ペルソナ4 Another Story,Another Hero   作:芳野木

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今回は戦闘後と単なる昔話。

分かる人には分かる昔話のエピソード。




-006- 愚者の夢

「貴方が現在使用できるペルソナのアルカナは愚者と女帝ね」

 

 愚者と女帝。アルカナとはペルソナの各特色を表す。

 

「人との関わりが新たなアルカナを示す。覚えているかしら」

「愚者は俺自身。女帝はマーガレットさんですか」

「ええ……女帝のアルカナであるペルソナは随分と弱くなったようだけれど」

 

 遠回しに責められてるような気がした。

 

「愚者はイザナミなら、女帝はどんなペルソナでしょうかね…」

 

 非難めいた視線から逃げるために話題を変える。

 

「召喚してみたらどう?」

 

 そう言いペルソナ全書を開くマーガレットさんの姿はどこか楽しそうだ。俺、ホントにこの人との記憶がないのって故意的じゃないのかな。

 

「メギドラオンはもういりませんよ」

 

 そう何度も極限状態まで追い詰めないでいただきたい。

 

「あら、そう」

 

 その呟きが残念そうに聞こえたのは、気のせいか否か。

 

 ため息をつきたいのを堪え召喚をする。

「ペルソナ!」

 ペルソナカードが浮かび、

「チェンジ!」

 

 パリンッ

 

 イザナミの姿が描かれたペルソナカードが割れ、新たなカードが浮かび上がる。それと同時にペルソナの名もわかった。

 

「イシス!」

 

 現れたペルソナカードを掴んで、さっきと同じ要領で地面に叩きつける。

 

 両手を覆う黄金の羽を広げ、イシスは俺の前に降り立った。

 

「っと…」

 

 足元がふらつき、イシスはカードに戻る。ペルソナ能力を使いすぎたのか、急に眠気が…

 

「今日はこれぐらいにしましょう」

 

 マーガレットさんの声が遠く聞こえる。

 

「あなたのペルソナ能力は、特殊であり不完全なワイルド」

 

 

 不完全なワイルド?

 

 

「不完全なままで終わるか、完全なものへと変わるか。それは貴方次第」

 

 

 前にも聞いたことのある話だ。

 

 前っていつだ?

 

 

「私は教えるだけよ」

 

 疑問に答えは得られず、俺の意識は徐々にこの場を離れていく。

 

 

「今度は――」

 

 

 

 続く言葉はよく聞こえない。ただ、またマーガレットさんが淋しそうな表情をしたのが気になった。

 

 

 

 

 俺は、この人にそんな表情はしてほしくない。

 畏怖と罪悪感。なぜ、罪悪感なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

Extra1:夢の話

 

 

 

 将来の夢が何だったのか、幼いときは純粋な夢を見ていたのか。

 

 そんなことは今となってはあまり覚えていない。

 

 夢とやらで覚えているエピソードといえば、小学三年の頃、将来の夢を発表するときに「早く自立できる大人」とスピーチしたことだろうか。

 

 その放課後、担任に呼び出され、両親と一度話したいと言われてしまった。小学生が書くような純粋な「サッカー選手」とか「ケーキ屋さん」とは違い生々しすぎたんだろう、つい最近見つけて読んだのだが確かに現実的な文ばっかた。

 

 節約とかセールとか、普通は書かない。

 

 で、小学四年。次は面談のことで担任に呼び出された。

 

 毎年毎年、同じことで担任と向かい合ってきたのでもうその時には慣れていたのだが、今度の担任は一味違った。

 両親が面談に来ない理由と言われ、

 

「放任主義なんです。俺の両親」

 といつも通り答えると、その担任は少しぽかーんとした後に笑いだしたのだ。

 

 去年までは「お母さんとお父さんに電話するね」なんて言って、何度もアタックという名の電話連絡を頑張っていたのだが、残念なことに両親の教えてる携帯番号は普段仕事場に持っていかず家に放置してる用。いくらかけても絶対に繋がらない。

 

 

「そうか、そうか。お前もか」

 

 どうやら担任も同じような幼少期を送っていたらしい。両親共働きでたこ焼き屋を営んでいたらしく、唯一覚えている教えてもらったことが、たこ焼きの作り方とか。

 

 その日から担任は、様々な知恵を教えてくれるようになった。例えば子供という立場を利用して商店街でオマケしてもらう方法とか…先生曰く同情でご飯は食べれるらしい。同情するなら飯をくれ。

 

 

 よく考えたら教師のやることじゃないなとか…いや、凄く感謝してるけど。

 

 結局、その個人的に教えていたことが保護者に問題視され、先生は学校を離れることになった。

 

 

 

 噂なんて尾鰭がつくもので、俺が聞いた時には事実とは程遠い内容で出回っていた。気にならなかったけど、噂はあてにならないとはじめて感じた瞬間だ。

 

「負けるなよ、少年」

 

 別れ際そうニカニカ笑って頭を撫でられたのを覚えている。先生としては学校を離れることは良かったらしい。

 

「ま、ウチもこないな教師生活うんざりしとったさかいな。またちゃうとこでやるか、たこ焼き屋やるか…まぁ、ホンマにたこ焼き屋やっとるやろな」

 

 

 それを聞いた時、どんな顔をしていたんだろう。

 

 

「縁があるんなら、また会おな。少年」

 

 たぶん、先生は今ではたこ焼き屋を営んでいると思う。

 けど、あの人たこ焼きに「普通は入れないある物」を入れてたからな。……たこ焼きにたこ以外の物を入れてはいけないなんて法律はないけどさ。

 

 ま、限度ってのがある。

 

 

 

 とりあえず、昔の俺は可愛げのない子供だったな。今の方がよっぽどあるんじゃないか? 愛嬌とか。レッツ、スマイリー。

 

 




で。今後のストーリー展開について。
まだ、物語上の日付は三月。事件は始まってませんが、それまでの事件始まるまでの生活を書いています。

堂島さんとか足立さんは、なるたけ早く。同級生グループとの出会いも現在書いている途中です。
出会い書き、伏線立てて。

次話では伏線+ペルソナ3描写を投稿したいな、と。

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