IS学園潜入任務~壁の裏でリア充観察記録~   作:四季の歓喜

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ぬう…セイスとマドカをベン・トーの店に送りつけたら面白そうな気がしてきたかもしれない。ベン・トーちょっとしか知らないけど…


リア充観察記 後編

 

 

「……なぁ、セイス…」

 

 

「どうした?」

 

 

「お前、やっぱスゲェや…」

 

 

「言いたいことは分かるが、キツイなら休んでろよ…」

 

 

 

 さっきまで一緒にモニターで織斑一夏を監視していた相棒は今、床に大の字になって倒れていた。血の気は失せ、口からは霊魂のような物が見えている…

 

 

 

「そうもいかねぇ…!! 俺は、俺はこの苦痛に耐えてでもこの光景を目に焼き付けてみせる!!」

 

 

「あ、シャルロットが一夏に『あーん』してる」

 

 

「リア充なんか滅んでしまえええええええええええええええええええええええ!!」

 

 

 

 もう分かってると思うが、オランジュが死に掛けてる理由は、織斑一夏と奴を慕う少女達のやり取りである。ましてやコイツは熱烈なシャルロッ党、本人達がイチャつく姿は苦痛にしかならない。

 織斑一夏のハーレムは見たくない…けれどシャルロットの姿は見ていたい。そんなアホみたいな葛藤と戦いながらこの光景を見続け、今まさに力尽きようとしていた。やっぱり自分が望んだ『あーん』を目の前でアイツがされてるのを見たのがトドメになったようである。

 

 

 

「オランジュ、布団敷くか? それとも棺桶を用意した方がいいか?」

 

 

「ま、まだだ…まだ終わら……!!」

 

 

「おや? またラウラが口移しを試みてる…」

 

 

「うぼああああああああああああああああああああああああッ!?」

 

 

 

 あ、死んだ…。余談だが、オランジュは『ブラック・ラビッ党』と掛け持ちすることにしたそうだ。よっぽどさっきの光景が印象的だったらしい。もっとも、この女好きが一人だけに入れ込むのは元々あり得ないと思っていたが。

 さて、物言わぬ屍に話し掛けてもしょうがない。復活するまでは放置しておこう。ところで、画面の向こうに居る3人よ、またいつだかの過ちを繰り返す気か?

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ予鈴が鳴んぞ、3人とも…」

 

 

 

 

 

―――キーンコーンカーンコーン!!

 

 

 

『うわ、ヤベェ!?』

 

 

『もうこんな時間!?』 

 

 

『今日の一限目は……教官の授業ではないか!?』

 

 

 

 慌てふためく一夏とシャルロット、そしてラウラ。だが、もう手遅れだ。どんなに頑張ってもお前らの足じゃあ教室に間に合わねえよ。

 この前みたいにISを展開すりゃ余裕だが、この前厳罰くらったから流石にやらな……シャルロットさんや、その何かの葛藤に苛まれてそうな御顔は何ですか…?

 

 

 

『……』

 

 

『ん? どうしたんだ、シャル…?』

 

 

『先に行ってるぞ二人とも!!』

 

 

 

 ラウラはそう言ってさっさと走って行った。流石は『遺伝子強化素体(アドヴァンスド)』で現役兵士、速い速い。アレならギリギリ間に合うだろうな。

 で、ラウラの姿が見えなくなっても依然として動こうとしないシャルロット。何かブツブツ言ってるんでマイクの集音率を上げてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『…やろうかな?…でも、また織斑先生に見つかったら居残り罰に…ちょっと待って僕、それってむしろチャンスじゃない……?』

 

 

『…シャル?』

 

 

 

 

 シャルロットさん、あんたまさか…

 

 

 

『一夏!!』

 

 

『お、おう!?』

 

 

『掴まって!!』

 

 

『へ!?』

 

 

 

 言うや否や『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』を部分展開したシャルロット。またやる気だこの子、臨海実習直前にやったアレをやる気だこの子!!

 

 

 

『ちょ、待てよ!! また千冬ね…織斑先生に見つかって居残り罰とかあったら……!!』

 

 

『むしろ役得だから問題無いよ!!』

 

 

『何だそりゃ!?』

 

 

『さぁ、行くよ!!』

 

 

『おい、シャル!! どわああああああああああああああああああああ!?』

 

 

 

 前回と同様、ISを展開した一夏を抱えながら凄まじいスピードで廊下を駆け抜けるシャルロット。うむ、相変わらず機体名に恥じぬ疾走感だことで…。

 

 

 

「…あれ、シャルロット様は?」

 

 

「何だ、もう起きたのか…。取り敢えず、お前は自分の荷物の整理でもしてやがれ」

 

 

「……おう…」

 

 

 

 今の光景を見たらオランジュはどうなるんだろうか?まず、良い事にならないのは確実なので黙ってよう…うん、それが良い。そう何度も絶叫されて気絶されても困るし。

 余談だがこの後、幸か不幸か一夏とシャルロットは、千冬と遭遇せず無事に教室に辿り着いた。一夏は普通に喜び、シャルロットはどことなく残念そうにしていたのだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――千冬が頭にタンコブ作ってグッタリしたラウラを引き摺って教室に入ってきた光景を見たら、流石に考えを改めたようである…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 気になったのでカメラの映像をチェックしてみたら、教室へと全力疾走してたラウラは廊下の曲がり角で千冬に衝突。身長的に腹部へ強烈な頭突きを喰らう形になった千冬は、そのまま数メートル吹っ飛んだ…凄えな、オイ……

 その後、顔を真っ青にしながら千冬に駆け寄ったラウラは、謝罪する前に恐怖のアイアンクローで捕獲されてしまった。そして、俺以上に人外な世界最強は、笑顔でアノ出席簿を振り上げ…

 

 

 

 

『廊下を走ってはならんと、教えなかったか…?』

 

 

『IS以外のことは特に教わってなッ……』 

 

 

 

―――ズッパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!

 

 

 

 

 ラウラの頭に振り下ろされたその一撃は、その辺に仕掛けといた音声マイクが全て御釈迦になるほどの余波を持っていたとだけ言っておく。

 よく生きてたなラウラ…と、思うと同時にあのピンクノートの件は墓まで持っていこうと心に固く決めた。あ、でも組織に報告しちゃったな、そういや…

 

 

 

「……早く帰りたい…」

 

 

「それは俺のセリフだ…」

 

 

 

 オランジュ、お前と違って俺は物理的に死ぬ可能性があるんだよ。それに、今は授業中だからそんなに大きな動きは無い筈だ。そして案の定、他の全生徒を含めて皆静かにしてやがる。これなら奴もイチャつくようなことは…

 

 

 

 

『一夏さん、分からないところはありませんか?』

 

 

『いや、今は特に問題無い。サンキューなセシリア』

 

 

『いえいえ』

 

 

 

 セシリア・オルコットおおぉぉ!!今ぐらい自重しやがれええええええ!!

 

 

 

「あれはオルコッ党の…!!」

 

 

「もういいから!!政党とかもういいから!!」

 

 

 

 最近席替えしたんだよね、このクラス。先日、あわよくば一夏の隣に行きたいクラスメイト達が一斉に副担任の山田摩耶に直訴。何とも言えぬ彼女たちの威圧感に圧倒され、山田先生は恐怖に震えながらそれを認めた。あん時の女子はマジで恐ろしかったな。

 で、結局今まで一夏の隣に居た生徒は全員移動する羽目になって血涙を流し、シャルロットとラウラは一夏とやや離れた場所に、箒に至っては前回とまるっきり同じ場所になった。そして、専用機持ちで唯一奴の隣に行ったのがセシリアというわけだ。

 現在、奴の隣を制したセシリアは悔しがるライバルたちを尻目に、授業中にも関わらず積極的に一夏へとアプローチするようになっている。その表情が毎日のように輝いているのは言うまでも無い…。

 

 

『困った時はいつでも言って下さいね? この私、セシリア・オルコットがいつでも手を貸してさしあげますわ…!!』

 

 

『あぁ、いつも悪いな…』

 

 

 

 流石は名門一族の家系、品性奉公成績優秀とはまさに彼女の事である。どうしてこの子の手からあんなビックリ料理が作られるのだろうか…?

 

 

「何だビックリ料理って…?」

 

 

「え、知らねぇの?ならばホレ…」

 

 

―――テケテケン♪ 『あの時のサンドイッチ』~ 

 

 

「…これは?」 

 

 

「オルコット嬢の手料理を再現してみた」

 

 

 どうやって作ったのだろうかと思い、後日監視カメラで作っているところを撮影してみた。そして、『この世には知らない方が良いんだよ』な事は本当にあるんだと、改めて学ぶ羽目になった…

 

 

 

「……おい、見た感じ普通の卵サンドなんだが…やけに甘い匂いがするのは何故だ…?」

 

 

「さぁな。いいから食え、オルコッ党の奴らが喜んで悔いそうな物だろう?」

 

 

「今“悔いそう”と言ったか…?」

 

 

「聞き間違いだから気にすんな」

 

 

「……あむっ…」

 

 

 

 お、いったか……そして…

 

 

 

 

「めじゅらっぺらばっ!?」

 

 

 

 逝ったか…

 

 仕事や任務のせいである程度不味い食い物には慣れていたが、この『オルコット・フード』は流石の俺もキツかった。何でも『本と見た目を同じにすれば』美味しい料理になると思っているらしい。誰か、この箱入り娘に料理を教えてやってくれ…もしくは、その考えを改めさせてやれ…

 

 

『ところで一夏さん、昼休みの予定は空いております?』

 

 

『ん?特に予定は無いが…』

 

 

『よろしければ昼食をご一緒しませんこと?』

 

 

『あぁ、いいぜ』

 

 

『良かったですわ♪ 実は今日わたくし、初めて和食を作ってみましたの…!!』

 

 

『……え…?』

 

 

 

 やっぱ放置でいいや、どうせ被害者はコイツだけだし…。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 場所は移ってISアリーナ。今日の二限は実習のようで、今回も二組と合同でやるようだ。入学してから大分経ったためか、全員入学当初と比べたら随分と上達している。それは非専用機持ちの一般生徒にも言えることだ。

 

 

『おりむ~』

 

 

『のほほんさん?』

 

 

 うぐっ、いつだかの色々なトラウマが一気に甦ってきた…。しかし、本当にクマの着ぐるみはいつ返せばいいのだろうか?いっそ捨てちまおうかな…?

 

 

「あ、この子ってお前に『ランニング・ベアの怪』の伝説を築くきっかけを与えたという例の…」

 

 

「…言うな、もう忘れたいんだ!!」

 

 

 組織に帰ったら何と言われることやら…。コードネームが『熊』とか『ベア』になったりしたらマジで泣いちまうぞ、俺…。

 

 

 

『りんりんが呼んでるよ~』

 

 

『鈴が?分かった、ありがとなのほほんさん』

 

 

 ふむ、今度は『凰鈴音』か。さしずめ、練習相手という名目で一緒に行動したいんだろう…。

 

 

「………。」

 

 

「……オランジュ…?」

 

 

 サンドイッチの後遺症か?今度はセカン党な中国代表候補性が現れるというのに、ほぼ無反応である。ここまで来て急に黙られると逆に怖いん……ちょっと待て、この野郎…

 

 

「お前、もしやISスーツ着た女子をガン見してるだけ…?」

 

 

「………。」

 

 

「お~い…!!」

 

 

「………眼福なり…」

 

 

 

―――ゴッ!!

 

 

 

「悪は滅んだ…」

 

 

 さて視線をモニターに戻すと、案の定あいつは鈴と模擬戦に近い機動演習を行っていた…。臨海実習で発生した事件を経て、奴の白式は二次移行を果たしたそうだ。勿論全体的にパワーアップしたのだが、燃費の悪さもバージョンアップしたらしい。んで結局…

 

 

『そこぉ!!』

 

 

『うぐぉっ!?』

 

 

 自分より操縦技術が上、さらに燃費重視の機体で来られるとあっという間に負けてしまうようだ…。

 

 にしても、鈴って情報通りなら本格的にIS操縦しだしたのって去年とかそこらだっけ?だとしたら、なんだかんだ言ってとんでもない才能の持ち主な気がするのは俺だけか…?

 

 

『だらしないわねぇ…あんたもっと頑張りなさいよ……?』

 

 

『そう言われてもなぁ…』

 

 

『ま、だからこそ教え甲斐があるってもんだけどね~』

 

 

 嬉しそうに言っちゃってまぁ…。一夏ラヴァーズの五人は全員あの手この手で一緒に居る時間を増やそうとしている。このISの練習もそんな中の一つである。

 

 

『本当にいつもありがとうな鈴』

 

 

『ふふん、感謝しなさいよ?』

 

 

 無い胸張って自慢げなポーズを見せる中国代表候補。この前、彼女の部屋に忍び込んだ時に随分と切なくなる物を見つけてしまったのだが、それはまた今度語るとしようか…。

 

 

『そういえば、この後の昼休み暇か?』

 

 

『昼ごはん以外は特に…』

 

 

『(セシリア達と)一緒に昼飯食いに行かないか?』

 

 

『ッ!!行く行く、絶対に行く!!』 

 

 

 

 あぁ…また今日も上げて落とす無自覚プレイの犠牲者が……。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 さてさて特にあれ以上大きな出来事も無く、二限目は無事に終了して昼休みに突入である。各自スーツから制服へと着替え始める。一夏の奴も白式を収納し、着替えを置いてあるピットへと足を向けていたその時…。

 

 

『一夏ッ!!』

 

 

『お、箒か』

 

 

 ポニーテールを靡かせてやって来たのは篠ノ之箒だった。先日、姉である篠ノ之束から専用機を受領したとのことである。やはり、彼女の身内は今後も見張っといた方が良さそうだ…。

 

 

「来た、ファース党!!ビバ、ファース党!!」

 

 

「また唐突にハイになったな…」

 

 でも、今回ばかりは分かる。オランジュは基本的にエロい性格である。相棒が飢え死にしかけてる時にナンパした女とニャンニャンするような奴である。つまり、コイツの視線が行きつく先はひとつ…。

 

 

 

「凄く、大きいです…」

 

 

「てめぇはマジで黙れ…つーか、シャルロットはどうした?」

 

 

「シャルロット様は可愛いんだ!!箒様はエロいんだ!!」

 

 

「ファース党の方々に死んで詫びろクソ野郎ッ!!」

 

 

 注・今のはオランジュの戯言です。無視して下さい、ファース党の皆様…

 

 

「ったく…仮にも世界唯一の男性操縦者と世界最強ブリュンビルデに並ぶ重要人物なんだからな?」

 

 

「分かってるって…だから、その、消火器を、降ろせ…!!」

 

 

「え、振り下ろせ?」

 

 

「違う!!」

 

 

 フォレストの旦那…この変態を女の園に送り込んだのは、やっぱり間違いだったんじゃねえか……?

 

 

 

『一夏、今度は逃がさんぞ!!』

 

 

『…逃げる?』

 

 

『ッ!!いやいや何でもない、気にするな!!』

 

 

 

 言い忘れてたが、実は朝からず~っとアプローチを試みて失敗してるんだよね、今日の箒は…。

 

 

―――朝、部屋に向かったらシャルロットとラウラの二人が居たので断念

 

 

―――1限目、席が離れているので接触不可能。おまけにセシリアの独壇場

 

 

―――2限目、鈴に先を越された…

 

 

 そんでようやく念願のチャンスが巡って来たのだけど、さてどうなることやら…。

 

 

 

『今日の昼休みは暇か!?』

 

 

『あ、昼はちょっとセシリア達と…』

 

 

『なん…だと…!?』

 

 

 

 みんな考えることは一緒ということだな。ただ、箒さんの表情…絶望感がパネェです……。

 

 

 

『……折角、また弁当を作ったのというのに…』

 

 

『ん、何か言ったか…?』

 

 

『何でも無い!!この軟弱者!!』

 

 

『いきなり何だよ!?』

 

 

『うるさい!!実際、鈴に惨敗してたではないか!!』

 

 

『ウグッ…それを言われると……』

 

 

『ふん!!』

 

 

 

 あ~あ、やっちまったな……一夏では無くて箒が…。そっぽ向いてるが実際は今頃、心の中で『また、やってしまった!?』とか、『私の馬鹿馬鹿!!』とか自己嫌悪の真っ最中だろうに…。

 

 

 

「うへぇ、流石は『サマーキラー』」

 

 

「何だそりゃ…?」

 

 

「いや、だって一夏を死なせ掛けたことが二回あるって聞いたぜ?」

 

 

 

 それは『無人機襲来』と『銀の福音暴走』の時のことを言ってるのか?まぁ、確かにあの時は見てて肝が冷えたな、観察対象が死に掛けて。

 『無人機襲来』の時に至っては碌に謝りもしてなかったな、そういや…。

 

 

 

「でも、まぁ…だからこそ、俺は奴にイライラすることはあっても殺意や敵意は抱けないんだよな…」

 

 

「ん?」

 

 

「何でもない、こっちの話だ…」

 

 

 

 

 

 罵倒されても、拒絶されても、死に掛けても、あの野郎は篠ノ之箒を嫌わない、見捨てない。その理由は『幼馴染だから』という篠ノ之箒本人にとっては複雑なもの。

 ましてや、あの野郎はその幼馴染と同じくらいに他の奴らも大事にする。同じように命を懸けそうな勢いで…

 その義理堅さというべきか、馬鹿さ加減というべきか…とにかくお前のその人間性に関しては世界最強の弟では無く、世界唯一の男性操縦者としてでも無く、一人の男として素直に尊敬するよ『織斑一夏』。

 こんなことを思ってるなんて、恥ずかしすぎて誰にも言えないけどな…。でも、本音だ。でなけりゃ俺は任務ほっぽり出して奴をボコリに行っとる…。まぁ、どっちみち日頃の生活を見ててイライラするのも本当の事だし…

 

 

「セイス…?」

 

 

「気にするなっての。ほら、事態は常に進行してんぞ?」

 

 

「おっ、本当だ」

 

 

 モニターに目を戻すと、相変わらず箒はそっぽを向いたままだが一夏の方は困ったように頬をポリポリと掻きながら口を開いた…。

 

 

『箒も一緒に行くか、昼食…?』

 

 

『…え?』

 

 

『いや、昼休みに昼食をセシリアに誘われてさ。鈴も誘っといたから、箒も一緒に来ないか?』

 

 

『……つまり、セシリア個人との約束というわけでは無いのだな…?』

 

 

『まぁ、一応はな…』

 

 

 鈴の時より一言加えただけであ~ら不思議、たちまち効果と招く結果が早変わり…。箒の顔がパアッ!!と明るくなっていくのが分かる…。

 

 

『で、来るか?』

 

 

『も、勿論行くに決まっている!!』

 

 

『んじゃ、さっさと行こうぜ!!』

 

 

『あ…あぁ、そうだな!!』

 

 

 

 さっきの剣呑な空気は何処へやら。既に二人の間には、和やかな雰囲気があった…。本当、腹立つくらいにうまくやるねぇ、無自覚女たらしめ…。

 

 

 

「……セイス…」

 

 

「今度は何だ…」

 

 

「俺、帰っていい…?」

 

 

 ついに限界が近づいてきたか、オランジュよ…。だが、残念…まだ一日の半分も終わってないんだなこれが。今言ってた昼食なんて、イライチャ度は午前中の比じゃ無いぞ…?

 

 

「もう勘弁してくれええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 

「諦めな。ほれ、黒珈琲。まだまだ今日は始まったばかりだぜ?」

 

 

「リア充嫌いいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃッ!!」

 

 

 

 

―――俺の部屋に、嫉妬と憎悪と嫉妬と悲壮が篭められたオランジュの断末魔が響き渡った…。

 

 

 

 

 結局、この日は特に大きな出来事は無かった。いつものように一夏が5人をはべらせ、5人が一夏にアプローチを試みる、この学園では御馴染みの日常。

 

 そんな日常は監視生活初心者であるオランジュを半殺しにするには充分だったようだ…。

 

 この初日からグロッキーになった相棒を加え、俺のリア充観察生活がどのような影響を受けるのかは…神のみぞ知るところである。

 

 

 

「セイス、俺、この任務が終わったら彼女作るんだ…」

 

 

「ベタな死亡フラグをありがとう…」

 

 

 

 ま、いつもより楽しくはなりそうだけどな…

 

 


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