Dies irae ~Von der großen sehnsucht~   作:tatuno

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第二十一章です。
よろしくお願いします。


第二十一章

─────「……?」

 

ゆっくりと意識が戻る。

頭がボーッとする。

 

ここは…自分の家?

ベッドの上にいるのを見たところ寝てたのだろうか。

ていうか今まで何を……。

 

「目が覚めたか。」

 

声がした方向を見ると、祥二が窓際のところに座っていた。

 

「俺は……何で寝てるんだ?」

 

「俺が連れて帰ってきた。

ちなみにあの夜から丸一日経っている。」

 

「あの夜…。」

 

「一日前のこと、全部話せるか?」

 

「廃病院に行って、そこで永篠と戦って、羽矢が……。」

 

「分かってる。

それは言わなくていい。

その後の事は憶えているか?」

 

 

その後、羽矢が死んだ後。

……分からない。

綺麗に記憶から抜けている。

思い出そうとしてもさっぱりだった。

 

「…思い出せない。」

 

「やっぱりか……。」

 

「?

何かしたのか俺は?」

 

「いや、……ええと。

あれだ。

創造位階を使って力を使い果たして倒れたんだ。

それで記憶が飛んでるんだ。」

 

「そうだったのか…。

永篠は倒したのか?」

 

「ああ。

憶えてないかもしれないが、俺が駆けつけた時にはもう。」

 

「そっか。

…あいつだけは倒せて良かったよ。」

 

「…そうだな。」

 

 

羽矢の仇を取ったということでいいのだろう。

あいつだけは生かしておけないと、記憶が途切れる前に思っていた。

 

だが、何をしようが羽矢はもう戻ってこない。

大事なものを俺は失ってしまった。

 

今まで以上に心にぽっかりと穴が空いた気がした。

 

「あんまり思い詰めるな。

羽矢を失ったのは辛いが、ラインハルトの奴もついに現界してきたし…。」

 

「現界?」

 

祥二は窓のカーテンを開け、外を見るよう促す。

 

「あれは…。」

 

外を見れば、上空に巨大な骸骨が浮いていた。

 

「ヴェヴェルスブルグ城。

ラインハルトが創造位階で出した城だ。

あれにスワスチカなんかで散った魂が取り込まれる。

あの城はまだこの世界とズレた状態ではあるが、スワスチカもほとんど開いて、この街一帯の住人はもう関係なしに魂があの城に吸われた。

無論、俺達は普通の人達と違うから、城に吸収されることはない。」

 

「それって……じゃあこの街はもう誰もいないのか?」

 

「ほぼ無人だ。

俺達に、藤井達、黒円卓の連中、後はデーニッツを覗けばだがな。」

 

「ちょっと待て。

島谷は?

あいつもまさか…。」

 

「ああ。

多分あの中だ。」

 

そんな…。

羽矢に続いて島谷まで…。

 

放ってはおけない。

このまま見過ごす訳にはいかない。

 

「おい。

どこに行くつもりだ。」

 

俺は体が外に向かおうとしていたのに気付く。

 

「決まってんだろ。

島谷を取り戻しに行く。

もうこれ以上、仲間を失いたくない。」

 

そうだ。

俺はもう何も失いたくないんだ。

 

「やめろ。絶対に行くな。

あいつらに関わっては駄目だ。」

 

「……何でだ。

友達を失って辛いのはお前も同じはずだろ?」

 

「それはそうだが……。」

 

祥二は何故か黙る。

 

「林と深田は?

あいつらもあの城に魂を?」

 

「…あいつらは無事だ。

運良く隣町までカラオケに行ってたらしくてな。

暫く戻って来るなとは電話しておいた。」

 

「そうか…良かった。」

 

俺は玄関戸に手を掛ける。

 

「俺は行く。

もうごめんなんだ…。

誰かを失うのは。」

 

「ま、待て!龍野!」

 

祥二の制止の声を無視して、俺は外に出た。


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