Dies irae ~Von der großen sehnsucht~ 作:tatuno
よろしくお願いします。
─────拳が迫る。
「ちッ!」
ギリギリで避けたが、強力なパンチによりできた爆風が襲い、吹き飛ばされる。
体は近くにあった木に叩きつけられ、その木の幹は折れ倒れた。
「……。」
マキナは無言でその拳を繰り出した場所に突っ立っている。
俺と祥二はあの後分断されてしまった。
俺はマキナ、祥二はエレオノーレとかいう女とシュライバーという名前の少年を、それぞれ相手にしている状態だ。
正直、強さが桁違い。
俺が今戦っているこのマキナという男は、武器などは使わずに拳で戦闘を行ってくる。
にも関わらず、一撃一撃が重い。
一発でも食らえばそれは致命傷となるだろう。
体はとても頑丈で、並みの攻撃で傷は一切付かない。
さながら重戦車だ。
それに分断される直前に聞いた祥二の言葉。
────「奴の創造の拳にだけは触れるな。」
祥二の言葉通りなら、これにも警戒しなくてはならない。
だが、こんな奴を二人も相手にしている祥二は大丈夫なのだろうか。
少し離れた所からは爆発音が何度も聞こえてくる。
それはまだ戦っている証拠であり、無事かは分からないが生きているということではいいだろう。
「…俺がお前と、闘う事を選んだ理由は一つ。」
無言だったマキナが口を開く。
「お前の中にある、もう一つの魂に興味がある。」
「…忠勝さんに?」
「そうだ。
お前を見た時に、俺と似たようなものをその魂に感じた。」
「似たようなものって、何だ。」
「それは────」
気付けばマキナはすぐ俺の目の前へと移動していた。
「幕引きだ。」
座り込んでいる身体へと戦車さながらの攻撃が叩き込まれる。
「───!」
すれすれでマキナの攻撃を回避したが、続いて攻撃の衝撃により生じた爆風が俺の体を襲う。
「ぐぅッ!」
空へと体は投げ出されるが、なんとか空中で態勢を立て直す。
が、着地点には既にマキナが待ち構えていた。
宙に浮いた身体へと、再び重い一撃が放たれる。
その攻撃を蜻蛉切の刃で止める。
まだ不安定な状態にいた俺はその位置から遠くに投げ出される。
「ぐああッ!」
飛ばされてた勢いで何度も地面に打ちつけられ、身体へのダメージが付加する。
最終的に体は次に電灯の柱に激突した。
「痛って……でも。」
「ぬっ。」
マキナの蜻蛉切に触れた部分の手が切り裂かれていた。
「悪いな。
俺の蜻蛉切も、触れば断つぜ。」
そう。
俺の蜻蛉切もその名の通り、触れただけで蜻蛉を真っ二つにした槍だ。
ゆっくりと立ち上がり、槍をマキナへと向ける。
「仲間のためにも、お前を過ぎ、お前を断つ!」
俺の言葉を聞いたマキナは、顔に不適な笑みを浮かべる。
裂けたところから、機械でできた身体を覗かせて。
「……面白い。
どうやらお前を見くびっていたようだ。」
「別にいい。
見くびってもらっても。
どうせ今から俺も、創造位階へバトンタッチしようと思ってたからな。」
「
|Die schreckliche Wunde, das Gift, ersterde, das es zernagt,erstarredas Herz!《この毒に穢れ 蝕まれた心臓が動きを止め 忌まわしき 毒も 傷も 跡形もなく消え去るように》
|Das mich vergiftet, hier fliesst mein Blut: Heraus die Waffe! Taucht eure Schwerte. tief,tief bis ans Heft!《滴り落ちる血の雫を 全身に巡る呪詛の毒を 武器を執れ 剣を突き刺せ 深く深く柄まで通れと》
|Totet den Sunder mit seiner Qual, von selbst dann leuchtet euch wohl der Gral! 《罪人にその苦悩もろとも止めを刺せば 至高の光はおのずから その上に照り輝いて降りるだろう》」
「
創造──
「
お互いの形が変わる。
マキナは腕が鉄腕の腕へと化し、俺は全身が無双の体へと。
「……お前が忠勝か。」
「……無論。」
マキナは忠勝へと拳を構え、忠勝はマキナへと槍を構える。
────忠勝さん。奴の拳には触れないようにしてくれ。
「ああ。心得ている。
話は聞こえていた。」
それに見た目から解ろう。
────……確かに。
あの鉄の塊を見る限り、明らかに触ってはいけないような代物だ。
「お前は……。」
マキナが言葉を紡ぐ。
「死しても尚、その槍に居続けている。
言わば死にきれなかった。
その身に嘆いたりはしなかったか?
終わりたくても終われなかったその身を。
幕を引きたいと、そう思わなかったか?」
マキナの問いに忠勝は鼻で笑う。
「戯れ言を。
拙者は死にたくないと、生きたいとしか思ったことはない。
貴様のような者には理解できんがな。」
忠勝の答えにマキナも鼻で笑う。
「ほう…。そうか。」
「そうだ。」
しばらくその場で睨み合う。
お互いに攻めの時を待っていたのだ。
一陣の風が吹く。
周りの木々がざわざわと揺れていた。
その時も互いに待つ。
そして────風が止む。
「ウオオオオオオオオオオオ!!」
「ウオオオオオオオオオオオ!!」
創造位階へと達した者同士の闘いが、開幕した。─────