マブラヴ・オルタジェネレーション   作:京橋

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第十話 黒歴史の産物、∀ガンダム。

 

 

 

 

 

 

 BETAによって横浜にハイヴを建設されてしまった事によって、日本の住民はいつBETAの大襲撃が始まるのかと不安な日々を過ごしていた。

 

 そんな日々を過ごしている中、国連軍内ではオルタネイティヴ第四計画の総責任者である香月 夕呼博士の提案した横浜ハイヴの制圧とBETA襲来の際に新たに発見された新元素である【G元素】を手に入れることこそが、オルタネイティヴ計画を飛躍的に進展させ、政治的劣勢を覆す唯一の策であると断言。

 

 この発言に対し、極東防衛の重大な役割を担っている日本が陥落するという事態を避けたい国連は、日本帝国に横浜ハイヴ攻略を要請。それに対して日本帝国も手の打てる内に横浜ハイヴを陥落させたいと帝国軍も同意し、横浜ハイヴ攻略の為に準備を開始した。

 

 

 

 

 

 

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 1999年8月5日……日本帝国軍、国連軍、そしてマーク達ジェネレーションズの合同で横浜ハイヴ攻略作戦【明星作戦(オペレーション・ルシファー)】がついに発動された。

 

 自国に二つのハイヴを抱えてしまっている日本は、佐渡島ハイヴよりもまだ成長過程で若い状態である横浜ハイヴを本州島奪還の第一歩として、後にBETA大戦の中でパレオロゴス作戦に次ぐ大規模反抗作戦となる作戦が開始された。

 

 国海軍連合艦隊と国連太平洋艦隊の艦砲砲撃による砲弾の雨が降り注ぐ中、帝国艦隊の一部の戦艦からマーク達から提供されたビーム撹乱幕弾頭のミサイルを横浜ハイヴの上空に向けて発射し、軌道降下兵団への光線級のレーザー攻撃を防いでいた。

 

 光線級のレーザー攻撃を減衰させるのではなく、無効化するというマーク達からもたらされた技術に戦艦のブリッジで戦況を監視していた艦長らは歓声を上げていた。

 

「ビーム撹乱幕弾頭の威力は絶大な効果が出てますな!」

 

「うむ。従来のALM(対レーザー弾頭弾)による環境汚染の被害が少ない分、贅沢な武装とも言えるがな」

 

 対BETA戦において最大の脅威ともいえる光線級のレーザー攻撃。この光線級の存在によって制空権は瞬く間に押さえられ、艦隊からの艦砲砲撃による砲弾も撃ち落されてしまい、飽和攻撃でも高い効果は望めなかった。

 

 そこで使用されたのが対レーザー弾頭弾【ALM】である。これは弾頭部分の炸薬を排除し、殆ど鉛を主成分にした重金属で成型している。

 

これによってAL弾内の重金属が光線属種のレーザー照射を受けると高熱で気化して“重金属雲”と呼ばれる雲を発生させてレーザー攻撃を減衰させ、砲弾の着弾率を高める事が出来た。

 

 しかしその反面、重金属雲は一種のチャフ効果も発生してしまい、重金属雲内での戦術機の戦闘の際に一部の機器が使用不可になり、非常に危険な状態になってしまう。

 

さらにAL弾は光線級のレーザー攻撃を受けて破壊される事で、ようやく効果が発揮するというもの…それによって発生した重金属雲は周囲の環境や生体に対しても極めて重大な影響を及ぼすというデメリットが発生する。

 

 それ故に、マーク達がもたらしたビーム撹乱幕の技術は環境汚染などの問題が少ない贅沢な武装と言えた。

 

 

 マルスとエミリスが搭乗しているFAZZとストライクEの【ハイパー・メガ・カノン】と【アグニ】で向かってくる突撃級を排除し、さらに後続の要撃級や戦車級なども巻き込んで横浜ハイヴまでの突破口が開かれた。

 

 マルスとエミリスのパイロットとしての能力は申し分なく、シミュレーターなどの結果や、初出動だった第一帝都・東京の防衛戦で見せた能力はマークとエリスに匹敵しており、搭乗したMSの機体性能や癖などを完全に熟知しているかのように動かし、殆ど無傷で生還していた。

 

 マークは砲撃装備のマルスとエミリスを援護のために後方に下がらせ、マークとエリスは帝国軍と国連軍のハイヴ内部の地下茎坑道に突入する部隊の前衛に入り、FAZZとストライクEの砲撃を免れたBETAを排除しながら突き進む。

 

「格の違いってヤツを、貴様らに教えてやるっ!!」

 

「我が剣の冴え…その身で味わうがいいっ!!」

 

 ラナロウとエルフリーデの搭乗しているガーベラ・テトラ改とソードカラミティは、側面から取り囲もうと接近してくる要撃級の迎撃に入り、ガーベラ・テトラ改は右手にビームサーベル、左手にビームマシンガンを持って要撃級と戦車級を蜂の巣にしながら排除する。

 

 ソードカラミティは両手に【対艦刀・シュベルトゲベール】を装備し、剣先を下に向けて要撃級に向かって駆け出していき、機体を横に一回転させながら右手のシュベルトゲベールで要撃級を下から切り上げ、左手のシュベルトゲベールで別の要撃級を横一閃に切り裂いた。

 

 次々と要撃級を切り裂いていくソードカラミティだったが、要撃級の陰に隠れていた数体の戦車級が飛びつき、強靭な顎を使ってソードカラミティの胸部装甲を噛み砕こうとした。

 

「ふんっ、この程度で我が鎧を傷つけようなどと!!」

 

しかし、戦車級の噛み付いた装甲は何故か何処も損傷しておらず、エルフリーデは機体をBETAの群れのほうに向けると、胸部に取り付いていた戦車級と接近していたBETAごと胸部の【580mm複列位相エネルギー砲スキュラ】を発射して消し去った。

 

 ソードカラミティの装甲には【トランスフェイズ装甲】と呼ばれる通常装甲の下にPS装甲を施すことで着弾や衝撃を受けた部分だけをフェイズシフトさせる事で物理的外力を完全に無効化することができる。

 

そしてスキュラは基になったカラミティガンダムのスキュラよりも出力が70%に抑えられているにしても、BETAを消し飛ばすくらいの威力は持っていた。

 

 ラナロウとエルフリーデが戦っている最中、後方から赤い瑞鶴を先頭に山吹色の瑞鶴と四体の白い瑞鶴が36mm突撃砲を連射しながらBETAを倒し、二人の機体の傍にやってきた。

 

『ラナロウ殿、お久しぶりです!!』

 

「もしかして…あの時の中隊長さんか!?」

 

『はいっ!覚えていてくださって光栄です!!』

 

 赤い瑞鶴に搭乗している元嵐山中隊の如月はラナロウにお礼を言いながら同じ部隊の瑞鶴に指示を発しながら自身もBETAを撃破していく。

 

かつては実戦経験の浅かった如月であったが、京都防衛戦での実戦経験を経て、既に自分が戦闘中でも他の部隊の状況指示も出来るようになっていた。

 

 さらにもう一機の白い瑞鶴がガーベラ・テトラ改の傍にやってきた。

 

『ラナロウ様、私のことを覚えていますか?』

 

「その丁寧な言葉遣い、ヤマシロ…だっけか?」

 

『はいっ!!山城 上総です!』

 

「もう足の怪我は大丈夫なのか?」

 

『怪我は完治しましたし、もう足手まといとは言わせませんわっ!!』

 

 ラナロウと会話しながら上総は強気な声で話をしてくるが若干の緊張も含んでいた。この時、瑞鶴のコクピット内での上総は自分の事を覚えてくれていた事と、声だけを聞いただけでも想い人と再会できた事に右腕に巻かれているバンダナを意識しながら顔を真っ赤にしていた。

 

 だが、そんな上総もさすがに実戦を繰り返して戦場慣れし、訓練時代での【死の八分】を乗り切ったことで一人前の衛士に成長していた。ラナロウの操るガーベラ・テトラ改の背後に回って援護に回り、時にラナロウが上総の死角を補い、逆に上総がラナロウの死角を補うという場面が多く見られた。

 

「クスッ、山城さん、やっぱり気合が入っているね」

 

「うん。ラナロウさんと戦っている山城さんの動き……いつもより随分いい感じに見える」

 

「志摩子!安芸!余所見してないでっ!!周囲のBETAはまだまだいるんだからっ!!」

 

「そうだよ!!また油断してやられたら、それこそ命を救ってくれたラナロウさんに失礼だよ!!」

 

 ガーベラ・テトラ改の動きに付いていく上総機を見ていた志摩子と安芸だったが、小隊長として注意する唯依が怒鳴り、一緒にいた和泉がラナロウのいる戦場で油断してやられでもしたら失礼だと話す。

 

 数々の戦場を経験してきたであろう唯依は小隊指揮能力も初陣の時よりも向上しており、今ではリーダーとして十分の実力を有している。

 

和泉もさすがに初陣で死に掛けただけあってか“油断してればやられる”という少しの隙が重大な結果を招きかねない事を身に染みている為、志摩子と安芸にも油断して戦死などになったりしたら京都防衛戦でラナロウに助けてもらった意味が無くなってしまうと叫んだ。

 

 今、彼女らが生き延びて戦えているのはラナロウの存在があっての事なのだろうから……

 

 

 

 戦闘が続く中、唯依機が数体の要撃級の猛攻に晒され、志摩子と安芸は別のBETAの攻撃で援護に向かう事が出来ず、ラナロウも他のジェネレーションズのメンバーもハイヴからやってくるBETAに阻まれて援護に向かえなかった。

 

「くっ!!」

 

「させんっ!!」

 

 要撃級の攻撃にバランスを崩した唯依機にさらなる追撃が掛かろうとした時だった。別方向から別の要撃級が何かに振り回されてきたかのように飛んできた。

 

二体の要撃級は横倒しになり、そこへエルフリーデのソードカラミティがシュベルトゲベールを要撃級に突き刺して止めを刺した。剣で突き刺した場所から要撃級の鮮血が噴き出し、エルフリーデの機体が返り血を浴び、その姿はまさに“戦鬼”とも表現できた。

 

「そこの機体のパイロット、無事か?」

 

「はっ、はい。大丈夫です……助けていただき、ありがとうございました」

 

「気にするな。仲間を助ける事は騎士として当然の事だ」

 

 目の前に立っているソードカラミティに向かって瑞鶴を立ち上がらせた唯依はお礼を言った時、唯依は彼女の機体の左腕の手甲部分から何かワイヤーのようなものが垂れ出ていた。

 

そのワイヤーを辿っていくと、その先には要撃級の首の部分にフックのようなものが挟まっており、フックが外れると同時にソードカラミティの左手甲に収まった。

 

 唯依機が要撃級に追撃される前、エルフリーデは離れた場所でその姿を確認しており、腕の武装である【パンツァーアイゼン】を一体の要撃級の首に目掛けて発射して捕まえ、そのままスラスターを起動させて機体を中心に遠心力をつけて唯依機を襲おうとしている要撃級に向かって投げ飛ばしていたのだ。

 

「お前の機体はまだ大丈夫か?」

 

「はい、問題ありません。ついて行けます」

 

「よし、なら私が先陣を切って突破口を開いていく。お前は私の後に続け!」

 

「了解!」

 

 エルフリーデは唯依と共にBETAの群れの中へと突撃していき、ソードカラミティは舞うかの如き動きでBETAを切り裂いていき、唯依も手にした長刀を構えてBETAを次々と切り裂きながらエルフリーデ機を追いかける。

 

 だが、そこへ行く手を阻むかのように二体の要塞級が姿を現し、エルフリーデと唯依の機体を触角で串刺しにしようと攻撃を仕掛けてくる。

 

「てりゃぁぁぁぁぁっ!!」

 

 エルフリーデは両手に手にしてシュベルトゲベールを一つにまとめると二つのビーム刀が合わさって大型の大剣のような高出力のビームサーベルとなった。

 

スラスターでブーストをかけた自機を要塞級に突っ込ませて振り下ろされた大剣は頭部正面から切り裂き、要塞級は縦一閃に真っ二つにした。

 

「くっ、このっ!このぉっ!!」

 

 もう一体の要塞級に攻撃を仕掛ける唯依機だったが、要塞級は唯依の瑞鶴など眼中に無いかのように攻撃を無視してエルフリーデに向けて衝角で攻撃しようとする。

 

「うおぉぉぉぉっ!!」

 

 そこへエイブラムの乗るドライセンが前腕部内蔵型の【三連装ビームキャノン】を連射しながら現われ、トライブレードを要塞級に投げると空中で高速回転したトライブレードは要塞級の身体を切り裂き、脚部と繋がっている関節部分を斬られた事でバランスを保てなくなり地面に倒れこんだ。そこへ唯依は120mm弾を要塞級の頭部に至近距離から撃ち込んで撃破した。

 

「無事か、エルフリーデ!!」

 

「問題ない。それより帝国軍と国連軍の援護はどうした?」

 

「両軍ともハイヴに繋がっている地下茎坑道への門に到達し、後続の部隊の合流させる為に侵入口周辺のBETA殲滅のために戦線を構築している。早く合流するぞ」

 

 エイブラムの援護により二体の要塞級を撃破に成功し、帝国軍と国連軍が地下茎坑道への侵入口を確保したことを伝え、後続の部隊も次々と侵入して行く中、ジェネレーションズは地上の支配権維持の為に周囲の警戒に回ると話し、エルフリーデ達はマーク達との合流に向かった。

 

 

 

 

 

 

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 地下茎構造へと続いている門(ゲート)の前に軌道降下兵団の突入部隊と合流を果たした帝国軍と国連軍はすぐにハイヴ中枢である反応炉に向かって侵攻を開始。フェイズ2のハイヴの構造ならすぐに反応炉に到達できると考えていた両軍だったが、ここで重大な問題が発生した。

 

『センサー・エコー確認!!横浜ハイヴの地下茎構造はフェイズ2にあらず!繰り返す、フェイズ2にあらず!!フェイズ4相当と見込む!!』

 

 突入した部隊からの通信に横浜ハイヴの地下茎構造は地上構造部分のモニュメントから推測されていたフェイズⅡ規模のものではなく、地下だけでも佐渡島ハイヴのフェイズⅣ並の規模になっていることが判明。突入部隊の主縦穴及び反応炉の到達が事実上不可能になってしまった。

 

 さらに突入した部隊のあとを追うかのように複数の地下茎構造を通って地上に出てきた大量のBETA群は両軍とジェネレーションズに向かって襲い掛かってきた。一時撤退を余儀なくされた帝国軍と国連軍の盾になる為にジェネレーションズと斯衛軍はBETAを撃破しながら後方へと下がっていく。

 

 ハイヴから押し寄せるBETAに対し、帝国軍と国連軍の司令部では僅かな可能性に賭けて地表の部隊をこのまま反応炉へと突撃させるか…それとも再起を期して撤退するか…この二つに一つの選択に作戦の継続を巡って揺れていた。

 

「一体どうするのだ!?フェイズⅡの段階のハイヴ内部がフェイズⅣ規模などと想定外のことだぞッ!!」

 

「分かっている…だが、我々が決断を下さねば現在戦っている衛士やマーク殿たちの部隊が危険な状況になってしまう……」

 

 司令部内で決断を迫られる高官たちの耳に聞こえてくる前線で戦っている部隊からの支援要請などの声にどうするか悩んでいると、突然通信士が声を上げた。

 

「司令!!今、米国政府から通信が!!しかも全周波数でこの戦域全体に向かっての通信です!!」

 

「米国から?一体何を今更……」

 

 通信の相手は日米安保条約を一方的に破棄して自国に逃げ帰っていった米国からのものだった。その内容は「G弾による攻撃及び、その予測効果範囲からの即時撤収要請」という一方的な通告だった。

 

「何だ!この内容は!!安保条約を一方的に無視して撤退した国がっ!これでは一方的な命令ではないか!!」

 

「すぐに攻撃中止を要求しろ!!」

 

「ダメです!こちらからの通信を米国は無視しています!」

 

 米国の命令とも取れる通信内容に激怒した司令部の面々は、即時攻撃中止を進言するが、米国側は帝国軍と国連軍からの通信を切ってしまっているのか、聞こえていても無視しているのか、何も返答が返ってこなかった。

 

 

 

 

 

 

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 米国からの通信が送られてくる少し前、とある戦場の片隅である部隊が特殊観測任務を行なっていた。

 

 その部隊は国連軍特殊任務部隊【A-01連隊】だった。オルタネイティヴ第四計画直属の即応部隊であり、BETA大戦で人類の勝利に最も直接的に殉ずる精鋭部隊……

 

だが、その輝かしい看板とは裏腹にA-01連隊第7中隊デリング中隊は司令である香月夕呼博士から命じられた任務を行なっていたが、その任務内容は“積極的交戦を禁じ、主に帝国軍に協力している謎の戦術機部隊を優先的に観測せよ”という内容だった。

 

 そのデリング中隊所属の【鳴海 孝之】少尉はその作戦内容に「仲間が…友軍が殺されていくのをただ見ているだけなんですか!?」と作戦前に中隊長に進言したが、その返答が「その通り」の一言だった。

 

 さらにハイヴ内からBETAの再攻勢が始まってからは本来の「観測対象」とも隔てられ、比較的安全な地上外縁部にて待機命令に等しい戦域観測に切り替わっていた。

 

 戦場を眺めている国連軍カラーである薄い青色に塗装された94式戦術歩行戦闘機【不知火】のコクピット内でデータリンク情報に目をやり、地下茎構造で苦戦を強いられている友軍の光点を眺めながら、何もしていない事に奥歯を強く噛み締めて戦域状況を睨んでいると、同じ部隊で僚機であり訓練時代で同期だった【平 慎二】少尉が秘匿通信を開いて話し掛けてきた。

 

『なあ、孝之……お前、まさか行くつもりか?動けるとしたら俺達しかいないんだぞ…何ができるっていうんだ?』

 

「……そうでもねぇよ。一瞬でもBETAの動きをこっちに引ければ、そこから食い破って脱出できるだろうさ」

 

 孝之の返答に慎二は共に極限的な任務を僚機としてこなしてきたが故に戦術面の思考も容易に共有できてしまった…“無茶だが、不可能ではない”と………

 

『…速瀬と涼宮のことはどうするんだ』

 

「…だから死にに行くわけじゃねぇって」

 

 友人である慎二の言葉に二人の間に笑みがこぼれる。それはお互いに腹の内を確かめ合い、二機連携(エレメント)としての意志が確定した瞬間だった。

 

『孝之、オマエって本当に何も捨てられない奴なんだな!!』

 

「…悪ィな。ま、腐れ縁だと思って諦めてくれ」

 

『諦めてなかったら、僚機なんて組んでないさ』

 

 二人が最後の笑いを交わした直後、二機の不知火は全力で大地を蹴りつけ…跳躍した。

 

 

 

 

 

 

 

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 ハイヴから次々と出現してくるBETAの群れを唯依達の斯衛中隊と共に戦線を維持しようと奮闘しているマーク達ジェネレーションズ部隊。しかし、数を増していくBETAの攻勢に帝国軍と国連軍の戦術機の数がレーダーから徐々に減っていく。

 

(不味いな…このままではこっちがやられる)

 

 いつも冷静なマークも、圧倒的な物量で押し寄せてくるBETAの群れに、さすがに危機感を感じていた。

 

戦闘を継続させるか一時撤退するか迷っている司令部からは何も指示がないことと、自機のエネルギーも半分を使い切ってしまっており、このまま戦闘を継続するのは困難と感じていた。

 

 その時、赤い瑞鶴に乗っている如月の網膜に【コード666(即時撤退命令)】が表示され、一体何事かと考えていると通信機から自動翻訳の機械的な音声が通信に割り込んで聞こえ始めた。

 

『米国宇宙総軍よりハイヴ22周辺に展開する全ての部隊に告ぐ。直ちに撤退せよ……』

 

「即時撤退命令!?一体どういうことだ!!?」

 

『我々は新型の対ハイヴ兵器の使用を決定した。データリンク上に表示した有効範囲より直ちに撤退せよ……』

 

 米国政府からの通信を聞いた如月は周囲を見渡してみると、抗戦を続けていた帝国軍や大東亜連合軍の機体も戸惑ったかのように後退戦を開始し始めた。しかし、横浜ハイヴを攻略する為に大規模な部隊が戦闘している中、即時撤退するなど出来るわけも無い。

 

 それにより混乱よりもどうするか迷っている内にBETAにやられて被害が拡大している戦域も少なくなかった。

 

『マーク殿!!先程の通信は!?』

 

「こっちも聞いていた。だが、何で今頃になって?」

 

『それよりマーク!早くここから撤退するべきだ。山城ッ!俺達が援護するから、仲間を連れて早く撤退しろ!!』

 

『りょっ、了解です!!』

 

 BETAを撃破しながらマークは自分達ジェネレーションズが殿を務め、MSより性能の劣る戦術機部隊を先に撤退するようにラナロウが上総に話し、上総の進言を聞いた中隊長は唯依達と共に機体の跳躍ユニットを起動させて急ぎ後方へと退避を開始。

 

 その後にマルスとエミリスが支援砲撃を行い、エイブラムとエルフリーデ、ラナロウとレイチェル、そしてマークとエリスが最後尾に付き撤退を開始する。

 

 8月6日の明朝、軌道上に待機していた米国の装甲駆逐艦から2発のG弾が連続投下された。そして午前8時15分、横浜ハイヴに向かって落下してくるG弾に気づいたのか、光線級及び重光線級数十体が空に向かってレーザー攻撃が何度も放たれるが、何故かG弾に命中する手前でレーザーが曲がって命中していない。

 

「くっ、間に合わない!!」

 

 横浜ハイヴ上空で落下していた二発のG弾は眩い光を放ちながら大爆発を起こし、後方の様子を振り返ったマークの目に入ったのは、眩い光が自分達目掛けて迫ってくるG弾の光だった。

 

 機体の推進剤をフルに使って必死に退避しようとするマーク達であったが、突然迫ってくる光が消え、機体に何も異常が無いことを確認しながら空を見上げると、二発のG弾は消え、代わりにまるで岩石に包まれたかのような人型の物体が横浜ハイヴ上空に出現していた。

 

「何だ、あの物体は!?」

 

 人型の物体は空中に静止している姿を見ているマーク達だったが、そこへG弾に攻撃をしていた光線級がレーザー攻撃を仕掛け、複数のレーザーが岩石に命中していく。

 

 だが、岩石に命中した個所が剥ぎ落とされていくと、そこには紫色のオーラを纏った白き機体が現われた。

 

「あっ、あれは!!」

 

 マーク達が見たのは、かつて世界文明を滅ぼし、後に黒歴史と呼ばれる歴史を生んだ【ターンエーガンダム】がそこにいた。

 

「……べーた……ベータ……BETA!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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