Dies irae ~Von der großen sehnsucht~   作:tatuno

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第十七章です。
よろしくお願いします。


第十七章

───現在、俺の家。

 

羽矢を取り返すため祥二と作戦を立てている。

 

「で、何でお前がいるんだよ。」

 

祥二が言う。

 

「うるせえな。

別にいいだろう?

学校行く途中でお前が龍野の家に行くのを見かけたんだ。

仲間外れはするなよ。」

 

前述の通り、祥二が俺の家へ来るのをこいつ、島谷は見かけてしまった。

お陰で話は全く進んでいない。

こいつをこれに巻き込むわけにはいかない。

島谷はそもそも戦う術を持っていないので、巻き込まれれば高確率で死ぬ事になる。

 

まあ、こうやって心配して来てしまうのは島谷の良いところではある。

心配して、誰にでも行う気遣い。

まあ所謂心配性というやつだが、希薄で執着というのがゼロに等しい俺とは真逆だ。

そういう自分には無いものを持ってるこいつが、俺は本当に羨ましい限りだ。

 

「邪魔ってのが分からんのか?

お前のせいで大隅を救い出す算段が立てれないんだよ。」

 

「何?

なんでお前と龍野だけでなんだ。

俺も友達なんだから手伝わせろよ。

そういうのが仲間外れって言うんだよ。」

 

ちなみに羽矢が連れ去られたという事実だけは知られてしまった。

これは俺のミス。

つい口が滑ってしまった。

 

「龍野が余計なこと言うから…。」

 

「……すまない。」

 

とんだ失態。

 

「……悪い、島谷。

祥二の言う通り、今日のところは帰ってくれないか?」

 

「……。」

 

羽矢が巻き込まれた形になった以上、デーニッツ達がこいつを知ってどうするかが分からないところもある。

ならばそもそも関わらせない方が得策だ。

 

「……大隅がいるかもしれないところを知りたくないのか?」

 

……え?

 

「お前それどういう…。」

 

「前に言ってたの覚えてるか?

情報通と知り合いだっていう。」

 

「ああ…。」

 

 

クラブ・ボトムレスピット。

諏訪原市の裏。

言わばアンダーグラウンド。

そこにいるグループのリーダー格が島谷の言っている情報通で、知り合いだという話を前にこいつから聞いたことがあった。

 

「そいつが教えてくれたんだよ。

カール・デーニッツとかなんとかの居場所をな。」

 

「お前…デーニッツのことも知ってたのか?」

 

「まあな。

お前達がここ最近何をやってたのかも知ってる。

大隅が連れ去られたのは今知ったけど。」

 

どうやらそれ以前の問題だったらしい。

巻き込まれるとかの前に、こいつは自ら足を踏み入れていた。

 

「俺だって知る権利はある。

龍野と祥二がこそこそ何かやってるから、気になって仕方なかったんだよ。」

 

……巻き込みたくないとか思っていたけど、どうやら無意味な願いだったようだ。

 

「それで?

潜伏先はどこなんだ?

教えろよ。」

 

祥二が言った。

 

「情報によれば、二カ所怪しいところがあるらしい。

その二カ所のどちらかに恐らくいるんだと。」

 

「その二カ所はどこにある。」

 

「両方ともここから少し離れた所だ。

一つは合併されて使わなくなった小学校の旧校舎。

もう一つは廃れて潰れた病院の廃墟だ。」

 

如何にも隠れれそうなところではある。

 

「そのどちらかに奴らはいる。

どっちの方が確率が高いかとかは聞こうと思ったんだが、今何故か連絡が途絶えてしまってな。

残念ながら分からない。」

 

「やるじゃん島谷。

実際これは有益な情報には違いない。

このままじゃ俺と龍野で片っ端から探さなきゃいけなかったし……。

お前もたまには役に立つんだな。」

 

「たまにってなんだ。」

 

確かにこの街を隅から隅までよりは明らかな時間短縮。

危険に踏み入ったのは戴けないが、羽矢を早く助け出すための布石となっている。

 

「…ありがとう。」

 

「いいや。

大隅助けるためだろ?

当たり前じゃん。」

 

「ああ…そうだな。」

 

場所さえ分かれば後は助け出すだけだ。

あいつらが何かを仕出かす前になんとか…。

 

「すぐに行きたい気持ちもあるが、決行するのは今日の夜だ。

明るいうちにすれば周りの住民も巻き込む可能性がある。いいな龍野。」

 

そんな俺の様子を見て祥二が聞く。

 

「……分かった。」

 

それは元も子もない。

 

まだ羽矢の身に何も起こってなければいいが……。

そう祈るばかり。

 

無事でいてくれ───羽矢。


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