目覚めたら某有名ゲームの悪役だったけど、正直言って困るんだが   作:プルスサウンド

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日間一桁とか全方向に感謝しながらビビるしかできませんの!割りと人を選びそうな内容ですのに、ありがとうございますですわ!

ラクーンシティについて色々調べましたが新旧で情報が……もう難しく考えずに都合の良いとこだけチョイスしてます。そもそもただの二次創作だし、そこまでの精密さは求められとらんやろ…うへへ…




よーしおじさん頑張っちゃうぞー

 

 

 

 26日の夜になってからアリエルが熱を出した。

 

 といっても微熱だし、身体が痒いとかは無い様子なので、おでこにシート貼って布団に放り込み、缶の果物を冷やして与える。

 あとは、解熱剤ではなくハーブを飲ませた。

 解熱剤は病気を治すわけでなく、文字通り熱を下げるだけなので、個人的には「熱が出過ぎて危険な時」に使うべきだと思っている。だから微熱なら体力を補助してくれるハーブの方が良いってわけだ。

 

 しかしまあ、自分が熱を出した記憶は無い。おかげでこのように「ぼくのかんがえたそれっぽい看病」になってしまうが、大丈夫だろうか。妹が熱を出した時はこれで良かったはずだが。

 

「何だかんだで君が熱を出すのは初めて見たな」

「風邪ひくの、久しぶりだからびっくりしちゃった…」

「自分が熱を出してるって気付いてなかったのは驚いたぞ」

 

 ハーブをキメたのが良かったのか、微熱は下がらないが意識の混濁は無い。食欲はむしろ減退している様子だし、普通の風邪だな。

 ま、この調子なら明日か明後日には治るだろう。

 

 

 

 

 

 見通しが外れた。

 27日、28日と時間が経つにつれて状況は悪化している。アリエルの熱は下がるどころかじわじわと上がり、空咳を繰り返すようになっていた。

 解熱剤と調合したハーブを与えているが、あまり効いていないのか良くなる兆しが見られない。

 

 正直に言えば、自分はこの状況に焦っていた。

 熱が上がるにつれて、否応なしに「あの疑惑」が脳裏に浮かぶ。

 

 もしかして体質の関係で風邪に見えているだけで、これもT-ウイルスのせいだったりするのか?

 という疑いは、どうしたって拭えなかった。

 

「なんせタイミング的にあまりにも…」

 

 いや、痒みや食欲の増加はない。普通の病気の可能性はまだある。

 

 じゃあどんな病気かと聞かれても分からないが。

 酷い風邪なのかインフルなのか、はたまた別の何かなのか、医者でもなければ専門知識があるわけでもない自分に見当がつくはずもなかった。

 では経験から考えようとしても、自分は熱が出る風邪を引くことがほとんど無く、インフルに掛かった記憶すらない頑丈さを持っていたようで。

 

「クソの役にも立たない記憶だな」

 

 時間が経つほど苦しげな呼吸に空咳が混じる頻度が高くなっていた。このまま素人の看病を続けてもダメな気がして仕方がない。

 これがもし普通の病気だとしても、死ぬ可能性はあるのだ。

 

「もういっそ医者に」

 

 ……アホか自分は。今の状況で動いてる医者なんかろくに居ないだろ。もうバイオハザードは始まってるんだから、患者が収容されたらしき病院がまともな状態なわけあるか。

 

 いや、そもそも何で「助けよう」としている?

 

 自分は彼女を死出の旅路に付き合わせるつもりで選んだ。だからこのまま先に死なれるなら、それで良いはずじゃないか。もうバイオハザードが始まってるなら、一人で暇を潰していれば近いうちに

 

 

 

「…いや、普通に死なれたくないだろ」

 

 

 

 死なれるのは困ると思った。

 思ってしまった。

 だって悲しい。

 

 それにもし、これが本当にTのせいだったらこの子はやがて…

 

 

 

 

 

 気が付けばアリエルをリュックに詰めていた。

 

 家が破壊されて拠点を変える時のために用意していた、100Lある登山用のリュックをひっくり返して中身を全て出す。タオルケットでくるんだアリエルの脇や首に、凍らせた水やスポドリのボトルを当てた状態で固定して、敷いたクッションの上に寝かせた。

 

「すまんが、しばらく揺れて寝苦しくなるぞ」

「…おじさ、ラクーンく…ちょうだい」

「分かった。ほら、お出かけだからキーホルダーの方のラクーン君で良いか?」

「おで、かけ…いいの?」

「大丈夫、大丈夫」

 

 装備を整えリュックを背負い、マウンテンバイクに乗って夜の道を走る。山に囲まれたラクーンシティは日が落ちるのが早い。

 しかしそんなことなどお構い無しに、ゾンビは道をうろついていた。

 

 ま、道路がまともに通れるうちは、基本的にゾンビを相手にするつもりはない。ゲームと違って無限湧きみたいなものだ。倒してもきりがない。

 

 目的地はバイオ2やUCで見たアンブレラ社の地下研究施設。というか心当たりがそこくらいしかなかった。うすらぼやけた原作と映画の知識がごっちゃになってそうで怖いが仕方ない。

 なお目標は滅菌作戦までにウイルス抗体なり血清なりを入手し、アリエルに使用してからラクーンシティを脱出すること。

 

 もしそれでも彼女が回復しなければ普通の病気だから、どっかの病院に担ぎ込むことを考えている。

 普通の病院なら、金がなくて身元も怪しい大人が連れてきた子どもだから治療しません!なんてことはしないだろう。むしろ事情が分かればそのまま保護してもらえるはずだ。

 というか、どのみちアリエルが助かったらどこかマトモな場所に保護してもらわなければ、彼女の将来を考えると非常によろしくない。

 

「くっさ……」

 

 自転車で浴びる風は不味かった。

 秋が始まりつつあるとは言えまだ気温はある方だ。そのせいか、人の生活が破綻した街のそこかしこから何かが腐った臭いや焦げた臭いがする。

 

 人口が多い方に行くほど火事が起きている建物、事故って爆発した後の車が見えた。

 もちろんゾンビの量も増える。基本は音に反応している様子なので、寝てるヤツなら素早く通過すれば問題ないが。

 

 やがて街中に近付くにつれ、ゾンビの立てる音だけでないものが混じるようになってきた。無事な人々が必死に足掻いている生きた音だ。

 銃の発砲音、まだ動いている車の音や、各種緊急車両が鳴らすサイレンは重なりあって、むしろ活気を感じるほど。老若男女を問わない悲鳴と避難を呼び掛ける放送と、それに時おり混じる爆発音。

 

 ネオンサインや看板の光りはまだ生きている。破壊された街並みがフィクションめいた空間を演出していた。この現実を突き付けてくる臭いがしなければ、バイオってVRでリメイク出てたんだ流石カプコンやでグラフィックきれー!とか思ってしまいそうだ。思いたかった。思わせてくれ。

 

 そのうちゾンビだけでなく、乗り捨てられた車両や燃えている車両が増え、マウンテンバイクでも速度が出せなくなった。

 車の上に飛び乗って避けるのも限度がある。乗っているのは自分だけではないのだから、乱暴過ぎる運転はできない。というかまともな道はゾンビの量が増えやすいのだ。だからフェンスみたいな障害物も置かれるようになり、それがどうしても邪魔だった。

 

「もうダメだな」

 

 ビル街の手前でマウンテンバイクを乗り捨てることにする。チャリこぎまくりでも脱出したい人が居たら譲って良かったが、ゾンビ祭りの大通りにそんな人がうろちょろしているはずもなかった。

 

「よいしょ!オラどけ!フンッ!」

 

 小道に入り、そこでもうろつくゾンビを避けたり、スコップで叩いてすっ転ばせながら進む。

 しぶといヤツはざっくり脊髄を断ち切れば動かなくなる。科学的なゾンビの唯一と言って良い美点だった。

 

 スコップを使っている理由は簡単で、銃はあるが弾は有限だから節約したいというもの。ゲームに出てくる無限○○みたいな武器は実装されておりませんので悪しからず。

 鉛玉が不足しましたら、お手数ですがお近くの死体から銃ごと入手してください。

 銃社会万歳。くそったれ。

 

「アホみたいにおるやんけゾンビめ…アンブレラ社員が小遣い稼ぎにメルカリでTのワクチン売ってたりしませんか。腎臓売ってでも買いますクソが」

 

 うん、2020年になったら使えなくなりそうなジョークになってしまったな。まだ1998年だからセーフってことで。

 

 それに自分、オタク気質だからすーぐ臓器売ろうとすんねん許してや。

 や、でも勝手にウェスカー氏の腎臓を売るのは良くないな。所有権が無いから訴えられてしまう。アメリカすぐ訴訟するもんなぁ。

 

 あ"ー…馬鹿みたいなこと考えてないとしんどいぞコレ。

 

 アリエルが心配で頭に血がのぼったり、変に焦ってしまうのは良くないと自覚しているがどうしょもない。それに、こうしてゾンビを相手にしているが、射殺するのとは違って殴ると嫌な感触がする。流石に吐きはしないが気分が良いはずもなかった。

 

「人のゾンビもヤバイがイッヌのゾンビもつらい」

 

 市民の親愛なるペットだったであろう彼らもまた、ウイルスの魔の手から逃れられなかったようだ。人のゾンビの間を縫うように、大小様々なサイズの犬が口を血に染め、白目を剥いてよだれを撒き散らしながら走ってくるのだからたまらない。

 

 ウェスカーボディでなければ反応もできずに食い殺されていただろう。動物の動体視力と反応速度は恐ろしいものがある。

 とりあえず今は、飛びかかってきたところをスコップでビンタして首の骨を折るように倒している。背中に攻撃されるわけにはいかなかった。絶対に。

 

「ガンバルゾー…ガンバルゾー……」

 

 自分にぼやいていられるような時間は無いのだ。

 

「アリエル、大丈夫か?」

「…ん……」

「まだ熱が下がらないか。身体が痒いとかあるか?」

「ッケホ……ないよ…」

「お腹空いてないか?」

「…ん」

「ハーブ飲もうな」

「ん」

 

 時たま安全そうな場所でアリエルにハーブと飲み物を与え、地図を確認したら再び行軍する。

 

 もはや通っているのは道無き道だ。壁の上によじ登り、フェンスをよじ登り、有刺鉄線は腰に巻いておいた上着を被せて乗り越える。

 

 そう。ゲームと違って壁やフェンスは登り放題だし、どんな物でも武器にできるのが現実だ。代わりにゾンビ側だってやろうと思えば破壊できない壁はないし、我々にはセーブ機能も完全な安地も存在しない。

 もちろんコンテニューは不可。

 

 だからこそ慎重に、しかし無駄なく

 

「う"あ"っ!!!」

 

 

 

「は???」

 

 

 

 

 

 

 親方!空から女の子が!

 

 

 

 

 

 

 




 
・空から女の子
何とかバレンタインさん。最近の悩みはバイオレンスなストーカー被害。

・おじさんの心変わり
2ヶ月くらい世話してた子に情がわいてるのを自覚した中身さん。
まあ普通に考えて幼女を心中相手に選ぶ精神はアカンやろ…って正気に戻ったとも言える。
苦しまぬうちに介錯するとか発想に出てこなかった。むり。幼女いきろ。そなたは別に美しくなくても良いので健やかに生きろ。

・おじさんのメイン装備はスコップ
ゲームで例えるなら背中に攻撃を受けて幼女が死んだらガメオベラ。本体はまあつよい。
乱暴に扱えないクソデカリュックのせいで動きが制限されているから前転とか無理。しかし緊急時は幼女を背負っていてもかなり早く動く。
幼女用の乾燥ハーブや一部の市販薬を持ってるため、もし説得で仲間にできたらほぼ永続的な回復をしてもらえるが、やはり幼女を優先する。

・ラクーンシティ
何回もゲームの舞台になってるせいで情報収集が大変なので、パラレルなシティとして色々と都合良く混ぜられた街。軽いガバとかはゆるして。
アウトブレイク真っ最中なので非常に危険が危ない。


※ちょっと最後の課題に集中してきます。単位さんを口説き落とさなければならぬのです。

単位さん…私には君が必要なんだ……頼むよ、なぁ…良いだろう?



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