マブラヴ・オルタジェネレーション   作:京橋

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 どうも、随分お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

 毎日の仕事に書く時間がなく、二ヶ月も放置してしまいました。


 感想に応援のメッセージを送ってくださった皆さん、感謝感激です!





第十七話 本郷の過去、桜吹雪の奇跡

 

 

 

 

 日本帝国と米国の共同で行われることになったXFJ計画。その計画の中で開発計画として米国から派遣されたユウヤ・ブリッジス少尉とヴィンセント・ローウェル軍曹の二人を乗せた輸送機でアラスカ、ユーコン基地を目指して飛行していた。

 

 そこへ広報任務の一環としてアルゴス試験小隊の【タリサ・マナンダル】少尉、【ヴァレリオ・ジアコーザ】少尉、【ステラ・ブレーメル】少尉の三人は、ソ連側の紅の姉妹こと【イーニァ・シェチナ】少尉と【クリスカ・ビャーチェノア】少尉との合同でアクティヴイーグルとチェルミナートルの二機で任務に就いていた。

 

 しかし、クリスカとイーニァの二人に握手を求めたタリサに対し、クリスカは馴れ合う気はない、任務だから仕方なく、という明らかに拒絶の意志をむき出しにして彼女の行為を無下にしたのだ。

 

 その事に腹を立てたタリサは、悪戯心でクリスカとイーニァの乗るチェルミナートルに向けてロックオンして二人が慌てふためく姿を見ようと突撃砲を向けた。

 

 だが、その行為が彼女らの怒りを買ってしまったのか、逆に後ろを取られロックオンされてしまう。

 

 いくら逃げ回ってもしつこく追い掛け回されてしまうタリサは、得意の失速域機動ククリナイフでチェルミナートルの背後を取ろうとした。

 

しかしそれでも再びチェルミナートルに背後を取られ、手にしていた突撃砲を背後から撃たれたアクティヴイーグルは、背部のモジュールを破壊された衝撃で気を失ってしまい、機体は徐々に地上に向かって落下してしまった。

 

 同行していたヴァレリオとステラは急いで救助に向かうが、元々広報任務でタリサとの距離を取ってしまっており、さらに任務領空圏外に行ってしまっていた為、跳躍ユニットをフルブーストさせても間に合わない……

 

 そんな時だった。演習場からユーコン基地へと帰投中だった本郷 彰は吹雪・弐式のバックパックであるエールストライカーの高出力スラスターをフルブーストさせてヴァレリオとステラのイーグルを追い抜き、さらにユウヤとヴィンセントが乗っている輸送機をも追い越し、地上に向かって落下中のアクティヴイーグルの下に回り込んだ。

 

 そしてアクティヴイーグルを支えるとエールのスラスターの出力を最大にして地上に向け放出。

 

 従来の跳躍ユニットより高性能のエールのスラスターによりタリサの乗るアクティヴイーグルは墜落するという最悪の事態になることなく無事に地上に着陸できたが、吹雪・弐式に乗っていた本郷はスラスターのフルブーストと地上に着陸する際のGによって気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 広報任務での出来事から数時間後……ユーコン基地のとある一室…そこではイブラヒムと唯依が広報任務での様子を映像として見ていた。

 

 広報任務でのチェルミナートルによるアクティヴイーグルへの攻撃は“広報任務中の暴発事故”として処理され、タリサの悪戯心で起こった出来事は終わった。

 

 映像を見ていた唯依にイブラヒムは事故処理としたのは“国連の顔を立てる為”の建前と言う。

 

各国から集められた故の衛士同士のぶつかり合いなども後を絶たない。そこでユーコン基地ではこの手の言い訳には様々なバリエーションに事欠いていない……とイブラヒムは笑いながら話す。

 

「それにしてもだが、篁中尉と一緒に来た本郷少尉は相当肝が据わっているな」

 

「ええ、私も驚いています」

 

 映像は攻撃を受けたアクティヴイーグルに通常装備の戦術機ではありえない速度で追いつき、アクティヴイーグルを受け止めた吹雪・弐式が映し出されていた。

 

「しかし、今回のテストであるエールと言ったか…この装備は現行の跳躍ユニットよりも航続距離が長いようだな」

 

 エールの性能とテストパイロットである本郷の行動力に驚くイブラヒム。

 

何せ本郷が行なっていたエールのテスト場であった演習場はユーコン基地より離れており、タリサ達が広報任務を行なっていた地点とはちょうど反対方向だったのだ。

 

そこから帰投中であったにもかかわらず、フルブーストによる強烈なGに耐えながらステラとヴァレリオのF-15を追い抜き、タリサを無事救出に成功したのだから。

 

「それで少尉は大丈夫なのでしょうか?」

 

「彼は今、医務室で休んでもらっている。特に命に別状はないとの報告を受けているから、安心してほしい」

 

 同じ日本人として本郷の心配をする唯依の問いに、イブラヒムは「本郷は医務室で休ませている」と説明する。

 

 その言葉を聞いた唯依はホッと安堵する。

 

「ですが、あのアクティヴイーグルも貴重な実証実験機と聞いているんですが……」

 

「ここでは“実戦”とそこで得られるデータが全てなのだ。日本では違うのかね?」

 

先の広報任務での騒動で貴重な試験機が小破した事に問題ないのかと話す唯依にイブラヒムは問題ないと話す。

 

ソ連側もこちら側も何も苦情などもなく大人しくしているのは、東西陣営がお互いに戦術機のデータを得られたことにより、必要以上の追及などは行わないのがこのユーコン基地での暗黙のルールみたいなものになっていると唯依は認識した。

 

「さて、そろそろブリーフィングの時間だ。跳ねっ返りどもに新人が早くなじめるようにしてやらねばな……ああ、篁中尉。新人の紹介が終わった後、模擬線を行う予定でいるから、よければ見学に来ても構わないぞ」

 

 そう言いながらイブラヒムは管制室に使う部屋のメモを唯依に手渡し立ち上がると、ユウヤ・ブリッジスをアルゴス小隊のメンバーに紹介するために彼らのいるブリーフィングルームへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イブラヒムと別れた唯依は本郷のいる医務室へと足を向けていた。

 

 医務室の前まで来ると一旦ノックをしてみるが返事がなく、彼はまだ眠っているのだろうかと唯依はドアノブに手をかけて静かに室内へと入って行った。

 

 医務室のベッドには本郷が一定の呼吸をしながら眠っており、その姿を見た唯依は安心しながらもベッドへと近づいて行った。

 

「少尉、また随分と無茶をしたな……」

 

 本郷を起こさないように一言つぶやく唯依。本郷の寝顔を見ながら巌谷中佐が前に本郷について話していた事を思い出していた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは本郷が吹雪・弐式の開発衛士として巌谷中佐から紹介された時まで遡る………

 

本郷と共にユーコン基地へと向かう輸送機に乗り込む準備をしていた唯依は自室で荷造りをしていた。

 

 そんな時、自室の扉がノックされ、唯依は扉を開けると巌谷中佐が立っていた。

 

「いっ、巌谷中佐!?どうしてここに?」

 

「いや…唯依ちゃんに伝えておくことがあってな。時間は良いかい?」

 

 巌谷中佐の突然の来訪に驚いた唯依だったが、輸送機の出発時間までまだ時間があったため、巌谷中佐を部屋に招き入れてお茶を用意する。

 

「唯依ちゃん、実は本郷について話しておくことがあるんだ」

 

「少尉の事……ですか?」

 

「うむ……本郷少尉は帝国軍第28部隊より以前に所属していた部隊があったんだ。……“桜吹雪の奇跡”という言葉を耳にしたことは?」

 

「えっ!?それって私が訓練学校で学んでいた頃の話ですよね?」

 

 彼が唯依に語りだしたのは今回同行する本郷 彰少尉に関しての話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 1998年……ちょうど唯依が帝国斯衛軍衛士養成学校に入学して一年後、山城、志摩子、安芸、和泉の四人と共に衛士の心得と戦術機による実機訓練に明け暮れていた頃…当時、衛士になりたての本郷は九州方面防衛の帝国陸軍戦術機部隊に所属していた。

 

 その年の1998年7月7日。マーク達ジェネレーションズがこの世界にやって来る少し前の頃、朝鮮半島を制圧したBETA群が日本列島に上陸を開始。この時、日本政府はユーラシア大陸からのBETA侵攻を予想していたものより半年も早かったことで不意を突かれた帝国軍だったが、対馬島と九州沿岸部に上陸したBETAを一時的に撃退することに成功した。

 

 この時、本郷は九州方面軍に試験的に搬入された試作型吹雪の実戦データの収集を目的に組織された桜を部隊エンブレムにしていた部隊【桜吹雪部隊】に所属していた。

 

だが、唯依も知っての通り、九州方面軍は大型台風と避難民の遅れにより再上陸したBETAによって壊滅、本州進攻の足掛かりになってしまった。(この時、彼女の同期である和泉の彼氏が亡くなってしまった。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1998年7月9日……本郷達、桜吹雪隊は避難民と共に九州方面軍の撤退を援護するために奮闘していたが、この時、九州には台風が上陸によって天候が悪化、水上艦隊からの支援が殆どなく、陸上部隊は次々とBETAにやられていってしまった。

 

そんな中、白と青のカラーリングの吹雪に搭乗している本郷は、部隊の隊長を務めていた【桜 美由紀】中尉と、同期であり、本土から共に派遣されてきた【七瀬 凛】少尉と共に撤退していた。

 

「本郷、七瀬、大丈夫か?」

 

「自分は大丈夫ですが、七瀬少尉の吹雪が危険な状態です」

 

「わっ、私は大丈夫よ!まだ戦えるわ!!」

 

 白と桜色にカラーリングされた吹雪に搭乗している桜中尉の通信に本郷は傍らにいる白と翠色の吹雪の状態を報告するが、搭乗者の七瀬は大丈夫だと強がって反発する。

 

 しかし、七瀬の乗る吹雪は右腕がBETAの攻撃で丸々無くなり、跳躍ユニットも左側の調子が良くなく、いつ暴発してもおかしくない満身創痍の状態だった。

 

 その時、本郷の耳に警報が鳴り響き、網膜センサーのレーダーで確認してみる。すると、別方向から赤い光点が波のように押し寄せてきた多数のBETAが接近中の表示がされていた。

 

「中尉!別方向から……」

 

「こちらでも確認している。このままでは撤退中の帝国軍が真横から襲撃を受けてしまうな……」

 

 本郷の声に桜中尉は状況を確認する。こちらは九州地方の避難民を援護しながら撤退している状態…そして、あと数分もすれば撤退中の帝国軍も避難民も巻き込まれて全滅してしまう。

 

 そんな絶望的な状況の中、桜中尉は驚くべき行動に出た。

 

「本郷、七瀬少尉を連れて帝国軍と合流しろ。私は再編された帝国軍の戦術機部隊と共に進行中のBETAの足止めに向かう」

 

「はっ?しかし中尉だけでは……」

 

「心配いらん。それよりも今回の吹雪の実戦データを何としても帝国軍の上層部に届けなければならない……吹雪はただの練習機だと言われているが、実戦でも十分対応できる機体尾であると証明させるために……だから、先に死んで逝った部下たちの為にも、お前たちは何としても生き残れ!!」

 

 桜中尉は本郷と七瀬に“絶対に生き残れ”と告げるとレーダーに映る帝国軍の戦術機部隊の光点を追うように移動していってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、桜中尉は生き延びた帝国軍の撃震と一部使用されていた陽炎の混成戦術機部隊と共に帝国軍と避難民の退避の時間稼ぎをするために迫りくるBETAへと決死の防衛戦へと向かった。

 

 装備の補給も残り少なく、機体も満足ではない状態での出撃はハッキリ言って無謀ともいえるものだったが、帝国軍の衛士の心には本州におられる帝を護るという信念の下、例えここで自分たちが死んだとしても、後に本州への仲間がここを突破したBETAを日本から追い出してくれると信じ、少しでも多くのBETAを駆逐してやろうと、戦術機に乗る衛士らは魂の声を上げながらBETAを倒し、散っていく……

 

 激戦区となった戦場で桜中尉の乗る吹雪も突撃砲で攻撃しながら長刀で要撃級や戦車級を駆逐していた。しかし機体ステータスに表示されているのはイエローカラーが三割、それ以外はレッドカラーになっており、もはや戦闘を継続し続けるのは困難な状態になってしまっていた。

 

 それでも第三世代試作機としての意地を見せつけるかのように匍匐飛行を繰り返しながらBETAを撃破していく。だが、突撃砲の弾数も底が尽きはじめ、要撃級の陰に隠れていた戦車級が背後から飛び込んできたのを振り返りざまに突撃砲で攻撃して撃破した際に弾が切れてしまった。

 

「くっ、もはや残っているのはこの長刀だけになったか……」

 

 周囲がBETAの死骸で一杯になっている場所の中心で桜中尉は返り血で真っ赤になっている長刀を振って血を弾き飛ばし、弾切れを起こしてしまった突撃砲を捨てた。そして気づけばレーダーに映っている味方のマーカーが殆ど消え、味方のいない孤立無援の状態になってしまっていた。

 

「ふっ、皆、逝ってしまったか……本来なら、ここで自決するという手もあるが……」

 

 弾も底を尽き、自機の状態もいつ機能停止してもおかしくない……そしてBETAが戦場でまず優先して襲い掛かる対象である戦術機が一体しかいないこの場所ではBETAにとって吹雪は恰好のエサ……

 

 もしも気の弱い衛士であるならば、ここで自決という手段を取るが、桜中尉はそんな甘ったれたことをしない……

 

「私は帝都を……帝を護る帝国軍の衛士だ!!ここで自決を選ぶのは弱者の愚行……私は弱者ではない!一人の衛士として、貴様らを一匹でも多く地獄に叩き落としてやる!!」

 

 手にした長刀を構え直す桜中尉の吹雪は、迫り来るBETAに向かって雄叫びを上げながら駆け出していった。

 

 だが、突然レーダーに味方のマーカーと黄色のアンノウンのマーカーが後ろから急接近し、吹雪の頭上を飛び越え、BETAへの攻撃を開始した二体の戦術機の姿に桜中尉は足を止めてしまった。

 

 そこにいたのは本郷の登場している吹雪と、白い盾と、金色の髭を持った見知らぬ鎧武者の姿をした戦術機がいたのだ。

 

『中尉、ご無事でありますか!?』

 

「本郷……何故来た!?っと、それより一緒にいるあの機体は何だ!?」

 

『申し遅れた。拙者、白の武士団に属している【侶蘭】と申します。そしてこの機体は【武者ターンエー】。本郷殿の頼みにより、助太刀に参った!!』

 

 両手に突撃砲を持った本郷の吹雪と武者ターンエーと名乗る鎧武者の姿をした戦術機の出現に驚く桜中尉だったが、BETAとの戦場で余所見をするなど自殺行為である。

 

「中尉!武器をっ!!」

 

「ふふっ…この馬鹿が。だが、助かったぞ」

 

 武者ターンエーが要撃級を相手にしている隙に長刀一本しかない桜中尉の吹雪に本郷は背部の兵装担架に装備されている突撃砲と弾倉三つを差し出す。桜中尉は手渡された武器を手にすると、息を吹き返したかのように突撃砲と長刀を駆使して本郷と侶蘭と共に激しい戦闘を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三日後の1998年7月12日。九州方面軍と避難民の一部はどうにか京都へと逃げ延びることができ、京都では日本帝国軍・在日米軍・国連軍の三軍は京都前面に防衛線の構築の準備をしていた。

 

 いつBETAの襲撃があるか分からぬ状況で切迫している中、ある偵察部隊から信じがたい報告が帝国軍に届いた。

 

 それはMIA(戦闘中行方不明)扱いとされていた桜吹雪部隊の本郷少尉と桜中尉が生還したという内容だった。しかし桜中尉はこの戦闘で左腕を失い、戦線を離脱せざるを得なくなってしまった。

 

 

 この出来事に帝国軍は軍内部の士気向上のために二人の生還を大いに宣伝し、“桜吹雪の奇跡”という名はこの時生まれた。しかしこの時武者ターンエーの姿は無く、本郷も“気が付いた時には姿を消していた”と桜中尉に報告していたという……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時を戻し医務室。唯依は巌谷中佐から聞かされた“桜吹雪の奇跡”の経緯を思い出しながら本郷を見る。

 

(少尉、お前も兵器開発に尽力している衛士の一人なんだな)

 

 唯依は目の前で眠る本郷を眺めながら心の中で呟く。

 

「少尉、今回のテストで無茶をしたことは感心できんが、私個人としては良くやったと思っているぞ」

 

 眠る本郷に優しい声で話した唯依は静かに医務室から退出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 医務室から退出した唯依は先ほどイブラヒムから手渡されたメモに書かれている部屋へと向かい、目的の部屋に入室した時には丁度アルゴス試験小隊とユウヤ・ブリッジスとの模擬戦闘が始まる時だった。

 

「おや篁中尉、丁度良かった。今新人の歓迎会を兼ねた模擬戦を開始するところだったのだ」

 

「いえ、ドーゥル中尉。お気遣い感謝いたします。…そちらの方は?」

 

「ああ、こちらはXFJ計画で米国からの技術顧問として当基地に来てもらった……」

 

「どうも初めまして。私はアメリカ合衆国のボーニング社戦術機開発部門重役の【フランク・ハイネマン】といいます」

 

「初めまして、篁 唯依中尉です。今回はよろしくお願いします」

 

 管制室へと入室した唯依を待っていたイブラヒムの隣には米国側からの重役であるハイネマンがいた。唯依とハイネマンはお互いに自己紹介しながら握手を交わすとCPがアルゴス小隊の模擬戦開始の通信を入れた。

 

 模擬戦の内容は【CASE・47】と呼ばれる2vs2の市街地における二機編隊同士の対人戦闘演習だった。戦場状況は光線級のいるBETA支配地域から170キロ離れた市街地での戦闘を想定した内容だった。

 

 組み合わせはAチームがタリサをリーダー、パートナーはヴァレリオ。Bチームがユウヤをリーダー、パートナーがステラ。使用戦術機はノーマル装備のアクティヴイーグルが一機とストライクイーグルが三機。

 

「ユウヤ・ブリッジス少尉……経歴は伊達ではないが…」

 

「やはり、アクティヴ相手では分が悪いですかな?」

 

「……」

 

 模擬戦闘が開始されてから数分…状況を見守っているイブラヒムとハイネマンはF-15の強化試験型であるACTVの加速性能に苦戦を強いられると口にする。

 

 その後、F-15に乗るユウヤとアクティヴイーグルに乗るタリサとの一騎打ちになり、近接戦闘を仕掛けるタリサに対し、ユウヤは跳躍ユニットをフルブーストで急上昇し、タリサは少し上昇して後を追いかける。

 

「ほう、やるもんですな、ブリッジス少尉は」

 

「自分としては遠慮したい状況ですな。特にマナンダル少尉は近接格闘戦闘のエキスパートですから……」

 

 ユウヤの戦闘技術に感心するハイネマンとイブラヒムだったが、唯依はユウヤの行動に表情を強張らせる。

 

 その後、ユウヤとタリサはお互いに米国戦術機の標準装備短刀【CIWS-1A】を取り出して激しい空中戦闘を繰り広げる。

 

 だが、ユウヤの操るストライクイーグルはタリサのアクティヴイーグルを抑え込むように突っ込み、ビルへと突っ込んでいった。

 

 しかし落下時の衝撃で逆にアクティヴイーグルがストライクイーグルを抑え込む形になってしまい、ストライクイーグルに向けて短刀を振り下ろそうとした……その時だった。

 

 別の地点で戦っていたステラがヴァレリオを倒し、離れた場所からタリサのアクティヴイーグルの頭部とコクピットブロックを狙撃して撃墜判定とし、勝利条件である“リーダー機の撃墜”が満たされ、演習終了となった。

 

 

 

 

 

 

 その夜……自室へと戻った唯依はシャワーを浴び、バスタオル一枚でバスルームから髪を拭きながら出ると、机の上に置いておいた資料を手にベッドに腰かけた。

 

(対人演習か…置かれている状況が違うとはいえ、後方は随分と余裕があるのだな……)

 

 唯依は資料に目を通しながらアルゴス試験小隊のメンバーであるタリサ、ヴァレリオ、ステラの戦歴などを確認し、実戦経験は豊富で今回の演習での機動ログを見ても腕は申し分ないと判断する。そしてユウヤに関する資料に手を止めた。

 

「この男……今回の演習でどうして自分が勝てたのか恐らく理解していない……このような者に、帝国の命運を委ねるのか……」

 

 今回の演習でのユウヤに対する唯依の評価は“失望した”の一言に尽きていた。

 

 

 

 

 

 






 どうも思いついた展開に持っていこうと思っても文章にするのが難しい…

 更新がかなり空きができると思いますが、頑張っていこうと思っているので
 気長にお待ちしていただけると助かります。


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