Dies irae ~Von der großen sehnsucht~ 作:tatuno
よろしくお願いします。
ここ一週間、猟奇殺人が止まった。
犯人が捕まったわけではない。
自分自身の勘が鋭いわけではないのだが、終わったなんて考えきれない自分がいる。
そんな気がする。
なにか我慢をしているようなそんな感じ。
学校のクラスのやつらもいろいろな予想は立ててはいたが、自分の中ではこれが打倒な気がした。
それを確定する要因としては自分の勘以外に友達の意見がある。
俺の友達の数はおそらく少ない。
人見知りなわけではない。
クラスのやつらとも話さないわけではないが、友達とは言えないレベル。
浅く広くだ。
そんな少ない友達の中でも松本祥二という名の友達は勘も自分以上に鋭く、頭もいい。そして最も信頼のできるやつだ。
「龍野はどう思う?」
殺人事件、と祥二は聞いてきた。
「祥二がそういうならそうなんだろう。つまり単純な快楽殺人じゃなく別の理由があるわけでしょ?」
俺─龍野祐はそう言った。
祥二がそうだろうと言うなら、そうなんだろう。俺なんかより祥二が考える方がよっぽど適任だ。
一応同意見ではあるし。
まあ、首を切り落とすぐらいの狂気性は少なくともあるとは思うのだが。
「それより一週間前に転入してきたやつらいるじゃん?二人。可愛いよな。」
「お前そういうのいつも気にするよな……。」
可愛いと言うのがなにが悪いのだろうか。
それが男ってもんだろうに。
確かに祥二は恋愛事情には疎い。ただ中学二年生の妹とは仲がよく、シスコンだと勘違いをされることがある。
たまに俺がわざと言いふらしてるのだけれど。
「名前は何だったっけ?ええと………。」
「櫻井螢とルサルカ・シュヴェーゲリン。可愛いはともかくとして外国人の転校生は珍しいよな。日本語ペラペラだし。」
──猟奇殺人が止む頃、隣のクラスに二人の転校生が転入して来た。
櫻井螢とルサルカ・シュヴェーゲリン──。
二人ともそこらの女子と比べれば、可愛いさのレベルは高い方。本当に。
性格としては櫻井は喋るは喋るがクールだった。対してルサルカは気さくで元気。
そんな彼女らは瞬く間に学校の人気者になっていった。
だが、俺は可愛いとかよこしまな気持ちを抱く他、この二人が怖いとも思った。
何故かは分からない。
俺はこの二人が真底怖い。
抱いたことのある恐怖感。
強い者と直面した時の気持ち。
蛇に睨まれた蛙。
劣等感。焦燥感。その他諸々。
隣のクラスの可愛い女子に恐怖を抱くはずがない。
馬鹿馬鹿しいことを思うのは止そう。
まさか事件とも繋がりはないだろうに──。