マブラヴ・オルタジェネレーション   作:京橋

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どうもほぼ一か月も放置してしまい、申し訳ありませんですた。

 この度、猛暑の為体調を崩してしまい、小説を書く時間がなく、大幅に遅れてしまいました。

では、続きをどうぞ。








第十六話 米国からやってきたエリート衛士

 

 

 

 

 篁 唯依と本郷 彰の二人が巌谷中佐から与えられた任務……不知火・壱型丙の強化改修機の開発を目的とした日本と米国の戦術機メーカー共同で行われるXFJ計画…そして試作型不知火五号機を使用した吹雪タイプの強化試作型である吹雪・弐式。

 

 この二機の開発を行うことで、日本帝国にいる外国機導入派の面子を抑制し、国産機開発派の面子を向上させることができる。

 

 さらに吹雪・弐式には試験的にジェネレーションズの使用しているMSのパーツが戦術機にも使用可能かどうかの検証テストも兼ねており、新型バックパックの低コスト化を図った装備のテストも同時に行うことになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 統合司令部の室内で唯依は、ハルトウィック大佐から今後XFJ計画を担当する部隊の説明を受けていた。

 

「アルゴス試験小隊……XFJ計画を担当してもらう部隊だ。彼らはF-15の強化プランである【フェニックス構想】においても成果を上げている。ここに来る途中、追加モジュール及び換装ユニットを追加されたF-15を見なかったかね?」

 

 ハルトウィック大佐の話に唯依はここに来る途中で機体形状の変わったF-15が頭上を通り過ぎて行った姿を思い出した。だが、大佐の話の中で“換装ユニットを装備した”という言葉に唯依は妙な疑問を感じた。

 

「あの、大佐」

 

「何かね?」

 

「追加モジュールの事は解りますが、換装ユニットというのは?」

 

「ああ、実は米国のとある戦術機メーカーが開発したという“状況に応じて武装を変えられる”というコンセプトで作られた装備で、開発コードが“ウィザード”と呼ばれている代物らしい」

 

(武装を変える?それではまるで吹雪・弐式でテストをしようとしているのと同じではないのか?)

 

 ハルトウィック大佐の説明に唯依は米国が開発したという換装ユニットが斯衛軍で使用する目的で開発された三種の神器と同じ装備ではないかと思った。

 

 だが、あの装備は元々ジェネレーションズと関わりのあった日本と横浜基地で開発された装備であるはず……それを米国が独自で同じようなものを開発するなど不可能なはずだ。

 

 もしくは横浜基地が国連所属であるため、情報の一部が米国に渡った可能性だが、日本帝国は明星作戦での事前通告無しでの新型兵器(日本帝国内の一般人はターンエーガンダムが新型兵器だと思っている)導入による甚大な被害をもたらした米国を嫌っている節がある為、可能性としては低いかもしれない……

 

 とは言っても、ここでどう考えても現状では真相は不明なまま、考えてもどうしようもないと唯依は頭を切り替えた。

 

「他になにかあるかね?」

 

「いえ…説明の続きをお願いします」

 

「うむ。追加モジュールと換装ユニットを装着したF-15…あれがF-15ACTV、通称【アクティヴイーグル】と呼ばれるフェニックス構想で生まれた機体だ」

 

 フェニックス構想……それは低予算で高性能な戦術機を生み出すもので、その具体的な内容は、アビオニクスの換装とモジュールの追加のみによって、既存の戦術機を安価にグレードアップさせようというものであった。

 

 米国のボーニング社がそのプランを実行するために目をつけたのが、最強の第2世代戦術機と言われ、世界で最も多く配備されているF-15イーグルだった。

 

 同機体を強化改修し、準第3世代機まで性能を引き上げた機動力強化型の実証実験機が、【F-15・ACTVアクティヴイーグル】である。

 

「そしてアクティヴを操縦するアルゴス試験小隊の彼らも現場叩き上げの猛者揃いだ。XFJ計画においても有効なデータを提供してくれるだろう。それと……」

 

 ハルトウィック大佐は書類用の封筒を唯依の前に差し出し、その封筒を受け取った唯依は中身の書類を出してみた。

 

「大佐、これは?」

 

「既存のスタッフの他に主席改春衛士(メインテストパイロット)としてこの人物を用意した。実戦経験こそないが、F-22にも乗っていたというエリートだ。申し分ない経歴だと思う」

 

「……この男が…?」

 

「そう、アメリカ合衆国陸軍戦技研部隊所属…ユウヤ・ブリッジス少尉だ」

 

 手渡された資料にはユウヤ・ブリッジスに関する内容の書類が入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 唯依と本郷がユーコン基地へと赴任してから数ヶ月後の2001年5月2日。一機の戦術機空挺輸送機【アントノフAn-225 ムリヤ】がアラスカ・ユーコン基地に向かって飛行していた。

 

「しかし、本当に何もないところだよな~でもまあ、砂だらけのグールムレイク基地と比べたら確かに自然は豊かだよなぁ」

 

「………」

 

 機内で窓の外から見える自然を眺めるアメリカ合衆国陸軍所属の【ヴィンセント・ローウェル】は、ムスッとして明らかに不機嫌そうな表情をしている【ユウヤ・ブリッジス】に話しかける。

 

「あの大きな川、夏はキングサーモン釣って、冬はウィンタースポーツやり放題だろ~?オーロラと見えんのかな?オーロラ!」

 

「はしゃいでんじゃねぇよ、ヴィンセント」

 

 ようやく口を開いたユウヤだったが、まさに不機嫌極まりない状態だった。

 

「お前は最新鋭の戦術機をいじれて満足かもしれねえけどな……俺にはこんな最果ての基地に飛ばされるなんて左遷以外の何者でもないじゃないのか?」

 

「いい加減機嫌直せよ、ユウヤ。ユーコン基地っていったら世界中からエリート衛士が集められてる作戦試験部隊の本拠地だろ?しかもオレ達の配属先は日本メーカーとの共同開発チームっていうじゃねえか。そんなビックプロジェクトのテストパイロットに上層部直々に指名されたんだ、ある意味栄転だぜ?」

 

 不満ばかり口にするユウヤに、ヴィンセントはユーコン基地に派遣されたのは左遷されたのではなく栄転であると話すが、ユウヤの表情は相変わらず不満に満ちていた。

 

「何で俺なんだ……」

 

「は?」

 

「よりにもよって“日本”絡みのプロジェクトに…どうして俺が……」

 

 ユウヤは拳を握り締め、まるで自分に与えられた任務は上層部からの屈辱的な当て付けではないかと考えていた。

 

「あっ、そうだユウヤ。こんな噂話を聞いたことがあるか?」

 

「噂?」

 

 気まずい雰囲気にヴィンセントは話題を変えるためにある話をユウヤにし始めた。

 

「なんでもな……これから行くアラスカには……出るんらしいんだよ」

 

「出るって……何か?」

 

「ゴーストだよ!ゴースト!!しかも戦術機の!!」

 

 戦術機のゴースト……つまり亡霊が出るという噂話の話を始めたヴィンセント。

 

それによると、戦場でBETAと戦っていた衛士が言っていたもので、真っ赤な…まるで血のような色をした戦術機が右腕に装備されていた大型ブレードでBETAを次々と滅多切りにして撃破していたという。

 

 しかし、戦術機のレーダーには何も映っておらず、仲間の僚機のセンサーなどにも異常をきたしていたという。

 

 BETAを殲滅した謎の機体は、そのまま何処かへ去って行ったが、機体が去った後、暫くするとセンサー機器の不調は収まり、帰還後に不調を訴えた衛士は整備兵に調査させたが特に機器には異常がなく、出撃していた全ての機体を調査したが異常は見られなかったという……

 

「っという事があったんだってさ」

 

「…馬鹿馬鹿しい。お前、そんな噂を信じてんのか?」

 

 ヴィンセントが話した噂話にユウヤは全く信じようとしない。

 

 まあそれも当然の反応だとヴィンセントは思うが、実際のところこの噂話は米国軍内では有名な話で、アラスカ方面だけではなく、米国内でも同じような現象が訓練中の戦術機部隊内で発生していた事が整備兵の間で一時期話題となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、ユーコン基地の敷地内の演習区画の渓谷にて吹雪・弐式が跳躍ユニット無しで高速で飛行していた。

 

『アルゴス5、チェックポイント4通過。目標タイム更新』

 

 渓谷の迫りくる崖をかわしながらアルゴス5こと本郷 彰の操縦する吹雪・弐式は突き進む。

 

その吹雪・弐式のバックパックにはスペキュラムストライカーのような大型可変翼と高出力スラスターを使用した【エール】というコードネームを持った【エールストライカー】を装備していた。

 

 この装備は先の三種の神器を模したスペキュラムストライカーのコストダウンを図った装備で、現存する跳躍ユニットよりも高性能で低燃費、尚且つ機動性などを落とさないようになっている。

 

 大型可変翼が上下に動きながら吹雪・弐式の機体バランスを取りながら渓谷を進むが、コクピット内では崖への接近警報が鳴り響き続けていた。

 

「こちらアルゴス5。バックパック【エール】の機能に問題なし。機体制御にも特に問題は見受けられません」

 

『CP了解。アルゴス5、引き続き試験を実地せよ』

 

「アルゴス5、了解」

 

 コクピット内で本郷は吹雪・弐式を操縦しながらバックパックの機能などのチェックをしながらアルゴス試験小隊の担当CPのオペレーターに随時報告しながらテストを継続する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 本郷が操縦する吹雪・弐式が渓谷でのテストを行っている頃、他のアルゴス小隊のタリサ、ヴァレリオ、ステラの三人は管制室にてその映像を見ていた。

 

「ふえ~、アイツの機体ってあんな機動ができっのか?アクティヴでもあの機動をしたら結構くるぞ」

 

「俺としちゃ遠慮したいね。あれだと本郷の奴、コクピットの中でシェイク状態なんじゃねぇか?」

 

「でも通信にはちゃんと答えてたし、問題ないんじゃないかしら」

 

 アクティヴイーグルに搭乗したことのあるタリサは、狭い渓谷を縫うように飛行を続ける吹雪・弐式の機動に驚き、ヴァレリオは結構なスピードで渓谷を突き進む吹雪・弐式にコクピットにいる本郷が耐えているのかとステラと共に心配する。

 

 しかしそんな二人の心配を他所に本郷は順調にテストをこなしていき、最終通過ポイントを突破し、テストは終了した。

 

「CPよりアルゴス5、本日のテストは終了しました。帰還して下さい」

 

『アルゴス5、了解であります』

 

 オペレーターの通信に本郷は答え、レーダーに映る吹雪・弐式はユーコン基地へと進路を取った。

 

「さて、アマンダル少尉。貴様にはソ連との共同で広報任務に就いてもらう」

 

「了解!」

 

「分かっていると思うが…余り余計なちょっかいを出して問題を起こすんじゃないぞ?」

 

 管制室に一緒にいたアルゴス小隊隊長であるトルコ共和国陸軍所属の【イブラヒム・ドゥール】中尉はタリサに次の任務を言い渡しながら注意をする。

 

「それにしても東側の連中と仲良くお空を飛んで見せりゃいいだけの任務か…ついでにオリーブの枝でも掲げていりゃ国連の広報官サマも満足…か」

 

「その東側の代表があの“紅の姉妹(スカーレットツイン)”でしょう?焼け野原になったユーコンを見たくはないんだけど……」

 

「あっはっはっ、タリサはキレたら人間ナパームになりかねないからなww」

 

「ふんっ!!」

 

「アンビシッ!!」

 

 次の任務のために衛士強化服を着るために更衣室に向かう三人は雑談しながら廊下を歩いているとタリサを茶化したヴァレリオが彼女の飛び蹴りを顔面に受けて撃沈した。

 

「そういえば、また新しい衛士が来るんだってな。確かユウヤ……ブリッジスだっけ?」

 

「ええ、アメリカ出身の衛士らしいわ。それに“本ちゃん”と同じ日本人とのハーフだそうよ」

 

「へぇ~、本郷と同じ日本人とハーフか……アメリカ人にしちゃ変な名前だと思ったが…それにしてもプロジェクトも混血で、開発衛士も混血とか…いかにも国連の連中が考えそうなこったな」

 

「でも腕は確か見たいよ。ネバタ州のグールムレイク基地出身…米国陸軍の最精鋭ね」

 

 更衣室へと入ったタリサとステラは服を脱いで衛士強化装備に着替えながらアルゴス試験小隊が担当するXFJ計画の不知火の改修機のテストパイロットである衛士の話をしていた。

 

 ちなみにステラの言った“本ちゃん”というのは本郷のあだ名で、タリサとヴァレリオは普通に本郷と呼び捨てにしているが、何故かステラだけこう呼んでいる。

 

「それよりタリサ、次の任務だけど…」

 

「わぁ~ってるよ、ガキじゃないんだし、任務ってんならあいつ等ともよろしくやってやるさ。まっ、不愛想で生意気なあいつ等には握手から教えてやらねーとだめだろうけどな!」

 

 短気ですぐにキレるタリサの性格を考えて心配するステラに、タリサはそこまで子供じゃないと言いながら笑みを浮かべてソ連軍の紅の姉妹の待つ広場に歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルゴス試験小隊と紅の姉妹との共同での広報任務。その為に出撃していったタリサの乗るノーマル装備のアクティヴイーグル。そのコクピット内でタリサはブルブルと震えていた。

 

「う~~~、あ~の~ヤッロォォォォ!!!!こっちの好意を無駄にしくさりやがってぇぇぇぇっ!!!」

 

『こちらアルゴス3、いい加減落ち着けよタリサ……って言っても無理か……』

 

『しょうがないわよ、まさかあんな事になるなんて』

 

 コクピット内でタリサが大声を上げて叫ぶ。その様子を通信で繋げてきたヴァレリオとステラは溜息をつくしかなかった。

 

 それは広報任務が始まる数分前の事……集合場所である広場に向かったタリサ、ステラ、ヴァレリオの三人は先にいたソビエト連邦陸軍所属の【クリスカ・ビャーチェノワ】少尉と【イーニャ・シェチナ】少尉の二人……ソ連の紅の姉妹と対面していた。

 

そこでタリサは握手を求めようと手を差し伸べたのだが、クリスカがタリサの手を弾き、馴れ合う気はない、二度と近づくなと言い放ち、タリサの好意を無下にしたのだ。

 

 その事にタリサは腹を立ててしまい、今に至る。

 

『アルゴス4からアルゴス2へ。アルゴス3と共に随伴機離脱するわよ』

 

『抑えておけよ~あいつ等と騒ぎを起こしたら後が面倒だからな~』

 

 ステラとヴァレリオの二人はタリサにそう言いつつ通信を切ると二人の乗るF-15二機はアクティヴイーグルから離れていった。

 

「……んなこたわかってんよ。けどこっちも舐められっぱなしじゃいられないんでね…ロックオンされてビビりやがれ!」

 

 先のクリスカの行為の仕返しと言わんばかりに彼女達の乗るチェルミナートルに突撃砲を向けてロックオンした。だが、この悪戯心が紅の姉妹怒りを買うことになるとは思いもしなかった………

 

 

 

 

 

 

 その頃、輸送機に乗っていたユウヤとヴィンセントの耳にユーコン基地への着陸態勢に入るという機内放送を聞いていた。

 

「日本は自国内にハイヴを抱えててるんだ。独自の技術や理論を山ほど持ってる。それにオレはすげぇ興味あるけどな」

 

「ふん、米国から技術提供することがあっても、日本から学ぶことなんてねえよ」

 

「相変わらずだな…日本の事になると熱くなるのは……」

 

 日本製の戦術機に興味があると話すヴィンセントにユウヤはすぐムキになった。日本の話になるとすぐに否定的になるユウヤに、同じ血が半分は入っている事を指摘すると、ユウヤは文句を言おうとした時だった。

 

 突然機体が激しく揺れ始め、ユウヤとヴィンセントは手すりに捕まって何とか耐えた。

 

「なっ、何だ!?再アプローチか!?」

 

「いや……これは」

 

 突然の揺れに何事かと言うヴィンセントに対し、揺れの原因が何なのか感づいたユウヤは急ぎコクピットへと駆け出して行った。

 

「後方から戦術機2機が高速で接近中!このままでは衝突コースにっ!!」

 

「くそっ!演習区域はずっと向こうのはずだぞ!何でこんなところを飛んでやがる!!」

 

 コクピットにやって来たユウヤが見たのは、着陸態勢に入っている輸送機に接近してきている戦術機がいることで混乱状態になっている機長たちの姿だった。

 

 米国で戦術機に乗っていたユウヤは機外から聞こえてくる戦術機の跳躍ユニットの噴射音を聞いて格闘戦機動を取っていることを予測し、輸送機との衝突を回避するにはほとんど運任せになると考える。

 

「くっ、一旦上昇して回避するぞ!!」

 

「りょ、了解!」

 

「!?」

 

その時、突然噴射音が変化した事に気づいたユウヤは操縦桿を引こうとする機長の判断が間違っていると思い、操縦桿を押し込む。

 

「駄目だ!高度を上げるな!そのまま滑走路に突っ込め!!」

 

 ユウヤの叫び声と共に輸送機が高度を下げるとその真上をタリサの乗るアクティヴイーグルと紅の姉妹の乗るチェルミナートルが通り過ぎて行った。

 

「あっ、あんな戦術機を作っているのか…?」

 

「信じらんねぇ……なんつ~三次元機動だよ……」

 

 コクピットから見えたアクティヴイーグルとチェルミナートルの機動に、エリート衛士であるユウヤや、長く整備兵をしているヴィンセントですら驚きを隠せないでいた。

 

 

 

 

 

 タリサは悪戯心でチェルミナートルをロックオンしたことを後悔していた。チェルミナートルをロックオンした瞬間、その機影が消え、いつの間にか後ろを取られていたのだから……

 

『ふふふ、怯えているな。私には見えているぞ、お前が死の恐怖に慄く“色”が……』

 

『私に敵意を向けた以上、死は妥当の報いだろう。だが、安心しろ…もう少しだけ遊んでやる。そうだ足掻け!足掻くんだ!!生にすがるみっともない“色”を見せて、私を楽しませろ!!』

 

 チェルミナートルに乗るクリスカとイーニャの二人はある種の興奮状態で左右上下に逃げ惑うアクティヴイーグルを眺めながら笑みを浮かべていた。

 

「ちくしょう!何でだ!!何で振り切れねぇ!!?」

 

 幾度も機体を動かしてチェルミナートルからのロックオンを外そうとするタリサだったが、まるで自動追尾する誘導ミサイルに追いかけられているかのように再びロックオンされてしまう。

 

 さらに背後からのビジビジと張り付いてくる殺気に、気を抜けば“確実に殺られる”と感じていた。しかしチェルミナートルは背後を取っているにもかかわらず攻撃を一切してこない……その事に自分が遊ばれていると思い、行動を起こした。

 

「ふざけんなよぉぉぉぉっ!!アタシのオリジナル失速域機動(ポストストール・マニューバ)、ククリナイフ!!」

 

 タリサは機体を操作し、アクティヴイーグルの肩部と背部の大推力エンジン四基をフル稼働させると、アクティヴイーグルは空中できりもみ機動を行い、チェルミナートルの背後を取ろうとする。

 

 勿論この機動はコクピット内にいるタリサに相当な負担が伴い、強化装備の耐G機能を有しているにしても負荷が掛かる。

 

 視界が霞む状態でも何としても後ろを取ってみせるという一心でGに耐えるタリサは、自慢の機動で確実にチェルミナートルの背後を取ったと思った。

 

「いない……はっ!?」

 

 しかし目の前にいるはずのチェルミナートルの姿はなく、何処にいるのかと探してみると、再び背後から殺気を感じ、後ろを振り返ると……

 

 そこには再びチェルミナートルがアクティヴイーグルの後ろにいた。

 

 アクティヴイーグルの背後を取ったチェルミナートルは手にしていた突撃砲をアクティヴイーグルの背部モジュールに向けて発砲した。

 

「うわぁぁぁぁっ!!」

 

 モジュールを打たれたことでバランスを崩したアクティヴイーグルはそのまま地上に向かって落下を始めた。

 

『タリサ!!応答しろ!大丈夫か!?』

 

「………」

 

 ヴァレリオの声が響くコクピット内でタリサは気を失い、アクティヴイーグルはどんどん地上に向かって落下していく。

 

「まずいぞ!タリサの奴、気を失ってやがる」

 

「どうするのよ!ここからじゃ、間に合わないわ!」

 

 タリサが気を失っていることが分かり焦るヴァレリオとステラだったが、元々広報任務で距離を取っていたのが災いし、助けに行こうにもフルスピードで追いかけても地上に落下するまでにタリサを救出するには間に合わない。

 

 ヴァレリオとステラがどうするか悩んでいるその時だった。後方から猛スピードで接近してくる機体を二人のレーダーが探知し、一体何かと接近してくる機体のいる方角を見よとした時だった。

 

「アマンダル少尉ぃぃぃぃぃっ!!」

 

 二人の耳に聞こえた聞きなれた大声と共に、二機のF-15の横を一機の戦術機が通り過ぎて行った。その正体はエールのテスト飛行を終えて帰還中であった本郷の駆る吹雪・弐式だった。

 

 吹雪・弐式はエールの高出力スラスターを全開にして落下中のアクティヴイーグルに向かって全速力で突き進んでいた。

 

 コクピット内に響く警告音とエールの危険信号が表示されている網膜センサーに本郷は目もくれず、自身に掛かるGに耐えながらも地上に向かって落下中のアクティヴイーグルに追いつき、吹雪・弐式はアクティヴイーグルの下に潜り込むと高出力スラスターを地上に向けて大噴射を開始した。

 

「うぐぐぐぐぅぅぅっ!」

 

 後ろに向かって掛かっていたGが今度は下から突き上げてくるGに変わり、その強烈さに耐えながらも本郷は操縦桿を離そうとはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、ヴァレリオとステラがアクティヴイーグルを発見した時、アクティヴイーグルの肩に手を置いて鎮座する吹雪・弐式を見つけ、ヴァレリオはタリサを、ステラは本郷を救出するためにコクピットから降り、タリサは大した怪我も無くすぐに目を覚ましたが、本郷は強烈なGの影響か暫く目を覚まさなかった。

 

 

 

 

 その頃、無事ユーコン基地の滑走路に着陸した輸送機から出てきたユウヤとヴィンセントは何か信じられないものを見たかのような表情をしていた。

 

「なあ、ユウヤ?」

 

「何だ?」

 

「あの時見たの……戦術機か?」

 

「……分かんねぇよ……」

 

 アクティヴイーグルとチェルミナートルの格闘戦機動を回避し、無事に降りられることに安堵していた輸送機内でユウヤとヴィンセントはふと外を見た時、一機の高速飛行物体を目撃していた。だが、その正体が吹雪・弐式だったとは知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







 書いてて気づいた。結構原作崩壊しているということを……

 この小説はアニメ版と漫画版を結構ごちゃまぜになっているので、あれ?って思う個所もあると思いますが、そこは出来るだけスルーでお願いします。



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