IS学園潜入任務~壁の裏でリア充観察記録~   作:四季の歓喜

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なろうの時から読んで下さってる皆様、ついにここまで来ました。
次回はやっつけ仕事になってしまったコレの大改訂版。ご期待ください!!


密着亡国機業24時 前編

 

 

 

 

 

「んあ゛ぁ~眠ッ…」

 

 

 

 とあるホテルの一室にて、一人の男がゆっくりとベッドから起き上がった。彼の名前は『セイス』、犯罪組織『亡国機業』のエージェントである。

 

 

 

「……やっべ、髭が濃い…」

 

 

 

 今日はこのホテルの一室で幹部達による総会がある。彼は自分の直属の上司である『フォレスト』の側近としてここに来たのである。いつも大して身だしなみに気を使ってる訳でもないが、他の幹部達が勢ぞろいする今日は話が別である…。

 

 

 

「髭剃り髭剃り…」

 

 

 

 若干ボケッとした意識で洗面所に向かい、ここに来る前に買っておいた電動髭剃り機を捜す。

 

 

 

「…お、あったあった……」

 

 

 

 洗面所の鏡前にポツンと置いてあったソレを手に取る。そういえばすぐに見つかるように、目立つ場所に置いてあったんだっけ…。

 

 

 

「んじゃ、スイッチお~ん…」

 

 

 

 依然としてハッキリしない頭のまま、顎に髭剃りを当てながらスイッチを入れた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――バチバチバチバチバチバチバチバチバチッ!!

 

 

 

 

 

「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばッ!!!?」

 

 

 

 

 

―――ドサリッ…

 

 

 

 

 

 突如、顎から全身へと走る衝撃…あまりの衝撃と突然のことに、セイスは床に崩れ落ちた。そして、混乱しながらも弱々しく視線を手に取った髭剃りへと向ける…。

 

 

 

 

 

 

「スタンガン…だと…?……がハッ!?」

 

 

 

 

 不本意な二度寝の開始である…。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「あの叫び声…ふふふ、掛かったか馬鹿め……!!」

 

 

 

  

 セイスと同じく直属の上司であるスコールに随伴してきたエムこと『マドカ』。彼の隣の部屋に陣取っているマドカは、先程聴こえてきた断末魔に対してほくそ笑んでいた…。

 

 

 

 

「残念だったなセヴァス…お前の髭剃りは昨日の内にスタンガンとすり替えておいたのだ!!ふはははははははバ~カバ~カ!!」

 

 

 

 

 自分しか使わない愛称でセイスのことを呼びながら、彼女のいつもの様子を知ってる者が見たら『誰これ…?』状態のテンションでマドカは高笑いを上げる。今頃セイスは出力マックスのスタンガンのせいでぐっすりと二度寝を始めている頃だろう…。

 

 

 

 

「はははははははは!!……ふぅ、さてと…私も身支度の続きでもするか…」

 

 

 

 

 取りあえず顔は洗ったので次は歯磨きである。さっきまで使っていたタオルを横に置き、歯ブラシとコップ、そして歯磨き粉を取る。

 

 

 

 

「今日は幹部総会…とは言っても、どうせスコールにはオータム、フォレストにはティーガーが付くのだろう……」

 

 

 

 

 どの幹部も2,3人の部下を随伴させているが、今回のメインである総会自体に連れて行ける部下の人数は一人だけである。他はイザと言う時まで待機…という名目の自由時間なのである。

 

 

 

 

「つまり、今日はとことんお前とやり合えるという訳だ…」

 

 

 

 

 ことの発端が何でどっちが先に始めたのかは既に思い出せなくなっていたが、最早互いに恒例であり宿命になりつつあったこの嫌がらせの応酬。最近はどんどん過激になる一方なのだが、二人とも一向にやめる気配が無い…。

 

 

 

 

「今のところ気分的に私が負け越している……だが、今日こそは勝たせて貰うぞセヴァス…!!」

 

 

 

 

 片腕を腰に当てながら歯磨き粉を塗った歯ブラシを天に掲げ、今は眠る(失神中)宿敵に宣戦布告したマドカ。その無駄に熱い気合とボルテージを維持したまま、彼女は歯磨きを開始した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――グニュッ…

 

 

 

 

 

(……グニュッ…?)

 

 

 

 

 オカシイ…歯磨き中に出る音では無い。ていうか、何かコレ感触が変な上に臭いぞ……?

 

 

 

 

「まさか…」

 

 

 

 

 嫌な予感がしたので、自分が歯ブラシに塗ったモノの正体を確かめてみる。見た目は普通の歯磨き粉のチューブなのだが、少しだけ手に塗って触ったり臭いを嗅いだりして戦慄した…。

 

 自分の推測と記憶が間違ってなければ、このチューブの中身は歯磨き粉などでは無い。どうやら何時の間にか中身をすり替えられてたらしい…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――『木工用ボ○ド』に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セヴァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーースッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 もう、とっくに戦いは始まっていたようである…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「よう、セイスにエム!!久しぶりじゃな……どうした、二人とも…?」   

 

 

 

「「……。」」

 

 

 

 

 オセアニア支部のエージェント『石(ストーン)』がセイスとマドカに話し掛けようとしたのだが、二人が発する謎のオーラに気圧されて固まってしまった…。

 

 

 

 

「ていうか二人とも…」

 

 

 

「「…あ゛?」」

 

 

 

「何か、臭くない?…焦げ臭いような、接着剤臭いような……」

 

 

 

 

 ホテルの通路で互いにメンチビームを飛ばしていたセイスとマドカだったが、ストーンは二人の顎と口から放たれてる異臭を無視できなかった。だが、一瞬でそれを後悔する…。

 

 

 

 

「黙れ海坊主…」

 

 

 

「永遠におねんねしたいのか?脳天無法地帯野郎が…」

 

 

 

「…orz」

 

 

 

 

―――亡国機業、オセアニア支部エージェント、『ストーン』。

 

 

―――年齢26歳

 

 

―――ヘアースタイル、スキンヘッド

 

 

―――あだ名…『タコ』

 

 

 

 

 

「……もういいや。どうせ、いつものアレなんだろ…?」

 

 

 

 

 亡国機業では半ば名物となりつつある二人の悪戯戦争。酷い時には周囲の人間を大量に巻き込む場合もあるので、今のセイスとエムには関わらないのが一番である。 

 

 

 

 

「そういうことだタコ…」

 

 

 

「頭足類は引っ込んでな…」

 

 

 

「……お前ら絶対にいつか泣かすからな…!!」

 

 

 

 

 とは言ったものの、この二人のタチの悪さは組織内でもトップクラスなのでその日がいつになることやら…。溜息をつきながら、とりあえずストーンはその場を後にするのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

☆つづく


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