千雨は凡人(ただ)の女子中学生です   作:おーり

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本編は一体いつになるのですかねぇ…


番外、麻帆良とかの日常2

 

 

 

  『夏美さん、発見する』

 

 

『そらさんそらさんー! わたくしおおきくなったらそらさんのおよめさんになりますわー!』

『……What?』

『え、ふたり結婚するの? ふーん。式には呼んでね』

『え、ちょいまって明日菜あといいんちょ、俺そんなの一言も了承してないんだけど』

『むつかしいことはわかりませんけど、そらさんといっしょにいたいっておとうさまにきいたらけっこんするのがいちばんだといわれたのですわ! ですからおよめさんになるのですの!』

『いつのまに親公認!? まて落ち着けいいんちょ! それは完全に勘違いだよ! お前の愛情は生まれるはずだった弟さんにこそ注がれるべきものだったんだからそこを俺にシフトするのは筋違いもいいところだよ!』

『あやかとよんでほしいのですわー!』

『名前で呼ぶことゆるした憶えは無い』

『なんでそんな対照的なのお前ら!?』

 

 

 画面の中のちっちゃな烏丸君がロリいいんちょとロリ明日菜にすっごい翻弄されてるぅー……。

 クラスメイト2人のキャラの違いが一番びっくりだけど、烏丸君の言葉の使い方にもびっくりだ。年の割には妙に大人染みた語彙の使い回しだなー。(諦観)

 ……ていうか、これあたしたちが観てもいいものだったのでしょうか……。

 なんか、校庭に埋まっていた不発弾を発見した気分。

 

 

「どうかね幼いあやかは、可愛いだろう?」

「え、えーと……いいんちょのお父さん……?、」

「もっとフランクに、いいんちょパパで構わないよ?」

「アッハイ……。これ、いいんちょに無断で見せてもらっちゃって良い代物なんですかね……?」

 

 

 夏休みも半分ほどが過ぎたころ、あたしこと村上夏美と那波千鶴ことちづ姉の2人は、実家に軟禁状態のいいんちょこと雪広あやかの陣中見舞に来ていた。

 わけなのだけど……。

 まさかご本人の居ぬ間に過去バナを映画で見せてもらうとは思ってもみなんだ。

 

 

「先日烏丸くんに、とあるところからのお土産だと譲り受けたものなのだがね、当時の状況を完全再現できると聞いたのでさっそく製作してみたのだが。ちなみにあやかには知られていないブツなので安心しなさい」

「何処にどう安心しろと……。ていうか、マジの記録なんですか?」

「少なくとも私の記憶では正しくもガチでこんな遣り取り。可愛いだろうあやかは?」

「今のいいんちょを見るとちょっと信じられないです……」

「戦わなきゃ、現実と」

 

 

 いいんちょパパさん、それなんか違う。

 

 

「で、これを踏まえて、うちのあやかと烏丸くんの仲は正直どうなのかね? 進展しているのかね?」

「え、えぇっとぉー、それはあたしからはなんとも……」

 

 

 ……言えない。遠目に見た感じだけだけど二人の仲が深まっているとはとても思えず、その上いいんちょは副担任の先生をショタコン全開で追っかけています、なんてあたしにはとてもとても――。

 

 

「我がクラスの副担任を目の色変えて追いかけていますね、あやかは」

「ちづ姉ぇっ!?」

 

 

 言っちゃったよ! ちづ姉が暴露しちゃったよ!

 どうしちゃったのちづ姉! もっと空気が読める娘だったじゃない貴女は!

 

 

「ふむ、やはりそうかね……」

 

 

 ――あれ? 知ってたの?

 てっきり目の色変えて憤慨するかと思いきや、いいんちょパパは思案顔であごひげをなぞる。

 この人の人となりを知っていたからぶっちゃけたのかな、ちづ姉は。

 

 

「2人を呼び出したのは他でもなくてね、うちのあやかの矯正を手伝ってほしいのだよ」

「無理ですわ」

「そこを何とか」

 

 

 思い掛けない提案された――かと思ったらちづ姉がバッサリ切って捨てた。

 でも食い下がらないいいんちょぱぱ。

 というか、あたしたちを呼び出したのってパパさんなの? てっきり軟禁中のいいんちょが暇を持て余して呼んだのだとばかり。

 

 

「2人は知っているかと思うが、あやかがこの春、イギリスまで旅行に行ったのは覚えているよね?」

「あー……、はい」

 

 

 確か、ネギ君が教師辞めるって言って実家に帰ったのを、学園長命令で連れ戻しに行ったんだったよね。

 あれ? 今更だけど当時のネギ君って未だ本採用じゃなかったはずなのに、なんであんな騒動になったんだろ?

 

 

「その目的はキミ等の覚えている通り、キミたちの副担任であるネギ・スプリングフィールド先生だ。だがね、」

 

 

 一度言葉を切り、茫洋と虚空を見つめる。

 いいんちょパパの目には、何が思い浮かんでいるのであろうか。

 

 

「正直、一生徒が教師のために海外まで追いかけるって、宜しくない傾向ではないかな。と思うんだよ、私」

「はぁ……、まあ、そう、ですよね……」

 

 

 云われてみれば、確かに。

 麻帆良じゃ気にならなかったけど、思い返してみると色々とスキャンダルになりそうなことやってないかな、あたしたち……!

 あれ、今更だけどちょっと怖くなってきたよ!?

 食券賭けは未だしも、中間考査前の英単語野球拳に、麻帆良祭でのメイド喫茶風営法に引っかかっての営業停止とかって、ツイートされていたら炎上どころの騒ぎじゃないよコレ!?

 『学生のノリ』で済ますにはかなり危ないこと繰り返していたぁ……ッ!?

 

 

「あれ、夏美くん? どうしたの震えて。エアコン効きすぎたかな……」

「あ、あはは、そうかもしれないですねー……!」

 

 

 嫌な汗が止まらないよ。

 思い返してみたらとんでもない学校のとんでもないクラスに所属していたよ。

 子供先生が教鞭取って担任は出張でほぼいないって、中学三年にやっちゃダメな授業受けてたよあたしたち。

 ……絶対に麻帆良外での受験を受けられそうにない……。

 内申、どんな風になってんだろ……。

 

 

「まあ、話を戻すけど。

 あやかはどうしたのかそのネギ先生にとんでもなくお熱だ。これが普通の男の子との関係であれば、性癖がどうあれ、温かく見守ることも吝かではないのだよ」

「性癖はどうにかした方がいいのでは」

「それができれば苦労は無いよ千鶴くん」

 

 

 実父に諦められちゃうレベルなんだ、いいんちょのショタコンって。

 

 

「しかしね、この『お相手』には『立場』がある。『教師』という『立場』がね。

 それが『優秀な教師』であれば彼の人生設計を邪魔するであろうという理由で尚更駄目だし、そうでなければ『人間性の問題上』実の親として認められない。そんな奴に大事な娘を任すような親は居らんからね」

 

 

 云わんとしていることは把握できた。

 やっぱりしっかり者なんだなぁ、いいんちょパパもいいんちょと似通っているところあるよ。

 ――なんでネギ先生相手になるとポンコツになるんだろう、いいんちょって。

 

 

「それにしても……、あやかの恋愛事情に随分とお詳しいんですね。何処かに調査でも頼んだのですか?」

 

 

 いいんちょの最大の謎に思いを馳せていたところ、ちづ姉が小首を傾げた。

 言われてみれば、娘の恋愛事情をそこまで細かく把握しているお父さんと言うのも確かに珍しいかもしれない。しかも娘は中学三年生だし、思春期真っ盛りだし。

 あたしも疑問に感じたのでいいんちょパパを覗ってみれば、そこにはなんだかやつれたように斜に翳るいいんちょパパの姿が。

 

 

「――自家用ジェットに痛車レベルでのペイントをされれば怒りもするのだよ……」

 

 

 ――ああ、なるほど。

 だから軟禁されたのかー、と思わず納得するあたしであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  『超鈴音、困惑する』

 

 

 さて、海上都市リュケイオンへ向かった私たち超包子一行、なのでアタガ……。

 

 

「いつまで待ちぼうけ食らうアルか? 私たちは」

「さてネー。こればかりは相手側の采配であるからネ」

 

 

 古も焦れて来ているようネ。

 まあ、一週間前には到達している筈の海上都市が何故か封鎖中で、船も出ずにホテルに缶詰め状態では、二進も三進もいかないのも仕方ないのであるガ。

 麻帆良とは違うから下手に茶々丸でハッキングツールを使うわけにはいかんだろうし、何より外様状態であるはずの私たちが口を挟んで状況を混乱させるのも間違っている。と。

 ……それにしたって迎えの何某かが現れてくれても良い頃合いだと思うのだがネ……。

 

 

「――。どなたかが来たみたいです」

「――ホ?」

 

 

 茶々丸の感知領域内に誰かが侵入したか。

 声を荒げないことを見ると、敵意があると見なくても良さそうカネ?

 

 

『――済まない、超包子ご一行の部屋で合っているであろうか。迎えに来た者だが』

「ハイハイ待ってたヨー!」

 

 

 ドア越しのノックの後にかかった女性の声に、真っ先に古が反応して開け放つ。

 焦れているのは仕方ないとしても、もうちょっと落ち着いてもいいんじゃナイカナ?

 

 

「おりょ? お姉さんが迎えの人アルカー?」

「正確には迎えの代替だ。オラトリオの奴が来るはずだったらしいが、今所用で出ていてな。私が代わりに話を通しておくように、と。

 ――全く、手間を簡単に人に投げてくれる」

 

 

 やたら綺麗でスタイルの良い、長い髪の女性が其処には立っていた。

 はて、何だろうかこの違和感は?

 というか目的の人を前にして手間とか言わないで欲しいのダガ……。

 

 

「――若しかして、貴女は」

「ム。キミが後輩か。では、先に自己紹介だけでも済ませておこう。

 アトランダムナンバーズ・A-L、LAVENDERだ。長い付き合いになるだろうから、よろしく頼む」

 

 

 茶々丸の呼びかけに、嘆息していた彼女はそう自己紹介をしてくれた。ガ……、

 

 ………………えー、える?

 

 ――チョッ、いきなりナンバーズ登録済みのロボットが接触してくるとかってどういう冗談アルカ!? 普通はその前に誰か科学者さんとかが来るのではないのかネ!?

 しかも“らべんだー”って、SP(セキュリティサービス)専門の戦闘型ではなかったカ!?

 ど、どういう意味合いで送られてきたのかネ……!?

 

 

 

 ――結局、それは牽制でも何でもない本当にただの連絡事項で、リュケイオンに問題が発生したので、ロボット博覧会は中止となってしまったとのことであった。

 予定されていた超シリーズのお目見えや、ナンバーズ登録としての手続きも次の機会に、とのこと。

 ……予定より少し速いけど、麻帆良に帰ることになりそうだネ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  『第一回、魔法生徒集会』

 

 

「――てれってーってれってってっ、てってってっててFuー!」

「……くっ、ひっ……、……かはっ……っ!」

 

 

 画面四隅に映し出される『満 身 創 痍』の大文字。

 しかし歌い上げた俺以上に、野木坂パイセンが満身創痍。

 笑い過ぎて呼吸困難に陥っている模様。

 いったい何がそこまでツボに入ったのか。

 そんなに面白かったかなぁ、烏丸せんせいのぱーふぇくとさんすう教室~やさぐれVer~。

 

 

「見事に唄い切りましたねー……」

「こういうのは吹っ切れたもの勝ちでしょーよ。それよりも合いの手センキュー」

 

 

 呆れ顔の夏目を余所に、歌の途中で丁度良い合いの手を入れて盛り上げてくれたタクミンと「いえーい」「ふひひ」とハイタッチを交わす。

 オタク系だからなタクミンは。絶対反応してくれると思っていたが案の定だ。さすがネギ君をサブカル色に染め上げた張本人なだけはあるぜ。

 

 夏休みも半ばを過ぎた本日、麻帆良より若干離れた某カラオケ店にて魔法生徒のみでの会合を開催してみた。

 普段顔をあまり突き合せない魔法生徒間の交流は、結構大事だと思うんだ。

 そんなわけで、不本意ながら一部から烏丸ガールズ等と呼ばれ出している俺との仮契約メンバーは本日不在。まあ元々正式な魔法生徒と違うし、学園からの呼び出しを受けている子らじゃないと話が通じない面子ってのもあるし、ね。俺? そこはまあ置いといて。

 ちなみにどうでもいいかも知れんけど会費は半分ほど俺持ち。

 だって魔法生徒って基本無償奉仕のボランティア感覚で仕事してるから、遊ぶ金とか余分な贅沢に使えない、とかって元々断られかけたんだぜ。

 まあ、雪広パパに魔法世界のお土産を持って行ったときに寄越された、10万程のお小遣いと言う名のあぶく銭で賄っているから経済的に懐は痛くは無いのだけれど。流石セレブ。どこぞの超セレブパパみたいにお土産と言って鉱山を包ませるほどじゃないが、学生の身分ならば充分すぎる金額だよ。有り難く接待費に廻させてもらうぜ。

 

 しかし、明石教授に紹介された夏目とか、ウルスラ生徒会長の野木坂さんとか、元同室の大柴タクミンとか、数少ない伝手を辿って呼びかけてもらったけれどやはり集まりは悪い。

 まあ基本的に俺自身の評判の悪さが邪魔してるんでしょうねー。この前エヴァに又聞いた噂だと『麻帆良の這い寄る混沌』とか呼ばれているらしいし。ナニソレ香ばしッ。

 

 

「それにしたって俺の名前出したわけじゃないのに、この集りの悪さは如何したものか」

「私たちに遊んでいる暇があると思っているの? あなたは?」

 

 

 そう口を開いたのは名前も知らない魔法生徒女子。ぶっちゃけ原作知識を基にしても全く分からない。

 数が多いのに大体がモブとか、赤松先生のキャラ愛の底突きがマッハ。

 しかし折角なので命名しておこう。えーと、確か自己紹介しかけてもらっていたから……、お、お、おつ、おと……、おにづか、……。

 

 

「――巌ちゃん?」

「誰よ」

 

 

 なんかしっくりきたからこれでいいか。

 

 

「そんなこと言うなら巌ちゃん、」

「だから誰……私!? ちょっ、私の事言ってるの!? ねぇ!?」

「『休む暇もない』、労働基準法に抵触している麻帆良の今の状況を、学生と言う身分で粛々と受け入れる。それでいいのかにゃ?」

 

 

 なんか抗議しているけど、話を聞いてくれる今がチャンス。

 “麻帆良の外に居る”今の内に、その未成年らしからぬ認識に穴をあけてやるぜー。

 ……あれ、今の俺、本当に裸エプロン先輩っぽい……。

 

 

「そんなことを言ったって、魔法生徒なんだし当り前じゃないのか?」

 

 

 予想外の所からの返球が。

 「ちょっと!?私の名前はねぇ――!」と巌ちゃんが叫んでいるのを他所に、会話のキャッチボールをキチンと応えてくれる野木パイの2つ隣の男子くん。

 魔法生徒には何故か女子が多いけど、俺とかタクミンとかを筆頭にそこそこの数は居る。まあ発言権はほぼ無いと見て間違いないだろうけれど……。全ては女子に甘い学園長の所為だと俺は視たね。

 

 

「んー、へい今口開いた男子、何歳よ?」

「俺? 中2だけど……」

「留年り(ダブり)とかじゃねーよな? それで学園の警備にも就いて居るって状況で合ってる?」

「え、あ、ああ」

「――ジュネーブ諸条約第二追加議定書第4条」

 

 

 唐突に飛び出した単語に、場が完全に沈黙する。

 確認は取れた、じゃあぶっちゃけるか。

 

 

「は?」

「15歳未満の児童は軍隊又は武装集団に徴募してはならず、また、敵対行為に参加することを許してはならない」

「………………は?」

 

 

 呆けた顔で男子が、他の魔法生徒らもこっちを見る。

 俺の言った言葉の意味を、充分に理解したであろう余裕をもって周囲を見渡す。

 話飛んだと思う?

 ところがどっこい現実なのさ。

 

 

「えっ、ちょっ、まって、え? ……じゅ、ジュネーブ条約って、要するに、俺らの行為って、」

「も一つあるぞー、国際刑事裁判所規程8条・戦争犯罪」

「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ先ぱ、――裁判!? え、法に触れるどころかすっ飛んで罪!?」

「15歳未満の児童を自国の軍隊に強制的に徴集し、若しくは志願に基づいて編入すること。又は敵対行為に積極的に参加させるために使用すること。――すげーな、魔法先生方ってこれらの条約や法令を見事に無視だぜ」

「ま、マジっすか……!」

 

 

 ざわざわと場に喧騒が戻り始めるが、それは俺の話を聞かなかったためではない。

 皆の顔に疑念と疑惑、あとこれまでの己の行動を思い返して不安に駆られているのだろう。

 まあ多分だけど、生徒の中にはそのものずばりな武器(銃とか刀とか。エアガンとか竹光とかと言いそうだけどアレをそう言い張るのは常識的に無理)を扱っている奴もいるし、その点を先生方に聞いたやつもいるかもしれん。

 しかしそんな状況での先生方の答えは、「麻帆良は治外法権が適用されている」。

 ……適用されていても、国際的な犯罪行為が認められるわけはないわなー。

 そんな事実に気づいてしまった騒めく生徒らの中、真っ先に俺に噛みついて来た鬼塚巌ちゃん(仮)が、

 

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、魔法生徒や先生方は別に軍隊ってわけじゃ……」

「武装集団であることには変わりないんじゃねーすか?」

「非武装でしょ! 私たちの使う魔法は兵器とは違うの!」

「兵器より怖いっすけどねー」

「っ」

 

 

 想像力豊かなのか、それとも前からある程度は理解していたのか。

 俺の一言で言葉に詰まってしまった巌ちゃん。

 ぶっちゃけ、練習すればよっぽどの例外でない限り誰にでも扱える、って時点で銃火器よりも危ないねんな、魔法って。

 非殺傷とかいう謳い文句があっても、『相手が』それ(ルール)を守っている、という信用にまでは至れねぇ。

 そんなん撃ち合う時点で、学園警備に一言物申したいレベル。

 

 

「で、でも、襲ってくる方が悪いんじゃないでしょうかー。それから身を守るためには、やっぱり相応の武装を……」

「武装って言っちゃってんじゃん、まあそれは今は良いけどさ。そもそも襲ってくる理由が『魔法使い側』の理屈だし、原因作っちゃっているわけだし」

 

 

 夏目の言い分に突っ込み、以下の問題点を手持ちのホワイトボードへとカキコ。

 なんだっけ? 世界樹の守護と貴重な蔵書の詰まった図書館島の警備?

 貴重な蔵書とやらをなんで日本の麻帆良に持ち出して来ているかな。

 『世界樹の守護』って理由が付属するなら、そもそも此処に肉の壁に成り得る『学生(一般人)』を通わせる理由になる『学園都市』なんて作るなよ。って言いたい。

 まあ要するに、

 

 

「完全に学園長っつーか、魔法協会っつーか、魔法世界っつーか。それらの都合で使い潰されるお前らの青春、それでいいの? って聞きたいんだけど?」

 

 

 うおぅ……、とぐうの音も出ないご様子の面子。

 俺の言いたいことを予め把握していたらしい野木パイやタクミンは、若干の他人事顔でカラオケの曲目を開いたりジュースを飲んだり。

 

 

「……あの、生徒会長? 他人事ですか?」

「え? 私は知っていましたけど?」

 

 

 他人事そうだけど興味が無いわけではなくて、前もって口挟んでいたから知っているって程度の認識。

 この後俺が何を提案するのかも、一応は話を通してあるのです。

 話を振られたウルスラの子らしき別の魔法生徒に、平然と応える野木坂パイセン。

 

 

「そもそも私も元は関西の人間ですからねー。魔法生徒の扱いとか、流石にこんなんなっているのはびっくりしましたけど、いろいろ法に触れていることぐらい自覚済みなのかと」

「……今知りました……」

「そう。なら教えてくれた烏丸くんにお礼言わないとね」

 

 

 笑顔でそう言う野木パイですけど、俺に一向に目線を向けないのは何故ですか。

 あれですか、最初に唄ったさんすうきょうしつが何気にまだ尾を引いているのですか。

 ……コッチヲミロォ~。

 

 

「で、でも……」

「ん?」

「……パパがたいへんなのは、やだ……」

 

 

 あらいい子。

 弐集院先生の娘さんがぽつりと言葉を漏らす。

 ……って、いくら夏休みだとはいえ、こんな小さな子が魔法生徒らと混じってカラオケ来ていていいのか? 麻帆良の認識阻害仕事しすぎだって……。

 

 

「そ、そうだよ。俺らがやらなきゃ先生方が大変なんだし、そもそも魔法使いの仕事はそういうのが本分だろ?」

「だ、だよね。それにお給料もらっているわけじゃないから、バイトっていうことでもないし!」

「人手が足りないのは事実なんだ。それを手伝って何が悪いって言うんだよ!」

 

 

 小さな子の発言が琴線に触れたのか、勢いづいて奮い立つ魔法生徒の面々。

 が、全員じゃない。

 立ち上がっていない者らは、今問題にすべきことをしっかり理解している面子のご様子だな。

 認識阻害の効力が薄れているのも加味しているかも?

 ってことで、追撃。

 

 

「――いや、親のお手伝いで戦闘行為、ってのは流石に人として駄目でしょ」

『! ほんまや!』

 

 

 冷水浴びせられたように叫び、しゅんと座り込む立ち上がった面々。

 此処がそもそも日本だってことを忘れてるんじゃねーのか麻帆良人。そんなんだから「MAHORAならばしょーがない」なんて格言が生まれつつあるんだぞ。

 

 

「それで? 烏丸くんは今の現状に不満があるのは分かったけれど、それをどうにかできるわけ?」

 

 

 話が進まないことに苛立ってきているのか、野木パイがマイクを片手に話題を振る。

 次はどうやらパイセンが歌うらしい。

 

 

「パイセン何唄うんすか?」

「なんで無駄にチャラ男風なの……。今はこっちじゃなくってそっちでしょ?」

「じゃあ曲入れるのちょっと待ってくださいよ。ああもう伴奏始まってるし……」

 

 

 「くっ、栗●キターーーっ!」と絶叫するタクミン。流れ出すイントロに何かが吹っ切れていたらしい。「おあぞーらいーっぱいぃにーry」と他人に聞いといて唄い出すし、野木パイも……。

 

 

「どうにか、っつうか、まあ解決法ならあるんだよな。要は襲ってこないように、つまり襲われる理由を消せばいいんだし」

「でも、そういう人たち以外にも事件の解決とか、そういう正義の仕事が……」

「お前とりあえず全力で警察とか消防とか病院とかに謝れ。個人正義の解消のために社会正義を蔑ろにして良い訳がねーだろうがよ」

「……仰るとおりでした」

 

 

 魔法使い以外は仕事しないとでも思ってんじゃねーだろうな。魔法生徒って人を疑うことが仕事なの? 箱社会だってそれなりに仕事しているよ。警察の代わりに学生が成れて堪るかよ。

 

 

「話戻していいか? つーかもうめんどくさいな……。要は、麻帆良からそういう理由を遠ざける良案があるから、当日に仕込みだけでも手伝ってくれって話だよ。今回の会合は」

「え。もう話が済んでいるってこと? それって」

 

 

 驚きの女子に、うんまあ、と頷く。

 発案者が俺と言う点で不安はみんなにあるだろうけど、基本イイ子であるこいつらは其処だけで否決というつもりはないようで、

 

 

「で、良案ってなんだ?」

「麻帆良の結界を落とす」

「おい!?」

 

 

 まあ端的に言えばこれだけど、それだけじゃないので、ツッコミを入れてくれた彼を手で制しつつ、

 

 

「そして、“魔女”に移住してもらう」

 

 

 そう、告げた。

 

 ――が、みんなの反応が全く無い。

 

 

「「「……………………誰?」」」

 

「お前らどんだけモノを知らないんだよっ!」

 

 

 と、思わずツッコミを入れてしまったが、そういえば魔法使い自体がこの世界線に置いてはモノ知らずの代表だったわ、と思い出す。

 今日ツッコミしかしてない感じだからだろーか、そういう基本的なことすらも頭からすっぽ抜けていたらしい。

 ……ん、まあ原作から乖離しっぱなしのこの世界線も、充分に悪いよな。

 

 

「私は知ってますよ?」

「マジでか。野木パイセンなんで知ってんすか」

「その呼び方やめてください。まあ、元西の者ですからね、日本の東西の情報を把握するくらいはやってましたから、家系自体が」

 

 

 平然と言ってるけど、そういえばこの人元々俺を暗殺する目的で突貫して来たんだったよな、建前上は。

 そりゃあ確かに両方の情報を掴んで置かんと置いてかれるわ。

 遙さんマジムルシエラゴ。

 

 

「誰が第四・十刃ですか」

 

 

 そっちじゃねーよ。ムルシエラゴには蝙蝠の意味合い以外含まれてねーよ。

 というか何気に心読まれている俺が居た。

 

 

 





~いいんちょ黒歴史・発掘
 当時の烏丸は家庭的な事情により発育不全もいいところだったのでそこらの女子よりも若干幼め
 ショタコンと年下好きを相互換しているあやかに隙は無かった
 今でも覚えているのかは不明

~映画製作用魔法アイテム
 ラカンの使っていたアレ
 ところでラカンtheフィルムでは陰険メガネの姿が影も形も見えなかったのだけど
 当時傍付きであっても可笑しく無かった筈のアリカ姫、の台詞からも頭数から抹消されている詠春の弟子…

~LAVENDER
 『アトランダムナンバーズ』、世界的に傑作とされたロボットに贈られる称号のようなもので、それに序列は無いが頭文字を冠することは製作者にとって最高の名誉とされている
 A-L・LAVENDERは音井教授の製作した初の女性型戦闘用ロボット
 ロボットプロレスという名物番組が大好きな音井教授が製作したせいなのかは知らないが、その性能もバランスも最良で、ナンバーズでも1、2を争う程に凄まじい
 しかしその反面、破壊屋≪クラッシャー≫という異名を取るほどの人格破綻っぷりも凄まじく、その容赦の無さが「蝶のように舞い蜂のように刺しブルドーザーのように跡には何も残さない」とまで伝えられるほど
 SPの仕事を良く熟し、時たまテレビにも出るほどの有名機。見た目だけならば確かに美人

~鬼塚巌(仮)
 名前が判明したよヤッター! ……まあ仮ですけどね(笑)
 弐集院先生と一緒に学祭で次元跳躍弾食らったモブ魔法生徒
 魔法生徒や魔法先生が数多く居るという設定なのに、表立つのは色物ばかり
 結局大多数の名前が明かされないまま漫画が終わってしまったことに異議を唱えたい。俺です

~おwww?説教ですかwww?
 主人公(元)らしきことを陰でやってるよー!
 今日もまた一つ這い寄った…!
 ちなみに作者法律にはあんま詳しくないっす。聞きかじっただけなので鋭すぎるツッコミは簡便な!

~ムルシエラゴ
 Murcielago:イタリア語で蝙蝠の意
 鳥に似て鳥にあらず~、から始まる一文から「二者の都合のいい時だけ味方に付くモノ」の意にもなる
 間違っても黒翼大なんとか等と御大層な当て字を期待してはならない
 そういうのはオサレ師匠に任せるんだ…!


なんか長くなりました
言いたいことが根こそぎ詰まったツッコミ回
ネタも混じっているので読み難いとかは無いと信じたいっす
次こそ本編を書くんだ…!
そう意気込む九月最後の更新

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