Dies irae ~Von der großen sehnsucht~ 作:tatuno
よろしくお願いします。
────「卿らを少し観たかったのだ、許せ。」
上空の城に現れた黄金色に輝く男。
全てが黄金比率。
身長、髪の色、長さ、目の色、いろんなパーツ、見た目全てが完璧だった。
まるで見たことがない。
人というものは絶対にどこかが劣るものだ。
しかし、この男にはどこにもない。
「ラインハルト……。
次はお前の番か!」
祥二が歩いて戻ってきた。
分断される前と同じで何故か怒っている。
「案ずるな。
私は卿らと話がしたいのだ。
そういきり立つな。」
「話だと?」
「ああ。そうだ。」
了解をしていないが、ラインハルトは話を続ける。
「龍野祐であったか。
そなたの創造位階には興味がある。
良ければ、私に教えてくれまいか?」
「俺の創造位階……。」
それはつまり俺の渇望のことか……。
「龍野。
別に答えなくていい。」
祥二は言う。
「どうせ訳分からないこと言われるだけだ。」
「ふむ……訳が分からないとな?
随分、勝手なことを言うものだ。」
────「そう。勝手だ。
勝手なことをされては困りますな。獣殿。」
気づけば黄金の男の後ろに佇んでいた。
「カールか。
こちらへ赴いても良いのか?」
「あなたが題目にないことをするからだ。
何等かの歯車が狂えば、どうするおつもりだ。」
彼はそこにいるのに。
それなのに、あの城よりも、あの黄金よりもずれているように見えた。
不吉な雰囲気を醸し出している。
「……。」
祥二は先ほどから、わなわなと震えていた。
恐怖しているのか。憤怒しているのか。
あるいは両方か。
「それはすまなかったな。
彼等と話がしたいと、特に彼と、会話を楽しみたかったのだ。友よ。」
「彼?
…ああ。龍野祐、か。」
初めて、あのカールとかいう男と目が合った気がした。
「確かに面白い対象ではある。
それに──」
いや、彼は俺を見ていない。
俺の奥底、眠る魂を見ている。
「覚えているかな?
本多平八郎忠勝。」
唐突に知った名前を聞いた。
────……ッ、貴様は…天海か?
忠勝は答える。
天海って、徳川家に仕えてたお坊さんか。
「久しぶりだ。
しかし、今は天海ではなく、カール・クラフトと名乗っている。」
そういえば今思い出したが、ラインハルトとカール・クラフトって、祥二が言ってた奴らの名だ。
ということは奴らが元凶。
───…まさか。拙者がこうなったのも貴様が……。
「さあ…どうだろうな。」
人を小馬鹿にした顔で見下げているカール・クラフトとかいう男。
あれ?
そういえば、何で会話が成立しているんだ?
忠勝の声は俺にしか聞こえてないと思ったが……。
実際、祥二もラインハルトとかいう男も聞こえてないように見える。
奴にも忠勝の声が聞こえているのか。
「それよりも、どうかね?
新しい主君は。
貴様が生きたいと言ってまで、仕えようとした存在だ。
当の家康はもう死んでいるが。」
────天海ッ!貴様…ッ!
「そう憤るな。
生かす、まではいかなかったが、こうしてまだ現世に留まることができているのだから。
───ああ。申し訳ない、獣殿。
少々独り言が過ぎたようだ。」
「フッ、別に構わん。
忠勝とやらと話していたのだろう?
やはりこれはそなたの仕業か。」
カール・クラフトまたはメルクリウス。
未だに祥二から詳しくは聞いていないが、メルクリウスと言えば、ローマ神話に登場する水銀の王。
忠勝を槍に封じ込めたり、一連の事件の発端となったりと、間違いなくラインハルトより危険な臭いがする。
そう。
危険だ。
奴を相手にするのは。
でも、一つだけ聞いておかなければならないことがある。
「……おい。」
俺の仲間の、
「……島谷はその城にいるのか?」
そのためにこいつらに挑もうとしたんだ。
今更逃げられない。
「ここにはいない。」
メルクリウスが答える。
「ここにはいないって……この街のやつらは皆この城に……。」
「カール・デーニッツ。
貴様も会ったことはあるはずだ。
そこにいるかもしれん。」
「デーニッツのところ?
何故だ?」
「何故、だろうな。
自分の目で確かめるといい。」
何でデーニッツのところに島谷が?
分からない。
そもそもこいつは何を知っている。
「獣殿。
そろそろ戻られよ。
まだあなたの出る幕ではない。」
「……まあいい。
彼のことはじっくり卿の口から聞かせて貰うぞ、カール。」
そして二人は城の奥へと戻っていった。
これでも静止の言葉を求めないぐらい、自分は困惑していた。
メルクリウスが言っていたことはようするに………──────。
─────「気付かれていたか。
あなたが聞きたかったのはそれだろう。
忠勝とは別のものだ。
その正体が何なのか、実は私にも分からない。
マキナとの最後の一撃の時、見えていたもの。
一瞬だけであったが、あれとマキナの拳、当たっていればどうなっていたものか。
龍野祐自身もやはりと言うべきだ……。」──────