが、俺の左足を見て口をつぐんだ。

 

「気にするな副長。衛生兵はまだか?」

「あ、はい」

 

 そこへ衛生兵が漸く到着して(行く途中で負傷者を治療していた)止血をして包帯を巻いていく。

 

「艦長、キリシマから入電。第一艦隊ハ現時刻ヲモッテ作戦ヲ終了。コレヨリ撤退スル、我ニ続ケ。以上です」

「撤退? 終了するのか?」

 

 副長がそう呟いた。

 

「……仕方ない。撤退なら帰るぞ。キリシマの後方に回れ」

 

 シグレは速度を落として戦場から離脱してくるキリシマの後方に回ったが、生き残りのユキカゼは同行しなかった。

 

「古代隊長……」

『古代、わしに続け』

『自分は戦場から撤退するキリシマを援護します。八雲、後は頼んだぞ』

「古代隊長ッ!!」

 

 そしてユキカゼはガミラス艦隊に突入して、一つの爆発が起こるのであった。

 

 

 

 そして三週間後、火星空域で待機していた百式を収容して地球に帰還した。

 

「艦長は急いで下さい」

「済まんな副長。後は任した」

 

 俺は左足の事もあるので直ぐに病院区画へと向かった。

 

 

――中央大病院――

 

「暫くはリハビリが必要かもしれんが……若いまぁ八雲君なら大丈夫じゃろ」

「ありがとうございます佐渡先生」

「ハッハッハ、いや何の何の」

 

 俺は中央大病院で医師の佐渡先生の診察を受けていた。予め連絡しておいたので佐渡先生も義足を用意していた。

 

「失礼する」

 

 そう言って入ってきたのは何と沖田提督だった。そういやアニメでも古代が沖田提督のところへ殴り込んできたのが中央大病院だったな。

 

「君は……シグレ艦長の……」

「八雲です。佐渡先生から義足を貰いに……」

「……そうか。済まないな」

「いえ、戦争ですから負傷するのは覚悟してました」

 

 まさか左足を切断するとは思わなかったけどな。

 

「ん? 八雲か」

「土方教官」

 

 そこへ宇宙戦士訓練学校で教官をしていた土方宙将が入ってきた。

 

「……そうか、左足を……」

「仕方ありません」

 

 土方宙将は俺の左足を見て残念そうに言ったが俺は仕方ないと言った。

 

「……そうか。それと八雲、お前に一つ頼みがあるのだ」

「頼み……ですか」

「うむ」

 

 土方宙将はそう頷き、沖田提督は佐渡先生からの診察を受ける事になった。

 

「無茶はせんようにな八雲君」

「判りました」

「御大事に」

 

 

 


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