IS学園潜入任務~壁の裏でリア充観察記録~   作:四季の歓喜

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今回は助走回みたいなもんです。次回はもう1人の増援である鉄、そして虎とくーちゃんを書く予定です…


帰ってきた6、やってきた小僧と鉄 前編

 

 

「何故だろう、随分と久しぶりに感じるな…」

 

 

 アダルトビデオを届けさせられたり、馬鹿に絡まれたり、ビルから飛び降りたり、ISにブン投げられたりと波乱万丈だったアメリカ旅行から日本へと戻り、空港でマドカ達と別れた後セイスは、その足をIS学園へと進めていた。日本に着いた時はまだ朝方だったが、電車とバスを乗り継いで漸く見慣れた場所に辿り着いた頃には既に、完全な真昼間になっていた。

 しかし、今回のアメリカ旅行で肝心の復讐は結局成し遂げる事は出来なかったものの、その代わりに得たモノは彼にとっては限りなく大きく、同時に嬉しいことだったようで、彼の足取りは一切の疲れを見せず、同時に軽やかである。

 

 

「ん、あれは…?」

 

 

 そんな時、少し離れたところに居る何かが彼の目に入ってきた。よく見るとそれは、3人の男女が何かを言い争っているところだった。一本道なので迂回も出来ないため、取りあえずセイスは聞き耳を立ててみた。

 

 

「ヘイ可愛い子ちゃ~ん、俺達と一緒にお茶しな~い?」

 

「ちょっと、こっち来ないでよ!!」

 

「そんな連れないとこもキャワユイネェ!!お兄さん、ますます気に入っちゃったよ!!」

 

 

 どうやら、男二人が女子に悪質なナンパを試みているようだ。しかも更に目を凝らしてみると、随分と見覚えのある人物が混ざっていることに気付く。帰国早々に思わぬ場面に出くわし、どうしたものかと悩むセイスだったが、次の瞬間にそれどころでは無くなった。

 

 

「やめて!!それ以上しつこいと、警察呼ぶわよ!?」

 

「おっと、そりゃ流石に不味い。俺達って実は、出来るだけポリスメーンには関わりたくないんだーよ」

 

「だったら、さっさと…」

 

「だーかーらー♪」

 

 

 絡まれていた女子…休校の為、私服姿で外出中の相川清香が半ば脅すように言った言葉を耳にした二人の男の片割れは、怪しげな笑みを浮かべながら片手をズボンの後ポケットに突っ込み、何かを取り出した。それが何なのか分かった途端、セイスは三人の方へと全力で走り出し、そして…

 

 

「少しの間コレで眠りやがッーーーーー」

 

「地域パトロールの者でーーーーーーーーーーーーーーーすッ!!」

 

「れバボフッ!?」

 

 

---スタンガンを取り出そうとした男の側頭部に、ドロップキックをブチかました…

 

 

「…!?」

 

「ちょ、な…!?」

 

 

 セイスの人外キックをお見舞いされた男は勢いよく吹っ飛び、民家の塀に叩き付けられた。そして突然のことに、蹴られて気絶した男は勿論のこと、残ったもう一人と清香は状況についていけずに沈黙していた…

 

 

「怪我はありませんか?」

 

「……あ、いや大丈夫です。ありがとう御座い、ます…?」

 

 

 自分に対してしつこいナンパを繰り返していた男が一瞬で自分の視界から消滅し、気付いたら地面で伸びていたという状況に、清香は目を白黒させながらひたすら混乱していたが、セイスの言葉で我に返り、一応助けてもらったということに気付いたようで、どうにか礼の言葉は出てきた。心なしかその表情は引き攣っていた気がするが…

 

 

「そりゃ良かった」

 

「テメェ、いきなり何しやがぼはぁ!?」

 

「とにかく、今日は早く帰んな。あ、コイツは俺が責任持って警察に引き渡すんで、通報はしなく良いぞ。つー訳で、さいなら!!」

 

「あ、ちょッ…」

 

 

 残っていた男の片割れをワンパンで黙らせて肩に担ぎ、先に蹴り飛ばした男の足を掴む。清香は何やら声を掛けようとしていたみたいだが、セイスは最後まで耳を貸さず足早にその場を去っていった……1人目の男を、勢いよく引きずりながら…

 そして、その場に1人残された清香は暫く呆然としていたが、やがて友達との待ち合わせの時間が迫っていることを思い出し、彼女もまた慌ててその場から離れていった。ただ、その去り際… 

 

 

「……せめて、名前くらい聞きたかったなぁ…」

 

 

 なんてことを呟いていたとか、いないかったとか…

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「ふぅ、ここまで来れば大丈夫か…」

 

 

 二人のナンパ男を担ぎ&引きずり、取りあえず人目のつかない路地裏に入り込んだセイス。そこで二人を無造作に投げ捨て、彼は一息つきながらそんなことを呟いていた。それに合わせるようにして、蹴られた方の男が呻きながら意識を取り戻し、ムクリと起き上がった。だが、それを見てもセイスは一切動じなかった。おまけに…

 

 

「おぉ痛ぇ…テメェ、本気で蹴りやがったな?」

 

「まだ生きてやがったか…」

 

「待て待て待て待て、これ以上は本当に勘弁してくれ、死んじまう!!」

 

「……冗談だよ…」

 

「笑えねえよ馬鹿野郎…」

 

 

 その言葉を区切りに、暫く流れる沈黙。しかし言葉ではそう言うものの、互いに目はどこか楽しげである。そして暫くの沈黙の後、二人とも同時にニヤリと笑みを浮かべ始めた…

 

 

「まったく、仮にも先輩である俺を何だと思ってやがる…」

 

「ロリコンストーカー」

 

「死ね」

 

「それより、いったい何だってこんな場所で…それも、最悪な方法でナンパなんかしようとしてたんだ、『小僧(バンビーノ)』?」

 

 

 小僧(バンビーノ)…亡国機業の一員であり、セイスと同じくフォレスト一派に所属している男である。フォレスト一派の中ではオランジュ並に陽気な性格をしており、彼自身とも比較的仲が良く、オランジュ経由で交流を持ったセイスとも良好な関係を保っている。

 それ故にセイスは、互いの性格を知っている手前、どうにもバンビーノによる先程の行動が理解できなかった。『小僧』というコードネームに違わぬやんちゃッぷりを見せることもしばしばな彼だが、流石に堅気を無闇に傷つけるような男では無かった筈である。

 

 

「おいおい誤解すんな、俺はガキに怪我をさせるような真似は絶対にしねぇと決めてんだ。その証拠に、ホレ」

 

 

 セイスからの疑いを否定しながら、バンビーノは地べたに座り込んだままポケットからさっきのスタンガンを取り出し、それをセイスに投げ渡した。彼はそれを難なく受け取り、そして気付いた。やけにリアルに作られており、火花と光は出るが、肝心の電流は流れていない……つまり、玩具であるという事に…

 

 

「……じゃあ、さっきのは何なんだ…」

 

「それは、そこで気を失ったフリ続けてるアホに訊け」

 

 

 バンビーノのその言葉を聴いた瞬間、依然気絶していると思われた二人目の男…オランジュがビクリと体を震わせた。冷や汗を浮かべながらも、寝返りを打つようにして此方に背中を向け、再度気絶したフリを続ける相棒の姿を見たセイスは、生暖かい目で…尚且つ慈悲深い視線を向けながら、言ってやった。

 

 

「……遺言は…?」

 

「理由とか訊くのすっ飛ばしていきなりかよ!?」

 

「どうせ、ロクでもない理由なんだろ?」

 

「バッキャロウ、俺達にとっちゃ死活問題なんだ!!」

 

「じゃあ言ってみろ」

 

「ごめんなさい」

 

「言えねぇんかい」

 

 

 一言目で勢い良く起き上がり、二言目で詰めより、三言目で土下座したオランジュ。そんな彼の姿を見たセイスは、最早呆れるしかなかった。このような反応を見せるということは、案の定くだらない理由なんだろうが、果たして今回は何を企んだのだろうか…?

 

 なんて考えていたら、答えは思わぬ場所から出てきた…

 

 

「お前とエムの仲が進展したって話を聴いて、一層彼女が欲しくなったんだと」

 

「バンビーノ!?」

 

「そんで手っ取り早く彼女を手に入れたいが為に、俺を悪役にして劇的な出逢いを演出したかったんだってよ」

 

 

 更に詳しく言うと、玩具で相川清香を脅した悪党A(バンビーノ)を見た悪党Bが改心し、身体を張って彼女を助け、それを切っ掛けに交流を持とうとしたらしい。結局、通りすがりの人外に台無しにされ、文字通り踏んだり蹴ったりな目に遭ってしまったみたいだが…

 

 

「自分のこと棚に上げんな!! お前だってナンパ成功したら次は逆に俺が手伝うって約束した途端、超ノリノリだったじゃねぇか!!」

 

「バッ、余計なことを言うな…!!」

 

 

 そして成功した暁には、バンビーノも同じことをやるつもりだったらしい。それを聞いたセイスは深いため息をひとつ吐き、携帯を取り出して一言…

 

 

「二人とも、兄貴にチクるわ」

 

「「それだけはやめて、やめやがれ、やめて下さい!!」」

 

「残念、もう手遅れだ…」

 

「「ぎゃああああああああぁぁぁッ!?」」

 

 

 後日、二人に死刑勧告にも近い内容のメールが届くが、それはまた別の機会に…

 

 

「……セイス…」

 

「何だ、遺言か?」

 

「弥七に金使ったせいで今月ピンチなんだ、金貸してくれ…」

 

 

---本日、二度目のグーパンが炸裂…

 

 




セ「そういえばさぁ…」

マ「ん?」

セ「新装版6巻でのお前の私服姿って、なんか子供が仕方なく大人の服を着た感がするよな」

マ「え……つまり、あまり似合ってないということか…?」

セ「いや、似合ってるけど」

マ「なら良い」

セ(あの服装がお前の性格そのもの表しているみたいで……とは、流石に言わない方が良いか…)

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