Dies irae ~Von der großen sehnsucht~ 作:tatuno
ある男の視点で書かれている物語です。
よろしくお願いします。
──────小学校の方ははずれであったため、龍野が向かった病院の方へと駆けつけた。
病院内に入って見渡す限り、戦闘はすでに始まっていた様子ではあるが、その割にはとても静かだった。
一つ感じる気配を辿ると、盛大に壁に穴が空いた解剖室がそこにはあった。
空いている穴から中に入る。
「龍野!」
そこで目に飛び込んでくる光景。
その手に蜻蛉切を持った男は、もう肉の塊というべき人の身体を何度も何度も槍で突いて刺してを繰り返していた。
何かに取り憑かれたように。
「お前……龍野なのか?
その姿は……。」
彼の名前を呼んでいる自分でも本当に龍野なのかの見分けが着かなかった。
その姿は悪魔のようで、全てを欲し貪る餓鬼のようにも見えた。
周りを見渡す。
恐らく滅多刺しにされてるのは永篠だろう。
そして、手術台に横たわっている手足のない女性の姿。
あれは間違いなく……。
「状況は……なんとなく分かったよ。」
怒りのあまり我を忘れているのだろう。
確かに俺だって、あの状態の彼女を見て怒りを憶える。
でも…。
「それはお前の創造位階でいいんだよな?」
彼の姿を見る限り、そう考えるのがまず無難だろう。
あまりにも禍々しく、邪悪で、悲しい姿。
「元に戻れつっても、どうやらそう簡単に戻らないっぽいな…。」
彼は永篠を刺すのを止めて、こちらを向いているが、俺の言葉を聞いている様子ではない。
「傲慢…貪欲…嫉妬…憤怒…貪欲…色欲…怠情…。」
「?」
ぶつぶつと彼は呟く。
七つの大罪を。
「怨み…苦しみ…悲しみ…不安…絶望…空虚…軽蔑…。」
負の感情を。
「……相当狂ってるみたいだな。」
そこまでくると怖いよ。
お前が求めているのはそんな情念じゃないだろうに。
俺は手に日本刀を出現させる。
「しょうがない……。
お前を元に戻してやる。」
これはあまり使いたくない。
けれどお前のためだ。
「そのままじゃ大隅も報われないだろうし。」
大隅が自分のせいでお前をそんな姿にしたとか思ったらどうするんだ。
そんな姿、すぐ俺が終わらせてやる。
「俺の渇望、創造位階でな。」
「グ…ガ、アアアアアアアアアアアアアア!!」
龍野が荒れ狂いながら、向かってくる。
剣よ。
俺の願いを叶えてくれ。
あいつを元の姿に。
負の感情を消し去ってくれ。
その破滅の願いで。
─────龍野の創造は自分に憑依した者の能力、姿を使うことができる…か。
じゃあ、あの姿は龍野に取り憑いていた何かということなんだろうか。
怒りで障ったということなのだろう。
元に戻った彼は横で横たわり、眠っている。
彼を連れて帰る前に、後始末をしておこう。
大隅の遺体は外に連れて行き埋葬した。
そういえば、大隅は何だったのだろうか。
ルサルカに接触していたらしいし。
どんな思惑だったのかが今だに分からない。
もしかして、全部知っていたのか?
次は永篠。
こいつはどうするべきか、別に埋葬しなくてもいいんだが……。
「た…助けてくれ…。」
「……。」
案外しぶとい奴だな。
「たす…け…てくッ──。」
俺は無言で頭に刀を突き刺す。
「お前を助ける義理なんてない。
そこで一生寝てろ。」─────
─────龍野を抱えて、彼の家へ向かう。
龍野との戦闘で腕を切られ、そこがズキズキと痛む。
「いって……。」
こんなことになるなら、二人で同じところに向かった方が正解だった。
判断ミスだ。
やつらが無事に済ます訳がなかった。
カール・デーニッツ。
こいつらを巻き込んだ礼は果たさせて貰う。
お前の死で、全てを償わせてやる。
そう決心した瞬間。───
多大な威圧と共に、上空に巨大な髑髏を象った城が出現した。
「至高天…か。」
あの城に複数、登っていくのを感じる。
これからあの城で彼らの戦いが始まろうとしている。
それが既知になるか、それとも未知の世界となるのか。
節目の一つとなるはずだ。
俺があの戦いに参加しても、どうせ掻き乱すだけ。
ならばもう願うしかないのだ。
早くこの世界を終わらせてくれと。
「頼むぞ。
この世界を破壊できるのは、お前だけなんだ。」
そして再び、女神の世界へと導いてくれ。──────