Dies irae ~Von der großen sehnsucht~   作:tatuno

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第二十五章です。
よろしくお願いします。


第二十五章

────「卿らを少し観たかったのだ、許せ。」

 

上空の城に現れた黄金色に輝く男。

全てが黄金比率。

身長、髪の色、長さ、目の色、いろんなパーツ、見た目全てが完璧だった。

まるで見たことがない。

人というものは絶対にどこかが劣るものだ。

しかし、この男にはどこにもない。

 

「ラインハルト……。

次はお前の番か!」

 

祥二が歩いて戻ってきた。

分断される前と同じで何故か怒っている。

 

「案ずるな。

私は卿らと話がしたいのだ。

そういきり立つな。」

 

「話だと?」

 

「ああ。そうだ。」

 

了解をしていないが、ラインハルトは話を続ける。

 

「龍野祐であったか。

そなたの創造位階には興味がある。

良ければ、私に教えてくれまいか?」

 

「俺の創造位階……。」

 

それはつまり俺の渇望のことか……。

 

「龍野。

別に答えなくていい。」

 

祥二は言う。

 

「どうせ訳分からないこと言われるだけだ。」

 

「ふむ……訳が分からないとな?

随分、勝手なことを言うものだ。」

 

 

────「そう。勝手だ。

勝手なことをされては困りますな。獣殿。」

 

気づけば黄金の男の後ろに佇んでいた。

 

「カールか。

こちらへ赴いても良いのか?」

 

「あなたが題目にないことをするからだ。

何等かの歯車が狂えば、どうするおつもりだ。」

 

彼はそこにいるのに。

それなのに、あの城よりも、あの黄金よりもずれているように見えた。

不吉な雰囲気を醸し出している。

 

「……。」

 

祥二は先ほどから、わなわなと震えていた。

恐怖しているのか。憤怒しているのか。

あるいは両方か。

 

「それはすまなかったな。

彼等と話がしたいと、特に彼と、会話を楽しみたかったのだ。友よ。」

 

「彼?

…ああ。龍野祐、か。」

 

初めて、あのカールとかいう男と目が合った気がした。

 

「確かに面白い対象ではある。

それに──」

 

いや、彼は俺を見ていない。

俺の奥底、眠る魂を見ている。

 

「覚えているかな?

本多平八郎忠勝。」

 

唐突に知った名前を聞いた。

 

 

────……ッ、貴様は…天海か?

 

忠勝は答える。

 

天海って、徳川家に仕えてたお坊さんか。

 

「久しぶりだ。

しかし、今は天海ではなく、カール・クラフトと名乗っている。」

 

そういえば今思い出したが、ラインハルトとカール・クラフトって、祥二が言ってた奴らの名だ。

ということは奴らが元凶。

 

───…まさか。拙者がこうなったのも貴様が……。

 

「さあ…どうだろうな。」

 

人を小馬鹿にした顔で見下げているカール・クラフトとかいう男。

 

あれ?

そういえば、何で会話が成立しているんだ?

忠勝の声は俺にしか聞こえてないと思ったが……。

実際、祥二もラインハルトとかいう男も聞こえてないように見える。

奴にも忠勝の声が聞こえているのか。

 

「それよりも、どうかね?

新しい主君は。

貴様が生きたいと言ってまで、仕えようとした存在だ。

当の家康はもう死んでいるが。」

 

────天海ッ!貴様…ッ!

 

「そう憤るな。

生かす、まではいかなかったが、こうしてまだ現世に留まることができているのだから。

───ああ。申し訳ない、獣殿。

少々独り言が過ぎたようだ。」

 

「フッ、別に構わん。

忠勝とやらと話していたのだろう?

やはりこれはそなたの仕業か。」

 

カール・クラフトまたはメルクリウス。

未だに祥二から詳しくは聞いていないが、メルクリウスと言えば、ローマ神話に登場する水銀の王。

忠勝を槍に封じ込めたり、一連の事件の発端となったりと、間違いなくラインハルトより危険な臭いがする。

 

そう。

危険だ。

奴を相手にするのは。

 

でも、一つだけ聞いておかなければならないことがある。

 

「……おい。」

 

俺の仲間の、

 

「……島谷はその城にいるのか?」

 

そのためにこいつらに挑もうとしたんだ。

今更逃げられない。

 

「ここにはいない。」

 

メルクリウスが答える。

 

「ここにはいないって……この街のやつらは皆この城に……。」

 

「カール・デーニッツ。

貴様も会ったことはあるはずだ。

そこにいるかもしれん。」

 

「デーニッツのところ?

何故だ?」

 

「何故、だろうな。

自分の目で確かめるといい。」

 

何でデーニッツのところに島谷が?

 

分からない。

そもそもこいつは何を知っている。

 

「獣殿。

そろそろ戻られよ。

まだあなたの出る幕ではない。」

 

「……まあいい。

彼のことはじっくり卿の口から聞かせて貰うぞ、カール。」

 

そして二人は城の奥へと戻っていった。

 

これでも静止の言葉を求めないぐらい、自分は困惑していた。

メルクリウスが言っていたことはようするに………──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────「気付かれていたか。

あなたが聞きたかったのはそれだろう。

忠勝とは別のものだ。

その正体が何なのか、実は私にも分からない。

 

マキナとの最後の一撃の時、見えていたもの。

一瞬だけであったが、あれとマキナの拳、当たっていればどうなっていたものか。

 

龍野祐自身もやはりと言うべきだ……。」──────


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