Dies irae ~Von der großen sehnsucht~ 作:tatuno
よろしくお願いします。
───現在、俺の家。
羽矢を取り返すため祥二と作戦を立てている。
「で、何でお前がいるんだよ。」
祥二が言う。
「うるせえな。
別にいいだろう?
学校行く途中でお前が龍野の家に行くのを見かけたんだ。
仲間外れはするなよ。」
前述の通り、祥二が俺の家へ来るのをこいつ、島谷は見かけてしまった。
お陰で話は全く進んでいない。
こいつをこれに巻き込むわけにはいかない。
島谷はそもそも戦う術を持っていないので、巻き込まれれば高確率で死ぬ事になる。
まあ、こうやって心配して来てしまうのは島谷の良いところではある。
心配して、誰にでも行う気遣い。
まあ所謂心配性というやつだが、希薄で執着というのがゼロに等しい俺とは真逆だ。
そういう自分には無いものを持ってるこいつが、俺は本当に羨ましい限りだ。
「邪魔ってのが分からんのか?
お前のせいで大隅を救い出す算段が立てれないんだよ。」
「何?
なんでお前と龍野だけでなんだ。
俺も友達なんだから手伝わせろよ。
そういうのが仲間外れって言うんだよ。」
ちなみに羽矢が連れ去られたという事実だけは知られてしまった。
これは俺のミス。
つい口が滑ってしまった。
「龍野が余計なこと言うから…。」
「……すまない。」
とんだ失態。
「……悪い、島谷。
祥二の言う通り、今日のところは帰ってくれないか?」
「……。」
羽矢が巻き込まれた形になった以上、デーニッツ達がこいつを知ってどうするかが分からないところもある。
ならばそもそも関わらせない方が得策だ。
「……大隅がいるかもしれないところを知りたくないのか?」
……え?
「お前それどういう…。」
「前に言ってたの覚えてるか?
情報通と知り合いだっていう。」
「ああ…。」
クラブ・ボトムレスピット。
諏訪原市の裏。
言わばアンダーグラウンド。
そこにいるグループのリーダー格が島谷の言っている情報通で、知り合いだという話を前にこいつから聞いたことがあった。
「そいつが教えてくれたんだよ。
カール・デーニッツとかなんとかの居場所をな。」
「お前…デーニッツのことも知ってたのか?」
「まあな。
お前達がここ最近何をやってたのかも知ってる。
大隅が連れ去られたのは今知ったけど。」
どうやらそれ以前の問題だったらしい。
巻き込まれるとかの前に、こいつは自ら足を踏み入れていた。
「俺だって知る権利はある。
龍野と祥二がこそこそ何かやってるから、気になって仕方なかったんだよ。」
……巻き込みたくないとか思っていたけど、どうやら無意味な願いだったようだ。
「それで?
潜伏先はどこなんだ?
教えろよ。」
祥二が言った。
「情報によれば、二カ所怪しいところがあるらしい。
その二カ所のどちらかに恐らくいるんだと。」
「その二カ所はどこにある。」
「両方ともここから少し離れた所だ。
一つは合併されて使わなくなった小学校の旧校舎。
もう一つは廃れて潰れた病院の廃墟だ。」
如何にも隠れれそうなところではある。
「そのどちらかに奴らはいる。
どっちの方が確率が高いかとかは聞こうと思ったんだが、今何故か連絡が途絶えてしまってな。
残念ながら分からない。」
「やるじゃん島谷。
実際これは有益な情報には違いない。
このままじゃ俺と龍野で片っ端から探さなきゃいけなかったし……。
お前もたまには役に立つんだな。」
「たまにってなんだ。」
確かにこの街を隅から隅までよりは明らかな時間短縮。
危険に踏み入ったのは戴けないが、羽矢を早く助け出すための布石となっている。
「…ありがとう。」
「いいや。
大隅助けるためだろ?
当たり前じゃん。」
「ああ…そうだな。」
場所さえ分かれば後は助け出すだけだ。
あいつらが何かを仕出かす前になんとか…。
「すぐに行きたい気持ちもあるが、決行するのは今日の夜だ。
明るいうちにすれば周りの住民も巻き込む可能性がある。いいな龍野。」
そんな俺の様子を見て祥二が聞く。
「……分かった。」
それは元も子もない。
まだ羽矢の身に何も起こってなければいいが……。
そう祈るばかり。
無事でいてくれ───羽矢。