Dies irae ~Von der großen sehnsucht~   作:tatuno

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第十三章です。
よろしくお願いします。


第十三章

────「そんなに身構えるな。

私はただ君と話したくて来たのでな。龍野祐。」

 

唐突に現れたこの男──カール・デーニッツ。

前に見た時は髭を生やしていたがなくなっている。

 

「ん?ああ、髭か。

剃ったのだよ。

そろそろ私も黒円卓の連中共々と同じく、本腰を入れて動こうと思っていてね。

その一環と思ってくれればいい。」

 

なるほどな。

目的は知らんが、なんでも本気というわけだ。

 

「まあそのことはいい。

それよりも前述の通り、私は君と話がしたい。

どうかな?」

 

デーニッツは俺に優しい声で問う。

が、現れた時から消えていないものあり、俺はそれが気になって仕方がなかった。

 

「じゃあ…その殺気は何だ。

話したいとか言ってる割りには、さっきから全くその態度が見受けられないが…。」

 

明らかに殺気というものが収まっていない。

とても話し合いという態度ではない。

 

「これは失礼した。

何せ………」

 

デーニッツは俺の横へと視線を送る。

 

「そのお年を召した女が邪魔なものでね。

是非とも、消えて貰いたい。」

 

俺の横にいるルサルカ。

デーニッツは彼女を睨んでいた。

 

「だが、久しいなマレウス。

戦時中以来か?」

 

「デーニッツ……。

あなた生きてたのね……。」

 

そういえば祥二が言っていたのを思い出す。

聖槍十三騎士団は第二次世界大戦の時のドイツで発足したものだ。

 

そしてカール・デーニッツ。

こいつもそのドイツ関係と言っていた。

なら見知っていてもまず不思議ではない。

 

というか、ふと思ったが、ルサルカの実年齢って何歳だ?

こんな容姿をしているけれど……。

 

「フッ。勝手に殺すな。

所詮全ては嘘。

全ては目的のため。」

 

随分とルサルカを舐めた態度を露わにして、デーニッツは話しを続ける。

 

「聖槍十三騎士団。

ヒムラーの頃は冗談めいて良かったがな。

馬鹿げていて。

だが、今のラインハルトがいるこの組織はあまり好かない。

下に就きたくもない。

あの男一人ならまだいい。

 

カール・クラフト。

あいつは不吉だ。

だから私は逃げたのだ。

彼の秘術だけを盗ってな。」

 

このデーニッツからの言葉からして、彼はそのカール・クラフトに恐怖しているということなのだろうか。

 

いや、恐らく違う。

こいつにはその時から黒円卓とは全く違う目的というものがあったのだろう。

それ故の行動。

 

「いろいろと興味が湧いただろ。

龍野祐。

さあ、私と話し合おうではないか。」

 

「そういえばだが、俺はお前に名前なんて名乗ったか……?

あの時だって俺は一言も自分の名前喋ってないぞ。」

 

そう。

俺はこいつに自己紹介なんてしてないし。

そもそもこいつは何故か俺に興味を持っている。

 

「君のことは少し調べさせて貰った。

勝手にすまないな。

君を見て一つ疑問に思ったことがあってね。

できればそのことも話題にしたいのだが………。」

 

「ルサルカ。」

 

俺はデーニッツの言葉を少し無視しながらルサルカに催促した。

 

「一時休戦しよう。

……あいつを一緒に倒せないか?」

 

しばらくルサルカは黙る。

 

「…いいわよ。

あの殺気。

退けとか言ってるけど、私を殺す気じゃない…。

到底逃がしてくれるとは思えないもの。」

 

やつはルサルカを先ほどから殺す気でいる。

そしてあいつは今後俺の敵になるはず。

ならばその前に潰す。

ルサルカが協力関係でいる間に。

障害を消す。

 

デーニッツは俺とルサルカの会話を黙って聞いていた。

 

「……まあいい。

戦闘中でも会話はできる。

その時に反応を示してくれればいい。

来い。手合わせをしてやろう。」

 

手合わせか…。

随分と舐められているらしい。

 

俺は右手に瞬時に槍を形成する。

 

「……へぇ。

それがあなたの聖遺物なのね。」

 

ルサルカが俺を見て呟く。

 

彼女を見ると、何か武器らしきものを形成している様子には見えなかった。

その代わり何か禍々しいもの気配が周りから感じられる気がした。

 

一方、デーニッツの様子。

彼は最初現れた時から変わっていない。

ナチスドイツのものであろう軍服のポケットに手を突っ込んで、相変わらずの態度。

 

その様子を十分注意し警戒しながら、俺はデーニッツに向かって踏み出した。


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