Dies irae ~Von der großen sehnsucht~   作:tatuno

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第二十三章です。
よろしくお願いします。


第二十三章

─────拳が迫る。

 

「ちッ!」

 

ギリギリで避けたが、強力なパンチによりできた爆風が襲い、吹き飛ばされる。

体は近くにあった木に叩きつけられ、その木の幹は折れ倒れた。

 

「……。」

 

マキナは無言でその拳を繰り出した場所に突っ立っている。

 

 

俺と祥二はあの後分断されてしまった。

俺はマキナ、祥二はエレオノーレとかいう女とシュライバーという名前の少年を、それぞれ相手にしている状態だ。

 

正直、強さが桁違い。

俺が今戦っているこのマキナという男は、武器などは使わずに拳で戦闘を行ってくる。

にも関わらず、一撃一撃が重い。

一発でも食らえばそれは致命傷となるだろう。

体はとても頑丈で、並みの攻撃で傷は一切付かない。

さながら重戦車だ。

 

それに分断される直前に聞いた祥二の言葉。

 

────「奴の創造の拳にだけは触れるな。」

 

祥二の言葉通りなら、これにも警戒しなくてはならない。

だが、こんな奴を二人も相手にしている祥二は大丈夫なのだろうか。

少し離れた所からは爆発音が何度も聞こえてくる。

それはまだ戦っている証拠であり、無事かは分からないが生きているということではいいだろう。

 

 

「…俺がお前と、闘う事を選んだ理由は一つ。」

 

無言だったマキナが口を開く。

 

「お前の中にある、もう一つの魂に興味がある。」

 

「…忠勝さんに?」

 

「そうだ。

お前を見た時に、俺と似たようなものをその魂に感じた。」

 

「似たようなものって、何だ。」

 

「それは────」

 

気付けばマキナはすぐ俺の目の前へと移動していた。

 

「幕引きだ。」

 

座り込んでいる身体へと戦車さながらの攻撃が叩き込まれる。

 

「───!」

 

すれすれでマキナの攻撃を回避したが、続いて攻撃の衝撃により生じた爆風が俺の体を襲う。

 

「ぐぅッ!」

 

空へと体は投げ出されるが、なんとか空中で態勢を立て直す。

が、着地点には既にマキナが待ち構えていた。

 

宙に浮いた身体へと、再び重い一撃が放たれる。

その攻撃を蜻蛉切の刃で止める。

まだ不安定な状態にいた俺はその位置から遠くに投げ出される。

 

「ぐああッ!」

 

飛ばされてた勢いで何度も地面に打ちつけられ、身体へのダメージが付加する。

最終的に体は次に電灯の柱に激突した。

 

「痛って……でも。」

 

「ぬっ。」

 

マキナの蜻蛉切に触れた部分の手が切り裂かれていた。

 

「悪いな。

俺の蜻蛉切も、触れば断つぜ。」

 

そう。

俺の蜻蛉切もその名の通り、触れただけで蜻蛉を真っ二つにした槍だ。

 

ゆっくりと立ち上がり、槍をマキナへと向ける。

 

「仲間のためにも、お前を過ぎ、お前を断つ!」

 

俺の言葉を聞いたマキナは、顔に不適な笑みを浮かべる。

裂けたところから、機械でできた身体を覗かせて。

 

「……面白い。

どうやらお前を見くびっていたようだ。」

 

「別にいい。

見くびってもらっても。

どうせ今から俺も、創造位階へバトンタッチしようと思ってたからな。」

 

 

 

 

Tod! Sterden Einz' ge Gnade!(死よ 死の幕引きこそ唯一の救い)

 

|Die schreckliche Wunde, das Gift, ersterde, das es zernagt,erstarredas Herz!《この毒に穢れ 蝕まれた心臓が動きを止め 忌まわしき 毒も 傷も 跡形もなく消え去るように》

Hier bin ich, die off'ne Wunde hier!(この開いた傷口 癒えぬ病巣を見るがいい)

|Das mich vergiftet, hier fliesst mein Blut: Heraus die Waffe! Taucht eure Schwerte. tief,tief bis ans Heft!《滴り落ちる血の雫を 全身に巡る呪詛の毒を 武器を執れ 剣を突き刺せ 深く深く柄まで通れと》

 

Auf! lhr Helden:(さあ 騎士達よ)

 

|Totet den Sunder mit seiner Qual, von selbst dann leuchtet euch wohl der Gral! 《罪人にその苦悩もろとも止めを刺せば 至高の光はおのずから その上に照り輝いて降りるだろう》」

 

 

 

 

Zwey Seelen wohnen, ach. in meiner Brust,(我が心に想いが二つある)

 

Die eine will sich von der andern trennen;(一つが一つを携え、離れようとはしないのだ)

 

Die eine halt, in derber Liebeslust,(一方の想いは精悍な激情の支配に身を任し)

 

Sich an die Welt, mit klammernden Organen;(現実の世にすがり離散せず)

 

Die andre hebt gewaltsam sich vom Dust,(一方の想いは否応にも塵の現実を駆け抜け)

 

Zu den Gefilden hoher Ahnen.(至高な先人の在る境界へ渇望する)

 

 

 

 

創造(Briah──)

 創造──

 

 

 

 

人世界・終焉変生(Midgardr Volsunga Saga)

 

 隔世之感・憧憬(Zwei Faust Sehnsucht)

 

 

 

お互いの形が変わる。

マキナは腕が鉄腕の腕へと化し、俺は全身が無双の体へと。

 

「……お前が忠勝か。」

 

「……無論。」

 

マキナは忠勝へと拳を構え、忠勝はマキナへと槍を構える。

 

────忠勝さん。奴の拳には触れないようにしてくれ。

 

「ああ。心得ている。

話は聞こえていた。」

 

それに見た目から解ろう。

 

────……確かに。

 

あの鉄の塊を見る限り、明らかに触ってはいけないような代物だ。

 

「お前は……。」

 

マキナが言葉を紡ぐ。

 

「死しても尚、その槍に居続けている。

言わば死にきれなかった。

その身に嘆いたりはしなかったか?

終わりたくても終われなかったその身を。

幕を引きたいと、そう思わなかったか?」

 

マキナの問いに忠勝は鼻で笑う。

 

「戯れ言を。

拙者は死にたくないと、生きたいとしか思ったことはない。

貴様のような者には理解できんがな。」

 

忠勝の答えにマキナも鼻で笑う。

 

「ほう…。そうか。」

 

「そうだ。」

 

しばらくその場で睨み合う。

お互いに攻めの時を待っていたのだ。

 

一陣の風が吹く。

周りの木々がざわざわと揺れていた。

その時も互いに待つ。

 

 

そして────風が止む。

 

 

「ウオオオオオオオオオオオ!!」

「ウオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

創造位階へと達した者同士の闘いが、開幕した。─────


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