Dies irae ~Von der großen sehnsucht~ 作:tatuno
よろしくお願いします。
───焦燥感に駆られて羽矢を探す。
永篠が創造位階を使い、より一層不気味になったこの病院。
走り回っているのだが、奴は何もしてこない。
それどころか羽矢も見つけられない。
変わったことと言えば、この病院の周りになかったはずの有刺鉄線に囲まれていた。
ついでにエイヴィヒカイトの力でパワーアップしている電流付き。
永篠を倒さなければどうやら出れないらしい。
だが、二人とも一体どこに……。
行き止まりだったので、元来た道を方向転換して引き返そうとする。
「いてっ!」
何かにぶつかってしまった。
頭をさすりながら目の前を見る。
「壁…?」
レンガ作りの壁がそこにはあった。
「何で壁が…。」
言って気付く。
周りを見るとレンガが積み重なってできている壁に囲まれ、天井には通気坑みたいなものがあった。
「くそっ!」
蜻蛉切を形成し、即座に壁を壊そうとする。
が、壁に弾かれ傷一つ付かず。
「ハハハハッ!
気分の方はどうだ?」
再び永篠の声が響いてくる。
「お前がこれからどうなるか……分かるよな?」
楽しそうに言っているが、どこがそんなに楽しいのか分からない。
「ああ…。
お前の創造の名前からして、毒ガスでも撒こうって思ってんだろ?」
「ハハハ、その通り!
よく分かってるじゃねえか!」
どんな渇望なんだよ…。
こんなの冗談じゃないぞ。
だが、あいつの聖遺物。
あれは医療用のメスだったのか。
あんな物が聖遺物とは、なんとも陰気なものだ。
「じゃあ死んでくれ。」
永篠の言葉を期に、通気坑から何かが流れ出したのを感じた。
「くっ…!」
この毒ガスをどう切り抜ければ……。
このままではここで死ぬ。
でも、逃げ場なんかない。
壁も壊すことは不可能だった。
どうすればいい。
何か打開策はないのか………。
いや、ある。
創造位階。
相手が創造位階であるならば、俺もそこに達すれば勝機があるかもしれない。
俺の創造がどんなものかは分からないが、何かが変わるはずだ。
だがそれこそどうすればいいんだろうか。
どうやったらその位階へと到達できるんだ。
────少年。
「……忠勝さん。」
────貴様はここで諦めたいのか?
「でも……。」
でも、本当にどうすれば……。
────前に言ったであろう。自らの弱さを認めろと。すでに貴様は見つけているはずだ。
「弱さ…。」
自分の弱さ。弱み。
十一年前からの落ち度。
そうだ。
俺はずっと悩んできた。
自身の心が無いことに。
それが俺の弱さ。
いや、正確にはそれに悩み続け、全てを偽ってきたのが俺の弱さだ。
────それが貴様の弱み。そしてその弱さを抱えて想ってきたものは何だ。
想ってきたもの。
それは──
「──みんなのような、理想の
────御身の感情は白だ。まさに無の色。それはつまり何色にもなれるということだ。
何色にもなれる。
俺はみんなの良さを自分自身に描こう。
それだけじゃなく、忠勝さんからも学んだことも全て。
────フン。ならば渇望してみせよ。拙者も共に行こうではないか。再び刮目させる時だ。
今こそ──
創造──
「うおおおおおおォォォォォォォ!!」
「──────おォォォォォォォ!!」
囲んでいた壁は粉々に四散し、その先にある壁も破壊していった。
そして、空いた数々の穴の向こう側。
「なッ、バカな…。」
奴がいた。
「さて、拙者の槍を受けてみるがいい。」
今不思議と自分の体にないように思える。
「お前は……。そうか。
お前があの時の槍に宿っていた魂か。」
「……いかにも。」
そう。
今の拙者は俺ではない。
まさしく俺の身体は本多忠勝、その人へと成り代わっていた。
補足として、主人公の創造の名前が蓮の創造の名前と少し被っていますが、全く関係はありません。