千雨は凡人(ただ)の女子中学生です   作:おーり

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学園長視点です



近右衛門、過失の付け落としに負われる

 

 お前が戦うんじゃないのかよッ!? と咄嗟に続いた長谷川くんのツッコミも空しく、儂らは30人に増殖したジャック=ラカンの群れと全力で戦っておる。

 いや、これ明確には殲滅戦じゃの。

 しかもこっちが追われる立場じゃ。

 頭の何処かで冷静にモノを見切る思考が働いておるからこうして平静を装っていられるのじゃが、戦力としては完全にバランス崩壊で勝てる見込みなぞ微塵も有らん。

 ……どうしてこうなった……っ!

 

 

 「先生方、漫画は読まないか? 『武装錬金』より『サテライト30(サーティ)』。もう見てわかると思うが、本人を30人へ延々と増殖させる【武器】だ。ジャック=ラカンのアーティファクトである『千の顔を持つ英雄』というのは、知識と想像力さえあればこのくらいのチートも容易く行える。下手に武器を持たせるよりも素手の方が強いからこそ出来ることだけどな。弊害は、顔の陰影が変化するくらいか」

 

 

 ハッハッハ!と笑い乍ら、目前に顔の半分が白いラカンが拳を振り下ろしたところじゃった。

 申し訳程度にその手には『月牙』と呼ばれる三日月形の鈍器が握られておるが、戦闘上其れが直接役に立っておるのではなくマジモノのラカンの肉体言語が功を鳴らしておる。

 正直、『完全なる世界』の復活怪人共と戦うよりもピンチなんじゃが。

 

 烏丸くんの言う通り、儂らへと襲い来るラカンの顔色はそれぞれが違う。

 特に『新月ラカン』なんかは完全に美白じゃ。違和感が凄い。

 そして、その実力もどれも本物と相違ない。

 ……こんな最悪な手札を齎されとったら、この状況に陥る前段階でとっくに魔法世界壊滅されとるわい……っ!

 『完全なる世界』に与しとらん状態でその手札を使っておらんかったということは、やっぱり彼の目的はテロ由来のモノとは別と云う事か。

 

 

 「――降参じゃ」

 

 

 と、諸手を上げて降伏の意を示す。

 直前まで来ていた十六夜月ラカンの拳が、顔擦れ擦れでピタリと止まり、拳圧がボフワと白髪を揺らした。

 ……完全に仕留められる寸前じゃった……っ! あっぶな、あっぶなぁ……っ!

 

 

 「学園長っ!? 貴方が真っ先に投降してどうするんでうわっ!?」

 

 

 タカミチくんが先立って戦場を放棄した儂に抗議の声を上げるが、いやいや、そうして攻撃を往なせるだけの余裕も無いのでは勝てる見込み何ぞ全然ないじゃろ?

 

 

 「タカミチくん、世にはどうしようもない事態、というモノもあるのじゃよ。どういうトリックかは知らんが、こうして烏丸くんを抑えきれない以上、儂らに口を挟むことなど出来やせんよ」

 

 

 既にエヴァは彼の方へついておるしの。

 復活できたナギは体力魔力共に底尽いておるし、何とか五体無事なネギ君でさえラカンの群れに腰が引けておるし。

 ……ネギ君の方は、なんぞトラウマでも呼び起こされたような顔しとるの。魔法界で何やっとったんじゃラカンの奴。

 

 

 「確かに、このラカンたちは本物とは云い難いですが、実力的には微塵も弱体化していませんしね。何より私たちには、数が足りない」

 

 

 アルビレオの奴も降参し、儂らが再び戦意を擡げた時の為か2人づつ並ぶように聳え立ち、元より戦う気の無かったフェイトとその従者はスルー。

 残る26人のラカンがタカミチくんへと強襲してゆく。

 はよ降参せんとマジで死んでしまうぞい。

 

 そんな惨劇を他所に、烏丸くんがこちらを見下ろす様に告げた。

 

 

 「ふぅん。まあ、流石は既に魔法界を見限っていた人だ。その選択もするだろうなとは思っていたさ」

 

 

 ……っ、そこまで見破られとるのか……。

 

 こちらの腹の内まで見透かす困ったことに優秀な、いやこの場合は【憂秀】と呼ぶべきかもしれん。

 こちらが墓の下まで持って逝くはずだった秘密まで、易々と暴かれては堪ったものでは無いわい。

 

 そんな儂の腹の内も読み切れなかったタカミチくんが、彼の言葉で動きを止めた。

 包囲されておるが、攻撃の意志を見出せない以上『敵性無し』とでも判断されたのかもしれん。

 結構自動的に動くようじゃな、あのラカンズは。

 

 

 「見限っていた……? どういう、ことですか。学園長……?」

 

 

 高々中学生でしかないというのに、その言葉に容易く搦め捕られてどうするのじゃタカミチくん。

 しかし、彼を諌める前に烏丸くんの言は易々と飛ぶ。

 

 

 「? どうもこうも、明日菜を麻帆良で隠すってことはそうなんでしょう? しかも魔法界にも明日菜の存在を報告してないってことは、近いうちに崩壊するはずの魔法界の行く末は見捨てていた」

 

 

 違いますか?

 そう目で問われ、即座に言葉を返したかった。

 だが、烏丸くんは恐らく『その先』も見据えておる。

 

 

 「まあ、魔法世界をどうにかする鍵である【黄昏の姫御子】の幸せを願う、っていう理由があっても別にいいですけど、その代わりに世界1つ見捨てるとは随分と大胆不敵な話だ。『今』隠せていても、明日菜はすぐに気づいたでしょうけどね」

 

 

 言外に、「『その時』になって本人に罪過の意識を齎せるつもりか?」と云われたようじゃ。

 実際、明日菜君いやアスナ姫には過去をすべて忘れてもらう筈じゃったのじゃがのぅ。思い出すこと自体がイレギュラーじゃよ。

 しかし、タカミチくんはその事には思い至らなかった模様。

 今更愕然とした貌を見せてどうする。その辺りの覚悟はもっと昔にしておくべきじゃろう。

 彼も彼でナギらについていた過去があるからのお、ガトウ殿との約束も相俟ってじゃと思うが、【アスナ姫の幸せ】という彼個人の独善で動いていたことを突き付けられた気分じゃろうて。

 其処は確かに、儂らの見通しの甘さが招いた結果じゃとは思う。

 しかし、

 

 

 「ただ、魔法世界の誰が敵なのかも判別付かなかったのでしょう? 序でに言うと『元老院の闇』とやらが芳ばしすぎて、明日菜の事を秘密裏に明かす人材の確保が追い付かなかったと見える。それこそ詰めの甘さが垣間見えますけど」

 

 

 ……。

 内心で語ろうとしていた言い訳を前以て語られておる……!?

 なんじゃ、儂いつの間にサトラレに!?

 というか烏丸くんのツッコミが容赦ない! もう辞めて! 儂らのライフはとっくにゼロよ!?

 

 

 「問題は、その『俺の予測』が【真実】か【誤り】かの判別がつかない上に、それらを補える証拠が無いという点ですがね」

 

 

 え、これ以上何を言うつもりじゃ!?

 

 

 「学園長、貴方【アスナ】という魔法世界に対するアドバンテージを秘密裏に確保できたことで、この世界の行く末を自分の思い通りに傾けられるのでは、と画策してたんじゃないですか?」

 

 

 …………………………はぁっ!?

 

 

 「何せ、魔法使いは人の世の裏を暗躍する『正義の味方』を称する者たちだ。これらを確実に動かすには『俺たちの世界』の社会の舵取りを執り行う『上』の方との連携が必須となってくる。麻帆良が幾ら認識阻害を謳っていても、『外側』に確実な影響を及ぼすには前以て話を付けておく方が容易いですから。そして、その話し合いの場に赴くのは、魔法使いたちの『本国』で舵取りを行う【元老院】らだ」

 

 

 こちらが驚きで声を上げられない隙を突いて、烏丸くんの予測は悠々と進む。

 いっそジェットエンジンに火が付いたかのように、飛び荒ぶ【予測】は下手に止めれば止めた方が危険だと匂わせるレベルでの理論飛躍じゃ。

 じゃがこの飛躍、間違いなくタカミチくんやナギ、更にはこの場に居合わせた『子供』である他の者らには確実に染み渡る……っ!

 

 

 「【黄昏の姫御子】という魔法界への最大のアドバンテージを何時でも解放できる立場に立てた貴方は、芋づる式に社会掌握すらも行使できる立場へ伸し上がる伝手を得られていた筈だ。魔法世界に明日菜の事を知らせなかった、という理由には、こういう裏もあったのでは?」

 

 

 彼が麻帆良で【這い寄る混沌】などと呼ばれるわけがようくわかったわい……っ!

 今、儂の事を見るみんなの目がかなりキツい……っ!

 

 

 「誤解じゃ、そのような意図は決して無いぞ」

 「さて、どうでしょう。口では何とでも云えるのが大人というモノですし」

 

 

 声を荒げればそのまま見咎められると見越して落ち着いた物言いをするが、烏丸くんには暖簾に腕押し。

 言葉だけで儂を完全に悪役に見立てて、確証も無いのに事実のように騙る……っ!

 魔王! 邪神! 烏丸ァ!

 

 

 「ジジィ、テメェ……っ!」

 

 

 じゃからナギ、お主が真っ先に騙されてどうする!?

 大戦時には烏丸くんレベルの魑魅魍魎な有象無象(政治屋)はいくらでもおったじゃろう!

 ……中学生をそう呼ぶのもどうかと思うが、今の彼はそれくらいのレベルで腹の底真っ黒じゃし問題はないかの……。

 というか烏丸くんも、そんな何処かのミステリーレポルタージュみたいに【陰謀論】騙っとるくらいならとっとと魔法世界崩壊(リライト)を始めたらどうじゃ!?

 そんなに儂の事苛めるの愉しいのか!?

 

 ……?

 

 そうじゃ、何故彼は未だに行使しようとせん?

 今も、【祭壇】を完全に掌握して居るにも拘らず、6号くんには傍に控えさせているだけで、自身もまた儂の事を「とんだ狸爺だぜ」と揶揄するだけで術式の行使を執り行おうとはしておらん。

 未だに祭壇の活性化は停止して居らぬが、それこそ『あと一歩』を踏み進めるだけで事は終えられるはずじゃ。

 まるで場を繋ぐかのように悠々と会話を、って誰が狸爺じゃい。

 

 

 『――っ、学園長! 聴こえますか!?』

 

 

 と、疑問を抱いたところでガンドルフィーニくんからの念話が耳元に届く。

 魔力嵐による周波攪乱が念話阻害を引き起こしておったが、麻帆良と墓守り人の宮殿が同期された所為か会話も可能としたのかの?

 そんなことを判別しつつ、心内で返事を返す。

 此処で儂だけ喋ったらボケかまた陰謀かと喚き出しそうじゃ、特にナギが。

 

 

 『聴こえておるぞガンドルフィーニくん。そちらの状況はどうじゃ?』

 『くそっ、聴こえてないのか!?』

 

 

 む、一方通行か?

 しかしそれでも言葉だけは、と判断したのか、届くことを願って彼の言が飛ぶ。

 

 

 『世界樹の発光が収まらず、また世界樹の周辺にも近づけません! 未確認の魔法使いの妨害が……っ!』

 

 

 ――『近づけない』?

 いや、何故じゃ?

 完全なる世界の残党は軒並み倒し、烏丸くんが麻帆良にまで被害を及ぼす【攻撃】を起こすとは到底……。

 ……っ!

 

 

 「そう、か。時間稼ぎか……!」

 

 

 脳裡にて嵌ったピースの答えに、答え合わせを求めて声が漏れる。

 そうして彼を見上げれば、こちらの声がしっかりと届いたのか、一瞬虚を突かれた顔をした烏丸くんがゆっくりと、にやりと嗤った。

 

 

 「気づかれたか」

 

 

 様子は一貫してこちらを嘲るようなモノで、策を見越せても即破棄するような思惑も抱いていない。

 その様からも、彼がキチンとこちらの陣営に居てくれれば、と忸怩たる後悔が内心を苛むようじゃった。

 先ほど彼の事を、儂は政治屋のような腹黒さと評価してしまったが、その隙を突き自陣に引き入れられなかったこともまた儂の甘さが招いた結果なのじゃろう。

 そして彼の真の目標は此の祭壇では無く、

 

 

 「世界樹……!」

 「Bingo」

 

 

 いかん、世界樹には未だに【あの方】が眠って居るのに……!

 誰じゃ、麻帆良に一体誰が居った……!?

 後悔が先に立たぬ儂に、こちらの腹の探り合いを察したらしいアルビレオが口を挟んで来おった。

 

 

 「時間稼ぎ、とは……?」

 「聞いての通りじゃ。彼はこうしてラカンを動かしているが、その結果として儂らを全滅させるような手段まではとっておらん。そして麻帆良では現在、魔法先生方も思うように動けておらん。妨害に在っとるらしいの」

 

 

 こうしてる間にも、ガンドルフィーニくんの報告は未だ引っ切り無しに届いておる。

 ピンク髪の美女が魔法で応戦して多数の魔法先生が行く手を遮られておるらしいの。

 恐らくはその女性も烏丸くんの伝手じゃろうな。

 そして、彼に対してもまた違和感が残る。

 

 

 「お主がこうして大々的に動いたことも不思議じゃが、幾ら【祭壇】に直接携わる権限を得たとしてもお主の実力としてどうにも見通せぬのじゃよ。(魔法使い)らの見通せぬ伝手があったとしても、其処は魔法世界の【秘墺の秘】じゃ。然るべき手段が無ければ、易々と操ることも容易くはあるまい?」

 

 

 例えば、彼の言ったように【黄昏の姫御子】、とかの。

 しかし、現状明日菜くんは未だに祭壇からは離れており、術式が彼女とリンクしておるとは決して見て取れぬ。

 こうしてラカンを従えておるのも違和感があるし、そこまでして爪を隠せる実力者、と見るにはエヴァの弟子であることを踏まえてもやはり踏むべき手順が違うのでは、と見得てしまう。

 いや、叶わなかったから嫉妬しとるのではなくての、やはり儂らが積んだ研鑚とは別のアプローチに見えて、その点の納得がいかないのじゃよ。

 本当に魔法世界を任せてしまっても大丈夫かのう、という点でな。

 そもそも、このラカンズもまた『本物』とは云い難い。

 

 

 「まあ、お察しの通り、此の術式は実際『詐欺』ですけどね」

 

 

 こちらの腹も見通されておるのか、烏丸くんはあっけらかんとネタ明かしを始める。

 恐らくはこれも時間稼ぎじゃろうが、これは彼に乗っかる方がまだ道が開けるかの。

 真に勝負に勝つモノとは、どれだけ自らの思惑に沿った道筋に近づけるか、ということも重要なのじゃよ。

 云わば正しい負け方を取れる者、と云った感じかの。

 現状、組み伏せられつつも未だ抜け出そうともがくタカミチくんでは、まだ理解できぬ強かさじゃろうが……基本正面突破の策しか取れぬ麻帆良の魔法先生方と轡を並べておるのじゃし、その辺も仕様が無い事かも知れぬがの……。

 朱に交われば赤く、ということか。

 その辺りを見越して、烏丸くんもまた関わりを取ろうとしなかったのかも知れぬ……。

 

 ともあれ、彼が時間を稼ぎたいのなら、儂もそれに乗るまでじゃ。

 思考する隙さえあれば、彼の策を見通し『その後』の対応も練ることが出来る……!

 

 

 「術式名『ドラゴンデスティニー』、この場に居る者たち全員の深層心理に働きかける『大多数が抱く絶対的強者の存在』を『共感させる』術式です。空間系では無くて心理系なので、遠隔破棄は絶対に通用しないんですけどね」

 

 

 ………………スマン、前言撤回じゃ。

 さらっと見知らぬ新術開発しとる子が『実力者では無い』などと云えるわけがないわい……っ!

 序でに『遠隔破棄』というのは明日菜くんの魔法無効化を指しとるんじゃろ!?

 これまで彼のことはあまり確認できんかったが、考えて見ればここ半年ほど事態の収拾を図られたのも彼の手腕が鳴っとったしのぉ!

 それにしたってエヴァは彼をどんなふうに教育したんじゃぁ!?

 

 

 「此処でミソなのは、『自信がある奴ら』の心もぽっきりと折る為に『使い手』が設定を追加で弄られる仕様だという部分ですね。妥当な人選を出来なければ意味も無いけど、其処に英雄がいらっしゃるのでぶっちゃけ楽でした」

 

 

 と、ナギを指さす烏丸くん。

 なるほどのぅ、ラカンと互角の強者が居たからあの『人選』か……。

 まあ「実際『奴』なら出来そう」と初手で解説されて思ったことも事実じゃが、そういう『人選』も使い手の匙加減に含まれるのじゃろうなぁ……。

 

 ……ほんっとうに隙が無いの。

 マジで抜け出すことが出来なくね?

 つーか、烏丸くんは世界樹まで制圧してこれから何をするつもりなんじゃ……?

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

 一方この場は世界樹地下。

 独り優雅にしゃらりしゃらりと、巫女の振りをして踊るように反閇を踏み締める、赤い髪の少女が居た。

 

 貼り付けられた鏡面のような水面の上を、ひと踏みするごとにその【共鳴】は世界樹を、その場を振動させる。

 少女の名は相坂さよ。

 烏丸イソラの手によってネギ=スプリングフィールドの血から造られたクローンの身体に憑依して、彼の望む通りの結末を執り行う為の総ての采配を握る【黄昏の姫御子】(仮)である。

 

 これらは原作からの推測でしかないが、元よりネギにはアリカ姫という始祖の血が流れている。

 明日菜とアリカの血縁の関係性は未だ良く公開されていないままに連載も終了し、今でこそ続編(という名の二次創作?)が続いているが、アリカが【王家の魔力】というそれっぽいモノを行使していた以上、【姫御子】の資質は彼女にも備わっていたと思われる。

 そして、それから連想される『姫御子の資質』の発現条件はその名の示すとおりに『女児である』こと。

 もしもネギが女児であったならば、というIFの似姿が今のさよの存在であり、その予測を見出して状態維持を組み込めた烏丸の魔術式遺伝子操作が齎した『一つの結果』が現状に繋がるのである。

 

 烏丸が遠回しに魔法世界へ渡った理由が、『世界樹から目を逸らさせる』こと。

 世界樹の下には【墓守り人の宮殿】へ直通するゲートが存在し、其処と祭壇とで連携を取っていることを見通されれば、結果を出す前に阻止に繋がるのは間違いが無い。

 【リライト】の本領は『さよ』にあり、祭壇はそれを過不足なく実行するためのアンプとしての役割。

 現に、『完全なる世界』の面々すらも、『墓所の主』という【リライト】の本領を担う人材を仲間としていた。

 この世界線ではそちらへは誰からも一切触れられていなかったが、『完全なる世界』に【必要な人材】を相応に揃えるだけの収集力が烏丸に備わっていた事実の弊害にもなるのかも知れない。

 序でに言うと、ネギが祭壇上へ赴かなくても『同期』が為せるようにさよが控えていたりしたのだが、先立って同期が成り立ち『主力』が魔法世界へ赴いたことも隙を突く好機であったことは割愛とさせていただく。

 

 何気に原作でもこの世界線でも、ネギどころか3-Aの面々の魔法世界における必要性が危うくなってきたことはさて置き。

 一度、麻帆良へこのゲートを使って戻って来たのも布石の1つ。

 本当に『宮殿』と行き来できるのか?という点についての確認でもある。

 原作で幾ら知識があるとはいえ、それが絶対とは信用しないのが烏丸であり、最終目的を実現させるには『今回は』負けるわけには行かなかったのである。

 何せ、この世界は原作とは『やや違う』し、世界樹の下にはゲート『以外のモノ』も有ったりする事実を知っている。

 だからこそ、こうして魔法世界を覆す策を打てたわけでもあるが。

 

 

 「そいやっさー」

 

 

 緊張感の伴わないさよの声が揺れる。

 死後を知り、神の存在を(烏丸経由でだが)知る彼女だからこそ、北斗の星辰(反閇)を踏むこの立ち位置なのだが、如何せん何処か軽い。

 それというのも、その帰結が『どうなるか』を『全て』教えて貰っているからこそ、そうした心内で割り切れるのだろう。

 結局さよは、魔法使いたちへ一度も悪いとは思うことなく、『ゲートを曲げる』為の反閇を踏み切った。

 

 

 「終足!」

 

 

 カン、と履いていた高下駄の音が鳴り響き、ぎゅるりと、

 

 

 

 ――世界樹が歪曲を始めた。

 

 

 

 「ほわっ」

 

 

 事前に聞いていたが、やはり驚きの声は隠せない。

 世界樹の根が一斉にさよへと巻き付き、身体を総て包み込むように絡んで逝く。

 同時に、地上の方は割とトンデモナイ変動が起こっていたりするが、その辺りは割愛。

 巻き込まれる身体をそのままに、さよはするりと憑依を解いた。

 

 水底へと引き摺り込まれて逝くかつての己の身体を敬礼と共に見送りながら、途中動いた世界樹の元あった根の部分に意外な姿を発見する。

 自分を引き上げる為に降ろされた『新体操用のリボン』をなんとか動かして、上の人物らへと念話を送るのだった。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

 儂の問いの後間も無く、祭壇の光は最大に発揮される。

 彼が手を下すまでも無く、今迄の行動は総てが茶番。

 文字通り時間稼ぎであったのじゃろう。

 魔法世界の最後が、ようやく始まった。

 同時にガンドルフィーニくんの『がっ、学園長ーっ! 世界樹が、世界樹がぁあああああ!!!!????』って焦った声がすっごい五月蠅いが、もうどうしようもないじゃろコレー……。

 

 

 「さて一連のネタばらしはまた後で。なに、一種の転移だから痛みは無い。さよなら魔法世界!」

 「……オスティアで大虐殺を行った僕たちが馬鹿みたいじゃないか……」

 

 

 項垂れたように消沈するフェイト。

 お主らそんなんやっとったんかい。

 

 

 「まあ、そいつらも一緒さ。チョイと違うのは行き先程度――ん?」

 

 

 何やら気になる言葉を発した烏丸くんが一瞬怪訝な顔になる。

 そしてこちらを見て、

 

 

 「……なんか、世界樹の地下で二又眉毛の女の人がみつかったって連絡来たんだけど、どういうこと?」

 

 

 そんな言葉と共に、全ては光に包まれた――。

 

 

 





~術式名『ドラゴン・デスティニー』
 術の主体は飽く迄使い手。空間系では無い幻術、という実態があり過ぎて気持ち悪いくらい効果のある制圧用術式。ちなみに本格的に殲滅用に、と発展させることも出来るがコスト面での必要魔力が膨大になる上に「幻術だ」と見破られるリスクの方が高いのであまり効果的とは云い難い
 命名の元ネタは、ほら、アレだよアレ、四字熟語の爆乳格闘漫画!


~魔王烏丸、絶好調
 結構的を得ていることを騙るが、真相を暴くのが目的では無く『魔法使い』へ対する若干の疑心を植え付けることが目的かと
 この場に『子供』が多すぎんよー、騙される前に矯正しておくのは基本ヤデー?
 やだ、烏丸くん優しい…!


~世界樹に対する解釈
 『この』世界軸上での弊害。詳しくはネギマジの修学旅行編の辺りを読み返してくると余計なクロスを思い出してもらえるかと


~二又眉毛女王陛下の存在について
 結局原作ではどうなったのかを明らかにしてないけど、こうやってナギを外側から封印していたんじゃねーの?という解釈
 そもそも、身体乗っ取られた状態でもネギを助けに来たことを考えると、自分の意志だけでも造物主に抗えられることになってしまう。だったら世界樹内で封印されてる意味って何ぞや?と思い至る
 結局ナギだけの内側からの意思じゃ封印しきれなかったから、外側から血縁を使った封印で二重にやってたんじゃね?っていう解釈でした。尚、その点に関しては烏丸も予想もついていなかったご様子
 家族が増えるよ!やったねネギ君!



原作者様が続きを書きたいからネギまの終わり方はああなったのか、それとも本当に打ち切られた所為でああなったのか
時間を跳べるから問題は無いぜ!みたいな事象を多用し過ぎてマガジン内での命の裁量が実に軽い。ああ、元からか…
ツッコミ処というか疑問点が多すぎて二次創作が大量に出回る事態になっているのに、其処を「造るな」とは実に自分たちに優位過ぎる上から目線でそりゃあドクシャも離れますわ(ネギま連載終了後の話
今の週刊誌、部数売り上げどうなってるのー?(純粋な目

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