Dies irae ~Von der großen sehnsucht~ 作:tatuno
よろしくお願いします。
────息切れしながらもひたすら走る。
「くそッ…。
どうやったらあの城に行けるんだよ。」
ヴェヴェルスブルグ城に一歩一歩近づいて行っているつもりだが、全く距離が縮まらない。
祥二が言っていたまだズレた状態なのだからだろうか。
それにやはり人が一人も見当たらない。
街全体がゴーストタウンへと変わっている。
全ては聞かされていないが、あれがこの世に完全に現れればまずいことが起きるような気がしてならない。
「…このまま仲間を奪われたまま見過ごすわけにもいかないしな。」
さてどうする。
「どうにかして行く手段はないのか…。」
────「そもそも行くなって言ってるだろう。」
後ろから聞こえてきた声。
「祥二…。
お前追ってきたのか。」
「当たり前だ。
勿論止めるためにな。」
祥二はゆっくりと俺に近づく。
「どうしても行くというなら。
お前の手足切ってでも止めさせて貰う。」
刀を形成し、刃を向ける。
「祥二お前……本気で言ってんのか?」
「……。」
何も答えない。
が、彼の眼差しを見る限り、いかに本気かが伺えた。
「本気なんだな…。」
自分の手にも槍を持つ。
お互いに武器を構え、一進一退の間合いまで詰め寄る。
正直不本意だ。
こんな戦いは望んでいない。
祥二とは戦いたくない。
けど…。
もう嫌だ。
羽矢が島谷が、周りから消えていく。
もう何も奪わせない、奪わせたくない。
「悪いが無理にでも押し通らせてくれ。
お前が相手だとしても、俺は───行く!」
一気に間合いを詰め、槍を祥二に振りかざす。
が、無駄のない動きで簡単に避けられ、くるりと回した刀の柄で鳩尾を突く。
「ウッッ!」
祥二の攻撃はクリーンヒットし、俺の膝は崩れ落ちた。
「今のお前じゃあ俺には勝てないよ。
いい加減諦めてくれ。」
「グッ……諦めるわけないだろ。
島谷だけでも…俺は助ける。」
上手く呼吸ができない。
急所を突かれたせいか、この一発だけで相当のダメージが付加されている。
「大体…お前が俺を止める理由は何なんだよ…。
教えてくれよ。」
「……。」
また祥二は黙る。
「何で教えてくれないんだ。
そうやっていつも、隠し事するなら何も分からないだろ!
頼む。答えてくれよ!」
しばらく迷っていた様子だった。
言いたくても言い出せない。
そんな様子。
だが、しばらくして彼は口を開いた。
「……それは─────」
その時だった。
風を切り裂く音を耳に聞く。
「なッ────。」
祥二に一振りの拳が横から迫っていた。
間一髪で祥二は避け、その場から離脱するように距離をとる。
俺はいきなり事で、何が起こっているのかが理解できずにいた。
拳が飛んで来た方向には、いかにも口数が少なそうな大男。
「お前…マキナ!」
祥二が言う、そのマキナという男はすぐ真横にいる俺を睨み付けている。
いや、元々こういう顔なのかもしれない。
「なんでお前が…!」
祥二の問いにマキナは一言。
「…ラインハルトの命令だ。」
ラインハルトって、 ヴェヴェルスブルグ城出した張本人の名前。
そういえばマキナって名前も聞いたことある。
確か祥二とデーニッツが戦ってた時だったか。
「ラインハルトが?
そんな馬鹿な。────」
ドン──と
祥二の言葉と同時に下から火柱が。
爆発にも近い炎が襲う。
祥二はこれも間一髪避けたが、それを追って銀色の物体が高速で激突した。
「ぐあッ!」
さすがの祥二もこれは避けきれずにまともに食らってしまった。
地面にそのまま倒れ込む。
「フン。
何故貴様のようなやつと闘えと御命令が下るかは分からんが。
光栄に思うことだ。」
何が光栄なのかは分からないが、そんな言葉を話す女はとても綺麗と言え、とても醜いとも言える顔だった。
左半分の顔がほぼ焼け爛れている。
さらに高速で祥二に攻撃を繰り出した銀色で長髪の少年は、訳の分からない、聞き取れない言葉を喋っている。
そして右目が無く、その空いた部分から大量に血が飛び出している。
「くっ…そ…。」
攻撃を受けた祥二はゆっくりと立ち上がった。
「ラインハルト・ハイドリヒ……。
いや、これも全部お前の仕業か。
────メルクリウスゥゥゥゥ!!!」
轟音にも近い声で、彼は叫んだ。─────