マブラヴ・オルタジェネレーション   作:京橋

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 今回の戦闘BGMはぜひ【鉄のララバイ】を脳内再生しながらお読みください。







第三話 介入!京都防衛線

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 異星起源種である【BETA】の猛攻を受けていた日本に向かったネェル・アーガマ改は、状況を調べる為にラナロウと自身の一部をコピーしたアプロディアの乗ったガーベラ・テトラ改を先行出撃させた。

 

 その戦場の中、嵐山仮設補給基地から出撃した【篁 唯依】【甲斐 志摩子】【石見 安芸】【能登 和泉】【山城 上総】の五人と他六人の新米衛士らは、赤を纏う斯衛部隊の【如月 佳織】中隊長と共に防衛線を食い破ってきたBETAの迎撃に出撃していた。

 

 

 

 

 

 

 

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 ここでネェル・アーガマ改から出撃していたラナロウが嵐山小隊と合流する少し前に時を戻そう……

 

ラナロウはアプロディアと共に日本へ向けて暫くの間、海上を進んでいた。その時、アプロディアが突然声を上げてラナロウに警告してきた。

 

 

『前方より高エネルギー接近、回避してください』

 

「おっと!!」

 

 

 長年の経験からか、ラナロウはアプロディアの声が聞こえたと同時に操縦桿を動かしてガーベラ改をバレルロールさせて回避すると白銀のレーザーがすぐ真横を通り過ぎ、さらに次々とレーザーがガーベラ改に襲い掛かってきた。

 

 ラナロウは背中と肩の大型スラスターで機体を上下左右に動かしながらレーザーを回避し続け、海上から大陸に到着した時に山間に機体を着地させてシールドを構えてレーザーに警戒する。

 

しかし、あれだけ海上を移動していた際に飛んできたレーザーが陸地に付いた瞬間、全く飛んでこなくなった。

 

 

「ん?……レーザーが飛んでこなくなったぞ?」

 

『どうやら先程のレーザーを放ってきたモノは、ある程度の高度を取ると自動的に攻撃してくるみたいですね』

 

 

 ラナロウは着地させたガーベラ改を徒歩で移動させながらレーザーに対する疑問を口にすると、アプロディアは返答を返し、ラナロウに機体のスラスターの残りの推進残量や冷却状況などを報告する。

 

彼女の報告を聞きながらラナロウは機体のカメラアイを動かしながら周囲の状況を確認しながら進行を開始した。

 

 暫く徒歩で移動させながら視界が開けている場所まで来た時、コクピット内のモニターに映し出された光景にラナロウは絶句した。

 

 

「なっ、何だ…ありゃあ?」

 

 

 ラナロウの目に入ったのは六脚の兜を被ったような同じ姿をした気味の悪い生物らしき物体が、まるで津波のように大地を蹂躙していた。しかもカメラアイを別の方向に向けると、その後ろからは四脚の人間の頭みたいなモノの付いた蠍の姿をしたような生物が続いていた。

 

 

「見るからに気味がワリィな……」

 

『ラナロウ、あれを見てください』

 

 

 モニターに映る奇妙な生物の見た目が余りにも気味が悪く、恐らくアプロディアを通じて状況を見ているネェル・アーガマ改のクルーも気分を害しているかもしれないとラナロウは思っていると、アプロディアが示した方向にカメラを向けた。

 

そこには人型のロボット数十体が手にしている銃を向かってくる生物の群れに向けて砲撃をしていた。

 

 しかし前面に展開している兜を付けた生物にはダメージを与えているとは言えず、徐々に距離を詰められて次々と引き倒されて爆散していく。

 

その中には突進してくる生物を飛び越えてやり過ごす機体もあったが、その後に続く四脚の生物の横殴りの攻撃や、先のレーザー攻撃を受けて次々とやられていく。

 

 

「あの機体…バルバトスとの戦いの時に出てきた奴に似てねぇか?」

 

『その情報はゼノン艦長から頂いています。確かに類似点が多いようですが、こちらの方は装甲が厚い仕様なのでしょうか?』

 

「だが、あれじゃあ撤退もままならないな……こうなったら!!」

 

 

 目の前で次々にやられていく人型の機体の姿に、ラナロウは操縦桿を握ってガーベラ改を走らせて跳躍と同時にブースターを点火させると、謎の生物との戦場へと介入していった。

 

 

 

 

 

 

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 九州から日本本土へと侵攻を開始したBETAに対し、日本帝国軍、国連軍、在日米軍の三軍は侵攻を阻止しようと共同線を張っていた。

 

 しかし現在日本帝国陸軍が使用している77式戦術歩行戦闘機【撃震】ではBETAの侵攻を阻止する事が出来ず、徐々に防衛線が破られようとしていた。

 

 

「くそっ!!このままじゃ……」

 

「全機怯むな!!この後ろには帝都があるんだぞ!!」

 

 

 数体の撃震に搭乗している帝国軍の一人の衛士がBETAの侵攻を止めることができないのかと口にすると、部隊長であろう衛士が喝を入れてなんとしても止めようと必死になる。しかしBETAの勢いは止まることなく、次々とBETAに取り囲まれ、分断されてしまった部隊の仲間達がやられていく。

 

 さすがの部隊長も「このままでは……」と諦めかけていた時、一体の要撃級が前腕衝角を振りかぶって攻撃してきた。部隊長の撃震は攻撃に対し左手に装備していた92式多目的追加装甲で辛うじて防御できたが、攻撃の衝撃で機体のバランスを崩して転倒してしまった。

 

 そしてさらなる追撃をしようと再び要撃級が前腕衝角を振り上げてトドメの一撃を加えようとしていた。

 

 

 網膜投影システムで目の前に自分を殺そうとしている要撃級の姿に、部隊長は「もうダメだ……」と諦めかけた瞬間だった。

 

 突然要撃級が力無く倒れ、部隊長は生き残った仲間が援護してくれたのかと思っていると、倒れた要撃級の背後に一つ目の真紅の戦術機がこちらを見下ろしていた。

 

 

「なっ、何だ?……この戦術機は……」

 

 

 目の前にいる戦術機らしき機体はモノアイを光らせ別の方向を向くと、背中にある跳躍ユニットらしきモノから火が出て機体を浮かせると、何処かへ飛び去っていってしまった。

 

 

「あの戦術機は……一体……」

 

「隊長!ご無事でしたか!!?」

 

「お前達、無事だったのか……!?」

 

 

 部隊長はレーダーに映る生き残った仲間の信号に安堵しながらも、彼らの通信を聞きながら撃震を起こして周囲を見渡すと、そこには信じられない光景が広がっていた。

 

 

「こ……これは……」

 

 

 部隊長の目に入ったのは、あれだけ大量にいたBETAが全て死んでいる光景だった。しかも倒されたBETAの肉体を調べてみると弾痕の跡が残ってはいたが、36mm弾でも貫通しない筈の突撃級の前面装甲殻にも弾痕の跡があり貫通していた。

 

 

「そんな……突撃級の前面装甲殻をも貫通できる武器だなんて……」

 

「我々が来た時、あの赤い戦術機が空から現れて、手にしていたライフルを乱射しながらBETAを撃破していったんです。しかも……」

 

「しかも……何だ!?」

 

「あの赤い戦術機は……光線級のレーザー攻撃を回避していたんです」

 

 

 全周警戒しながら倒されたBETAの残骸を調べながら他の衛士が見た真紅の戦術機の戦い振りを聞いていた部隊長は言葉を失った。

 

「とっ、とにかく一時後退するぞ!!BETAの後続がやってくる可能性があるからな」

 

『了解ッ!!』

 

 

 九死に一生を得た部隊長は「あの赤い戦術機は何者だったのか」と考えつつも、一度補給の為に戻ると指示を出して、命令を受けた数機の撃震は光線級の攻撃に注意しつつも跳躍ユニットを起動させて後方の補給基地に向けて撤退していった。

 

 

 

 

 

 

 

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 ラナロウがBETAの群れに襲われている撃震の部隊を助けた後、飛行を続けながらBETAの姿を確認すると手にしたビームマシンガンで攻撃しながら撃破していくが、如何せん数が多く、エネルギーの関係上、全部を相手に出来ない。

 

 さらに敵の放ってくるレーザー攻撃を防ぐ為に持っていたストライクのシールドも、何度も防いでくれたが、何度も攻撃を受けたせいかシールドも良くてあと一撃防げるかどうかと怪しい状態になってしまっていた。

 

 

「アプロディア、ゼノンからは何か言ってきたか?」

 

『今のところは……ですが、情報は順次送信しているので何かあれば私がお伝えします。それとあの機体の相手と通信できるように周波数を合わせようとしていますが、相手の周波数を見つける為に少々時間が掛かかっています』

 

「分かった……ってあれは」

 

 

 ラナロウはアプロディアに現在の状況をネェル・アーガマ改に送信し続けていることを知るとガーベラ改の進行方向に先程助けた機体によく似た白い機体がBETAに攻撃を仕掛けているのが見えた。

 

 だが、一機だけ明らかに高度が高すぎると思ったラナロウは直感的にガーベラ改のスラスターをフル加速させ、高速で白い機体の前にシールドを構えて割り込むと、シールドにレーザー攻撃が直撃する。

 

 

『シールド強度限界です!すぐに破棄してください!!』

 

「ちぃっ!!」

 

 

 アプロディアの警告にラナロウはシールドを手放して白い機体を押し出して無理矢理回避させようとしたが、シールドを貫通してきたレーザーが白い機体の左腕に直撃してしまい、爆散してしまった。

 

 

 

 

 

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 時を戻し、志摩子の乗る瑞鶴を光線級のレーザー攻撃からギリギリのところで防いだラナロウの駆るガーベラ・テトラ改は志摩子機を支えながら共に地上に着地した。

 

 

「あっ、あのっ!助けてくれてありがとうございました」

 

『気にするな…っと、どうやら通信できるようになったみたいだな』

 

 

 左腕部を失ったが自分を助けてくれた真紅の機体にお礼を言う志摩子に、アプロディアが相手の通信周波数を合わせてくれたのかラナロウは返事を返す。

 

 

「あっ、あの戦術機は……何っ!?」

 

「あんな戦術機、見たことがありませんわ」

 

 

 志摩子機の隣にいる真紅の謎の戦術機らしき機体に驚きの声を上げる唯依と上総だったが、着地地点が不味い事に突撃級の通り道であった為、数体の突撃級が志摩子機と真紅の戦術機に襲い掛かろうとしていた。

 

 

「あっ、突撃級が!」

 

「やらせないよ!!」

 

 

 和泉と安芸は今に轢き殺されようとしている志摩子機を助けようと87式突撃砲を構え後ろから攻撃しようとした時だった。真紅の謎の戦術機が右腕に持っているライフルを構えた瞬間、砲身から黄色の閃光が放たれ、突撃級を次々と撃破してしまった。

 

 

「えっ!?」

 

「嘘だろ……突撃級を正面から撃破しちまった……」

 

 

 36mm弾でも貫通できない前面装甲殻を持っている突撃級をあっという間に撃破してしまった真紅の戦術機の戦闘力に和泉と安芸は唖然としてしまった。

 

 

「おっ、おいっ!そこの所属不明機!!」

 

『何だよ?』

 

「お前は何者だ!!それにその戦術機は一体………」

 

『そんなこと気にしている場合か……と言いたいが、一応俺は味方だ。俺の名前はラナロウ、ラナロウ・シェイドだ。それより、あのバケモンどもがこっちに向かってきてるぞ』

 

 

 如月はラナロウに通信を繋いで問い詰めてくるが、ラナロウは問いに対して自分の名を名乗り、一度嵐山中隊を見ると向かってくる要撃級の迎撃に行ってしまった。

 

 

「中隊長、どうしますか?」

 

『分からん……だがBETAを叩いているところを見ると味方と見ていいと思うが…ともかく甲斐機!お前は戦闘続行可能か!?』

 

「はっ、はい。何とか……」

 

『よしっ!能登機は甲斐機のフォローをしてやれ!』

 

「了解ッ!」

 

『残りは各個撃破しつつ第三小隊を援護に回れ。光線級は敵の懐に入れば攻撃してこない筈だが、周りには要撃級がいる!警戒を怠るな!!』

 

 

 真紅の戦術機に乗っている者が何者であろうと、BETAを倒してくれているのであれば味方だと判断した如月は甲斐機のフォローを能登機に任せて、光線級の殲滅担当の第三小隊の援護に向かって駆け出していった。

 

 BETA群の第一波に対して嵐山中隊はラナロウのガーベラ・テトラ改の介入によって優位に立っていた。先鋒である突撃級の殆どはラナロウによって撃破され、その後も遊撃行動をとりながらBETAを駆逐していったからだ。

 

 ラナロウの駆るガーベラ改は飛行を続けながらも光線級の放ってきたレーザーを左右にバレルロールを繰り返しながら回避し、ビームマシンガンで要撃級の群れに一斉射しながら次々と撃破していく。

 

 ところが何体か倒した時、突然コクピット内に警告音が鳴り響いた。

 

 

『ラナロウ、ビームマシンガンの砲身が加熱、強制冷却に入りました。再使用可能までの時間は約35秒後』

 

「くっ、了解だ」

 

 

 ビームマシンガンが冷却の為に一時使用できなくなったことに舌打ちしつつも、ライフルを腰に納め、代わりにビームサーベルを取り出したガーベラ改は、こちらを取り囲もうとしている要撃級に突撃していく。

 

 

「目標の光線級は!?」

 

『右前方1200、中継局の手前!!』

 

「……見えた、ロック!!」

 

『きゃあっ!!』

 

 

 上総は最優先目標である光線級を撃破しようとした時、右から接近警告シグナルが表示され、そちらに機体を向けると、寮機が要撃級の攻撃で盾を弾かれ、反撃を躊躇している隙を突かれて再度攻撃を受けそうになっていた。

 

 だが、そこへガーベラ改の両腕に内蔵されている110㎜機関砲が火を吹き、要撃級の身体を貫き、殺されかけていた寮機は事なきを得た。

 

『攻撃を躊躇してんじゃねぇっ!!そんなんじゃ死ぬぞっ!!』

 

「はっ、はい!!」

 

 

 ラナロウの怒鳴り声に、まだ衛士になったばかりの彼女らは訓練兵の時の教官に怒られた時のように返事を返してしまった。

 

寮機を救ったラナロウは再び移動を開始し、向かってくる要撃級の前腕衝角の攻撃をジャンプで回避すると、ビームサーベルの刀身を伸ばして要撃級の左前腕衝角から頭部にかけて真っ二つに切り裂いた。

 

 

「なっ!?要撃級の腕ごと切り裂いた!?」

 

 

 ロックオンした光線級を片付けた上総が見たのは、黄色に輝く剣で要撃級を真っ二つにしたガーベラ改の姿だった。

 

戦術機の装備されている【74式近接戦闘長刀】でBETAの肉体を斬る事は可能だが、突撃級の前面装甲殻並の強度を持つ前腕衝角を斬るなんて事は不可能である。故にラナロウのやった行動に上総は驚きを隠せずにいた。

 

 BETA相手に奮闘するラナロウであったが、長時間戦場で戦えるように機体のエネルギーの消費を抑える工夫として、ビームマシンガンを使用しない時はビームサーベルの刀身を出来る限り最小限にし、斬りかかる瞬間に出力を上げて斬り、少し離れた敵に対しては110ミリ機関砲で対処していた。

 

 嵐山中隊がBETA相手に戦闘を開始して8分が経過した。対BETA戦において初陣を飾る衛士の平均生存時間は約8分間であり、彼女達は訓練を受けていた頃に教官から“死の8分”という言葉を教えられ、死の8分を超えてこそ一人前の衛士になれると教え込まれていた。

 

 

「ハァ、ハァ……やった、やったよ!唯依っ!!」

 

「安芸?」

 

 

 そのせいか、唯依がリーダーの第二小隊のメンバーの安芸の瑞鶴は要撃級の返り血を浴びながら、長刀を手に戦場で棒立ちして唯依機の瑞鶴の方に振り返った。

 

 

「死の8分を乗り切った!!あはははっ、これで私は………」

 

 

 衛士としての最大の試練を乗り切れたことに大笑いする安芸だったが、その直後に一気に血の気が引く出来事が起きた。安芸機の目の前に穴だらけになった突撃級が「ズズン」と音を立てて倒れていたのだ。

 

 

「う…あ……」

 

『テメェッ!!戦場で無駄口叩いて突っ立てんじゃねぇっ!!』

 

 

 ラナロウの声が響き、安芸機の近くにガーベラ改が着地した。実は安芸が死の8分を乗り越えたと笑っていた時、突撃級が安芸機に向かって駆け出していたのをラナロウが気づき、冷却が完了したと言うアプロディアの声を聞いてビームサーベルからビームマシンガンに持ち替え、左腕の110mm機関砲とビームマシンガンを構えて飛び上がると一斉射して突撃級を穴だらけにして安芸機が轢かれる前に倒す事が出来た。

 

 安芸自身の命があるのは決して己だけの実力だけの戦果ではなく、背中を預けられる仲間がいたからこそ死の8分を乗り越える事が出来たのだ。

 

 その中でも唯依は譜代武家である篁家出身である責任感であろうか、仲間のフォローをしながら戦闘を行っていた。安芸自身も自機の突撃砲の弾切れを起こし、弾倉交換も出来ないまま要撃級にやられそうになった時にも唯依が助けてくれた。

 

 初陣の筈の唯依が自身以外の者にも気を使うなど並の衛士ではできない事だ。だが、そういった行いが原因なのか安芸に必要以上の高揚感を与えてしまい、戦場で棒立ちなどという暴挙に出てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、第三小隊は第一、第二小隊とラナロウが乗るガーベラ・テトラ改の活躍により安全に光線級の殲滅に専念していた。

 

 

「撃たせるものかっ!!」

 

 

 上総がロックしている光線級はレーザーを放とうとしていたが、そこを上総機が手にしている命中精度が向上している【87式支援突撃砲】で遥か先の光線級を仕留めた。そして寮機の瑞鶴も光線級を一匹仕留めるが、左側の山にもう一匹いることを聞いた上総は左方向へと機体を向けた時だった。

 

 

「えっ!?新手!?」

 

 

 モニター越しに映し出された山を駆け抜ける突撃級達の姿が映った。

 

 

「どうなっている……後続集団の報告は受けていないぞ!CP(コマンドポスト)ッ!聞こえるか!?CP応答せよ!!」

 

 

 如月は嵐山仮設補給基地に連絡を試みるが、補給基地からは何も返事が返ってこず、ノイズ音しか聞こえてこなかった。

 

 

 この時、既に別ルートで侵攻してきたBETAによって嵐山仮設補給基地は陥落してしまっていたことは知る由もなかった。

 

 

「こんな状況で……いや、彼がいれば……」

 

「おい!応答先からの返事は来たのか?」

 

「いや……何も返事が無い…」

 

「なるほど…なら早々にこの場から撤退した方が良いな」

 

 

 CPとの連絡がつかず、自分以外の衛士はまだヒヨッコばかり…こんな状況でどうすればと考えていると如月機にガーベラ改が近づき、でかい態度で尋ねてくるラナロウに一瞬だけ不満な表情になるが、今まで自分が気の回れない場面でも何度も部下を護ってくれ、自分自身も助けてくれた。

 

 そんな相手に無礼な態度で返すわけにもいかず、CPとの連絡が取れないと教えると、ラナロウは長年の戦闘経験から後方との連絡が取れない以上、この場に留まる理由は無いと判断し、撤退した方が良いと如月に伝えた。

 

 撤退を進言してきたラナロウに中隊長は一瞬反論しようとしたが、一度頭を冷やして冷静に状況を確認するためにレーダーを見た。

 

 

「確かに後方との連絡が取れず、こちらも補給無しではいずれ弾も切れて全滅してしまう……」

 

「では?」

 

「全小隊に告ぐ!直ちにこの戦域を離脱、第八防衛ラインまで後退せよっ!!」

 

『了解』

 

 

 補給も見込めない状況では、このまま戦い続けても無意味であると判断した如月は、全小隊に後退を指示した。如月の瑞鶴F型が跳躍ユニットを起動させて移動を開始すると他の瑞鶴も後に続く。

 

 すると、ラナロウのガーベラ・テトラ改も大型スラスターを起動させて嵐山中隊の後を追うように如月機の瑞鶴に並んだ。

 

 

「ラナロウ殿?」

 

「俺もついて行くぜ、お前らだけじゃ途中でやられそうだしな」

 

 

 自分達の後について来るガーベラ改の行動が予想外だったのか、如月は少し驚いたが、自分たちの事を気にかけてくれていることに感謝しつつ行動を共にする事になった。

 

 

「……これでいいのか、アプロディア?」

 

『はい。今はこの世界の現状を確認と補給できる軍事施設まで行くのが最優先です。問題なくいければいいのですが……』

 

「俺としては一度共闘した相手だ。このまま死なれたりしたら後味がワリィしな」

 

 

 ガーベラ改のコクピット内でラナロウは、このまま嵐山中隊の後について行けばネェル・アーガマ改の補給などの出来る軍事施設などに行ける筈…というアプロディアの提案を聞いて彼女達と行動を共にする事にしたのだ。

 

 そしてラナロウ自身も偶然とは言え、共に戦場で戦った者達をこのままにしたら後味が悪くなると考えていた。

 

 

 

 

 

 

__________

 

 

 

 

 

 

 その頃…日本近海まで近づいていたネェル・アーガマ改は出来るだけ山沿いを飛行しつつ移動し、カタパルトデッキのハッチが開くと、そこからMSが数機発進しようとしていた。

 

 

「各機、聞いての通りだが、発進したら出来るだけ低空飛行でラナロウと合流を目指すぞ!!」

 

『了解ッ!!』

 

 

 マークからの通信を聞いたエリスたちは返事を返し、マークの乗る機体が発進準備完了の通信が耳に届いた。

 

 

「久しぶりの機体だ…頼んだぞ!マーク・ギルダー、ユニコーンガンダム…出るっ!!」

 

「初めての機体だけど、ちゃんと乗りこなしてみせる!エリス・クロード、バンシィ…行きますっ!!」

 

「本来ならこのような機体は性に合わんが、今回は仕方あるまいな!エルフリーデ・シュツル、リゼル…参るっ!!」

 

「あくまで今回は援護と支援…無茶をしないように気をつけなきゃ!レイチェル・ランサム、デルタプラス…出ますっ!!」

 

 

 カタパルトから発進したユニコーンガンダムとバンシィは、その後に発進したリゼルとデルタプラスが飛行形態に変形した上に乗り、出来るだけ低空飛行でラナロウと共にいるアプロディアの分身の信号地点を目指して出撃していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








 ラナロウには鉄のララバイがよく似合う。
 ちなみにマークには種運命のスティングのキャラソン、エルフリーデにはフェイトOP2に設定していますw



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