Dies irae ~Von der großen sehnsucht~ 作:tatuno
よろしくお願いします。
────結局あの後、とぼとぼと家に戻った。
メルクリウスが言ったことが本当ならば、居ても立っても居られないのだが、マキナ達との戦闘で疲れ果てていた。
流石の祥二もそこまでの気力がないようだった。
それにも関わらず睡眠を取ろうとは思えず、二人で黙って座り込んでいる。
それを半日同じ状態。
忠勝もあれ以来、一言も発してはいない。
どうしたものかと思うが……。
そもそも島谷は何故、デーニッツのところにいるのだろうか。
奴が言っていた鍵と何か関係があるのか。
島谷は最初から俺たちを騙していたのか。
真意を確かめなければならない。
そのためにはやはり会わなくては。
────その時。
不意に俺の携帯電話が鳴る。
ポケットから取り出し、電話に出る。
「よう。龍野。」
「林と……奥から声が聞こえるのは深田か。」
それは市外で、ラインハルトたちの術中から逃れていた林と深田だった。
「元気ないな。
カラオケ行こうぜ!」
「………。」
「……なあ。俺達はいつまでここに待機しておけばいいんだ?
たまたま深田の家が諏訪原の外にあったから良かったものの。」
「……すまない。」
「まあ、言い出したのは祥二だけどな。
でもそろそろ帰りたいんだけど…。」
「もうちょっと待っててくれ。
訳は話せないけど…もうすぐ戻ってきていいから。」
「……そっか。」
───それから林、それと交代して深田と他愛もない会話をする。
でも、今の俺にとってこの二人の会話は、俺自身を現実に引き戻してくれてるようだった。
「何してるのかはよく分からんけど、お前らの用事が終わったらみんなでカラオケ行こう。
祥二にもそう伝えとけ。」
奥の方で深田の「行こう行こう!」という声が聞こえる。
「ああ…。それまで、もう少しだけ頼む。」
そう言って俺は電話を切った。
「祥二。
これが終わったらカラオケ行こうってさ。」
「……カラオケ、か。
そうだな。行きたい。」
祥二が口を開く。
「…林たちには迷惑を掛けてしまった。
そしてお前にも……
本当にすまなかったな。」
「いいや…そんなことは……」
「…今からお前に俺の知っていることを全部教えるよ。
勿論、今起きてること全てが分かってるわけじゃないが……。」
軽くため息を祥二はつく。
「………いいのか?」
「ああ。
今更って感じだけどな。
この話が何の役に立つわけでもない。
それでもお前に話したい。」
「……分かった。」
────「永劫回帰。
よく輪廻転生と対比される言葉だ。
ある瞬間を繰り返す。
那由多の先まで。
知ったやつは常に同じ行動、台詞。
何度も何度も。
さすがに龍野もそれは堪えるだろ?」
「……起こってるんだ。
過去も今も。
その永劫回帰とやらがな。
ずっと……同じ映像しか観ていないんだよ。
普通なら時間が巻き戻されれば、その前の記憶も巻き戻るはずなのに。
でも俺はそうじゃなかった。残るんだ。
以前の回帰で経験した記憶が。能力も。
何故かは分からない。
……まあいくらか繰り返す内に俺は、ある奴らの存在を知ることになった。
それが聖槍十三騎士団、黒円卓。
俺は奴らと戦った。
半ば鬱憤晴らしというか、暴走に近かったけどな。
そしてその戦いの中でメルクリウスという悪魔と対峙することになったんだ。
ラインハルト共々、奴は強かった。
正確にはレベルが違った。
勝てず、また時間は巻き戻る。」
「……そう。
メルクリウスこそ、永劫回帰、そして
何でそんなことするのかは俺にもさっぱりだ。
しょうもない理由な気がするけど……。
……一度だけ回帰が終わりそうな時があった。
黄昏の女神が座というものに付いたことによってな。
でも結局、ある原因でまた回帰の繰り返しになる。」
「……メルクリウスを倒すのは不可能だ。
俺たちじゃあな。
その役割を与えられてる奴こそ、
隣のクラスのな。
彼の行動だけがこの永劫回帰を終わらせられるんじゃないかと思うんだ。」
────「だからお前は俺に関わらせないようにしてたのか。
乱せば、また巻き戻るから…。」
「ああ…そうだ。」
祥二の話はとても壮大で、あまり実感が湧かない。
けれどそういうことなのだろう。
メルクリウス。
神そのものとも言っていい。
この世界の座につく男。
そんな奴を相手にできるはずがない。
というか不可能だ。
「嫌でも、藤井蓮を信じなきゃいけないのか……。
喋ったことないけど。」
彼の未知の行動こそ、今の現状を破壊する鍵なのだろう。
ならば何もできない限り、彼を信じて待つしかないのだ。
だが、明らかな不安要素が一つだけある。
デーニッツだ。
奴は何を企んでいる?
このことを詳しく知っているとは思えない。
それに島谷も……。
一体何を。──────