Dies irae ~Von der großen sehnsucht~ 作:tatuno
よろしくお願いします。
「しょう…じ……」
───感情が希薄である。
皆と過ごすことなんてつまらない。
取る行動総てが建前だ。
そう想っていた。
ずっと……。
忠勝さんが死に、祥二がたった今死んだ。
一言で言えば、「悲しい」。
初めて自分の心が理解できたのだ。
もしかしたら、感情そのものはあったのかもしれない。
自分を理解してなかっただけかもしれない。
出来事を他人事のように感じていたのも事実だが、決して興味が無かったわけではないのだ。
心から悲しい気持ちが、壊れた蛇口のように溢れ出ている。
想いが止まらない。
永篠に羽矢が殺された時もこうだった。
あの時は悲しみより、怒りが溢れ出ていた。
そう。
これが本当の、自分自身の感情なのだということに気付いた。
いや、二人に気付かされたんだ。
死という最悪の結末でようやく…───
「う、うッ…!」
羽矢は負の情念に飲まれまいと、俺を守ろうと必死に耐えていた。
「羽矢…。」
彼女まで消されるかもしれない。
大事な仲間がまた一人…。
今のようにまた「悲しみ」や「怒り」というものが押し寄せてくるのか?
いや、さらにこの気持ちを抱かなければならないのか?
…そんなことは嫌だ。
二度とこんな気持ちを味わいたくはない。
させるものか。
これ以上大切な人を失わない。
俺は憧れる皆を守りたい。
だからこそ俺自身はもっと──もっともっともっと上に往かなければならない。
登り詰める。
敵を打ち倒す強さが欲しい。
皆のような理想の
違う。
それでは駄目だ。
それでは奴を倒すことは不可能だ。
俺は超えなければならない。
憧れる存在すらも凌駕する程に。
敵をも凌駕する程に。
俺でしか成れない者に成る。
皆の想いを受け継ぎ、紡ぐために。
俺自身の想いと共に、重ね重ねる──。
──先ほどからずっと胸が鳴っている。
俺の中で何かが繋がり始めている。
何だこれは。
分かるはずのない皆の記憶が、頭の中
を駆け巡っている。
「───
無意識に言葉を発する。
様々な記憶と共に想いが俺の中に入ってくる。
俺の想い。祥二の想い。
羽矢の想い。島谷の想い。
林の想い。深田の想い。
本多忠勝の想い。
そして、その他の人々の想い。
「
俺自身の想いの一部分が欠落しているのは間違いない。
紛れもなく、コンプレックスというやつだろう。
それを埋めたいがために、無いことではなく有ることを求めた。
他人の心に焦がれてしまった…。
「
俺は俺なりに運命は切り開いてきたつもりだ。
前からずっと、ずっと…。
那由多の数も超えるほどに。
「
憧れる存在そのものになるなんて不可能だ。
本当はそんなこと分かってる。
でも、限りなく近づくことは、その存在を超えることは可能なはずだ。
心に秘める微かな想いを感じ、それを糧へと新たな想いを生む。
「
自分自身だけではなく、皆の想いもまた理解したい。
皆の美しく輝かしい想いを、憧れる想いを、俺は伝えたいんだ。
「
──虚空が広がる。
それはまるで宇宙の果て。
絶対無ではなく、一つ一つ想いを秘めた泡が数々宙に浮いている。
その空間は瞬く間に世界に流れ出し、負の情念の世界を押し返していた。
さあ、『新世界』へと導かれる時だ。
渇望する夢を願い、夢見る空間を作り出すためにも。