Dies irae ~Von der großen sehnsucht~ 作:tatuno
よろしくお願いします。
────岸壁の下へと姿を消した島谷を追う。
岸壁の下には、洞窟が一つあり、薄暗く続く道を一本作り出していた。
「洞窟なんてあったか?
……こんなところに。」
そんなことを呟き、駆け足に進む。
進みながら、いろいろなことを思い巡らせる。
いったい島谷は何者なのだろうと、、そもそも島谷という存在とは何なのだろうと。
そして、自分の浅はかな想い。
結局、巻き込まないどころの話ではなかった。
巻き込むどころか、その内の一人はこうして敵として立ちはだかっているのだ。
本当に情けない。
だけどせめて、彼を止めなければならないだろう。
異常な世界だったとしても、消していい理由はない。
そんなこと間違っている。
けど、俺は果たして彼と戦えるのだろうか……。
ふと気がつくと広い空間に出ていた。
洞窟内であるはずなのに、周りを見渡すと天井も壁も無くなっていた。
何も存在しない空間。
ただひたすら白い、無色の地平線が広がっている。
方向的にここは街の地下はずだが、ここはいったい……。
────「ここは俺たちがいた空間とはまた違う空間。
ヘルメスのいる空間ともまた別の、もう一つの特異点と言ってもいい。」
いつの間にか、島谷が目の前に立っていた。
「何をしに来た龍野。
黙って見ていればいいと言ったはずだが?」
「黙って見ていられるかよ…。
この世界を消すなんて言われたら…。」
「…邪魔をするのか?」
「だって、明らかにそんな結末なんてあっちゃならないだろ…!」
「……そうか。なら仕方ない。」
島谷が俺に向けて手をかざす。
まるで俺を消そうとしてるような……
「──!」
咄嗟に手をかざしたところから俺は避ける。
まるで条件反射のように咄嗟にそこから飛び退いた。
「へえ…。避けたか。」
見ると、俺の右腕の服の部分が破けていた。
いや、破けているわけではない。
それはまるで削り取られたような。
この部分だけ存在していなかったような感じだ。
「───アカーシャクローニック。」
島谷が唐突に話始める。
「それが俺の真意であり、俺の分身でもあり、そして俺自身でもある…。」
「…どういうことだ。」
「所謂、
そこでは過去や未来の記憶を保管している記録の概念。
本来ならばその記録通りに世界は辿っていかなければならない。
だが、ヘルメスの私欲での行動で未来で起こる記録が乱れてしまった。
だからそれを正すために俺がいる。
一度この世界をリセットするためにな。」
「…なんだそれ。訳分かんねえよ…。」
「だから理解しなくていい。
邪魔をする以上、どうせお前は先に消える運命だ。」
再び島谷は俺へと手をかざす。
「…ッ!やめろ!島谷!」
───無駄だ少年。
メルクリウスたちと会って以来、聞いていなかった声がした。
「た、忠勝さん…。」
───奴は貴様を消すつもりだ。戦うしかない…。
貴様もある程度分かってここに来たのだろう。
…やはり島谷と戦うしかないのだろうか。
でも、もう…。
「……行くぞ、島谷。
お前が止めないと言うのなら、俺が諦めさせてやる!」
もう覚悟を決めるしかない。
この世界を賭けて戦うことしか道が残っていないのなら…。
蜻蛉切を手に出し、俺は島谷へと突進した。
「────アカシックレコードの意思に背くと言うのなら……
例えお前が相手でも、俺は…。」