IS学園潜入任務~壁の裏でリア充観察記録~   作:四季の歓喜

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暗部の人間が生徒会やってるならアリじゃない?とか思ってやってみました…


6とMと金の卵 前篇

 

 

「せっかくだから学園の奴ら全員に悪戯仕掛けようぜ!!」

 

 

「どうしてそうなる!?」

 

 

 

 学園祭襲撃事件があったその日、時刻は夜の11時。大半の生徒が明日も早い朝の為に寝静まってる頃、いつもの隠し部屋でそんな言葉が発せられた。いや…いつもの隠し部屋と言うにしては、少々散らかり過ぎているかもしれない。主に酒瓶だの缶ビールだのウイスキーボトルで…

 

 

 

「何でかって?そんなの決まってる…面白そうだからだ!!それ以外に何が必要だと言うのだ!!」

 

 

「誰かこの酔っ払いを止めてくれぇ!!」

 

 

 

 等と叫んだところで誰かが来てくれるわけも無く、巻き込まれたその人物は完全に悪酔いしたそいつに腕を掴まれてズルズルと引きずられながら道連れを喰らいそうになる…

 

 そもそも、今のこの状況は普段の事を考えると夢なのでは無いかとつい疑ってしまう。何せ、先程から繰り出されるトチ狂った言動の数々の発生源は…

 

 

 

 

「さぁ行くぞマドカ!!敵は2050室にありぃッ!!」

 

 

「頼むから我に返れ!!そして部屋に帰れ!!」

 

 

 

―――他ならぬセヴァスこと、セイスだった…

 

 

 

(ほんと、どうしてこうなった…?)

 

 

 

 しくじったオータムを救出してスコールの元に報告を兼ねて置いてきた後、オランジュから通信を受け取ったのがそもそもの始まりだったかもしれない。

 

 その時の内容は要約すると『3人で飲まね?』というものだった。セヴァス達からの忠告を何一つ聞いてなかったオータムから筋違いも良いとこな文句を言われ、おまけに目の前でスコールと百合全開な雰囲気を醸し出されてうんざりしてたので特に断る理由は無かった。というわけで、酒とツマミを持参していつもの隠し部屋に来たのだが…

 

 

 

「何を言ってるのかんね?僕は至って正気のスケさ!!」

 

 

「たかだか20字前後の言葉にツッコむとこが多すぎるッ!!」

 

 

 

 到着して最初に目に入ったのはあちこちに転がる酒瓶や缶ビールの数々と、やたら目が座っていたセヴァスだった…

 

 いつだか説明したが、彼は特殊な生い立ちと体質故に並大抵の薬品や毒物には強い耐性を持つ。かくいう私もナノマシンを体に投与しているため、セヴァス程では無いがそこそこの耐性を持つ。それを利用してこのように3人で酒を飲んだりすることはよくあるのだ。ところが…

 

 

 私を招いた本人(オランジュ)が居ない…

 

 普段なら気持ち悪くなる量の酒瓶と缶の数々…

 

 いつもとは明らかに違う質を纏った怒気を漂わすセヴァス…

 

 

 まだ一滴も飲んでないにも関わらず、激しい頭痛に襲われた。この状況、もしかしなくてもセヴァスが一人でこの部屋に転がる無数の缶瓶の中身を飲み干したとみて間違いない。常人ならばとっくに致死量を超えてる量だが、こういうものに対しても耐性の強いセヴァスは死にはしない……そう、死にはしない。代わりに酔っぱらうが…しかも“絡み上戸”。

 

 嫌な予感がし、回れ右して一目散に逃げようとしたが既に手遅れ。速攻で捕まって、この飲んだくれに延々と今日の出来事に対する愚痴を聴かされる羽目になった。

 

 

―――曰く、オータムの馬鹿が人の忠告を全部聞き流してた…

 

 

―――曰く、あの馬鹿が失敗したせいで今日の頑張りが全部パーになった… 

 

 

―――曰く、おまけに失敗した理由はオータムが調子に乗って遊んでたら楯無が来てしまったから…

 

 

 他にも色々と愚痴をこぼされたが、大半はオータムがヘマをやらかしたことに対してだった。どうやら私情を挟んでたとは云えISと生身でやり合う羽目になったというのに、肝心の彼女が失敗したので全部無駄になったのだ。しかも、本当にしょうもない理由で…

 

 それを知ったセヴァスは半ばブチギレ、ただの飲み会からヤケ酒にシフトチェンジしたというわけだ。そしてそれに途中まで付き合ってたオランジュは限界を迎え、私に全てを押し付けたというところか……明日、会ったら〆てやる…

 

 

 

「さぁ、うだうだ言ってないで逝くよ!!」

 

 

「今、“逝く”よと言ったか…?」

 

 

 

 などと考えてたら、いきなり出てきたのが冒頭のセリフだ。セヴァスの酒癖の悪さは話には聞いていたが、まともに遭遇したのは今日が初めてだったりする。オランジュどころか、フォレストやスコールでさえもゲンナリさせた事があるという噂を聴いたことがあったが、それを今まさに身を持って味わっている。本当にアルコールというのは、人を変えるものだとつくづく思い知った瞬間だった…

 

 

 

(早くいつものセヴァスが帰ってきますように…!!)

 

 

 

 一人の酔っ払いに引きずられる、一人の少女による願いは…

 

 

 

「ふぅははぁ!!汚物は消毒だぁ!!」

 

 

 

 当分、叶いそうに無い…

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

『……というわけだが、やってくれるかね…?』

 

 

「勿論です、全力で任に当たらせて貰います」

 

 

『ふむ、良い返事だ。流石は『金の卵(スーパールーキー)』と呼ばれるだけある…』

 

 

「恐縮です」

 

 

 

 ルームメイトが完全に眠りに着き、静寂に包まれた部屋でその少女は小型通信機越しに居る相手に向かって言葉を紡ぐ。その様子と雰囲気は、普段の彼女の様子からはまるで想像できないほど事務的で無機質なものであった。少なからず彼女と生活を共にしてきたルームメイトが見たら、卒倒し兼ねない程の豹変っぷりである。

 

 だが、これこそが本来の彼女であると言っても過言では無い。幼い時からあらゆる技術を叩き込まれ、特殊な環境で育ってきたこの少女にとっては至って普通の事だ…

 

 

 

『それでは、良い報告を期待している。頑張りたまえ』

 

 

「了解」

 

 

 

 それと同時に通信は切られた。部屋に完全な静寂が戻り、先程の少女は通信機を静かに仕舞って目を閉じながら思考する。考えるのは今日の出来事と、これからのこと…

 

 

 

(織斑一夏の身柄拘束の失敗…それを妨害した存在の捕縛の失敗……その両方に関する調査、か…)

 

 

 

 今日、本国の連中はどさくさに紛れて織斑一夏の身柄を拘束しようとした。理由は世界唯一の存在を何としてでも引き込み、ISの登場により落ちつつある世界のリーダーたる威厳を取り戻そうと画策したからである。間違っても口に出しはしないが、下らない事この上無い…

 

 ところが、その思惑はとある存在よって完全に台無しにされた。そいつは実行班であるCIAの工作員6名を殆ど素手で圧倒し、挙句の果てには無理やり協力を要請されて居合わせた専用機持ちコンビであるダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアから逃げ切ったというのだ。

 

 此方が彼女達に協力を要請することは少なくない。そのせいで不本意ながら彼女たちは場慣れしており、そんじょそこらの事に動じたりしない。そんな二人を驚愕させ、見事な手際で此方の計画を滅茶苦茶にした存在。そんな彼が名乗った名前とその事実を知った時、心の底から驚いた…

 

 

 

(『人工生命体6号』…まさか、本物に会えるなんてね……)

 

 

 

 期待の新人と呼ばれる自分はおろか、CIAの上層部でさえ噂でしか聴いたことが無い祖国アメリカの汚点。10年以上前、とあるイカレタ科学者が生み出した全身ナノマシン人間というオカルト世界に片足突っ込んだ出鱈目な存在…

 

 もしも自分がこの様な稀有な存在と関わり、手柄を立てることが出来たらと思うと…

 

 

 

「……楽しみね…」

 

 

 

 薄っすらと笑みを浮かべ、彼女は一切の物音をたてずに部屋を後にした…。

 

 

 

 

 

 

―――部屋に残っていたのは、今日の出来事を夢に見ながらニヤけてる中国代表候補生なルームメイトだけであった…

 




こんな雰囲気出しといてなんですが、次回はギャグ展開になる予定だったり…

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