千雨は凡人(ただ)の女子中学生です   作:おーり

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鬱だー……


巫女スナイパー、暁に死す

 

 「……ッ!」

 「な……っ」

 

 

 彼女の胸を、一発の弾丸が貫いてゆくのが目に取れる。

 射線ははっきりとその場の誰にもの目に映り、だからこそ捌けなく、それを代わりにと受け止めた彼女に驚愕を隠せない。

 撃たれ、それを自覚も出来ずそのままに倒れて塵となって消えた彼女を見届けて、呆然と膝をつく僕に届いたのは、

 

 

 「……馬鹿か、狙撃手が狙撃されてどうすんだ……ッ!」

 

 

 と、憤る様な長谷川さんの声だった。

 その様相に驚きつつ振り返れば、射線が差し込まれた方向へと携帯を構えている。何処か間の抜けた姿が。

 

 

 「障壁張れスマホガール! 次弾が来る前に此処を抜けるぞ!」

 『アイサー!』

 

 

 抱え上げられ、何処か能天気な声が響く中、劫火に晒され消えてゆく警備兵らを尻目に走り出す長谷川さん。

 僕はと言うと、一つだけ、思うことだけを聞いておきたかった。

 

 

 「……は、長谷川さん、」

 「あ!? なんだよネギ先生っ!?」

 「た、龍宮さん、は、どうしたんです、か……?」

 「ッ! 見てただろうがッ! 目の前で死んだ! アンタを庇ってだッ!」

 「なん、で……」

 「そうだな! なんでだろうなァ!?」

 「どうすれ、ば、」

 「何がだよっ」

 「た、つみやさんの、帰りを、待つ人たちが、」

 「っ」

 「そのひとたち、に、僕は、なんて言えば、いいんですか……!?」

 

 「~~っ! 知るかッ! そんなことは此処を切り抜けてから考えろッッッ!!!」

 

 

 怒る様な最後の声に、僕は何も言えずに俯くのみだった。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

 「さてさて、そちらにいらっしゃるのは、んん~? 幻影でカバーしておらっしゃられるご様子ですが、ひょっとしてネギ・スプリングフィールド君では? 身体つきと髪色を変えても、顔つきが変わらなければ意味は御座いませんよ? 貴方は有名ですからね」

 

 

 ……気が付いたら周囲にある人気(ひとけ)は大体甲冑騎士で埋まっているっぽいな。

 思わず舌打ちして、いい加減にシュールすぎるネギ先生の幻影を解く。ちなみにアタシのは時限式なので、意図して解けない。もっとも、逃げるときは脚がいつもより長い分ちょっとだけ便利だ。……魔法使い相手じゃ50歩100歩な差異だけど。

 いつもの子供の姿に戻り、目配せして魔力を練るのを促す。機動力は無いっぽいあの術式だが、いざとなれば薙ぎ払う程度の火力は備えられるはずだ。

 問題は、目の前のクルト総督。確か、原作だと『弐の太刀』使えたよな?

 使えるんだろうなぁ……。アレにとっての控えみたいな位置に、原作じゃ名前も明かされなかった小姓みたいな少年の従者が桜咲の刀みたいな奴を預けられているし。

 まあ、でもなんとかなるだろ。

 ラカン戦の記録は見せてもらったけど、斬られても再生するネギ先生の回復力特化ならオッサンが相手にでもなってない限りは抵抗しきれると見ても良い。

 ……いや、連撃やったのがふつーにバグなのはよく理解できる試合だったし。

 今回は勝つ必要も無い。逃げればいいんだから、楽な相手だろ。頼むぜ、先生。

 

 

 「ほほぅ、やはりキミがそうですか。……しかし、困りましたねぇ。何故、キミが其処の彼と同行しているのですかな?」

 

 

 云われて、先生が疑惑を抱いた表情でフェイトを見る。

 フェイトはと言うと、無表情だが何処か険を抱いているような、そんな風情でコーヒーを飲んでいた。

 おい、まさか云われっぱなしのままにしておく気か?

 此処で正体バラされるとネギ先生の気が変わるとか、そういうことになり兼ねねぇんだぞ?

 

 

 「そちらの彼は先ほども言った通り『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』、という秘密組織の残党でしてねぇ。何を隠そう、魔法世界崩壊を目論む最大級のテロ組織なのですよ。そんな彼と同行しているとなると、あの話も本当なのか、と疑い深くなってしまいますなぁ……」

 

 

 驚愕の貌となってフェイトを二度見する。

 そんな先生はさて置き、……なんだ? あの陰険眼鏡、何を言うつもりだ……?

 待てよ? 確か原作だと、

 

 

 「かつてオスティアを崩壊させた災厄の女王、アリカ・アナルキア・エンテオフュシア。キミの母である彼女もまた、その組織に属していた、という話があるのですが……さて?」

 

 

 ……あー。そういえばあったなぁ、そんな話。

 

 と、初耳では無いアタシの反応としてはそういう程度だし、周囲にはそれに反応するようなギャラリーも居ない。

 だが、ネギ先生は当然のことながら別問題だ。

 

 

 「ど、どういうことですか……っ!? 母、僕の、貴方は知って、いやそれよりも、テロリストって……!?」

 

 

 まあ、前情報ゼロだもんな。

 こんなんなるわな、当然。

 

 それを見てにやにやと笑みを浮かべている陰険眼鏡は実に意地が悪い。流石クルト。ほんと、お前はクルトだよ。

 

 

 「はっはっは、いやいや、所詮噂ですよ噂。しかし、その有様からすると何も聞かされていなかったご様子で……。詳しい話を聞きたいというのなら、そこの彼と共にご同道願えますかな?」

 

 「――騙されてはいけないよ、ネギ・スプリングフィールド」

 

 

 お、こっちも動くか。

 まあそうだよなぁ。

 

 

 「真実を知ろうという心意気は尊くも純粋な感情だ。ボクにはそれを諌める気が無いからこそ、流石に一方的な観点のみからの意見だけで全てを騙ろうという立場の者は見過ごせない」

 

 

 静かに、だが語気のある口調でコーヒーを飲みつつ、フェイトは語る。

 ……今更だけど、コイツの喋り誰かに似てると思ったら二宮飛鳥か。この喉に小骨が引っかかってた感がようやくすっきりした。

 似てるっつうよりは『完全にセカイ系』ってだけなんだろうけどなぁ。世が世なら結局コイツも中二病、って、普通に断じちゃ駄目かも知れんけど。

 ていうか、そんな風に思われてるって知られれば流石に失礼か。自重しよ。

 

 

 「ボクが彼の言うその組織だと言うのは否定はしない、だが、そんなボクからも敢えてキミにこの情報を送ろう。其処からキミの行く末を判断すると良い」

 

 

 目を白黒させながらも、語るそいつの言葉を待つネギ先生。

 そんな様子に満足したのか、フェイトは先生にとっての爆弾を叩き落とした。

 

 

 「――かつてキミの村を焼いたのは他でもない、彼ら元老院だ。キミの本来の敵とは、言うまでも無く、魔法使いの最大組織であるメガロメセンブリアそのものさ」

 

 

 ――一瞬の静寂の後、流石に許容できなかったのか、甲冑騎士の奴らとかその外側の野次馬のざわめきが波紋のように広がって行った。

 ネギ先生は、完全に虚を衝かれたような顔で。

 思考すらも止まっているのは、目に明らかだった。

 

 さて、クルトは……?

 おお、余裕に見えて少しだけ目じりがヒクついてるな。

 流石の総督様も、その情報をこの場で広められるのは堪えているらしい。

 

 

 「………………どういう、ことですか……」

 

 

 押し殺したような声で、ネギ先生がいや、ネギ坊主が言葉を吐く。

 出口の無い何処かへと迷い込んでいるような、そんな弱々しい顔つきで席を立ち、対峙している2人から距離を取ろうと後ずさる。

 だが、下がったところで後ろの方にも騎士は居る。

 逃げ出せやしないぜ、此処が正念場だ。

 

 

 「ふむ、その事は折を見て教えるつもりだったのですがね。人の悪い」

 「そうかい。ボクとしては当然の配慮だと思うけどね、あのままでは貴方に取り込まれて使い潰される未来しか見えなかったよ」

 「では、キミならば彼を上手く使える、とでも?」

 「まさか。そんな気は毛頭ないよ。ボクは彼に動いてもらわなければ、それだけで充分さ」

 

 

 近づいてゆくクルトに、あくまで静かなまま待機しているフェイト。

 そんな2人の会話が、どちらも信用のおけるものでは無い、とでも思っているのだろう。

 ネギ坊主の顔面は蒼白で、見るからに使い物にならないのは明白だった。

 

 それを確認するまでも無く、従者を連れてあと数歩、にまで近づいたクルトが、フェイトへと告げる。

 

 

 「――フェイト・アーウェルンクス、貴方にメガロメセンブリア元老院議員、並びにオスティア総督として出頭を命じます」

 「断るよ。ボクにはこの後も用事がある」

 「……そうですか。ならば、無理にでも推し通るまでです」

 

 

 と、手を、刀を預かっている従者へと広げ、

 

 

 「――は……?」

 

 

 ――次の瞬間には、その刀を脇腹へと突き刺されていたクルトの姿があった。

 ……は?

 

 

 「伏兵は兵法の基本だよ、クルト・ゲーデル」

 

 

 飽く迄も、フェイトは優雅にコーヒーを飲む姿勢を崩さないままに、そう告げた。

 改めて見る。

 控えていた小姓の従者が総督の脇腹へと、預かっていたその刃を深く突き刺していた。

 クルト自身も、何故今それをされたのかが理解できない顔で彼を見ている。

 

 が、即座に腕を振るい、彼を迎撃しようとしていた。が、躱され離れた彼が不敵に嗤う。

 

 

 「な、ぜ……、いつ、から……ッ!?」

 

 

 笑みを浮かべたままの彼の姿が、見る間に焔に包まれて変貌してゆく。

 一度噴火するように火柱が上がった後に晴らしたその姿は、フェイトと酷似(・・・・・・・)していた。

 

 

 「いつからぁ……? 最初っからだよ、バァカっ」

 

 

 心底馬鹿にするようにそう嗤い、彼が、恐らくは火のアーウェルンクスが、腕に纏わせた火焔を振るう。

 その火が広場を囲む様に広がり、甲冑騎士や総督、そしてその外側で未だ残っていた他の民間人らを煽る。

 って、コイツお構いなしかよッ!?

 

 

 「あ……ッ! ふぇ、フェイトさんっ! 彼を止めてくださいっ!」

 

 

 巻き込まれている奴らにも目が行ったのだろう。ネギ先生は咄嗟に意を起こし、彼を仲間だと判断したのか、未だにカップを片手にするフェイトへ声を荒げた。

 しかし云われても、フェイトは何も応えようとはしない。彼の視界には、正面に立つネギ先生すら見えていないように思えた。

 

 

 「っ、フェイトさん!!」

 「何故?」

 

 

 再び声を荒げたネギ先生に、視線を崩さずに問う。

 その冷静さに、ネギ先生は思わず怯んだようにも見えた。

 

 

 「な、何故って……!」

 「先ほども聞いただろう、ボクらの目的は魔法世界の崩壊と滅亡だ。その過程でこうして市政の住民が巻き込まれようとも、結果は変わりない。むしろ早くに苦しみから解放されるのだから、推奨したいくらいだ。まあ、運が悪かったと思って諦めてもらうさ」

 「で、でも……っ」

 「そもそも、この世界に拘るキミの理由は何だい? ネギ・スプリングフィールド?」

 

 

 初めて、ネギ先生へと視線を向けた。

 

 

 「キミにとっては関係の無い世界で、敵を擁護する世界で、何よりキミ自身にトラウマ染みた想いを抱かせたのではなかったかな。拳闘のアレ、随分出回っているみたいだけど」

 「………………………………それもそうかも」

 

 

 おい、揺らいでんじゃねえよ主人公。

 

 

 「じゃあ邪魔せずに見ているんだね。何、幻を消すだけの作業だ。すぐに終わる」

 

 

 言い切り、再びコーヒーブレイクへと戻るフェイト。

 御執心か。どんだけコーヒー好きなんだよ。

 

 

 「っ、それでも、ただ見ているだけでは居られませんっ! すいませんフェイトさん、僕は貴方と敵対しますッ!!」

 

 

 言い捨てるように叫び、魔法を込めて光へと変わる。

 ん、まあ良く言ったよ主人公。これで大勢を見捨てるんだとしたら普通に人としてアレだろうしな。

 さて、アタシも何とかするために、スマホガールに渡りをつけますか。

 

 

 「――よく言った坊主ッ!」

 

 

 そう思っていたところへ、降りてくる二つの影。

 1人はネギ先生の前へ、もう1人はクルト総督の傍らへ。

 叫んだのは1人だが、共に降りてきたもう1人は手にした銃で火のアーウェルンクスへと弾丸をお見舞いしていた。

 

 

 「あぁ!? 誰だ貴様らッ!」

 

 「先生が言ったろう? 敵さ」

 

 

 ……た、龍宮さぁーーーん!!!

 なんだそのカッコいい登場の仕方ッ! お前絶対出待ちしてただろッ!?

 

 

 「よぉ、久しぶりだなぁ。フェイト(・・・・)

 

 「……ジャック・ラカン、か」

 

 

 フェイトと対峙したのはラカンのおっさん!

 よぉしよく来た! 相手がリライトを使わない限り、此れで勝てるッ!

 ネギ先生の出番が見事に今潰されたけど、そんなんどうだっていいッ!

 

 

 「す、すいませんねぇ、助かりましたよ……」

 「……言う程酷い怪我でもなさそうだな。早くに治癒術師に見てもらうと良いよ」

 

 

 足取りの悪いクルトを気遣う龍宮に促されるように、焔の壁から脱出しようと試みる総督。

 しかし、

 

 

 「――逃がすかよ!」

 

 

 火のアーウェルンクスは、いつの間にか持っていた小さな鍵のようなモノを、ナイフを投げるようにクルトへと投擲した。

 当然、それくらいは避けるか叩き落とすかは出来る筈だったのだろう。

 それをしなくとも、傍へと来ていた龍宮に撃ち落とされるはずだった。

 が、それらの一切を摩り抜けるように通過した“其れ”は、

 

 

 「――あ……?」

 

 

 突き刺さったクルト総督を塵のように掻き消した。

 

 

 「……は?」

 「あ……?」

 「え……?」

 

 

 誰もが何が起こったのか理解できずに、ただ絶句していた。

 だが、まさか、これは……!

 

 

 「――なるほど、威力は上々か。コレなら、問題無い」

 

 

 フェイトの呟きに、総てが動き出す。

 何かをしたのは間違いないと判断したのか、おっさんが真っ先にフェイトを潰そうと踏み出した。

 が、

 

 

 「其れは悪手だよ、ジャック・ラカン」

 

 

 ――おい、なんでお前がそれ(・・)を持っていやがる……?

 

 やけにスローモーションに見えた、その一瞬で確認出来たのは、フェイトが取り出したアーティファクト。

 革製の手帳で、手の平サイズのカードホルダーには、何枚かの仮契約カードが仕舞われていた。

 それは、『原作』での『ネギ先生』のアーティファクトだろうが……ッ!?

 

 

 「――αγκαλιά άπειρο」

 「おぁっ!? やべ、」

 

 

 ――消えた。

 一瞬で、おっさんの姿が掻き消えた……?

 いや、今のは総督の時みたいな消え方とは違う。多分、封印系のアーティファクトか……?

 

 

 「……改めて使い勝手が良すぎやしないか、此れ」

 

 

 片手に四角推を重ねたような、クリスタルみたいな形状の箱を弄びながら、自分で使ったアーティファクトの性能に呆れた声を出すフェイト。

 アタシらはと言うと、やはり絶句しか出来やしなかった。

 だってそうだろ。現状最強のおっさんが、何をされたかもわからないままに封印された。

 どう動いていいのか(・・・・・・・・・)すら、見通しが無くなっちまった。

 

 

 「さてネギ・スプリングフィールド。キミは敵対すると言ったが、先程の契約を忘れていないわけじゃあるまい。それを破るというなら、ボクらはキミたちを麻帆良へ送り届けるわけにはいかなくなる。そもそも、言う程暇でも無いからね」

 

 

 ――それでもいいのかい?

 と、最後通牒を確認するように、フェイトは問い質す。

 

 ……駄目だ。降伏しろネギ先生。

 この戦力差じゃ『勝てない』。

 幸いにも、『この』フェイトはまだ『優しい』方だ。

 『原作』みたいに罠に嵌めている、っていう『意識』が見当たらない。

 多分だけど、ずっと真摯に対応しているつもりなんだコイツは。

 さっきのクルトを消したモノの正体はまだはっきりしないが、アタシの知るリライトとは微妙に違う。

 其処を覆すにはもっと面子を、最低限でも力を集めてリトライした方がずっとマシだ。

 だから、アタシらのチップを勝手に賭けるな……!

 

 

 「それでも、見過ごせません。お断りします!」

 「そうかい。残念だよ」「っ、ネギ先生っ!」

 

 

 心底どうでもいいように、そう告げたフェイトの視線はネギ坊主へと向いていた。

 最初から狙っていたのか、それとも何処かで合図を下したのか。

 次の瞬間には龍宮がネギ坊主を押し退けて、その場へと……、

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

 ……逃げ去ってゆく彼らを眺め乍ら、火のアーウェルンクス(クゥァルトゥム)の作る焔に焼かれるオスティアを睥睨する。

 それにしても、本当に此れだけの威力を出せるとは。カラスマの性能には流石のボクでも薄ら寒いモノを感じるな。

 

 ボクが認識阻害も用意せずにオスティアの街中を歩き回っていたのは作戦の内だが、ネギ・スプリングフィールドと話を付けられたのが僥倖なのは間違いない。

 彼とこうしてカフェでお茶でもしなければ、クルト・ゲーデルは秘密裏にボクを処理しようと只の力圧しで済ませていた恐れが有るからね。会談のように引っ張り出せたのは、矢張り彼が政治家故の職業柄なのだろう。

 それを先に片づけられたのは言うまでも無いが、一緒くたにジャック・ラカンも封印できるとは思えなかった。

 暦の『時の回廊』と環の『無限抱擁』のコンボは初見殺しなのは間違いないが、自分も中に入らずに個人のみを封印できるように作り変える時点で只の魔法具職人とは一線を画す。アーティファクトを改良して使用できるアーティファクト……。敵対していたら、実に厄介な相手になっていただろうな。

 カラスマから齎されたアーティファクトの性能を試せる場を用意して貰って、ネギ・スプリングフィールドには感謝の念が絶えないよ。

 

 しかし、もしもの場合に2㎞ほど外側へと控えさせていた風のアーウェルンクス(クゥィントゥム)。彼が狙撃を外させられるとはね。

 電磁砲(レールカノン)の要領で彼命名『使い切り方改良版リライト』等とふざけた『鍵』を射出。それは距離が離れているとはいえ、いや、離れているからこそ殺気もそうそう感知されずに、目標を潰す。そういう狙撃だったはずなのだが。

 咄嗟に威力と性能を察知して撃ち落とすことが不可能と判断し、自らが壁となってネギ・スプリングフィールドを助ける。

 彼は良い生徒に恵まれたみたいだね。それが彼自身の資質を補えないのは、非常に勿体無いことだと思うけれど。

 

 そしてこの手元の契約書だ。

 これ自体には何も誓約も無い、只の紙だ。だが、此れは確かになるほど、と理解できる。

 後ろめたくない。その一言に尽きるのだ。

 こうして形となって文書が残っている以上、先に契約を破棄したのは彼の方だ。と、そういう意識で対処できる。

 これは幾らボクらが『悪の秘密組織』でも、良い大義名分になる。

 カラスマ風に言うならば『ボクは悪くない』、とでも言うべきか。

 だからこそ、何をして、何がどのように相手を下そうとも、実に『心苦しくない』。

 やはり、彼はボクらよりもずっと悪党だ。実は旧世界で噂のロアナプラとかいう街が彼の出身地なんじゃなかろうか?

 

 さて、そろそろ締めと往こう。

 

 いくら大魔法の構築式が済んでいるからと言っても、邪魔が入らないとも限らないからね。

 魔法界の戦力がオスティアに集中している今のうちに、削れるだけ削っておいた方がずっと楽に仕事も済む。

 

 

 

 ――そんなことを思い乍ら、フェイト・アーウェルンクスは手元に弄んでいた水晶型の箱へ、『小さな鍵』を差し込んで両手で潰すように消滅させていた。

 

 

 




~たつみー退場
 UQで再登場とか、なんか調子に乗ってるみたいなのでご退場願いました(嘘
 随分前の死亡フラグを折れなかった、そう、それだけのこと…


~クルト退場
 小姓の見せ場を作ったよ!
 ちなみに独自設定だよ!
 原作知らない方は誤解しないでね!


~二宮飛鳥
 デレマスよりクロス(今更
 蘭子とはまた別の事務所に所属。セカイ系厨二発言が目立つアイドル
 エクステが特徴なファッションモデル


~時の回廊
 フェイトの従者ネコミミ少女こよみんの持つアーティファクト
 物理的または精神的な遅延を発生させる事の出来る魔法具で、効果範囲内ではその程度を術者が左右できる
 今回では発動した仕草も無かったけど、原作でも似たようなモノ。ぶっちゃけ後書きの方の魔法解説読んでようやく名前も判明した、っていうくらいにお粗末な扱い。実は凄いのよ?


~無限抱擁
 フェイトの従者ノーパンドラゴンガールたまきっちの持つアーティファクト
 無限に近い結界空間を創り出す魔法具。実は中に一緒に入らなくちゃダメらしいけど、その点を改良したのはフェイトに与えられた魔法具の性能。烏丸ェ…


~革製のカードホルダー
 原作でも名前が明かされてない上に、対ラカン戦以外じゃ一切扱われた事の無いネギのアーティファクト。アレって結局なんていうの?
 仮契約カードを収納することで従者のアーティファクトを扱える、っていう仮契約だとしてもそんな大量に持つことが前提になっているってどういう効果なんだよピーキー過ぎるよ、とツッコミ入れたくなるアーティファクト。浮気推奨か、マジでパネェな魔法界
 原作じゃヘラスの第3皇女との仮契約でネギが得たけど、この世界線じゃそもそも出会っても居ないのでニアミス
 烏丸の魔改造により、より凶悪な性能となってフェイトの元へと辿り着いた
 発動にはアーティファクトをギリシャ語で読むっていう無駄な厨二仕様


~烏丸ェ…
 前回に引き続き『悪の秘密結社』から腹黒認定受ける前作主人公…
 ちなみにロアナプラはシンガポールかマレーシアかタイ辺りの悪徳の都。フライフェイスの美人さんがいらっしゃるけど、烏丸本人は行ったことない、はず…


~序でにラカンも退場ね
 逃げ場を失くして封印空間ごとリライトだぁ! ヒャッハー!



と、いうわけでこの間シリアスいくよーって言っておいたから宣言通りにシリアスったよー
お蔭で二話同時掲載
一応予約投稿で時間ずらしたけどね
内容的にちょっと大容量になっちゃったけど、なぁに、マオガイルに比べたら軽い軽い
他の方は文章行間隙間なく携帯で30ページとかもざらにあるしね

ではまた次回

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