Dies irae ~Von der großen sehnsucht~   作:tatuno

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第二十八章です。
よろしくお願いします。


第二十八章

────岸壁の下へと姿を消した島谷を追う。

岸壁の下には、洞窟が一つあり、薄暗く続く道を一本作り出していた。

 

「洞窟なんてあったか?

……こんなところに。」

 

そんなことを呟き、駆け足に進む。

進みながら、いろいろなことを思い巡らせる。

いったい島谷は何者なのだろうと、、そもそも島谷という存在とは何なのだろうと。

そして、自分の浅はかな想い。

結局、巻き込まないどころの話ではなかった。

巻き込むどころか、その内の一人はこうして敵として立ちはだかっているのだ。

本当に情けない。

 

だけどせめて、彼を止めなければならないだろう。

異常な世界だったとしても、消していい理由はない。

そんなこと間違っている。

けど、俺は果たして彼と戦えるのだろうか……。

 

ふと気がつくと広い空間に出ていた。

洞窟内であるはずなのに、周りを見渡すと天井も壁も無くなっていた。

何も存在しない空間。

ただひたすら白い、無色の地平線が広がっている。

方向的にここは街の地下はずだが、ここはいったい……。

 

 

────「ここは俺たちがいた空間とはまた違う空間。

ヘルメスのいる空間ともまた別の、もう一つの特異点と言ってもいい。」

 

いつの間にか、島谷が目の前に立っていた。

 

「何をしに来た龍野。

黙って見ていればいいと言ったはずだが?」

 

「黙って見ていられるかよ…。

この世界を消すなんて言われたら…。」

 

「…邪魔をするのか?」

 

「だって、明らかにそんな結末なんてあっちゃならないだろ…!」

 

「……そうか。なら仕方ない。」

 

島谷が俺に向けて手をかざす。

まるで俺を消そうとしてるような……

 

「──!」

 

咄嗟に手をかざしたところから俺は避ける。

まるで条件反射のように咄嗟にそこから飛び退いた。

 

「へえ…。避けたか。」

 

見ると、俺の右腕の服の部分が破けていた。

いや、破けているわけではない。

それはまるで削り取られたような。

この部分だけ存在していなかったような感じだ。

 

「───アカーシャクローニック。」

 

島谷が唐突に話始める。

 

「それが俺の真意であり、俺の分身でもあり、そして俺自身でもある…。」

 

「…どういうことだ。」

 

「所謂、普遍的無意識(アカシックレコード)と言われている。

そこでは過去や未来の記憶を保管している記録の概念。

本来ならばその記録通りに世界は辿っていかなければならない。

だが、ヘルメスの私欲での行動で未来で起こる記録が乱れてしまった。

だからそれを正すために俺がいる。

一度この世界をリセットするためにな。」

 

「…なんだそれ。訳分かんねえよ…。」

 

「だから理解しなくていい。

邪魔をする以上、どうせお前は先に消える運命だ。」

 

再び島谷は俺へと手をかざす。

 

「…ッ!やめろ!島谷!」

 

───無駄だ少年。

 

メルクリウスたちと会って以来、聞いていなかった声がした。

 

「た、忠勝さん…。」

 

───奴は貴様を消すつもりだ。戦うしかない…。

貴様もある程度分かってここに来たのだろう。

 

…やはり島谷と戦うしかないのだろうか。

でも、もう…。

 

「……行くぞ、島谷。

お前が止めないと言うのなら、俺が諦めさせてやる!」

 

もう覚悟を決めるしかない。

この世界を賭けて戦うことしか道が残っていないのなら…。

蜻蛉切を手に出し、俺は島谷へと突進した。

 

「────アカシックレコードの意思に背くと言うのなら……

例えお前が相手でも、俺は…。」


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