マブラヴ・オルタジェネレーション   作:京橋

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 ビームとレーザー、どちらも攪乱幕で防ぐのは可能だろうか?


あっ、お気に入り数が100超えましたw 登録ありがとうございます!!



第七話 帝都崩壊、謎の戦術機、武者頑駄無現る!

 

 

 

 

 

 

 

 

 BETAの侵攻を一時的に止める事の出来た日本帝国軍は臨時の集積場を設けて負傷者の治療や、補給の必要な戦術機の整備に追われていた。

 

そこでは殿を務めた同期の仲間の帰りを待つ【石見 安芸】と【甲斐 志摩子】の姿もあった。

 

 そんな最中、五摂家と呼ばれる五大武家の者である【崇宰 恭子】が搭乗する青い武御雷と護衛として随伴機である黒い瑞鶴に連れられてマーク達の乗るユニコーンガンダム、バンシィ、ガーベラ・テトラ改、デルタプラス、リゼルの四機のMSが臨時集積場に現れた。

 

 集積場でバンシィのコクピットから姿を現した【篁 唯依】と【能登 和泉】が、ガーベラ・テトラ改のコクピットからは怪我を負いつつも戦車級から命からがら助かった【山城 上総】を抱きかかえたラナロウが現われ、その姿を見た安芸と志摩子は嬉しさ余りに涙を流しながら駆け出し、任官間もない素人同然の若き14歳の少女達が初のBETA戦によって全員生還という結果となった。

 

 

 

 

 

 

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 再会を喜んでいる嵐山小隊の所へ、先の通信を聞いてやって来た医療班が担架を持って現れ、その姿を見たラナロウは足を骨折している上総を担架の上にゆっくりと乗せた。

 

「ラナロウさん、私を助けてくれてありがとうございました。このご恩は忘れません」

 

「気にすんな、お前こそ良く頑張ったな。それに俺だけじゃなくて同期の奴らにもちゃんとお礼を言っておけよ」

 

 ラナロウは笑みを浮かべながらお礼を言う上総の頭を撫でてやると、少し頬を赤くしながら上総は頷いた。そんな上総の様子に苦笑しながらも医療班に向かって頷くと上総は医療班に連れられていった。

 

「ラナロウさん!」

 

 上総を見送ったラナロウの後ろから唯依の声が聞こえたので振り返ってみると、唯依を含む志摩子、安芸、和泉の四人がラナロウの傍にやってきた。

 

「ラナロウさん、先の戦闘では私達を何度も助けてくれてありがとうございました」

 

「ラナロウさんがいなかったらって思うと……本当にありがとうございましたっ!!」

 

 唯依と志摩子はラナロウにお礼を言いながら頭を下げた。思い返せば初の実戦で嵐山小隊の全員が無事に生還できたのは全てラナロウのおかげだと言える。

 

特に志摩子に関しては突撃級の突進攻撃を回避しながら攻撃した際に高度を取りすぎて光線級のレーザー攻撃を受けて戦術機ごと爆死するところだったのを、ラナロウの駆るガーベラ・テトラ改が現れたことでレーザー攻撃から救われたのだから……

 

 そしてその後も周囲の状況を見ながら上総のいる第三小隊の他の衛士が危険な状況に陥れば即座にフォローに回り、突撃級の接近に気づいていなかった安芸を助け、増援として現れたBETA群に対し、如月に即座に撤退するように進言して皆を下がらせた事も無事に生還できた要因にもなっていた。

 

「ひっく……えぐっ…」

 

「和泉、もう大丈夫だから泣きやみなよ」

 

 情けなく泣きべそをかいている和泉を励ます安芸。無理もない……生身のまま薄暗いビル内を歩いていてラナロウが彼女を見つけるのが少しでも遅かったら兵士級の餌食になっていたところだったのだから……

 

「おいおい、そんな酷い顔をしてたらお前の彼氏に笑われるぞ。姿がなくたってお前を見守ってくれているかもしれねぇんだから」

 

「ぐすっ……はい。そうですね……」

 

「とにかく今は“生き残った”事を喜んでおけ、なっ!」

 

「はいっ!」

 

 和泉の肩に手を置いて励ましの言葉を送るラナロウに、和泉は涙を拭いて元気よく返事を返すと、遠くから如月中隊長が自分達を呼んでいる声が聞こえた。

 

 唯依は如月中隊長に向けて返事を返すと、ラナロウの前に自分を中心に四人は横一列になって彼に向かって顔を上げた。

 

「今回の戦闘では、度重なる援護と救助にご協力いただきまして、本当にありがとうございましたっ!」

 

『ありがとうございましたっ!!』

 

 唯依の声に合わせて志摩子、安芸、和泉はラナロウに向けて姿勢を正しくして敬礼をし、そんな彼女らの敬意にラナロウは笑みを浮かべて敬礼で返す。

 

 如月中隊長に向かって駆け出していった14歳の年端もいかぬ少女の顔から真剣な軍人の表情の唯依達が人ごみに消えるまでラナロウは見送っていると、後ろから自分の機体から降りてきたマーク達がやってきた。

 

「よう、ラナロウ。随分と可愛らしい女の子らと仲良くなったみたいだな」

 

「茶化すんじゃねぇよマーク。あれでもまだ14の子供だぞ?しかも今回が初の実戦だって言うじゃねぇか」

 

「14だと!?それは本当か?」

 

「その事は私も一緒にいた二人から聞いたわ。結構若そうに見えたけどホントに驚いたわ」

 

 顔をニヤつかせながらラナロウをからかうマークだったが、唯依達がまだ14歳ということを聞き、驚きを隠せなかった。

 

「あなた方があの戦術機に乗っていた方々ですね?」

 

 そんな彼らの前に唯依達の着ていた帝国斯衛軍専用の強化装備の色違いの青い強化装備を纏った女性【崇宰 恭子】が帝国軍の司令官らしき人物と共に現われ、マーク達に声を掛けてきた。

 

「此度は帝国軍と我が斯衛の若者達の窮地を救っていただき、真にお礼を申したい。あなた方に心よりの感謝を……」

 

「あなた方の活躍により、防衛線上に展開していた多くの帝国軍の衛士や兵が生き残る事が出来ました。ありがとうございました」

 

 マーク達はやってきた人物と挨拶を交わしながら帝国軍司令官に今後の事についてと、マーク達が一体何者であるかを知りたいと臨時司令部のあるテントへと案内された。

 

「それでですが…あなた方は一体何者なのですか?あの戦術機にしても我々の使用している戦術機とは明らかに違う技術が使われているようですが……」

 

「戦術機?あれは“モビルスーツ”という機体です。それで我々の事についてなのですが……」

 

「司令、大変ですっ!」

 

 司令官からの質問にマーク達は自分達の正体と補給関係の交渉をしようと思った時だった。テント内で通信機と睨めっこしていた通信兵が声を上げた。

 

「どうした!?」

 

「九州にて奮闘していた九州方面部隊からの連絡!内容は再び沿岸部からBETA群が出現、再度帝都に向けて侵攻を開始したそうですっ!!」

 

 通信兵の話を聞いた司令官及びその場にいた全員に緊張が走る。

 

「再びここが戦場になるのか……早急に防衛線を構築!補給や出撃可能な戦術機は全機発進っ!!市民の退避を完了するまで時間を稼ぐんだ!!」

 

『了解っ!!』

 

 司令官が通信兵に指示を飛ばすと臨時司令部は慌しくなり、司令官の言葉にエリスは反応した。

 

「えっ!?市民の避難ってまだ完了していないの!?」

 

「ええ、BETAの侵攻に伴い、避難命令を発して避難させてはいたのです……BETAの侵攻速度は速く、内陸であるが故に陸地での移動には限度があるのです」

 

「だったら航空機などを使って避難させれば……」

 

「そんな無茶な!光線級の存在のせいで航空機などを使っての避難は自殺行為なのですよ!!?」

 

 話を聞いたエリスとエルフリーデは陸地がダメなら航空機を使えばいいと提案したが、司令官はその提案を却下する。

 

 それもそのはず……この世界の人々にとって、進行中のBETAの上空を飛ぶことは自殺行為であるという事が当たり前という認識の中で、異世界の者であるマーク達は当然知らない。

 

「司令官殿、我々斯衛軍は先に防衛線構築の為に出撃させてもらいます。準備が出来次第そちらも合流を……」

 

「はっ!よろしくお願いいたしますっ!!」

 

 一緒にいた恭子が臨時司令部から退出すると、マークは通信機を取り出してネェル・アーガマ改に連絡を入れてみた。

 

「こちらマーク、ゼノン艦長、聞こえるか?」

 

『ああ、聞こえる。そっちは無事に合流できたか?』

 

「こっちは全員無事にラナロウとも合流できた。今、現地の人と共に臨時の集積場にいるんだが、またあの怪物どもがこちらに向かって侵攻を開始したらしい……そちらは今何処だ?」

 

『こちらは現在、アプロディアの案内でそちらに向かっているからもう少しで合流できる。だが、移動中に敵のレーザー攻撃を受けてしまったがな……』

 

 ネェル・アーガマ改との通信を聞いてマークは驚きの声を上げ、その声を聞いたラナロウ達もマークの傍に集まる。

 

「攻撃を受けた!?アーガマは大丈夫なのか!?」

 

『幾つか装甲をやられたりしたが航行には支障はない。それに敵のレーザー攻撃を緩和させる方法も見つかったしな』

 

「緩和?何をしたんだ?」

 

『ビーム撹乱幕だよ。アレを積めたミサイルを周囲にばら撒いてみたら、敵のレーザー攻撃を幾つか無力化できたからな』

 

 ゼノンの話を聞いたマークは「それだ!」と叫ぶと、ゼノンにすぐに交流するように話をつけて司令官に声を掛けた。

 

「司令官!近くにいる避難民をここに集めてくれないか?」

 

「どうするつもりですか!?」

 

「俺達の母艦に避難民を収納する。怪物どもの侵攻速度で追いつかれでもしたらまずいだろ?」

 

「母艦?ですが内陸部に入ってこれるような運河などはありませんよ?」

 

「大丈夫だ。艦は艦でも船じゃないからな」

 

「司令!!こちらに向かってくる大型の物体を確認!ですが…何だこれ…大型輸送戦艦並みの大きさ!?」

 

 マークの話を聞いた司令官は頭に?マークを浮かべていると、通信兵からの報告を聞くと外から大きな音が聞こえ始め、さらには得体の知れない物体を見たかのような人々の声が聞こえ、司令官は外に飛び出した。

 

「なっ、何だ……これはっ!?」

 

 司令官の目に入ったのは、空を飛行するネェル・アーガマ改の姿だった。周囲の人々は空を飛んでいる戦艦の姿を見て唖然としていたが、それも当然のこと…この世界において空を飛ぶ……いや、空にほぼ滞空の可能な戦艦など存在するわけがない。

 

「あれは…あれがあなた方の母艦…なのですか?」

 

「そう。あれが俺達の母艦【ネェル・アーガマ改】さ」

 

 空中に浮かぶネェル・アーガマ改はユニコーンガンダムのいる場所まで移動すると地上に着陸させる。しかしいくら広い場所でもネェル・アーガマ改が着陸するにはギリギリであり、MSを動かして着陸地点から退かしてようやく降りられた。

 

『マーク、皆っ!一旦アーガマに戻って補給を受けなっ!エネルギーも残り少ないんだろ?こっちの準備はできてるよ!!』

 

「了解だ。司令官、俺達が補給している内に避難民と負傷者を戦艦に乗れるように準備しておくように指示をお願いしたい」

 

『はっ、はいっ!!』

 

 ネェル・アーガマ改の着陸時に自分のMSに搭乗していたラナロウ達はMSデッキに向かって行き、マークは足下で唖然としている司令官に先程の提案を指示し、唖然としていた司令官が我に返って動ける兵士に指示を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 数時間後、補給を終えたユニコーンガンダム、バンシィ、ガーベラ・テトラ改、デルタプラス、リゼルは装備を整えて再出撃し、先に行った斯衛軍と補給と装備を整えて随伴して出撃していった黒い瑞鶴と帝国軍の撃震との合流に向かった。

 

 ネェル・アーガマ改が集積場に現われてから三日ほど経過した後、集積場にいた兵士や負傷者や避難民と集積場の機材などを乗せ、ようやく臨時集積場から出発していた。

 

ブリッジには帝国政府への道先案内人として司令官と帝国軍人と国連軍の軍人数名が入室してきた。

 

「ようこそ、我が戦艦のブリッジへ。私はこのネェル・アーガマ改の艦長を務めているゼノン・ディーゲルといいます。そしてこちらが副官の……」

 

「ニキ・テイラーです。よろしく」

 

「こっ、こちらこそ……」

 

 司令官に挨拶と握手を交わしたゼノンとニキ。司令官は目の前に広がる見た事のない計器や鮮明なモニターやブリッジから見た外の景色に唖然となり、他の軍人達も同様に驚いていた。

 

「ところでこの艦は空を飛行していますが、BETAのレーザー攻撃に対して危険なのでは?」

 

「レーザー攻撃に対してはこちらでも集積場に向かっていた途中で攻撃を受けましたが、対処できる武装があったのでそれで対処しました。それでなんですが……」

 

「我々はそのBETAと呼ばれる生物の情報の提供をお願いしたいのですが、現時点で分かる範囲でいいので宜しいでしょうか?」

 

 やはり空を飛んでいる事でBETAの攻撃に晒されることに不安な司令官にゼノンは大丈夫であると答え、ニキは司令官にBETAについての情報が欲しいと話し合いを始めた。

 

 帝国軍と国連軍の軍人の案内を受けながら移動するネェル・アーガマ改の後部ハッチが開き、そこから両肩に大型のミサイルを担いで両腕にハイパーバズーカを持った【プロト・スタークジェガン】が出てきた。

 

『いいかい!撹乱幕の散布時間は説明した通りだから余り無駄弾を使うんじゃないよ!!』

 

「りょっ、了解っ!」 

 

「落ち着いてシェルド。あなたは射撃に専念してくれればいいから」

 

「はい、マリア姉さん」

 

 プロト・スタークジェガンのコクピットのシートに座る機体制御担当のシェルドと、火器管制担当のマリアはケイからの通信を聞きながら光線級のレーザー攻撃に対して警戒する。

 

シェルドとマリアの乗るプロト・スタークジェガンはスタークジェガンの試作型であり、機体制御と火器管制の二人の運用が必要な横型の複座式のコクピットになっている。

 

 緊張するシェルドにマリアは優しく声を掛けて落ち着かせ、隣にいる姉として慕っているマリアの声にシェルドは深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 

『シェルド、マリア。敵のレーザー攻撃は対象が高高度を取ると攻撃をしてくるので、私がエネルギー反応を感知したらビーム撹乱幕弾頭を発射してください』

 

『了解っ!!』

 

 アプロディアはガーベラ・テトラ改に移していた自身のニューロを今度はプロト・スタークジェガンのコクピットに移させてもらい、二人のサポートに回っていた。そこへコクピット内に警報が鳴り、二人はモニターに表示される光線級のレーザー発射予測地点を確認し、マリアは左肩の一発目の大型ミサイルのロックを解除するとシェルドはコンソールのスイッチを押して大型ミサイルを一発発射した。

 

 発射された大型ミサイルは暫く飛行を続けていると突然爆発し、爆発と同時に戦艦の周囲に何かの粒子のようなものが巻き散らかされると同時に光線級の発射してきた複数のレーザー攻撃が飛んできたが戦艦に当たる前に消滅した。

 

「おおっ!!BETAのレーザーがっ!!」

 

「凄い……これは凄いぞっ!!」

 

 ブリッジではプロト・スタークジェガンの様子を見ていた軍人達は歓声を上げていた。今の彼らの脳裏には一番対処が出来ていない光線級のレーザー攻撃を防いだという現実に起きた事に「この技術を量産できれば……」という考えで一致していた。

 

 

 

 

 

 

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 ネェル・アーガマ改が臨時集積場から出発して数週間後……帝国軍と国連軍は再び侵攻を開始してきたBETA群に対して急遽防衛線を構築。防衛線には先の戦いで生き延びた部隊と新たに帝都防衛第一師団と斯衛第二連隊が参戦。

 

さらにこれまで民間人誤爆の危険性を考慮して投入を控えていた戦艦からの艦砲射撃、軌道爆撃の支援が可能になり戦力としては京都防衛戦よりも充実した状態で戦闘が開始されていた。

 

 防衛線が構築された頃、国連軍と帝国軍の撃震部隊と新たに加わった国連軍の【F-15C イーグル】と帝国軍所属の89式戦術歩行戦闘機【陽炎】部隊が突撃級を先頭に要撃級、戦車級、光線級、さらには要塞級という編成で侵攻してくるBETA群と戦闘が始まっていた。

 

 第二世代機と呼ばれる部類に入るイーグルと陽炎は機動性と運動性が撃震よりも向上しており、BETAに対して多大の成果を上げていた。

 

さらに後からマーク達のMS部隊が合流し、部隊呼称として【ジェネレーションズ】と名乗り防衛戦に参加。戦術機の性能を上回るMSの活躍により一旦は帝都京都にまで押し寄せて来ていたBETA群を神戸付近まで押し返すほどの成果を上げた。

 

『敵BETA群、艦砲射撃と軌道爆撃により約30%を撃破。さらに【ジェネレーションズ】部隊の活躍により侵攻中のBETA群を数万単位での撃破を確認しましたっ!!』

 

「艦砲射撃と軌道爆撃……この二つの戦力が加わり、さらに彼らの活躍によりBETAの侵攻を押し返せることが出来るとは……」

 

 再編成された部隊の戦術機が次々と出撃する中、撃破報告の声を聞きながら司令部にいた高官たちは呟く。

 

 帝国軍と国連軍と在日米軍、そしてマーク達ジェネレーションズの奮闘によってBETA群を本州から追い返せると誰もが思っていた。しかしBETAの最大の脅威は圧倒的な物量で押し寄せてくる事…………

 

 ユーラシア大陸からの絶える事のない増援にネェル・アーガマ改から持ってきていたMS専用の補給コンテナの残量が少なくなり、ジェネレーションズのMSの補給が出来なくなり始めた。

 

 さらに七月末、九州にて奮闘していた九州方面部隊が遂にBETAの前に全滅し、九州地方を完全に制圧したBETAが本州に向かって侵攻を開始。せっかく押し返した前線の戦況が悪化してしまい、再び帝都は戦火に包まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして八月十日……遂にBETAは京都の街を蹂躙し始め、帝国政府は東京に政府機能を移し、在日米軍と国連軍に京都放棄を決定し東京への撤退を開始していた。その際に皇帝や五摂家ともに京都と共に散華する意向を見せたが、城内省を始めとする政府各部から「皇帝と五摂家は日本の象徴であり、これ無くして帝国の再建は不可能」と進言し、皇帝と五摂家は京都撤退に同意した。

 

 さらに五日後の八月十四日深夜、京都八坂祇園付近にて……在日米軍のトムキャットからの大型長距離誘導弾フェニックスの最後の支援攻撃が行なわれ、京都に残っているのは第16斯衛大隊の14機の瑞鶴と生き残っている部隊の撤退の援護の為にバラバラになっているジェネレーションズ部隊のみとなっていた。

 

「もはや、帝都の放棄は免れぬか……」

 

「申し訳ない……俺達のBETAに対する認識が甘かったせいで……」

 

「そんな事はない。そなたらのおかげで民や生き延びた帝国及び国連の部隊を安全な場所まで避難させる時間を稼ぐ事が出来たのだ。それよりも早くここから撤退し、第96砲兵大隊と合流し、離脱するがよい」

 

 燃え盛る京都市街の一角にマークの乗るNT-Dを発動している【ユニコーンガンダム・デストロイモード】と五摂家の一つである斑鳩家の若き当主が搭乗している青い瑞鶴と、代々将軍家並びに五摂家要人の守護を担う名家のひとつである月詠家の【月詠 真耶】中尉の搭乗している赤い瑞鶴が迫り来るBETAを撃破しながら会話を交わす。

 

「離脱?しかし俺達が撤退したら………」

 

「もはや帝都の防衛も意味を無くすのも時間の問題。それにお前達はいつの日か日本を…いや、この世界を救う存在になるかもしれん。だからマーク、お前達は早く撤退するのだ」

 

「月詠中尉……斑鳩閣下…了解しました。どうか御武運を……ユニコーンからジェネレーションズ各機へ。これより京都から離脱する!!」

 

 次々と襲い掛かって来るBETAを撃破しながらも斑鳩と月詠の乗る瑞鶴を見つめながらデストロイモードからユニコーンモードに戻ったユニコーンガンダムは別の場所で戦っているラナロウ達に連絡を取りマーク達ジェネレーションズは京都から撤退していった。

 

 月詠の網膜に写る戦域情報に表示されているジェネレーションズ部隊が第96砲兵大隊と合流して京都から離脱していくのを確認するとオープンチャンネルを開いて斑鳩機に通信を入れる。

 

「閣下、彼らと第96砲兵大隊の離脱を確認……頃合にございます、御下知をっ!」

 

「うむ…月詠よ、全隊に通達せよ。魚鱗参陣(スケイルストライク・スリー)、我らは下京北の光線級を排除した後、蹴上より山科、大津へ撤退する」

 

「はっ!ホーンド2より第16斯衛大隊各機に告ぐ。魚鱗参陣にて突撃、しかる後帝都より離脱する!」

 

「第16斯衛大隊全機…着剣ッ!!」

 

 斑鳩機と月詠機の瑞鶴から聞こえる声を聞き、生き残った全ての瑞鶴が兵装担架システムにマウントされている長刀を抜いて構える。

 

 そして斑鳩機の瑞鶴が最後の号令を全隊に発呼した。

 

「皆の者、これが最後の攻勢ぞ……殿を預かる我が斯衛の戦い……この千年の都に刻み付けてゆけぃっ!!」

 

『了解ッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

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 帝都撤退から数時間後……第16斯衛大隊は14機からさらに6機の瑞鶴を失いつつも琵琶湖に向けて撤退していた。しかし依然BETAは斯衛軍を追うように進撃を続け、追いつかれるのも時間の問題となっていた。

 

(くっ、まさか追撃を仕掛けてくるとは……もはや我々の命運もここまでということか……)

 

 先頭を飛行する斑鳩機の後ろについている月詠は戦域情報を眺めながら心の中で想う。魚鱗参陣で突撃した第16斯衛大隊は光線級を排除に成功するが、生き残った戦術機の殆どは活動限界にまで消耗し、推進剤の残りも後僅かとなっていた。

 

 もはやこれまでと諦めかけていたその時、突如空から眩い光が降り注ぎ、撤退中の第16斯衛大隊は目を瞑った。光が収まり目を開けた月詠の網膜に映し出される戦域情報には「アンノウン」と表示された光点か一つが進路上に表示され、次の瞬間……

 

「こっ、これはっ!?」

 

 驚く月詠の網膜にはもの凄い数のアンノウンの反応が多数出現。正面を見るとまるで戦国時代の鎧武者のような姿をした戦術機が一機、腰の刀に左手を添えて待ち構えている姿が見え、さらに盾を構えた何百という同じ形をした戦術機らしき機体が隊列を組んで立っていた。

 

(あっ、あれは一体…何処となくマーク達の機体に似ている?)

 

「おお…なんと美しい…」

 

 目の前に立ち塞がる鎧武者の姿に見惚れる斑鳩だったが、アンノウンの一機か鎧武者の傍まで近づき、地面に膝を付けて手にしていた槍を鎧武者に差し出すと、鎧武者は右手で槍を受け取り、左手に持ち替えて構えると突然もの凄いスピードで斯衛大隊に向かって行き、他のアンノウン部隊も手にした武器を構えて走り出してきた。

 

「!?こっちに向かってくる!?」

 

「全機跳躍っ!!飛び越えるのだ!!」

 

 斑鳩機率いる斯衛大隊は高度を上げ押し寄せてくる鎧武者とアンノウンの大群をやり過ごすと、鎧武者は瑞鶴など眼中に無いかのように追撃を仕掛けてくるBETAを薙ぎ払いながら突撃し、アンノウン軍も手にした武器でBETAに向けて攻撃を開始した。

 

「あれは……味方なのか?」

 

「閣下、この間に琵琶湖へと向かいましょう!」

 

 鎧武者を味方だと判断した月詠は斑鳩にこのまま琵琶湖へと向かうように進言し、第16斯衛大隊は速度を維持したまま琵琶湖へと向かった。

 

 

 第16斯衛大隊が遭遇した謎の鎧武者……それは争いや力こそが人類を強くし、更なる高みへと人類を導いていき、それこそが自分の宿命と考えていた【武者ガンダム】とその部下の【RGM-79ジム】だった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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